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EAT&LEADトークサロン 第9回「個性豊かなシェフたちの未来のありたい姿の描き方」開催レポート

8月20日(火)に、第9回「EAT&LEADトークサロン-食べることから学ぶ、生きる力-」を開催しました。

イベント前半には、パネルトークを実施。「unis」エグゼクティブシェフ 薬師神 陸さん、「PIZZELIA GTALIA DA FILIPPO」オーナーシェフ 岩澤 正和さん、「FARO」シェフパティシエ 加藤 峰子さんという、丸の内シェフズクラブのメンバーとしても活動中の3名をゲストに迎え、「個性豊かなシェフたちの未来のありたい姿の描き方」をテーマにトークを繰り広げました。

イベント後半は、交流会の時間。シェフたちがつくったオリジナルピザをいただきながら、ゲスト・参加者が一体となって会話を楽しみました。

丸の内エリアのワーカーを中心とした多くの方にご参加いただいて、活気に満ちたイベントとなった当日の開催レポートをお送りします。

パネルトークのアーカイブ動画公開

ゲスト プロフィール

 unis
エグゼクティブシェフ
薬師神 陸さん

2014年に「SUGALABO」の立ち上げから参加し、須賀洋介シェフの右腕として同店の人気を支えた。2020年、虎ノ門ヒルズにレストラン「unis」と食のインキュベーション施設「Social Kitchen Toranomon」をオープン

 PIZZELIA GTALIA DA FILIPPO
オーナーシェフ
岩澤 正和さん

2006年、ナポリピッツァ世界大会に挑戦し最優秀賞を受賞、“世界一”の称号を得る。2012年に独立し、練馬区石神井公園に「PIZZERIA GTALIA DA FILIPPO」をオープン。最近は地域連携や医療従事者支援、食の開発など様々なプロジェクトを立ち上げている。

 FARO
シェフパティシエ
加藤 峰子さん

名立たるミシュラン星獲得店にてペイストリーシェフを務める。「FARO」では日本の自然や和のハーブをリスペクトしたデザートを提案。2024年3月に「アジアのベストレストラン50」にて、「アジアのベスト・ペイストリー・シェフ賞」を受賞。

イベント前半:パネルトーク「個性豊かなシェフたちの未来のありたい姿の描き方」

 パネルトークがスタートし、1つ目のテーマとして投げられた質問は「お店の運営と社会に対して取り組みたいこと、日々どんな風に考えている?」。日々のレストランの仕事だけでなく、それ以外の活動を並行して行うために、3名のシェフたちはどのように取り組んでいるのでしょうか?

 「本業とそれ以外の活動を区別していない」と話すのは、薬師神さん。
「オンとオフも境目がなくて、普段の生活の一部にレストランがある感覚です。私の場合、レストランの営業は水曜から土曜までの4日間。火曜はラボでいろんな開発をしたり、いろんなプロジェクトのことを考えたりしていますが、その日もレストランを運営するのと同じくらい大切な時間です」。薬師神さんは、レストランの外にいる時間の方がインプットできる量が多い、といいます。

 岩澤さんは「週2日の休みには、地方に行く機会が多い」そうです。
「以前は海外に出た方が学ぶことが多いだろうと考えていましたが、コロナ禍を経て、日本各地の生産者さんをめぐるようになりました。すると、日本の生産者さんは世界のお手本になるような取り組みを多々やっていて、日本独自の素晴らしい文化があることが見えてきたんです。それらが衰退してしまわないように、今はしっかり日本と向き合い、いい方向につなげていくことを目指して活動しています」

 「今、これまでの人生の中で一番忙しい時期」と話す加藤さんは、その理由を「1皿に自分を表現するような、自己満足で『食』をつくることはやめたから」だといいます。

 「時間的には昔から1日16時間くらい働いていましたが、それは1つの作業に没頭する忙しさでした。今は体系的にいろんなものをつなぎ、新たに構築していくことに多くの時間を費やしていて、忙しさのジャンルが違います。私たちの仕事はリアルメディアに近いところがあって、1皿を通じてさまざまなものを伝えることができますよね。たとえば、自然農法で野菜を育てている農家さんのこと、若い女性のパティシエがもっと活躍できる環境のこと、環境負荷をかけないで料理をつくるために取り組んでいることなど、 私は『食』に携わる上で社会をより良い場所にしていきたいという願望が強いので、“伝えられる機会”をいただけるのは大きなことです。1皿にメッセージを込めて、発信することを大切にしています」

