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食べることから学ぶ、生きる力「EAT&LEADトークサロン」第2回「身体が嬉しい食事」レポート

第2回のゲストは下川穣さん・伊達公子さん

第2回のゲストは、株式会社KINS 代表取締役の下川穣さんとテニスプレーヤーの伊達公子さん。下川さんは菌を取り入れることで体質改善をする「菌ケア」の考案者。伊達さんはテニス解説やジュニア育成をする傍ら、ベーカリーストア「FRAU KRUMM」のプロデュースも行っています。

そんなゲスト2名が通うレストランである「unis」のシェフを務めるのが薬師神さん。誕生日や記念日などのハレの日に使用することをコンセプトにしたレストランで、1.5か月ごとにメニューが変わるコース料理が魅力の一つです。薬師神氏は「『食 × 健康』というテーマで、生きることや日常のヒントを、異なる業界で活躍するゲスト2名から聞き出したいと思います」とイベントの趣旨を説明しました。

本来、このイベントはゲストにちなんだ薬師神さん考案の「一汁一菜」のメニューを頂けるのが魅力でもあるのですが、今回は残念ながらオンライン配信となり、ゲストのみの試食となりました。

「このイベントを行っているTOKYO TORCH 常盤橋タワー3Fには『みそスープBAR』があり、おむすびと味噌汁を販売しています。せっかく同じ場所で開催するイベントなので、ゲストにちなんだ食事を同じフォーマットで提供しようというアイデアが浮かびました。今回はゲスト2名に合わせ、『菌活』をテーマに味噌を取り入れた食事にしました」と薬師神さん。

暦は立春ということで、おむすびの具材にはふき味噌を採用。発芽玄米を使用し、冷めてもおいしく食べられるおむすびに仕上がっています。味噌汁に使用しているのは福井県のマルカワ味噌。「蔵で採れた野生酵母を使用しており、菌ケアの側面から見ても効果が期待できます。この味噌蔵さんは本当にすごいんです」下川さんが熱弁。

味噌汁はカツオと昆布で出汁を取るのが一般的ですが、今回は豚肉とアサリで取り、トマトを入れてアクアパッツア風に。使用した味噌の量は通常の1/4ほどですが、出汁のおかげでうま味をしっかり楽しめると薬師神さんが説明しました。

この味噌汁を飲んだ伊達さんは「人間はおいしすぎるものを食べると無口になりますね。出汁のうま味が一般的なものとは異なりますし、トマトが入っていることにも衝撃を受けました。大きいどんぶりで飲みたいくらいおいしかったです」と感想を述べました。

身体を「調えること」と「整えること」をテーマにパネルトーク

一汁一菜の食事レポート後はパネルトークに。トークテーマの設定について、薬師神さんは次のように語りました。

「最近、サウナブームや腸活ブームで『整った』という言葉をよく耳にします。それはどういう状態なのかを考えたのがきっかけでした。料理人にとって「調う」という漢字は、「調理」や「調味」のように、よりおいしくするために使います。「整える」は体がいい状態ではないときに使います。異なる業界で活躍するお二人は、それぞれ整えるために何をしているのかお伺いしたいと思いました」(薬師神さん)

薬師神さんの質問に対する伊達さんの回答には、アスリートらしさが表れていました。

「私は朝目覚めたときから整え始めています。現役時代は、まさに体が資本でした。同じように8時間寝ても目覚めがいい時、ちょっと悪い時、体が重い時と状態はさまざま。寝ている状態でどの筋肉が張っているか確認し、起きてストレッチをしながら、改めて張りを確認したり、触ったりします。選手時代から続けているルーティーンで、今でも行ってしまいます。自分の体をいい状態に戻そうと自然に考えて動く自分が嫌いではないですね」

朝から晩まで腸内フローラのことを考えているという下川さんは、菌ケアのために3つのことが大切だと言います。

「『整える』と言えば、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)を整えることです。『菌を取り入れる』『いい菌を育てる』『菌の邪魔をしない』の3つが大切です。菌を取り入れるということは、発酵食品を摂るということです。『菌を育てる』ためにはポリフェノールやオメガ3、ほかにも先ほど食べたおむすびに入っていた発芽玄米が有効です。最も重要なのが『菌の邪魔をしない』こと。ストレス、運動不足、睡眠の質の低さも影響します。私の場合、会食続きで食生活が乱れたり運動不足になったりすると、スマホを使って仕事をしながらウォーキングをしています」(下川さん)

トークから派生して、話題は朝ごはんに。飲食店を経営する薬師神さんは夕食の時間が遅いため、朝はさほど空腹感がなく、バナナ1本などエネルギーになるようものを摂るだけにとどめていると話しました。それに対し、下川さんは菌ケアの側面から、伊達さんはアスリートとして次のように語りました。

「仕事柄難しい人もいますが、夕食はなるべく早く取り、朝食をしっかり取る。一日の活動は朝に始まるため、朝昼はしっかり食べます。夜は体を休める時間ですから、夕食は少ないほうがいい。地中海に住んでいる方々はとても健康で、食と健康に関する論文の数でいえば、地中海料理が1位です。彼らは昼に最も多く食べて、夜は少しのパンとチーズ、ワインで終了。『朝は王様のように、昼は貴族のように、夜は貧者のように食べよ』という言葉の通り、朝食から夕食にかけて食べる量を少なくしていくという流れが、実は腸内環境を整えるために有効です」(下川さん)

