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イグレック丸の内 野菜と対話する料理フェアー ?野菜をサイエンスする?

「野菜と対話する料理フェアー」と銘打った今回のテーマは、生産者と料理人のコラボレーション。「イグレック丸の内」オーナーシェフ山口浩氏と、レストラン向けに有機野菜を卸している「築地産直ファーム」がタッグを組み、「食育丸の内」のコンセプトである「食の安心・安全」を追求した有機野菜の力を最大限に引き出したフレンチのフルコースを提案してくれました。

有機野菜(左)、イグレック丸の内(右)佐藤友洋氏と山口氏

 まず最初に「イグレック丸の内」のオーナーシェフ山口氏と、レストラン向けに有機野菜を卸している「築地産直ファーム」の代表取締役 佐藤友洋氏がご挨拶。食の安心・安全や環境共生、フードマイレージなどの問題や、有機野菜の成り立ちについて、とても有意義なお話を伺えました。自らも土壌作りから有機野菜栽培に携わる佐藤氏は、すぐに役立つ美味しい野菜の見分け方(◎下記参照)についても分かりやすくレクチャーしてくれました。

美味しい野菜の見分け方

野菜

【ほうれん草や小松菜などの葉物類】
色が濃いほど栄養があって美味しいと思われがちですが、色が濃く黒っぽいものは、窒素成分が多いので、えぐみを感じます。大きさは40~50cmに成長したものの方が、小さなものより栄養価が高く食味も良いといえます。

【大根】
葉っぱの茎を折った時、ポキンと折れるものは栄養価が比較的高く、しんなりして折れにくいものはカルシウムなどの栄養価が低い傾向があります。

【トマト】
水の中に入れた時、水に浮くトマトより、沈むトマトの方が細胞がしっかりしていて味も良く、栄養価も充実しています。

お料理

 各テーブルには、にんじん、小松菜、葉玉ネギ、フェンネル、プチトマト、日向夏(ひゅうがなつ)など、この日のメニューにもふんだんに使われてる有機野菜がディスプレイ。いずれも、「築地産直ファーム」が扱う関東近郊の生産者たちが手塩にかけて育てた野菜たちです。生産者の顔が見えるこだわりの有機野菜は、色つやも香りも凛と生命力豊かで力強く、これから運ばれてくる料理への期待も高まります。

野菜

 メニューは多彩な有機野菜の食感や食味を最大限に堪能できるよう、すべて異なる手法で調理。アミューズには生野菜が、オードブルにはポトフ仕立ての茹で野菜が、魚料理には有機オリーブオイル漬けの野菜が登場しました。その一品一品の料理を市川シェフが分かりやすく解説。調理法によって異なる野菜の味に、参加者からも「同じ素材でも印象がまったく変わるのが面白い」「食べ比べることで、それぞれの野菜が持つ奥深さを実感できた」という感想が聞かれました。

シェフたち

 「メインの肉料理には、味わい深い仔羊のローストと共に、赤ピーマン、トマト、セロリ、インゲン、パープルキャロット、スナップエンドウなど、個性豊かな有機野菜がたっぷりサンドされたパイ包みが登場。野菜の種類やカットの仕方、重ねる順番なども、市川シェフが緻密に計算。蒸し焼きになった野菜の凝縮されたうま味や食感の違いが、口中で重層的なハーモニーを奏でます。

シェフたちデザート

 デザートは栃乙女のショートケーキに、スナップエンドウがトッピングされた枝豆のプディング、桜の花を塩漬けにしたアイスなど、フレッシュな野菜や果実の風味が楽しめる趣向に。

シェフたちも各テーブルを回りながら、プチフールをワゴンサービス。有機ネギのサブレや、有機ゴボウのフロランタンなど、野菜をあしらったスイーツも今回特別に作られたもの。ほかにもパッションフルーツのマカロンや、ルビーグレープフルーツのコンフィチュールを添えたヨーグルト風味のチーズケーキなど、小さなスイーツ一つ一つにも食材への繊細な思いが息づいています。

 最後に、丸の内シェフズクラブ会長の服部幸應氏も会場に駆けつけご挨拶。独特のエスプリを交えながら「食育丸の内」の輪がさらに広がるよう抱負を語ってくださいました。お開き後は、有機ほうれん草の風味を生かした特製キッシュが参加者の手土産に渡されました。参加されたお客様からは「構えていただくフレンチではなく、リラックスして楽しめた」「生産者を守ることは美味しくて安全な食を守ることなのだと実感した」という感想が多く聞かれました。生産者とシェフのこだわりが詰まった今回のコラボレーションディナーは、「食育丸の内」のコンセプトである食の安心・安全や、生産者・レストラン・消費者の理想的な関係性を考えるうえで、かけがえのない貴重な機会となりました。

山口シェフと服部さん(左)、シェフと一緒に記念撮影(右)