 次のトークテーマは、「やりたいことをやるための環境とは? 組織に所属?  独立して自分のお店?」

 2019年に会社を設立し、飲食店のコンサルティングやプロデュース、若手シェフのマネジメントまで行っている薬師神さんは、個人経営と会社組織のメリット・デメリットを話してくれました。
「今、飲食業界は人手不足ですが、せっかく新しい人が入ってきても、お店と相性が悪ければすぐに辞めてしまいます。でも会社組織の場合、高級業態のほかにビストロ業態も経営していたり、企画する部署など他にも選択肢があるので、異動することで仕事を続けてもらえる可能性がありますよね。デメリットは、会社だとどうしてもお店の売り上げが評価軸になりがちで、1人ひとりを評価するのが難しくなること。とはいえ、飲食店はスタッフの支えがあってこそ成り立っているので、より良い評価方法を模索中です」

 薬師神さんの話を受けて「昨日ちょうど4, 5人の査定をしたんですが、1人ひとりと向き合えるのが小規模経営のいいところですよね」と話すのは、岩澤さん。
「スタッフは家族だと思っているので、その先にいる奥さんやお子さん、おじいちゃんやおばあちゃんのことまで考えながらフォローするよう心がけています。スタッフの人生設計まで一緒に考えてあげられることが、小さな組織のメリットだと思うのです。デメリットは、働く人の権利を守ることと店舗運営のバランスを取っていくのが難しいことです。たとえば、代わりの人がいないので、好きなときに休めないという問題がありますよね」

 もともとはイタリアに住んでいて、6年前から日本に暮らし始めたばかりの加藤さんは、現在の勤め先「FARO」が日本で1軒目のレストラン。聞けば、「FAROは資生堂という大きな経営母体がありますが、私のことはイノベーションの一部と捉えていただいて、やりたいことをやって、自由に働かせていただいています」とのことで、個人でレストランを経営したいと思ったことはないそうです。

 また、女性が働きづらさを感じる原因の1つ「子育て」について、加藤さんはイタリアでの経験を話してくれました。「イタリアで子育てをするのは、日本よりも簡単です。日本人は『母親が育てるもの』という感覚が強いですが、ヨーロッパの先進国なら役所へ申請すれば月10万円くらいすぐに支給されるので、ベビーシッターを雇ったり、誰かに預けるのは当たり前のことなのです。私は『オペア』というシステムを利用して、大学の交換留学生に部屋と食事を提供する代わりに、子育てを手伝ってもらいました。中でも、医学部生は8年くらい大学に通いますが、授業は大体午前中だけで、午後は家で勉強するタイプの大学生活を送るんです」

 さて、ここからのテーマは、みなさんの「リアルな相談ごと」にシェフがお答え!
スクリーンに参加者の皆さんが投稿した相談ごとが映し出され、シェフたちが1つずつ回答していきました。

Q. レストランで働く人の給与の改善や仕入価格、その他費用の高騰、その他様々な外的環境の変化があるかと思います。その中でどのようなレストランや会社、仕事の方向性でこれらの変化に対応することを考えていますか? 

岩澤さん:適正な価格を知る必要があります。消費者を信じて早期に適正な商品売価にし、利益を出して身近な仲間の所得を上げていく必要があると思います。また、料理人の価値は、料理つくるだけ、 飲食店を経営するだけではありませんよね。経営上は原価と人件費が多くの割合を占めますが、飲食店以外の社会に貢献できる仕事をすることで、意外とそれらのお金を軽減することができるのです。いろんな企業と連携したり、外につながりを増やすことで、これまでとは違う形で経営できるようになると思います。

Q. ニホンミツバチの保護活動をしています。 活動資金を寄付いただいたお礼にハチミツ入りの生キャラメルを作ったところ、意外にリピートが多く驚いています。保護活動が多くの方に周知できるのでしたら商品化してみたいのですが、作業場所などクリアしなければならないハードルが高く二の足を踏んでいます。このまま寄付のお礼品とするか、頑張って商品化するか悩みどころです。何かアドバイスを頂ければ幸いです。 

岩澤さん:許認可を持っている施設と連携して商品化を目指すといいと思います。あとは福祉作業所に協力してもらうとか?

