宮古で感じた新たな繋がり。脇屋友詞シェフ「Miyako Emotional Trip」を振り返って
生産者からもらった気づきと感動を、
料理を通してお客様へ繋ぐ
「生産者の方に出会うと、その言葉、熱意に刺激を受けるんです」と言う脇屋シェフ。農薬・抗生物質不使用で非加熱、非精製、無添加のはちみつ作りにこだわり抜いた「南西養蜂園」のアティートさんの姿勢にいたく感銘を受けたそう。「この食材はそれだけの思いと手間をかけて作られているんだ、という気づきがあります。なおさら大切に使わなければならないと思いますし、お客様に料理としてお出しするときには、食材に込められた思いをお伝えするようにしています。美味しさだけでなく、お客様にも驚きと感動が生まれ、生産者とお客様が繋がっていく。お客様も生産者の方々も喜んでくれる。その繋がりが、今求められているのではないでしょうか」。
「宮古島マンゴー専門工房ティダファクトリ」でも今回の出会いをきっかけに、「マンゴープリン用に」とピュレなどを仕入れている脇屋シェフ。「『宮古島マンゴー専門工房ティダファクトリ』は、そのままでは売り物にならない規格外のマンゴーを農家から買い取り、加工品にして販売しているんです。見た目は悪くても味は良いマンゴーですから、上手に使えば美味しく食べてもらえる。食品ロスの削減にもつながる取り組みです。私なら料理にどう生かせるだろうかと考えるのはやりがいがありますね」と脇屋シェフ。旬の時期の立派でフレッシュな食材はもちろんだけれど、規格外のもの、旬に採れ過ぎてしまったものの加工品をどうやって使うかということも大事だと言います。
「生産者の方々と話し合いながら、その食材をどのように使うか考えていきます。『宮古島マンゴー専門工房ティダファクトリ』の方に何か困っていることはありませんか?と聞くと、『旬に採れ過ぎたものは腐ってしまう、不揃いなものは売れない』と。それなら私なりに使わせてもらおうということで、その場で注文したんですよ。何でもそうだけれど、旬のものが一番美味しい。ですが、旬が過ぎてしまえばその食材は終わりというわけではなくて、美味しく食べる方法があるんです。それを生産者の方にお伝えする。今回はマンゴープリンを作って、それをさらに『マンゴープリンサンド』にして『みやこ下地空港ターミナル』で販売しています。新しい食べ方の発見があると、地元の方々にも喜んでいただけますね」。
中国料理の料理人としてできることを意識しながら。
地元の人との温かな交流が次の発展へ
「友利かつお加工場」ではかつお節になる前の状態の「なまり節」を初めて食べたという脇屋シェフ。味や香りをたしかめ、地元の方の食べ方を聞きながら、中国料理の料理人として自分ならどうするかということを考えたそう。そしてなまり節にオリジナルのXO醤を合わせ、たまごサラダと挟む「なまり節XOジャンたまごサンド」が生まれました。「日本の47都道府県にはそれぞれ素晴らしい食材があるのに、地元の方々はその使い方を知らない。一つのヒントとして、どの土地にも食材の旬というのがあり、その旬以外に保存できるものが必ずある。例えば、乾物ですね。中国料理にも乾物は多く、さまざまな方法で調理しますから、日本の料理とはまた違った観点で上手な使い方を提案できます。一年中保存できる乾物を旬のものと合わせて、どう使うか考えていくと面白いかもしれませんね」。
そして、地元の方たちのためにレシピを考えるときは、簡単で、価格も高くないものにするのがポイントなのだそう。「難しくて地元の方々が再現できないようなレシピは意味がありませんから、ある程度作りやすいもの。そして手頃であればより多くの人に食べてもらえて、その食材の魅力を見直してもらうことにもつながります。まずは食べてもらって、触れてもらうことが大事ですね」。あるときは、テレビ番組で高知の「丸ナス」を使った料理を紹介し、それを見た生産者の方々がレシピを再現した様子をビデオメッセージで送ってきてくれて、とても嬉しかったとのこと。「そのやりとりがきっかけで、高知へ食材を見に行く予定なんですよ。一つのきっかけから温かい交流が生まれ、次の形へと発展していく。もう15年もお付き合いしている生産者さんもいます。各地の食材を、これからももっと東京に繋げられたら嬉しいですね」。
生産者と交流し、食材のことをより深く知ることが大事であると語る脇屋シェフ。料理を作ることで生産者の方の想いやその土地の文化・歴史を、食べる人に伝えられる。そのことを喜びであるとともに、顔が見えるからこそ伝え手として責任を持って食材と向き合ってらっしゃるようでした。それを食べる私たちも、料理を作る人、食材を作る人に感謝しながら、大切にいただきたいものです。
>>脇屋シェフが宮古の生産者を訪ねた「Miyako Emotional Trip」のレポートはこちら