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SUSTABLE2024vol.1【循環を味わう 麦芽粕がつなぐ農業・畜産・水産の輪 〜沖縄が目指す産学連携による食のサーキュラーエコノミー〜】開催レポート

SUSTABLE(サステーブル)2024~未来を変えるひとくち~第1回が
7月17日(水)に開催されました。

食従事者と消費者をつなぎ、未来の食卓に変化を起こす「SUSTABLE(サステーブル)2024」。

第1回のテーマは、食と循環経済(サーキュラーエコノミー)です。サーキュラーエコノミーという言葉だけ聞くと、どこか自分の生活とは遠く少し難しいイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実はサーキュラーエコノミーという概念は、食をはじめ私たちの生活と深く関わっています。今回は、ビールの製造の際に生じる植物残渣である麦芽粕を有効活用した飼料で育った牛肉と陸上養殖魚を題材に、食のサーキュラーエコノミーについて、2名のゲストとともに考えました。

【第1回ゲストの皆様(順不同)】
◆オリオンビール株式会社 経営管理本部 サステナビリティ・広報部 部長(開催当時) 丁野良太様
◆オリオンホテル株式会社 総料理長 桒原友則様

【ファシリテーター】
◆ハーチ株式会社 代表取締役 加藤 佑様

イベント冒頭では、ファシリテーターの加藤氏がサーキュラーエコノミーのポイントと、食の分野における国内外の動向及び最新の取組み事例を解説しました。加藤氏が代表を務めるハーチ株式会社は社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン「IDEAS FOR GOOD」をはじめ、サステナビリティ領域のデジタルメディアを多数運営しています。

「サーキュラーエコノミーのポイントは、最初からどう廃棄物が出ないように設計していくかというところ」と加藤氏。大量生産・大量消費・大量廃棄が前提の直線型の経済(リニアエコノミー)や、出てしまった廃棄物をリサイクルするというリユースエコノミーと異なり、システム全体をどう循環させるかが重要と説明しました。

食の分野に目を向けると、世界人口が100億人まで増えると言われている中、人が一人増えると必要なカロリーが増えるため、その需要を満たす食糧の確保が必要になります。しかし、2010年に生産された作物カロリーの量と、2050年に予想される需要を満たすために必要な量との差「食糧ギャップ」は56%と推定されています。「食糧ギャップを埋めるには、農作物の生産性をあげるか需要自体を下げるか、この2つを同時にやっていく必要があります」と加藤氏。

日本では規格外品や売れ残り、食べ残しなどの、本来食べられるにもかかわらず捨てられてしまう食品(可食部分)である食品ロスの量が事業系と家庭系でおおよそ半々であることを挙げ、「企業の取り組みだけでは足りず、生活者一人一人の行動が大事」と会場の参加者にメッセージを送りました。

最後に加藤氏は、食におけるサーキュラーエコノミーの事例として、3つの国内事例を紹介。そして「本日はもう1つの国内の良い事例としてオリオンビールの事例を紹介いただく」と、次のゲストにバトンを渡しました。

続いては、オリオンビール株式会社 経営管理本部 サステナビリティ・広報部 部長(開催当時) 丁野良太氏が登壇し、同社の取り組みについて説明しました。丁野氏は滋賀県大津市出身で、前職は滋賀県の大津市役所、国土交通省、京都市観光協会を経て、オリオンビールに入社して4年目とのこと。行政と観光のバックグラウンドを持つ丁野氏ならではの視点で、オリオングループの循環型産業への挑戦について語りました。

オリオングループの紹介から始まり、沖縄がまだアメリカ統治下だった1957年の創業以来、沖縄という地域と互いに支え合ってきた歴史を説明。「『沖縄のために汗をかく』という理念のもと、ESGマテリアリティの最上位に『沖縄の自然との共生』を掲げています。」と丁野氏。その理由として、沖縄の経済を支える観光の最大の魅力である豊かな自然を守ることが、持続的な観光客の誘致につながり、ひいてはオリオンビールのビジネスの持続可能性にもつながるという考えを示しました。

サーキュラーエコノミーの取り組みとして、丁野氏は2006年から名護工場でのゼロエミッションの達成を挙げました。「1日10トンと、ビール製造過程で最も多く出る廃棄物である麦芽粕 を有効活用し、もとぶ牧場の牛の餌として提供しています。これにより、島外から餌を持ち込む必要がある牧場の餌代削減にも貢献しています。」さらに、琉球大学との連携により、亜熱帯地域で栽培可能な大麦の研究開発を行い、その麦芽粕を肥料として使用した大麦を栽培するなど、完全地域循環型の取り組みも紹介されました。

また、オリオングループは、産学連携事業であるミーバイの陸上養殖の研究にも参画し、再生可能エネルギーを活用した持続可能な養殖システムの開発にも取り組んでいます。陸上養殖は、海上養殖とは異なり、海のコンディションの影響を受けにくいという利点があります。例えば軽石などの問題が発生することがありますが、陸上養殖ではそのような影響を受けません。また、陸上養殖では、すべての排水を中和・循環させ、養殖場内での水の品質を保つことができ、海水を汚染しないという点も特徴です。

丁野氏は「観光と環境が喧嘩をするのではなく、観光が進むと環境が再生するような好循環を沖縄に作っていきたい」と、今後の展望を語りました。加藤氏は、オリオングループの取り組みに感銘を受け、「環境共生と言いつつ経済のために自然が壊されることがよくあるが、自然を回すことにより経済を回すという考え方が素晴らしいですね。環境だけでなく、社会的なテーマにも取り組んでいるのが印象的でした。」とコメントしました。