加藤さん:普段、私はプラントベースのデザートを作っています。でも、環境にやさしい方法でデザートをつくりたいと考えたときに、どうしても外せなかったのが岩手県「なかほら牧場」の牛乳と二ホンミツバチのハチミツでした。今、二ホンミツバチは減少の一途ですが、生態系の良し悪しを見るときに一番の指標となるのがミツバチです。その重要性を発信している人も少ないですし、保護活動はぜひ続けていただきたいと思います。ハードルが高いのは確かですが、いずれ何かご一緒したいですね。

Q. 学生です。やりたいことが明確ではなくて将来が不安です。多くのプロジェクトやお店を経営されているお三方は、やりたいことが明確になったきっかけは何でしたか?

岩澤さん:私たち経営者にとって、飲食店で働くメリットをどう可視化するか、という課題があります。人材確保のため、どうやって飲食店を選んでもらうかに悩んでいるんです。そこで面接のとき、どういう人になりたいですか、と聞くようにしています。アルバイトの人には、どうしたら飲食店で働きたくなるのか、と聞くこともあります。お互いに対話することで見えてくる答えもあると思うからです。
もしやりたいことがわからなければ、まずは「こういう人になりたい」という人を見つけて、できればその人と話をしてみてください。自分も「食で文化をつくる」という師との出会いがありました。待遇ではなく、目標を見つけたら周りを見ずに走り続けましょう。

Q. 菜食主義との向き合い方はどうしていますか?

加藤さん:私も菜食主義です。でも、外食のときだけは菜食主義を止めています。私にとっては「共食」がすごく大切で、テーブルを囲む相手と同じ時間を楽しむことを最優先したいので、同じものを食べるようにしているのです。菜食主義は、宗教的な事情の方から自分のポリシーという方まで、考え方も人それぞれです。レストランのお客様の場合は、ご予約時に菜食との向き合い方を教えていただいて、個別に対応しています。
最近、私は和菓子づくりを始めたんですが、和菓子は基本的に菜食ですよね。でも、たとえば上白糖、グラニュー糖は精製するときに牛骨を使うので、アジア圏の人の中には食べない人もいます。菜食主義だけではなくて、私たちはどんな方にも配慮して料理をつくれるようにしておかないといけないと思います。  

Q. 後輩の指導で大切にしているところ、またここだけは厳しくしたい、大事にしたいと思っていらっしゃることを教えてください。

薬師神さん:私もずっと調理学校で教えていましたが、料理のテクニックだけ教えるのではなく、なぜこの組み合わせになったのかなど、その奥にある理屈まで伝えることを大切にしてきました。お店でも、スタッフの失敗に対してガミガミ言うよりも、次はどうしたら改善できるのか、を考えます。怒ることにエネルギーを使うより、考えることに時間を使った方がいいですよね。今、指導ができず、指摘ばかりの上司が多いように思います。また、リスクを事前に考え、松竹梅で物事を考えているとおのずと後輩がケアしてくれていたりもします。私が厳しいことを言うのは、お客様やクライアントなどゲストへのホスピタリティを感じ取れなかったときに強く怒りますね。

──参加者のみなさんからいただいた質問はまだまだありますが、時間の都合でイベント中の回答はここまでとなりました。その他の質問については、後日シェフたちにメールで回答いただきましたので、本ページの最後でご紹介します。

パネルトークの終了後、参加者たちは8つのグループに分かれて座り、「本日のパネルトークを受けて感じたこと」「自身の組織における取り組み」などを1人ずつシェアしました。

各グループに1人ずつ、ゲストシェフや丸の内シェフズクラブ事務局メンバーも参加しました

イベント後半:ゲストと参加者による交流会

グループシェアリングが終わると、会場のセンターにピッツァをのせたワゴンが登場。
ここからイベント後半の交流会が始まりました。

交流会のために、ゲストシェフが用意したのは3種類のピッツァ。
岩澤さんがつくった生地は、世界に誇る国産小麦を100%使用しています。

【3種類のピッツァ】

  • 能登 上田農園のサンマルツァーノのマリナーラ
  • イタリア 想い出のマルゲリータ
  • 十勝 斉藤農場のゴールドラッシュとマンガリッツァ豚のラルドのピッツァ

マリナーラはチーズなどをトッピングすることなく、能登 上田農園のサンマルツァーノ(トマト)が主役のピッツァです。上田農園は、イタリア野菜を育てる生産者さん。能登半島地震で大きな被害を受けたものの、東京のピッツァ店のシェフたちが支援し、なんとか畑を存続できることになったそうです。「いまだ復興は進んでいません。その現状をぜひ知ってほしい」と、岩澤さんが心を込めて焼き上げました。

