【2021年、新たな時代に大切にしたいこと】ブルネロ クチネリ ジャパン代表 宮川ダビデ #幸せのチェーン

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各分野のキーパーソンにコロナ禍で生まれた変化や思考をシェアしてもらうことで、ニューノーマルな時代を私たちがどう生きていけばいいのか、気づきやヒント、指針をもらう特集【2021年、新たな時代に大切にしたいこと】。

今回ご登場いただくのは、ブルネロ クチネリ ジャパン株式会社 代表取締役社長の宮川ダビデさん。「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」は最高級カシミアニットを中心としたイタリアンブランドとして知られ、創業者のブルネロ・クチネリ氏が1978年にペルージャ近郊で創業。現在、サステナビリティに関心が集まり、本当に持続可能なビジネスとは何かが問われている中で、ブランドの経営哲学に掲げる「Humanistic Capitalism(人間主義的資本主義)」が大きく注目されています。「人間主義的資本主義」とは、生産を担う人たちの労働環境はもちろん、関わる人たちの健康や福祉をはじめとした経済的な尊厳を維持し、企業が立地する地域の将来まで視野に入れ、利益を正しく還元・循環させること。そんな哲学を掲げるブルネロ クチネリ社の宮川さんに、コロナ禍を経験して起きた意識の変化や、改めて大切に思ったこと、人々がこれからの時代を生きていく上で大事にすべき価値観などについて伺いました。
※本記事は2021年1月に取材を行いました

ネガティブな時でも、ポジティブなメッセージを発信

「ブルネロ クチネリ ジャパン」の代表を務める宮川ダビデさん。ご自身について、「僕はあまりネガティブなことは考えたくないし、いつもポジティブでいたい。だからどんな時にも“良いこと”を考えています」と話します。新型コロナウイルス一色だった2020年についても、「大変な時に働いてくれるスタッフたちに手紙を書いたり、手に入ったマスクをスタッフだけでなくその家族にも配ったり。会社に出入りする配送業者のスタッフの方にエナジードリンクをお渡ししたりもしました」。

それは、“幸せのチェーン”だと考えているとのこと。「良いことをしてもらったら、次は自分が誰かに良いことを返さなくちゃ。だから新型コロナウイルスで重い気分になっている時でも自分にできることをして、少しでもみんながポジティブに変われたら」と宮川さん。「『ブルネロ クチネリ』のビジネスは10年20年先だけでなく、100年、200年先を見据えています。成果が出るのはずっと後かもしれませんが、今が大変でもポジティブなメッセージを発信し続けることが大切なのです」。社内や店舗でのコミュニケーションも、ソーシャルディスタンスを保たねばならず、マスクが手放せない現在、アイコンタクトを大事にしているそうです

身近な人とのつながりが、次の頑張りになる

宮川さんは、昨年は友人ともほとんど対面では会わず、会社も一時期ローテーション勤務だったといいます。「テレワークやオンラインで仕事をしていて感じたのは、コロナの影響で世界的にみんな寂しくなったのではないかということ。もともと私たちの世界は一人じゃないのに、孤独を感じてしまっている。僕もたまにしか電話しなかった友人と、オンラインでつながることが増えました」。そのことによって、普段そばにいる人たちを改めて大切に感じたのだとか。「人は人とつながることで、“これからもっと頑張れる”と前向きになれる」と語ります。

みんなをハッピーにするブランドの経営哲学

「『ブルネロ クチネリ』のフィロソフィは“Humanistic Capitalism(人間主義的資本主義)”。クチネリ氏は、地域を見直し、地域の職人たちがちゃんと仕事を続けられるように利益をきちんと還元しよう、正しいビジネスでスタッフ同士リスペクトしながら仕事をしよう、と言っています。考えられないかもしれませんが、350ある工場は基本的にすべて小さな工房。職人の働く環境や待遇が働く人を尊重したものであるかどうか、細かくチェックしています」と宮川さん。大きな工場へ委託してしまえばコストが下げられますが、それをしないのがHumanistic Capitalism。職人のため、面倒でコストがかかっても、利益をきちんと出してみんなをハッピーにするということが、非常に重要なのだそうです。

これからの時代にカギとなるのは「地域への利益還元」

「企業なのでプロフィットを追求するのは当然ですが、ひとり占めしてはいけません。会社のスタッフはもちろん、地域の職人たちをはじめとするパートナーたちに、そのプロフィットをちゃんと還元しなければ。成功したい、お金持ちになりたいといった野心は成長のために必要ですが、それだけでは10年、100年と継続するビジネスはできません。誰かだけが得をするのではなく、利益はちゃんと地域に還元する。そういうことは日本においても世界においても非常に大事」と語る宮川さんは、クチネリ氏の考えを日本でも実践し、次世代を支える若いビジネスパーソンにも伝えようとしています。「以前、東日本大震災で被害にあった若者に新しいチャレンジをしてもらうべく、ブルネロ クチネリの本社があるソロメオに連れて行き、地域の取り組みなども含めて本社で研修を受けてもらう機会がありました。その中のひとりが現在も『ブルネロ クチネリ』で働いてくれています。彼はちゃんと仲間やパートナーに対してリスペクトの気持ちをもっている」。その気持ちがあれば、きっと良いビジネスができ、成功もできると宮川さん。「1年か2年後になりそうなのですが、経営者やビジネスマン、あるいは大学生、高校生など次世代を担う若者にも私たちのフィロソフィを体験してもらうプロジェクトを予定しています。本社のあるソロメオで『ブルネロ クチネリ』の取り組みを実際に見てもらいたいのです」。さらに、3月に表参道にオープン予定の店舗でも今後、自ら足を運んだ伝統工芸の作家さんやアーティストの作品を紹介するワークショップを開いていくそうです。宮川さんは「クラフツマンシップを大事にして、日本の職人たちもサポートしていきたい」と語ります。様々なプロジェクトが進行中ですが、「やりたかったけれどやらなかった、といった後悔はあまり好きじゃない」という宮川さんは、チャリティーをはじめ、計画中のアイデアがまだまだたくさんあるそう。

人間が幸福を感じながらも持続可能な地域・社会・地球を実現していくためには、幸せのチェーンをひとりひとりがつないでいくことが大切であると学んだ今回のインタビュー。例えば、マスクの上からでもわかるくらいの笑顔で挨拶をする等、ひとりひとりができる簡単で小さな行動も、幸せのチェーンがつながっていき、持続可能な明るい未来を築くことにつながるかもしれません。

Profile)
宮川ダビデ (みやかわ・だびで)
イタリア・トリノ生まれ。イタリア人の母と日本人の父(世界的カーデザイナーのジョルジェット・ジウジアーロとともにイタルデザインを設立した宮川秀之氏)をもつ。1995年に来日。イタリアの住宅機器インポート事業立ち上げに関わったあと、F1やサッカーのスポーツマーチャンダイジング&ライセンス事業会社へ。その後、「セルジオ・タッキーニ ジャパン」、「トラサルディ ジャパン」社長を経て、2015年4月より現職に就任。

「ブルネロ クチネリ ジャパン」
https://www.brunellocucinelli.com/


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写真/竹内洋平 文/石井かつこ