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大人の食育を推進する「丸の内シェフズクラブ」総会が開催されました!

みんなで飲食業界の今を見つめ、活動のこれからを考える場

「皆さま、ご無沙汰しております」という一声から開会した「丸の内シェフズクラブ総会2022」。
これまで年2回の定期開催をしてきた総会も、新型コロナウイルスの影響により、約3年ぶりの開催となりました。すなわち、2021年に「食育丸の内」が「EAT&LEAD」として再始動して以降、初めての開催。今回は、13年目の「丸の内シェフズクラブ」が思い新たに、次の時代へ歩き出す第一歩目といえるような総会です。

出席したのは、会長を務める服部幸應先生、三國清三シェフをはじめとした14名のメンバー。
当日は2部構成で、第1部はTOKYO TORCH 常盤橋タワーにある「MY Shokudo Hall & Kitchen」を会場に、近況報告や情報交換ともに共に学ぶ時間を設け、第2部は大手町ビルへ移動。屋上にあるシェアリング型コミュニティIoT農園「The Edible Park OTEMACHI by grow」を視察しました。

EAT&LEAD 2022年度の活動について共有したのは、三菱地所・井上友美。

まずは、2021年に「食育丸の内」が「EAT&LEAD」となって再始動した意図・目的を説明しました。2008年の設立以来、200本以上のイベントを実施し、延べ50万人を超える参加者を集めるほど大きなムーブメントとなった「食育丸の内」は、今後は「EAT&LEAD」としてより幅広い活動を行っていきます。

その他に、「HAKKO MARUNOUCHI」「EAT&LEADトークサロン」「SUSTABLE(サステーブル)」の各プロジェクトについて紹介しました。

会長・服部先生のご挨拶「食育のいま」

開催のご挨拶をされたのは、丸の内シェフズクラブ会長・服部幸應先生。ご挨拶とともに、最近の「食育」に関する動向をお話いただきました。

服部幸應先生のご挨拶「食育のいま」

先日、丸の内エリアで展開されているSDGs ACT5プロジェクトとEAT&LEAD が共催した「SUSTABLE」にゲストで呼ばれました。その時、常に興味深そうに参加されている方が多くいらして、これからさらにEAT&LEADは発展していくだろうなと感じました。また、EAT&LEADが発展していくために、本日お集まりの料理人の皆さんのご協力も欠かせません。それぞれの方に力を発揮していただいて、この「丸の内シェフズクラブ」をより素晴らしい会にしていけたらと思っています。

食育丸の内(EAT&LEAD)は、2008年にスタートしました。
その3年前、2005年に「食育基本法」が制定されまして、食育基本法と食育丸の内は歩みを共にしてきたところがありますよね。

「食育基本法」が生まれたきっかけは、私が厚生大臣に「明治の頃から日本の教育は『知育、徳育、体育』という3本柱でやってきたけど、それでは足りない。『食育』を追加したらどうか」と提案したことです。その施行から17年が経ち、時代は随分変わったなと感じていますが、今は「SDGs」が潮流となって世界的に広まっています。

2015年、国連で193の加盟国の合意を得た「SDGs」は、2030年までに17の目標の実現を目指しています。その目標を1つずつ見ていくと、多くの項目が「食」と関連し、日本が「食育」で取り組むべき課題もすべて当てはまっているんですよね。

そこで、昨年「食育基本法」の第4次5カ年計画で「食育ピクトグラム」を作りました。「食育基本法」ではこれまで5カ年ごとに食育推進基本計画を設定してきましたが、皆さんにもっと伝わりやすい形で5カ年計画を推進していこうと、SDGsの17の目標のように食育の12の目標をピクトグラムで可視化したのです。