マルゲリータは、加藤さんのリクエストで岩澤さんがつくったもの。イタリア暮らしの長かった加藤さんいわく、「掛け算の料理が多い中で、マルゲリータは引き算の料理。一番シンプルで、一番おいしい」のだとか。

黄色いピッツァは、フランス料理のシェフ・薬師神さんが初めてピッツァづくりに挑んだ1枚。「フレンチピッツァをつくれ、という難しいお題で。2週間前に北海道・十勝に行ったときに出会ったコーンとマンガリッツァ豚を使いました。コーンのペシャメルソースと、豚の脂身の塩漬け(ラルド)を薄くスライスしてのせています」

かくして、ピッツァとともに和やかな交流会を過ごし、今回のトークサロンは終了となりました。

最後に、薬師神さんの締めの言葉をお届けします。

「今日は、参加者の皆さんからいい質問をたくさんいただいて、もっと答えたかったですね…。今回は『未来のありたい姿』がテーマでしたが、私の場合、キャリアデザインは“5年スパン”で考えるようにしています。何かを始めるときは『5年後の自分はこうなっていたい』と目標を掲げ、理想に近づくために努力すべきことを考えて、あとは前へ進んでいくのみ。今の店『unis』はオープンしてから3年半、当初やりたかったことが1つずつ叶っていき、スタッフも増えて順調です。また、これまで活動を積み重ねてきた中で、その先の目標も見つかりつつあります」(薬師神さん)

追加でシェフがお答え!
みなさんの「リアルな相談ごと」
イベント当日、お答えしきれなかった参加者のみなさんの相談ごとについて、3名のシェフに追加で質問しました。
一挙、ご紹介します!

Q. 転職のタイミングについてどうお考えでしょうか?
働く前からある程度の期間を設定していたのか、それとも働く中で決めたのか?
どこを基準にしていたのかなどお伺いしたいです。

薬師神さん:転機を待っていても、なかなか動けないこともあるので、しっかりとした今後のビジョンを明確にした方が良いかと思われます。実際今自分が得意なこと、足りていない部分を俯瞰して見ることで、自分と会社の関わり方や、転機も明確になってくるのではないでしょうか。

加藤さん:キャリアアップが出来そうなタイミング、自分の可能性にチャレンジしたいと思う前向きなエネルギーを感じたときは一番その恩恵を受けやすいときだと思います。

岩澤さん:技術だけを習得したいのか、それともビジネスを習得したいのか、それとも人として伸ばしたいかにより違います。恐らく今までの「見習い3年」では人として一人前になれないので、どこをゴールにするかを設定するといいと思います。

Q. 会社所属時と独立してからのぶつかった大きな壁はありましたか? 
またそれをどの様に乗り越えましたか?

薬師神さん:壁はたくさんあります。リーダーとしてその壁を越えること、チームで乗り越えたことにとてもやり甲斐を感じています。自分のお店になった際に気づく「企業にいた自分」と、「自分が引っ張っていく」という様々なストレスと課題。1人で抱え込まずに自分の分身にいつかなってくれたらという思いで、すべてのことをシェアします。全員で「支えている感覚」を植え付けるのもチームビルディングに必要なことです。

加藤さん:いまだに会社に所属しながらの個人法人の運営をしているので、壁はいつも時間です。乗り越えることはまだ課題ではありますが、いつでも真摯に受け止めて目の前のことに集中しながらも、できることから進めていく。

岩澤さん:お金もそうなのですが、一番は人です。アドバイスは価値観が同じ人とじゃないと継続は難しいです。

Q. 食に携わるときに、大切にしている「軸/想い」があれば教えてください! 

薬師神さん:「会話」を大切に、お客様とはもちろんですが、前後の会話や、以前話されていたことを覚えているようにしています。「軸」として、自分が食に携わることで少しでも会話の中心に「食」があり、考え直したり、概念を違う角度から考えてもらえるアイデアを日々考えています。

加藤さん:本当に美しく美味しいお菓子は、もはや見た目や味だけではないのだろう。100年後まで残したい本当の豊かさとは何かを考えて継承していきたい。   

岩澤さん:ありがとうの連鎖です。

Q. ゲストのみなさんが考える食の「魅力」は何ですか?

薬師神さん:食の魅力は「人に幸せを与える最もシンプルな方法」だと思います。様々な職種のある中、この食べると言うシーンをデザインし、整えることができるのが最大の魅力です。