2006年からゼロエミッションを達成し続けているなど、SDGsが提唱される前から先進的な取り組みを行っていたオリオングループ。丁野氏は、オリオングループの取り組みが進んでいる理由として、「沖縄県民との距離が近く、いろんな意見をよくいただきます。沖縄県民の沖縄を愛する気持ちとオリオンビールへの支持が取り組みを支えていると思います」と説明しました。

さて、食欲をそそる美味しい香りが会場に満ち、彩り豊かな料理がテーブルに並びました。今回は、オリオンビールのグループであり、沖縄県那覇市と本部町に展開するホテル、オリオンホテルの総料理長を務める桒原友則氏が、オリオンビールの麦芽粕を飼料として育てたもとぶ牛や、産学連携事業の陸上養殖で育てられた琉大ミーバイを使ったお料理を提供してくださいました。オリオンホテルでは、同食材を活用したサステナブルなメニューの開発・提供の取り組みを進められています。

《メニュー》
芯温58度で仕上げたもとぶ牛ランプ肉のスライス
名護産グリーンパパイヤと黄韮のマリネ 島豆腐と宮古味噌のピューレ

琉大ミーバイのオリーブオイル焼き
今帰仁産ナーベーラー(ヘチマ)とズッキーニ プッタネスカソース

会場の参加者からは「オリオンビールもお魚もお肉も美味しかった。初めてヘチマを食べたが、美味しくて感動した」という感想が聞かれました。桒原シェフは「ズッキーニと食べ比べてもらおうと思ってあえて入れました」と、沖縄で食される島野菜と馴染みのある野菜を比較する工夫も紹介しました。

「サステナビリティの観点では、地元の食材を使うことでフードマイレージを削減すること、フードロスを減らすこと、この2つに気を付けています。」と話す桒原シェフ。例えば、ホテルで提供するフレンチトーストには伊良部島の黒糖を使っているという。この黒糖は非常に独特で、薪で窯を焚いて一気に沸かす、現在では数少ない昔ながらの手作り製法で作られている黒糖とのこと。「その他にも池間島で養殖されているモズクなども使用しており、朝食に提供する際にお客様に説明すると非常に喜んでいただけます」と、食材一つ一つにストーリーがあることを強調しました。

桒原シェフの話からは、沖縄の食材に深い愛着を持ち、地元の生産者との密接な関係を築いていることが伝わってきました。それと同時に、普段スーパーなどで食材を手にする時には目には見えない、その食材が手に届くまでのストーリー、生産者の方たちが食材にかけた手間ひまや愛情に想像を馳せることの楽しさや大切さを感じられました。

最後に、今回のテーマ「食とサーキュラーエコノミー」に関連して、ご自身が今後取り組みたいことや、生活者一人ひとりに向けたメッセージをいただきました。

桒原シェフは「今、教授の方などと一緒に、ホテルの食品残渣を発電に使えないかと考えています。キッチンのスタッフも一緒に、食品残渣をどこに運んでどうするのか、できた電気を何に使うのかというところも一緒に意見を出しながら進めています」と、新たな挑戦について語りました。

丁野氏は「この取り組みは本当にオリオングループだけではなく、幅広く広めていきたいと思っています。県産大麦など使ってくれる人が増えれば、農業従事者の方の栽培面積も増えますので、広める努力をして行きたいと思います」と、取り組みの拡大への意欲を示しました。また、生活者に向けては「値段は少し張るかもしれないけど、1週間に一回でいいので、サステナブルな選択をしてほしい。一人ひとりの取り組みが重なれば、サステナブルな社会の実現に向けてよりスピードが上がるはずと考えています。自分自身もそうして行きたいと思っています」と呼びかけました。

加藤氏は「1日3回の食事3回分チャンスがあるので、1つは事業者さんの食材を利用するという選択もあると思いますし、買ったものは最後まで使い切るということもできるのではないでしょうか」と、日々の生活の中でできる小さな行動の重要性を強調しました。

今回のイベントは、沖縄の風景、熱い思いを持って活動に携わる人々や活動を通じてつながる生産者の顔がより一層思い浮かぶ会となりました。最後までその情景を思い浮かべながら料理を堪能して帰られるお客さんの表情は、ゆったりと柔らかい優しい表情をしていたように感じます。サーキュラーエコノミーは大きなシステムの話かもしれない。それでも、そのシステムを動かしていくのは紛れもなく、私たち生活者一人一人の思いと行動であると、温かく背中を押してもらえた夜となりました。

アクション実施概要

開催日時

2024年7月17日(水)18:30〜20:00(開場18:00)

開催場所

MY Shokudo Hall&Kitchen
(東京都千代田区大手町2-6-4 TOKYO TORCH 常盤橋タワー3F)

出演者(順不同)

◆オリオンビール株式会社 経営管理本部 サステナビリティ・広報部 部長(開催当時) 丁野良太様
◆オリオンホテル株式会社 総料理長 桒原友則様

司会

ハーチ株式会社 代表取締役 加藤佑様

定員

会場参加:30名/オンライン参加:500名

参加費

会場参加:2,000円/オンライン参加:無料

主催

大丸有SDGs ACT5実行委員会/三菱地所株式会社 EAT&LEAD

転載元:「大丸有SDGs ACT5」記事
https://act-5.jp/act/sustable2024_1report/
※大手町・丸の内・有楽町地区(大丸有エリア)を起点にSDGs達成に向けた活動を推進する「大丸有SDGs ACT5」の活動については、WEBサイト(https://act-5.jp/)をご覧ください。

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