みやこ下地島空港ターミナル開業記念企画 脇屋シェフが宮古島の“おいしい”を訪ねる「Miyako Emotional Trip」レポート④
『マングローブが生い茂る入り江で、
豊かな生態系を学び、蟹漁を体験
入り江の王様「ガザミガニ」で脇屋シェフによる
至極のチリソース料理も』
宮古島の西、伊良部島と下地島の間に、マングローブが生い茂る入り江があります。この入り江のことを「小さな頃から遊び慣れた庭のようなもの」と語る吉浜崇浩さんは、その地形や生息する生き物、植物など、生態系を知り尽くしたスペシャリスト。
「入り江の淀みがプランクトンを生み、それが穏やかに沖に流れて、熱帯魚や蟹を形成する。熱帯魚は死んだサンゴを食べて砂を作ってくれます。ところが今は、どんどん砂が減少している状況。美しい島の自然を守らなくては、と立ち上がりました」
マングローブには、大きな渡り蟹「ガザミガニ」をはじめ、多種にわたる蟹が生息。そんな蟹と人が共存できる理想的な自然環境を守り続けたいと、蟹を育てて捕るという養殖・漁業に取り組んでいます。さらには「蟹目線で伝える」をモットーに、マングローブの生態を観察し、蟹漁を体験するツアーも実施。ひたすら蟹に愛を注ぐ活動から、今では「蟹蔵(かにぞう)」の名で親しまれるようになりました。
脇屋シェフは、その蟹蔵さんと一緒にマングローブ散策ツアーへ。小さな蟹や魚が隠れているという砂穴を掘り起こしたり、木漏れ日の下、ひざ下まで浸かる水の中を歩いたり。「いろんな生き物が助け合って共存している世界。こんなふうに手つかずの自然を感じられるのは初めて」と目を細めます。途中、蟹蔵さんが仕掛けておいた罠の蟹かごをシェフが引き揚げる場面も。かかっていたのは、小さな2匹。残念ながら、本命のガザミガニはゲットできませんでしたが、「やらせで罠に仕込んでおかないところが蟹蔵さんの素敵なところだね」と笑いました。
散策後は、事前に捕れたガザミガニを使った料理でランチタイム。なんと脇屋シェフが東京から持参した特製チリソースで蟹チリを調理してくれることに。台所で包丁をふり上げ、大きな蟹を華麗にさばいていく姿に一同惚れ惚れ。蟹蔵さんも、きれいにカットされた蟹を見て、「いつもよりおいしく見える」とぽろり。完成したのは、スイートチリ、タイ風カレーチリの2種類。蟹蔵さんのご家族が作ってくれた蒸し蟹や蟹出汁そうめんなども並ぶ、蟹づくしの食卓を囲みました。
「ごはんがすすむチリソース。無言で夢中で食べてしまいます(笑)」という蟹蔵さんに、蒸し蟹を食べて「自然の旨みがたまらない」と、脇屋シェフ。「泡盛を飲ませて“酔っ払い蟹”にしたらおいしそう」という新しいアイデアも。真っ青な海と空をバックにした絶景ロケーションでいただく自然の美味。島の豊かな恵みを五感で感じる贅沢な時間となりました。
(写真/大城亘(camenokostudio) 文/岡部徳枝)