本日、皆さんにぜひ知っておいていただきたいのは、「SDGs」と「食育」には強い関連があるということです。

最近は、有機栽培にも注目が集まっていますよね。昨年、農林水産省が「みどりの食料システム戦略」を策定し、今年、法律になりました。その中には、現在、農地全体の0.6%程しか行っていない有機栽培を、2050年までに25%まで広げていこうという目標が掲げられています。さらに、化学農薬の使用量(リスク換算)を50%、化学肥料の使用量を30%ダウンさせることを目指しています。今、世界で最も農薬を使っている国は、日本なんですね。残留農薬も世界一です。それを知らない人は意外と多いようですが、いかに農薬を減らし、食の安全を守っていくか、農業者だけでなく消費者1人ひとりがきちんと考えてなければなりません。

SDGsと食育を有機的につなげ、時代の動きと歩みを合せながら「丸の内シェフズクラブ」の活動をこれからも続けていけたらと思っています。


服部先生のご挨拶の後には、丸の内シェフズクラブのメンバーへマイクを回し、ご自身の近況やこれからのビジョン、後進の育成や環境問題、料理に臨むスタンスや原動力にまつわるお話しなど、お一人ずつ皆さんにご発言をいただきました。

神戸北野ホテル・山口浩シェフの基調講演「サステナブル・シーフード」

最後にご登壇されたのは、神戸北野ホテルの総支配人・総料理長を務める山口浩さん。“海の砂漠化”に強い危機感を抱いた山口さんが勢力的に取り組んでいる「サステナブル・シーフード」の活動についての基調講演を行っていただきました。

●山口 浩さんの基調講演「サステナブル・シーフード」
私は「サステナブル・シーフード」に取り組んでいます。
今、世界的に海洋資源は“砂漠化”していると言われていまして、数多くの生物の絶滅が危惧されている状態です。日本では、2018年に70年ぶりに漁業法が改正され、規制が強化されるなどの大きな動きもありましたが、周辺の海域ではどんどん資源が減っています。

SDGsの17の目標を見れば、14の「海の豊かさを守ろう」が海洋資源の保全をテーマにしたものになっていますが、飲食・宿泊業界に身を置く人間としては“持続可能な食材”を使うことが大切なのだと思います。

しかし、日本では「SDGs」や「サステナビリティ」において問題があります。どんな問題だと思いますか? それは「エコ」と似たようなものだと思われていることや「一過性の流行のきれいごと」と認識されていることがあります。

「SDGs」は、世界中の誰にでも関係のあるものです。行政、大学をはじめ、すべての企業にも関わりがあります。

たとえば、今、金融業界では「ESG」が重視されていて、環境への取り組みや社会的な配慮があり、健全な企業運営ができていなければ銀行が融資しないことがあります。SDGsにまつわる活動をしているかどうか、どのくらいのレベルでSDGsに取り組んでいるか、そういったことが企業の評価につながる時代なのです。

一方で、“名ばかりのSDGs”、つまり取り組んでいるフリをする「SDGsウォッシュ」の企業も非常に多くあります。とりあえずホームページやパンフレットにSDGsのアイコンを載せておいたらいいのでは、という軽い気持ちでやっているのかもしれませんが、もし見つかれば厳しい罰則があります。取引先や消費者からの信頼も低下し、企業として致命的になることだってありますよね。特に、日本は海外よりもウォッシュの企業が多いと言われています。

だから、私は「SDGs」「サステナブル」といったカタカナやアルファベットの単語にはダマされないように気をつけています。それらのキーワードを掲げているだけで、一見は健全で正しい活動をしているように感じますが、ウォッシュの場合もありますし、策略的に使われている場合もあるからです。

私は「サステナブル・シーフード」の活動をする上で、昨年、査読付きの論文を作りました。
世界62カ国、約580のホテルとレストランが加盟している「ルレ・エ・シャトー」の副会長を務めるオリヴィエ・ローランジェ、脳科学に精通した文化産業科学者の石山徹さんと一緒に、科学的な検証結果をもとに作成した論文です。誰に何を問われてもきちんと対応できるよう、科学的な裏付けを持って活動することが大切なのです。

