【これからの食を考える 7つの質問】シェフ、カリナリープロデューサー 薬師神陸さんが 外出自粛時に考えたこと

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世界中の人々が、新型コロナウイルスによる未曽有の体験をし、自粛生活を強いられ、生活や価値観など様々な変化が生まれたのではないでしょうか。だんだん新しい日常にも慣れつつあり、外出自粛時の気持ちや、考えたことを忘れてしまうこともあるかもしれません。しかし、自分と向き合う時間の中で導き出した答えは、これからの食や暮らしのひとつの指針になるはず。そこで、食育丸の内から各業界を牽引する方々に、今一度、当時の気持ちを振り返る7つの質問を投げかけてみました。今回はシェフでありカリナリープロデューサーとしても活躍し、コロナ禍で医療従事者にお弁当を届ける『Thanks Obento Project』の活動を行った薬師神陸さんの答えをご紹介します。

(PROFILE) 薬師神陸さん

1988年愛媛県生まれ。新卒で辻調理師専門学校の教員として就職。2014年からは須賀洋介シェフの右腕として、2015年の「SUGALABO」オープンに尽力し、同店でシェフを務めた。2017年には、新時代の若き料理人を発掘するコペティション「RED U-35」にてGOLD eggを受賞。現在はカリナリープロデューサーとして活動する傍ら、イベントの企画、ケータリング、セミナー、メニュー監修などを行い、新しいシェフの在り方を提案している。

(1) 外出自粛時に、なにか新しい習慣は生まれましたか?

レストランでは、全国のさまざまな地域から食材を取り寄せることがありましたが、この機会に家でも地方食材を取り寄せていました。外食をすることも、物を買いに行くこともできなくなり、自炊にお金をかけるようになりました。

(2) 改めて感じた、自分にとって大切なものはありますか?

今まで、世の中の“衣食住”のなかでも、多くの人が“食”に対して意識が低いと感じていました。しかし、コロナ禍によって、食に興味を持っている人が、自分が考えていたよりもずっと多くいることに気が付きました。そんな、食に対するリテラシーをこれからも維持し、保ってもらえるような活動をしていきたい。そして、子ども達にも“食”の大切さを伝えたいですね。また、サスティナブルについて、インタビューなどで聞かれる機会が多いのですが、言葉がファッション化していると思います。しかし、自炊をしてみて「普段使う調味料を少しこだわったらどうだろう」とか「夏になるとこういうフルーツが売られているんだ」などの気づきを得られた人も多いのではないでしょうか。食に対して疑問を持つことがサスティナブルの第一歩です。そんなふうにただ「お腹が空いたから食べる」のではなく、食に対して意識的に向き合うようになった人たちを、大切にしていきたいですね。

(3) 自宅での暮らしを楽しむアイデアを教えてください。

クローゼットは模様替えをして季節ごとにアップデートされますが、食器棚は通年変わらないですよね。だから、食器棚もクローゼットのように季節によって衣替え、アップデートをしてみるのも楽しいと思います。二十四節気を表現する和食では、それに合わせて器も替えますが、そこまでしなくても良いので、自分が“ときめく”ような器を取り入れて、食卓を変えてみましょう。料理のアイデアも浮かぶかもしれません。

(4) この2か月の間で記憶に残っている食体験を教えてください。

食材のEC利用が増えたことです。佐賀の玉ねぎは3月、4月が旬なのですが新型コロナウイルスの影響で販売が落ち込みました。そこで「玉ねぎを100トン食べよう」とプロジェクトを立ち上げて、生産者支援の「食べチョク」「ポケットマルシェ」などのご協力で販路を拡大し、手助けをすることができました。しかし、現状の農業に対する補償は決して手厚くないことをに改めて気が付き、ここをカバーできるようになったらと思っています。

(5) AFTER/WITHコロナ時代の食にとって重要なキーワードはなんだと思いますか?

飲食店そのもののあり方が変わっていくと思います。席数と回転率、単価を掛け合わせるような単純な掛け算では、計れないようになりました。お客様にレストランに来てもらえないことを前提に、収益性を変える必要があります。この機会にECサイトや動画など新しいことにチャレンジする料理人が多くいましたが、ここでチャレンジしなかった人たちは、今後起こるイレギュラーな事態へ臨機応変に対応できないでしょう。今までは美味しい料理さえ作れればよかったですが、今後はそれだけではいけないと思います。

(6) コロナ禍の中であなたの価値観や人生観など、変わったことはありますか?

自分自身の中では、あまり変化はありませんでした。今までも料理を作るだけではダメだと思っていて、様々な活動をしてきました。そんな今までやってきた働きが、間違っていなかったんだという後押しになったと思います。食べ物を作ること以上に「おいしい」を扱うプロとして探究していきたいです。

(7) より良い社会にしていくために私たちが教訓とすべきことはなんでしょうか?

距離感を大事にすること。ウイルス対策としてはもちろんですが、近年さまざまなソーシャルメディアが普及し、第三者とのコミュニケーションのスピードが速くなりました。人間味がなくなったようにも感じます。文脈だけで伝えたいことを表現でき、読み取れれば良いですが、それができない人もいるのが事実。新型コロナウイルスの影響で様々な距離感について考え、どうしたら自分を正しく理解してもらえるか、改めて見直すきっかけにもなりました。また、デジタルになくてアナログにあるもの。大切なことほど目で見えない、ということを改めて大切にしたいですね。

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<他にも、こんな方々に聞きました>

「o/sio」オーナーシェフ 鳥羽周作さん
https://shokumaru.jp/7q-05/

株式会社スマイルズ代表 遠山正道さん
https://shokumaru.jp/7q-06/

フードプランナー 勅使河原加奈子さん
https://shokumaru.jp/7q-10/