マルシェレポート06 秋本番を迎え、日本はまさに 「美食列島」となった。
10月の最終週に行われた丸の内マルシェには、日本各地から秋の味覚が勢ぞろい。その土地ならではの山の幸、海の幸を求めて多くの家族連れも集まり、行列のできるブースも数多く見受けられた。
三重県名張市の出店ブースでは、休耕田で菜の花を育て、その種から作った「菜種油」に注目が集まっていた。
実は、伊賀市がこのマルシェに参加したのも、食育丸の内の活動がきっかけだった。今年の春、丸の内シェフズクラブに所属するドミニク・コルビシェフが訪れた。生産者を激励し、新しい伊賀市ならではの新しい加工品のレシピを提供することが目的の訪問だった。
伊賀牛をはじめ、新鮮な地元の野菜に舌鼓をうったシェフが、インスピレーションで作り上げたのが「菜の花のマスタード」 。伊賀牛のステーキのソースとしてもよく合うこのソースは、菜種油の精製の際に多量に出る油のしぼりカスを使ったもの。ふだんは捨ててしまう「油かす」が、お肉にも野菜にも合う一級品のソースに生まれ変わってしまった。この「コルビマジック」に地元の人が大感激し、そのご縁で今回の出品に至ったのだ。
ブーズでは、東日本大震災の影響で、2011年度産の新米が品薄となっていることもあり、名張平野で収穫されたばかりのコシヒカリを買い求める人の姿が多く見られた。「伊賀米」はモチモチとした食感と、噛むほどに口の中であふれる甘みが特徴。全国でも有数のブランド米を、格安の値段で手に入れることができるのもマルシェならではの楽しみである。
各家庭で大量に処分される古新聞を包装資材としてリサイクルした「四万十川方式のリサイクルバック」で一躍有名になった高知県高岡郡四万十町の道の駅「四万十とおわ」。四国を代表する大河四万十川の中流にあるこの道の駅では、全国でもいち早く地元の野菜や、四万十川でとれる天然うなぎやツガニなどを使った料理や加工品を開発。道の駅内に併設された食堂では、ブッフェスタイルでそれら土地の味が手軽に楽しめるとあって休日には県内外から多くの観光客が集まり、全国的に有名な人気スポットに成長した。
海蟹よりも美味しいと定評のあるツガニや天然うなぎなど。地元の漁協を中心に、漁師が釣り上げたものが真空パックで全国どこにでも郵送できるという仕組みだ。季節ごとに四万十川から食材が届けられる楽しみを想像するだけでも楽しくなる。もちろん、古新聞で使った紙バックも人気が高く、早速その場でチャレンジする家族連れの姿もあった。
これから、冬にむかっておいしくなるのが日本海の幸。中でも福井県はこれから越前ガニ一色となる。そんな福井県のブースでは、やはり冬の味覚の宣伝に余念がない。越前ガニ以外にも、せいごがに、甘エビ、若狭ふぐ、若狭かき。また、若狭湾でとれたサバを丸ごと一匹焼き上げた「焼き鯖の姿寿司」や、江戸時代から若狭の保存食として有名な「へしこ」と呼ばれるサバやイワシ、ふぐの粕漬けもこれからの季節美味しくなるそうだ。
今回のマルシェでは、関東ではなかなか手に入らない新鮮な野菜、魚類に人気が集まった。また、丸の内シェフズクラブのシェフがプロデュースした加工品なども多数登場。これから秋も深まり、来る冬に向けて、日本列島は「美食列島」となる。そして、首都圏近郊だけでなく、日本各地から集まるマルシェがきっかけで、次の休日の旅行先が見つかるかもしれない。各県のブースの人とお友達になって、実際に現地に行った時のとっておきの情報をゲットする家族連れの姿が微笑ましかった。