この論文をこれから世界で発表していきたいと考えています。今年10月にはイタリアのFAO(国際連合食糧農業機関)で、11月にはユネスコで発表する予定です。

論文を発表する際には、明石の漁港にあるシステムと共に紹介していきます。鯛で有名な明石浦には、昔から活け締めなどの技術があり、魚の価値を下げることなく流通させる非常に優れたシステムがあるのです。
私の地元・神戸は、都市のすぐお隣に海と山が密接に存在し、まるで日本を俯瞰してみた時の縮図のような街なので、まず兵庫県内の資源を使って成功事例を作ってから、ゆくゆくは日本中で取り組んでいきたいと思っています。さらに、やがてアジア各地へ活動を広げられたら嬉しいですね。

日本の食文化にとって、海の資源は欠かせません。また、料理人として、海の砂漠化は見逃すことができない問題です。今、「サステナブル・シーフード」に取り組むことは、これから日本の食文化を守っていくためにとても重要なことだと考えています。

そして、本日お集まりの東京のトップクラスの料理人の皆さんとも連携をとりながら、日本の食文化、日本の資源を守っていけたらと思いますので、これからもよろしくお願いします。

──日本の食文化への思いが詰まった、山口さんの「サステナブル・シーフード」の基調講演の余韻を残したまま、第1部は終了。第2部は場所を移し、今年5月、大手町ビルの屋上にオープンした農園「The Edible Park OTEMACHI by grow」へ訪れました。

“Farm to Table”ができる都内最大級の農園視察

丸の内シェフズクラブのメンバーが訪れた場所「The Edible Park OTEMACHI by grow」のコンセプトは、「都会にあたらしいコモンズを。みんなで作る、食べられる農園」。誰でも参加できるこの農園は「育てる体験」と「食べる体験」をつなぐ場所で、ここで育てた野菜を丸の内エリアのお店で食べられる、リアルな地産地消を生み出します。

「この農園では、土壌の温度をモニタリングしています。たとえばバジルの場合、土の中の温度が累積で100℃に達すると発芽するんですね。トマトは累積で1,000℃に達すると赤くなります。すべての野菜にそのようなアルゴリズムがあるので、常に温度を測り、アプリを通じて情報を発信しているため、ユーザーさんはお手入れのタイミングがわかるのです」。そう話すのは、The Edible Park OTEMACHI by growを手がける、プランティオ株式会社の芹澤孝悦さん。一般の方の野菜栽培のデータをクラウド上で学習するシステムで江戸伝統野菜を育て、育てれば育てるほど賢くなるAIを搭載したナビゲーションシステムを開発し、野菜の育て方が全くわからない人でもすぐに参加できる仕組みをつくったのだと話します。そんな芹澤さんの案内のもと、農園見学をしました。


種の持続可能性を考え、育てている野菜は固定種・在来種の野菜のみ。中には、江戸東京野菜も育てています。

「ここは、日本では一般的な区画貸しの農園ではなく、海外のやり方に合わせ、1つの農園をみんなで共有するようにしています。その方が他の人とコミュニケーションをとりながら、みんなで野菜を育てている感覚を味わえますよね。海外では、20年ほど前からアーバンファーミング(都市農)が盛んになりました。ニューヨークのブルックリンでは2~3棟に1棟の割合でマンションの上に農園がありますし、パリには昨年8月26日に世界最大の屋上農園ができました。ロンドン市内には、現在3,084所の農園があります。日本では法律で厳しく規制されているため、気軽にアーバンファーミングをできない状況がありますが、私たちは検証を重ね、ようやく法令順守で実現させることができました。今、私たちは3年間で3,000カ所の農園を作ることを目標にしています。3,000を超えると今の農業で生産できる野菜とほぼ同じ収量が上げられるんですね。また、私たちは飲食店から出た生ごみを堆肥にしていますが、輸送コストも下がり、“地産地消”は既存の農業に比べてCO2を削減することもできます」(芹澤さん)

農園から食卓へ「Farm to Table」の拠点となる、都内最大級の農園。今後は、ここで育てられた野菜の持つ物語を「丸の内シェフズクラブ」の皆さんが作る料理を通じて広く伝えていく、そんな新たな循環が生まれていくことになります。ぜひご期待ください。

>>「The Edible Park OTEMACHI by grow」のWEBサイト
https://theediblepark.plantio.com/

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