第21回丸の内シェフズクラブ総会レポート

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10周年を迎えた丸の内シェフズクラブ

気づきと学びの10年から、動きの10年へ

服部栄養専門学校校長、農林水産省「食育推進会議・食育推進評価専門委員会」座長など、食のあらゆる舞台で活躍する服部幸應氏を会長に迎え、2008年に発足した「丸の内シェフズクラブ」。以来、毎年2回行われる総会では、日本の食を牽引する著名シェフたちが意見・情報を交換し、多数のプロジェクトを企画・実現してきました。そして、2019年9月10日に第21回総会を開催いたしました。「丸の内シェフズクラブ」が10周年を迎えた2018年度を振り返り、今後の方針を確認し合いました。

総会は2部構成で第1部では、主に1年間の食育丸の内の活動を報告。2018年度は通算17本のイベントが実施され、参加者数は合計で約19万人。丸の内仲通りに25mのロングテーブルを構え、街ゆく人々をもてなした、10周年記念の特別イベント「ロングテーブル“絆 KIZUNA”」は特にシェフたちの印象に残っているようで、「またやりたいね!」「次はもっとテーブルを長く!」との声もちらほら。また、食に携わる者として今後の指針は、「SDGs」(国連サミットで採択された、持続可能な開発目標)を強く意識した活動をすべきと再確認。気づきと学びのこれまでの10年から、これからは動きの10年へと進むために、シェフと事務局スタッフ・関係者と気持ちを一つにすることが出来ました。

第2部は、当日の会場を提供してくださった、エコッツェリア協会と連携し「フードロス」をテーマにした意見交換会を実施致しました。「フードロス」は、SDGsにも関連する、今世界中で取り組みが進められている社会問題であり、食育丸の内としても積極的に考えるために、今回の総会で取り上げることにしました。軽食をとりながら和やかな雰囲気でスタート。料理を振舞うのは料理家・地域フードプロデューサーの比嘉康洋さん。フードマイレージを意識された、東京都の食材のみを使った料理4品と、東北の宮城県、岩手県でつくられた12種類のワイン、シードルを味わいながら、まず、神戸大学名誉教授、NPO法人「ごみじゃぱん」代表理事の石川雅紀氏が登壇。包装ごみやフードロスの削減に2018年頃から社会の関心が高まっているそう。実験的に一般消費者につけてもらった「食品ロスダイアリー」は記録をつけることがフードロスに対する意識付けにつながるだけでなく、実際に各個人の削減にも貢献したことを報告。また、外食産業での食品ロス削減のために日本のトップシェフに協力してほしいことなどをお話されました。

これに続き、今回の参加シェフがフードロスに対する意見を発表。まず、「厨房ではいつもゴミ箱の中を見ています。例えば大根の真ん中しか料理に使わない場合は、その周りを捨てるのではなくスープなど別のものに使う。ロスを出さないためのメニューを考えなければならない時代ですね」と「人人人(レンレンレン)」を運営する際コーポレーション代表の中島武氏。

続いて「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ」のシェフであるステファノ・ダル・モーロ氏は、「お客様が料理を残さないように、一皿の量も考えなければなりません。仕入れも余りが出ないように管理しています」。

「リストランテ アルポルト」片岡護氏は賞味期限について、「あくまでも美味しく食べられる期限なのに、意識するあまり売り場の食品が敬遠されたり、食べずに捨てられてしまったり。この仕組み自体も考えなければならない。消費者も自分で判断するという意識を持ってほしい」と話します。

これに続いて服部幸應氏は、「今世界では、今まで廃棄物とされていたものを資源と捉え、循環型の経済を作っていく『サーキュラーエコノミー』という考え方が広がっています。これはフードロスにも深く関わる考え方。例えば、フランスは、規格外のジャガイモを捨てていたことを見直しました。オランダでは、廃棄された食品を著名料理人が料理して店で出すという取り組みも。一方日本では年間643万トンもの食品が廃棄されているとも言われていて、誰かが動かないといけないですね」。

「私の店では予約の分だけ食品を仕入れているのでロスはありません。フランスでは昔から、家庭でも野菜の端材をスープにしたりローストチキンに使ったりと、ロスは出さないですよ」と言うのは2019年に新たに新橋にお店をオープンしたドミニク・コルビ氏。

「ル・レモア」柳舘功氏は、「私の店では、市場に出せない、規格から外れてしまった食材を積極的に仕入れています。また日本では、食用にできる鹿がたくさん捨てられている。ほしい料理人はたくさんいるのに。流通にも問題があるのではないでしょうか」と話します。

「例えばキャベツがたくさんできると、値崩れしてしまうからと潰してしまう。スーパーで買った食品を使わずに捨ててしまう。そういったフードロスは全て、心の問題だと思います。生産者、料理人、消費者の心がけが大切ですね。昔に戻ればロスも無くなるはずです」と話すのは、「招福楼」中村成実氏。

「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ」を運営するミヨシコーポレーション代表の三好康弘氏は、「食べ残しに対する罪悪感が昔に比べて減っているように感じます。ハーフポーションを用意するとか、工夫が必要ですね。また、アメリカで数十年前からあるドギーバッグはいいと思います。外食先で残したものを持ち帰るのが文化になっている。シドニーには、レストランなどで使わなくなった食材をもらい受けて無料で配布している慈善団体もあり参考になります。もったいないの気持ちを思い出したいですね」と言います。

「恵比寿 笹岡」笹岡隆次氏は「みなさんフードロスに関して良い話をいただいたので、少し違う話を。服部先生をはじめ、三國さんや片岡さん、これだけの顔ぶれが一堂に集まる機会はそうそうありません。だからこそ説得力がある。多くの人に考えるきっかけを作れるような、機会をもっと増やしていきたいですね」

「若手の料理人はまだまだ経験が足りず、厨房にこもって料理を作ったりお客様をおもてなしすることで手一杯。このようにフードロスなど社会的な事柄について考え、取り組む機会がなかなかありません。もっと多くのシェフや支配人が問題を考え、意識を変える場が増えていくといいですね」と「サンス・エ・サヴール」鴨田猛氏。

最後に、「ミクニマルノウチ」三國清三氏から「私は2006年からWFP(国際連合世界食糧計画)に所属し、世界で飢餓に苦しむ人のために活動を続けています。皆さんもぜひ参加してみてください」とお話いただきました。

みんなでフードロスについて考え、新たな気づきを共有できるとても貴重な場となりました。美味しい食事をしながら意見交換をすることで出てきたアイデアがフードロスの削減や、考えるきっかけになっていく。そんな取り組みが丸の内からさらに広がっていくことを願っています。シェフのみなさんの想いや知恵、実際に現場で起こっている問題を、食育丸の内として具体的に出来る事を検討していきたいと思いました。

※「丸の内シェフズクラブ」について、もっと知りたい方はこちら
https://shokumaru.jp/chefsclub/

エコッツエリア協会 https://ecozzeria.jp/
「大丸有エリア食品ロス削減の為の基礎調査」を2019年秋から本格的に開始しており、シェフズクラブ総会での意見交換は調査の一環として行う。