加藤さん:地球にある食物に感謝しながら、自由な発想で組み合わせて料理し、新たな食文化を創造すること。新たな価値を創造伝達し表現すること、また日本各地の残さなければいけない伝統文化や、日本が世界に誇れる美意識テクノロジーの革新とともに、食べる楽しみをアップデートすること。そして未来に向かい、食から人の幸せを生み、食から社会課題に向かい、食から世界を変えること。そんな希望に満ちたことかもしれない。

岩澤さん:人類すべての方々が必要な生きる糧である。

Q. 食品に関する職業はたくさんありますが、その中で「シェフ」という道を選んだきっかけはありますか? 

薬師神さん:先の「食の魅力」に対する回答と同じです。

加藤さん:仕事と感じないほど楽しく、自然なことであったから。

岩澤さん:家業が飲食店だったのでライフスタイルの延長上社会に貢献できることを知った時です。

Q. 食を通じて伝えたい内容を、押し付けではなく、理解・共感してもらうために心がけていることはありますか?

薬師神さん:「共感」がすごく大事で、それぞれの何に喜びを感じるか、と言う部分のバイアスが違うので、一方通行のコミュニケーションではなく、相手6>4自分で会話から【興味】を紐解くことが大切です。

加藤さん:美味しいものは心を動かすので、そこを外さないこと。   

岩澤さん:同じ価値観で体感してもらうことですね。

Q. 海外への出店は考えていますか?
その際、気をつけるべきことは、日本での出店と同じですか?

薬師神さん:海外も視野に入れています。日本人の気遣いや、繊細さはレストランの業務にとって必要不可欠な部分です。しかしながら、海外のスタッフを雇用する上でより大切なことは、日本以上にリーダーシップと行動や態度で示すことが大切な気がします。

加藤さん:現時点ではわからない。

岩澤さん:海外の事業拡大の考えはなくなりました。ただ、協力としては検討しています。

Q. 異業種からの飲食店へ挑戦するために必要なことは?
(会社員→店舗を持たない形態から始める? or 店舗を持つことはリスク?) 

 薬師神さん:店舗を最初から持つのは10年前と変わって、諸経費も合わせれば1.5倍以上のコストがかかっています。その中で、返済の部分を事業収支の5 割でも収支上合うようであれば、店舗も現実的かもしれません。やはり、自分のパフォーマンスが最大化できる「箱」があるのはフリーランスでやっていた頃もありますが、お客様の分母と認知は格段に変わりました。

加藤さん:勉強する謙虚さを持ち、情報収集する。

岩澤さん:いい店には見えてない大変さがその分あると思ってください。店を作ることは世界的に簡単な国です。ですがいい店を作れるかは別物で、飲食店を始めるにせよ10年計画を立てるといいと思います。

Q. 集中のオンオフの仕方、腰が上がらない時の転換法はありますか?

薬師神さん:毎日どのタイミングでも料理のことを考えてはいますが、常にオンを考えないことが大切かもしれません。キャパオーバーになりそうなタイミングでこそようやく「本気」を出す。「オンに」する感覚ですかね。やる気というスイッチは、「自分のやりやすい仕事」にしていかないと押せない気がします。

 加藤さん:自然の中に入る。その場を離れて軽い運動をする(散歩など)。 

 岩澤さん:もちろんあります。現実逃避して楽しいことを自分はします。

Q. 丸の内エリアは飲食業界として今後どんな可能性があると考えますか?

 薬師神さん:地方から最もインフラの良い場所ではありますが、サラリーマン用の飲食がやはり多く、安くて早くてうまい、が8割を占めている中、今後求められるのは食×エンターテイメント×★★のように、もう1アイテム必要だと思っています。サラリーマンが多いエリアだからこそ、求められるコミュニティーの場や、現実逃避できる場所として、新たなコンセプトが生まれやすいエリアかつ、個人出店にはハードルが高いエリアではあるため、投資する側やデベロッパーサイドが「人をあつめて、人の幸福度が上がる丸の内」を意識すると自ずと、「食」が中心になると思っています。

加藤さん:多様な人々とコミュニケーションが取れる場所が増える。

岩澤さん:日本の沢山のお手本を知ってもらう、発信する場所として日本一便利な場所ではないでしょうか。

撮影/大崎あゆみ

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