「基本的に朝食は食べますね。お米は大好きですが、コーヒーを飲まないと一日が始まらないため、必然的に洋食です。1回目の現役のときはたくさん食べていましたが、2回目の現役のときはそれほど食べませんでした。どのみち朝食後、アップが終われば食べ、試合後に食べてといったように、小腹が空いたらすぐ食べるからでしょう。今はパンとコーヒー、それにフルーツくらいですね。薬師神さんがおっしゃったように、夕食が遅くなり、翌朝はお腹が空いていなければコーヒーのみということはあります。食べたら体を動かして、汗をかく。出し入れをしっかりすることを意識して整えています」(伊達さん)

そもそも「調っている・整っている」の指標はどのようなものなのか?回答は三者三様でした。

「『昨日、何を食べましたか?』と聞くと、昨日のことすら思い出せないくらい食事を意識されていない方がほとんどだと思います。体が勝手に整ってくれるよう、食べ合わせや、1週間のうちにメニューがかぶらないようにすることは強く意識していますね」(薬師神さん)

「気分がいいとか、体調がいいとか、『整う』の指標はさまざまですが、体の声に耳を傾け、欲しているものを摂ることにしています。例えば試合後のように疲れていると、肉を無性に食べたくなることがあります。そのなかで、薬師神さんと同じように取り入れるものや、量のバランスを考え、整うように意識はしていますね。例えば昨日は肉だったから、今日はお魚にしようというふうに」(伊達さん)

「私は健康や精神状態がお腹に表れやすい体質です。だから『整っている』状態というのは、お腹が張っていたり、痛かったりせず、存在を意識しなくても良い状態ですね。また、お腹に症状が表れるときは、不安感を抱えているサイン。そうすると決断するときに臆病になるもの。仕事をする上でも、お腹の調子の良しあしを意識しています」(下川さん)

次に話題に上がったテーマが、日々のパフォーマンスを上げるための、メンタルの保ち方です。伊達さんは好きでいたり、情熱を持ったりすること。苦手意識があったり、興味がなかったりすることでも、その中で興味を持てるものを見つけ、考えて向き合う姿勢が、モチベーションにつながっているといいます。

伊達さんの意見に同意を示しつつ、薬師神さんが意識しているのは、「ベストパフォーマンス」よりも「ファインプレー」だといいます。

「先輩シェフである須賀洋介さんに言われて印象に残っているのが、『ファインプレーをし続けろ』という話です。ベストパフォーマンスは自分が最高だと思う状態です。それに対しファインプレーというのは、他人に意識が向いているように思えます。相手の期待や想定を少しでも超えること。それがファインプレーだと思っていますし、常に意識することが大切だと思います」(薬師神さん)

それを受けた伊達さんは、テニスプレーヤー人生を振り返り、次のように語りました。

「自分の限界を決めないこと。失敗を繰り返すことは、パフォーマンスを上げることにつながると思います。自分のテニス人生を振り返っても、ジャンプアップできた前は、必ず怪我をしていたり、スランプに陥っていたりします。失敗することを恐れずに挑戦する精神が、ベストパフォーマンスにもつながっていると思います」

「私は近視眼的になっているときは、判断を誤りがち。しかし『そもそも何のために会社を始めたのか』や『目標のために今何をすべきか』と広い視野で考えると、自ずと進むべき道が見えてきます。ではそうなるために何をするかというと、お風呂に入ってバカみたいな顔をします。湯船に体を沈めて力を抜き、子ども時代に戻ったように惚けます。それをルーティーンにすることで、頭の切り替えをしています」(下川さん)

自身と向き合い、気づきを得るという視点や時間を持つことの大切さに気付かされる有意義なイベントになりました。イベントの終わりには、3名は以下のように総括をしました。

「まったく異なるキャリアを歩んでいるお二人とお話しできて、本当に貴重な時間を過ごせました。自分自身のことを理解していない方が多い中、お二人はとても内省している。僕も自分自身と向き合うことがすごく好きなので、今後も逃げずに向き合い続けることが大切だと実感しました」(下川さん)

「食文化が多様化していて、さまざまなものを食べていますが、アスリートでない今も食事をしっかりと意識しています。なにせ120歳を目指しているので。健康は体と心の二つに言えることです。お二人の話を伺う中で、心の健康を保つためにはバランスの良いライフスタイルが大切だという共通点を発見しました」(伊達さん)

「どうやったら自分が整うのか、理解していただきたい。食べることは体を作ることなので、生きるために一番大切なことです。もしかしたら晩御飯を食べながらこのトークセッションを観ている方もいるかと思います。今まさに食べているものについて考える時間を捻出する。喉を通るものに興味を持っていただけたのであれば、EAT & LEADのテーマ『食べることは生きること』というテーマに沿って、気付きを与えられたと思います」(薬師神さん)

異分野のトップランナー目線で「身体が嬉しい食事」をテーマに、プライベートにまで踏み込んだそれぞれの流儀が垣間見れるトークが繰り広げられました。


こちらにて今回のトークサロンのアーカイブ動画をご視聴いただけます。

第2回「身体が嬉しい食事」 <身体をととのえること -”調える”と”整える”>
>>https://www.youtube.com/watch?v=ZXnkE5PiXLg

第1回のレポートはこちらから
若林洋平さん(Maison Rococo 株式会社 CEO)×行方ひさこさん(ブランディングディレクター)
「ブランド・クリエーション」<ブランドづくりにおける思考のプロセスとは?>
>>アーカイブ動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=OBWwqGdtL98
>>イベントレポートはこちら
https://shokumaru.jp/talk_01_01/

第3回のレポートはこちらから
平野紗季子さん(フードエッセイスト)×梅川壱ノ介さん(舞踊家)
「届ける声・届く声」<アイデンティティの見せ方。相手に伝わる表現とは?>
>>アーカイブ動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=qvvMuBxKzEE
>>イベントレポートはこちら
https://shokumaru.jp/talk_01_03/

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