【2021年、新たな時代に大切にしたいこと】森岡夏生・木村ゆり #安心感のある美味しい料理でみんなを喜ばせたい

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今回ご登場いただくのは、昼間はほかほかのおにぎりと具沢山のお味噌汁、火曜の夜のみおでんを提供する「間借りのごはんや湯気」の共同オーナー、森岡夏生さんと木村ゆりさんです。日本料理の専門学校の同級生で「いつか自分たちのお店を持ちたいね」と話していたお二人。専門学校卒業後はそれぞれの仕事に励んでいましたが、新型コロナウイルス感染拡大による影響を機に、2020年10月に、夜のみBAR営業をしている目黒区不動前の店舗を昼間を中心に間借りすることで、自分たちの店舗をオープン。コロナ禍により飲食業界に厳しい状況が続く中でお店をオープンした理由や、その原動力となる背景、食を通して人々にどんなことを伝えていきたいかについて伺いました。
※本記事は2021年2月に取材を行いました

“コロナ禍だからこそ”の開業

木村さんが料理人になったきっかけは、「病気で食欲を失った祖父に、一からだしをとって、野菜を入れてきれいに盛り付けたそうめんを作った際に、喜んで完食してくれたこと」。その経験から、もっと多くの人に自分の作った料理を食べて喜んでもらいたいという思いが強まり、日本料理を学ぶ専門学校へ進学。卒業後は、料亭の板前を経てケータリングの仕事をしていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、予約は先々まで全てキャンセルに。家庭に出向いて料理をする仕事もありましたが、半分ほどに減ってしまったそうです。そのため「料理でできることを考えなくちゃ」と、森岡さんと連絡を取り合っていたと言います。

森岡さんは、祖父が割烹店を営んでいたそうで、毎年お正月に祖父が作ってくれる、家族みんなが笑顔になるおせち料理に感動し、自分もそんな料理を作りたい、と料理の世界へ。和食店を中心に料理人としての経験を積んだ後、カフェで勤務していたところ、コロナ禍で勤務先が閉店。カフェという業態がもともとの希望と違ったこともあり「やっぱり和食を作りたい」と思ったのだそう。「木村さんと話していて、『厳しい状況だけど、今なら一緒にできるね』という話になり、思い切って『やってみよう』となりました」。そして2020年5月、二人で開業に向けて動き出したそうです。

“間借り”のシステムを利用して念願のお店をオープン

間貸ししたい人と間借りしたい人を繋げるマッチングサイトを利用して、今の場所を見つけたお二人。「コロナ禍での開業は心配でしたが、間借りという形なので、やりたいことをやってみようという話に。初めてお店を開くので、普通に開業する10%くらいの資金で開業できたのは有難かったです」と木村さん。他にも同じような物件はあったそうなのですが「外出が積極的にできない中だからこそ、住宅街の不動前を選びました」と森岡さん。

将来的には、お客さんとおしゃべりしながらお酒を飲んだりおつまみを作ったりできる居酒屋のようなお店づくりも考えているそうですが、今はランチの方に需要があると考え、おむすびランチを提供。その結果「需要があることを実感しています。飲食業界は厳しい状況が続きますが、考え方・やり方次第で、お客様のためになる様々な価値の提供が可能だと確信しました」。

美味しいごはんを通してほっとできる場所と安心感を届けたい

かわいい小皿を使った小ぶりなポーション、おでんでしっぽりお酒が飲めるなど、ひとりでも訪れやすい店作りをしているおふたり人。気軽に会食できない今だからこそ、家族との団欒や、ひとりでのおうち時間を楽しめるようにテイクアウトも充実させています。

メニューの要となるお米は、可能な限り良い状態でお客様にお米を味わってもらうため様々な工夫をしている新潟県「越後ファーム」のものを使用。越後ファームでは、受注があってからモミ摺りして玄米にし、翌日に農産物検査と精米を実施してから出荷することや、機械式冷蔵貯蔵庫に比べて地球にやさしく、米の鮮度管理能力にも優れている、雪冷熱を生かした雪国ならではの米貯蔵システム「雪蔵貯蔵」方式によって鮮度管理の徹底を図っているそう。他のお米と比べて、「おにぎりにして冷めてもおいしく、テイクアウトに向いている」と木村さん。梅干しや蕗味噌など手作りの具材もあり、おにぎりを彩ります。

女性ひとりで来店する方も多いそうで、「日本の伝統食であるおにぎりとお味噌汁、出汁を一から引いた栄養バランスの良い料理だからこそ、心理的な安心感をもたらすのかもしれません。ちょっと家事に疲れた時、仕事に疲れた時に来ていただけるのが嬉しい」と森岡さん。そして「湯気」という店名には、「銭湯がすごく好きなので、お湯に浸かっている気分のようなお店にしたい。コロナ禍だからこそほっとできる場所を作りたいという想いを込めました」と続けます。

将来は「湯気」の“出張”でみんなに喜んでもらいたい

今後のことを伺うと、「先のことを想像するのは難しいけれど、何らかの形でこれからもずっと食を提供することに携わっていたい」とお二人。そして「私たちはお店を持つことを第一のゴールとして掲げていましたが、間借りというシステムにメリットを感じていまして。場所を変えて、また間借り、出張というスタイルで全国を転々とするのもいいかなと。様々な土地で色々な方やその土地土地の食材と出会って、食を通じて“安心感”を届けていけたら」。

料理を作ることが好き。料理を通じて感動した、誰かが喜んでくれたという原体験が今の情熱につながっているお二人。食がもたらす体験が、どんな状況下でも前進できるエネルギー源になり、彼女たちが提供する食の体験もまた、誰かの背中を押している。食がもたらす幸せの連鎖を垣間見られたインタビューでした。

 

Profile)
森岡夏生(もりおかなつき)・木村ゆり(きむらゆり)
「間借りのごはんや湯気」共同オーナーシェフ。ともに1994年生まれ。割烹店を営んでいた祖父の背中を見て育った森岡さん。祖父が作るような豪華なおせち料理を作ってみたいと思うようになり、高校の調理科を卒業後、日本料理の専門学校へ。一方の木村さんは、病気で食欲を失った祖父に、だしからとったそうめんに野菜を入れてきれいに盛り付けたところ、喜んで完食してくれたことをきっかけに料理の道へ。そして高校の食物科を出て、日本料理の専門学校に進んだ先で、お互いが出会う。店を持つ夢を抱く二人は、2020年10月に間借りの飲食店をオープン。料理は木村さん、接客は森岡さんが担当。2021年3月、新宿伊勢丹で取引先の越後ファームとともにイベント出店を果たす。


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写真/大橋マサヒロ 文/石井かつこ