「有機野菜の力強さ」と「うま味」が詰まったコース料理のご紹介

【フレッシュ有機野菜のクリュディテ、トリュフの塩で】

野菜本来の食感や香りを最大限に活かしたアミューズ

【強い有機野菜とフォアグラ、丸鶏コンソメのポトフ仕立て】

6時間以上じっくり煮込んだ丸鶏と野菜が見事に共鳴しあった前菜

【市場からのお魚、色とりどり野菜の香味オイル アロマット】

サワラと有機春キャベツのソースに日向夏のアロマが絶妙

【仔羊のローストとたっぷり野菜のタルト】

食味も食感も異なる数種の彩り豊かな有機野菜が詰まったパイ包みが白眉

枝豆やスナップエンドウ、桜の花びら、栃乙女など、フレッシュな野菜や果実があしらわれたデザート

デザートブッフェにも、有機ネギや有機ゴボウなど、野菜をあしらった多彩な特製スイーツが登場

イグレック丸の内 オーナーシェフ 山口浩氏「野菜との対話」をテーマに、野菜本来の味わいを追求しました。

山口浩氏

 私はフランスのブルゴーニュ地方にあるレストラン「ルレ・ベルナール・ロワゾー」で、師となるロワゾー氏に会い、対話の料理ということを学びました。料理は何より食材の力が9割を占めると思うので、今回のディナーは「野菜との対話」をテーマに、野菜本来の味わいを引き出し、野菜の個性と個性が共鳴しあうメニューを追求しました。料理を作る際はまず「塩み」「甘み」「苦味」「酸味」「うま味」の五味を基本に考えていますが、美味しさを感じるには風味や食感につながるコクや香り、音も大切になってきます。今回のメニューにはそうした要素も豊富に詰め込んだつもりです。
かつてフランス料理というと、素材もフランス産にこだわるのが通常でしたが、今はフードマイレージや地球温暖化の問題も考慮し、国産食材への意識が高まっています。とはいえ、日本の生産者はまだまだフランスのように法律で守られてはいません。私は生産者に一番近い立場にいる者として、生産者を守りながら、安心安全で美味しい食材を提供したいと思っています。今回は初めての試みでしたが、生産者もお客様も互いの顔が見えるので安心できたのではないかと思います。これをきっかけに、今後も生産者とのコミュニケーションを深め、お客様との橋渡しをしていければ幸いです。

イグレック丸の内 シェフ 市川健二氏イベントをきっかけに、生産者や食材への意識が一段と向上しました。

市川健二氏

 今回のスペシャルメニューを完成させるためには、納得がいくまで何度も試行錯誤を繰り返しました。細部まで計算通りに仕上げるために、スタッフには絵入りの手書きブセット(レシピ)を渡し、野菜のカットの仕方やミリ単位のサイズまで細かく指定しました。特にこだわったのは、メインの「仔羊のローストとたっぷり野菜のタルト」のパイ包みです。最初に舌にあたる食感や、香りがどう鼻に抜けていくかといったことも考慮して、具材を変えながら試食を繰り返しました。 こうしたイベントがあると、生産の現場を直接見たり、生産者との密なコミュニケーションを通して、食材に対する意識が一層高まるので非常に刺激になります。今後もこうしたイベントを通して、その食材の良さをもっと深く知り、その食材を使うこだわりをお客様にアピールしていく機会が持てればと思います。

築地産直ファーム 代表取締役 佐藤友洋氏 畑も生きもの。野菜にストレスをかけずに育てることが大切。

佐藤友洋氏

 本日は、有機野菜を用いたイベントに参加することができ、大変光栄です。私は5年前よりレストラン向け卸売「築地産直ファーム」を始め、シェフのみなさまと相談しながら、美味しくて安全な有機野菜作りを行っています。 有機野菜とは、有機質の肥料を使うことが語源となっています。無機物である化学肥料や農薬を使うと、土中の有機物が不足し、環境を悪化させます。しかし有機肥料を使えば、微生物が有機物を分解してくれるので、土中の環境を守れます。ただし、有機肥料だからといって、たくさん使えばいいというわけではありません。微生物が息づく畑の中も一つの生きものなのです。いかに畑の土壌バランスを良くし、野菜にストレスのかからない状態で育てるかが大切になってきます。
私も本格的な野菜栽培を始めてから3~4年は土壌バランスが安定していなかったため、まったく収穫できない期間がありましたが、今では収穫物がすべて有機JAS認定を受けています。今日は各ファームの生産者たちが大切に育てた多彩な有機野菜を、美味しいフランス料理として大勢のお客様に召し上がっていただくことができ、大変うれしく思います。

【築地産直ファーム】
http://sanchoku-farm.com/

丸の内シェフズクラブ会長 服部幸應氏

服部幸應氏

 最近は本物のフランス料理が少なくなってきていますが、山口シェフはフランス人から指名がかかるほど、本物のフランス料理を極めている方だと思います。彼の師であるベルナール・ロワゾー氏は、油のベタベタしたソースではなく、フランス料理の基本を踏まえつつ、現代的に解釈した「水のソース」「水の料理」を創られた方です。それを継承する山口シェフにはぜひ、丸の内シェフズクラブをさらに盛り上げていっていただきたいと思います。このような食育のためのフィールドを提供してくださっている三菱地所さんには深く感謝申しあげます。
今後とも、「食育丸の内」の活動の輪がますます広がり、さらに大きく発展していくよう尽力していきたいと思います。

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