シェフと一緒に食材探し 渡邉シェフと行く千葉の野菜(2)
お母さんの愛称で親しまれる芦田恵子さん。野菜ソムリエの資格を持ってます
『AWキッチン』には、スタッフが畑に出向き、生産者と一緒に草むしりや稲刈りなど農作業のお手伝いをする”畑の日”が月に一度に設けられている。
この日も、渡邉さんだけでなく、各店舗の料理長や若いスタッフが、畑で芦田さんとともに汗を流していたが、そこには渡邉さんのこんな思いがある。
「スタッフが増えてきて僕がもっとも悩んだのが、どのように人材教育をしていくか?ということ。サービスの講習など、いろんなことを試したんですが、ほとんど効果がありませんでした。じゃあどうしようかと考えた末に出た答えが、”畑に行く時間を作る”ということだったんです。
この日仕入れるマーボーナスを念入りにチェックする桜木料理長
畑で農家さんにお会いすれば、何のために仕事をするのか? という答えを見つけられるんじゃないか、そう思ったんです。畑で農家さんが頑張って野菜を作ってくれている姿を見れば、『どうやってそれをお客様に伝えようか?』と考えるし、それを伝えたお客様に『美味しいね!』とか『このお店に来ると次の日、体調がいいんだ』って言っていただけると、スタッフも仕事の意義が分かってくるじゃないですか。それを頭で考えさせるんじゃなく、まずは体験させることから始めたいと思ったんです」
芦田家の愛猫「マサムネ」。人懐っこく、撮影にも気軽に応じてくれました。
今回同行したスタッフの皆さんは、全員、芦田さんのご両親を「お父さん」「お母さん」と呼ぶ。また、丸の内店の桜木武士料理長に「ずいぶん日焼けしてますね」と声をかけると、「畑で焼けました!」と威勢のいい返事が返ってきた。若いスタッフの中には、芦田さんが飼っている猫を「マサムネ」と名前で呼んで可愛がる人もいる。
『AWキッチン』で提供される料理には、素材ひとつひとつに物語がある。そして、スタッフ全員がその物語の登場人物なのである。だからこそ、それがお客さんにも伝わり、多くの人に感動を伝えていくのだろう。
さて、最後に渡邉さんに、今後の展望を伺った。
「実は芦田農園さんが、僕たちが自由に使える畑を用意してくださっているんです。その畑にうちのお客さんをお連れして、一緒にブロッコリーの苗を植えるところから収穫までを体験してもらったり、いろいろやらせてもらっていますが、今後はより積極的に食育活動などに活かしていきたいです」
レストランのテーブルで出来上がった料理を味わってもらうだけでなく、お客さんに野菜作りの苦労や喜びから味わってもらう…。実現のためにはまだまだ乗り越えなければならない壁はたくさんある。渡邉さんは「芦田さんが一歩も二歩も先を行ってくれているのに、僕たちが全然追いつけない(笑)」と苦笑を浮かべたが、その視線は、確実に次のステップを見据えている。
専門学校『レコールバンタン』の生徒も同行。渡邉さんは未来の料理人の育成にも励んでいる(左)、畑で獲りたてを口にする生徒の皆さん。「美味しい~!」「甘い~!」と歓喜の声が(右)
新鮮な野菜や果物を生産者から直接購入できる直売所が、近年注目されているが、『ほのぼの芦田農園』が営む直売所は “直売所の日本一を決めよう”という「直売所甲子園」で優秀賞の「日本一あたたかい直売所」を受賞している。芦田さんの直売所があるのは、千葉県白井市にある白井駅の、いわゆる “駅ナカ”。開店時は、通勤客に野菜を販売することを目的としていたが、美味しい野菜が評判を呼び、現在は通勤客以外のお客さんも多いとか。お店に立つ芦田恵子さんは、「日本一小さくて営業時間の短いお店です……」とどこまでも謙虚だが、そんなお人柄こそが人気の最大の秘訣なのだろうと、今回の取材で実感しました。
〒270-1422 千葉県白井市復1264
☎047-492-0400
東京駅直結、新丸ビル5Fにある人気パスタハウス『AWキッチン丸の内店』。ランチは野菜を使った前菜とデザートがブッフェスタイル、パスタとメインディッシュを選べるコース。ディナーは、アラカルトと厳選お野菜コースをご用意。渡邉明シェフが信頼する契約農家から届く新鮮野菜を、存分にお楽しみください。
【PASTA HOUSE AWkitchen TOKYO(丸の内店)】
〒100-6505 東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング5F
☎03-5224-8071
営業時間:
ランチ 11:00~15:30(ラストオーダー14:30)
ディナー 17:00~02:00(ラストオーダー01:00)
日・祝 17:00~22:00(ラストオーダー21:00)
定休日:不定休 (新丸ビルに準ずる)
http://www.eat-walk.com