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とうきょう野菜試食交流会

「とうきょう野菜試食交流会」開催される

 このイベントは、東京に古くから伝わる「江戸東京野菜」を、丸の内を中心として活躍する飲食関係者、シェフに普及しようという目的で東京都主催で開催されたイベントだ。これまで、食育丸の内では、何回も東京江戸野菜の生産者のもとを訪れ、東京の中心である丸の内から、消費地としての東京ではなく、生産地としての東京をアピールしようと活動をしてきた。実は肥沃な関東平野を有する東京は、日本でも恵まれた食材の宝庫なのである。

「江戸東京野菜」には三つの定義があると語るのは、江戸東京・伝統野菜研究会の代表・大竹道茂さんである。

①季節限定で旬がある、東京の伝統野菜。
②自家受粉でタネを採ることができる固定種
③江戸~昭和の各時代に都民の食生活を支え、食文化を育んだ野菜。

東京に暮らす人であれば、そんな野菜が現代でも作られていると聞いて驚くだろう。今回のイベントでは、「JA東京みらい」「JA東京むさし」「JA東京あおば」の三つの農協に所属する10数人の生産者が天塩にかけて育てた野菜の数々が紹介された。「亀戸大根」「青茎三河島菜」「馬込三寸にんじん」「大蔵大根」…。今回は冬野菜ということで、根菜が中心だったが、江戸東京野菜は年間を通じて、現在22品目が指定されているという。

 実は、この江戸東京野菜を最初に丸の内で使ったのは、フレンチの巨匠として知られるミクニ・マルノウチ・オーナーシェフの三國清三さんだという。三国さんは、この丸の内に自分のお店をオープンさせようと決めた時から、東京の中心である丸の内から発信するのだから、東京の地産地消を実現したいと考え、大竹さんに相談をしたという。三国シェフから見た江戸東京野菜はいったいどんなものなのか。

「東京には全国、いや全世界の食材が集まる場所です。今でこそ『朝採り』なんて言葉がもてはやされていますが、本当の意味での『朝採り』って流通が進んだ今日でも無理なんですね。しかし、東京の場合は違う。早朝に収穫したものが、昼、遅くても午後には厨房に届けられる。何が違うって野菜の香りとパワーですよ。厨房に入ればすぐ、あっ、今日は東京の野菜が入っているって分かるくらいですから」

現在、これらの野菜を栽培している農家は、国立市や三鷹市など、東京の西部に多い。これらの畑で早朝に収穫した野菜を、うまく流通に乗せることができれば、本当の意味での地産地消を実現できる。生産地と消費地が1時間圏内という東京の地の利が、この伝統野菜を支えているのである。しかし、ある一時期「江戸東京野菜」は絶滅の危機にあった。そして、大竹さんをはじめ、東京の生産者の努力で、これらを見事に現代に復活させたのだという。

「高度経済期、東京の都市化にともなって農地そのものが姿を消しました。その上、市場は大量生産、大量流通、大量消費が主流となったのです。その結果、一年中つくりやすく、規格、選別もしやすい野菜が重宝がられました。もともと、伝統野菜は大量生産できません。流通できなかったら作っても仕方がない。伝統野菜は、花を咲かせるたびに種を採取し、後世に種を絶やさない努力が必要なんです」

生産者と料理人がちょうどよい距離でつながる

 青茎三河島菜という全長40センチ~50センチになる、巨大な菜っ葉は、白菜にちかいツケナという葉っぱの一種。産地は現在の東京荒川区で、三河国(愛知県)の農民が入植して作り始めたのが最初だという。宮寺農園の宮寺光政さんが作った青茎三河島菜は、ミクニマルノウチの厨房でも使用されている。

「東京の伝統野菜を使っていただけるなんて夢のようです。私たちが歴史を絶やさないように野菜を作ったとしても、食べてもらう人がいなければ、作っても意味がないと思います。しかも、東京の伝統野菜がフレンチに生まれ変わるのですから、本当にありがたいことです」

日本料理の名店として知られる恵比寿笹岡主人・笹岡隆次さんが注目したのが「東京長かぶ」、通称「品川かぶ」だった。日本料理ではカブは「かぶら蒸し」など冬の椀物に欠かせない野菜だ。この品川かぶは、根の部分に比べて、葉っぱの部分が大きくて長いのが特徴だ。

「カブと呼ばれる根の部分ももちろんですが、品川かぶの魅力はこの葉っぱですね。通常、かぶの葉っぱは生では硬いし、火を通しても筋の部分が残って食感が悪い。しかし、この品川かぶは柔らかい。おあげやお麩といっしょにお浸しにすると、冬の献立として具合がいいですよ」

笹岡さんは、時間をみつけては日本各地の生産地に足を運び、生産者との情報共有を季節を通じて欠かさない。食育丸の内が主催した江戸東京野菜の生産地めぐりにも何度も足を運んで頂いている。

「料理人には、料理人としてのこだわりやオーダーがある。しかし、生産者の立場を理解し、コミュニケーションを重ねたうえであれば、例えば、流通の問題などについてもクリアできるアイディアが浮かぶ。大切なことは、料理人と生産者がちょうどよい距離でつながることだと思います」

 イベントの中で、ミクニマルノウチの三國清三シェフは、日本料理を世界遺産にしようという運動に触れて、江戸東京野菜の今後をこのように説明した。

「日本料理を世界遺産にしようという動きがあるが、それは単に料理がおいしいではダメなんです。それが文化でないといけない。東京には日本料理をはじめ、数多くの飲食店がひしめている。東京でとれる東京の野菜を使うことが、本当の地産地消であり、東京の食を文化として育む活動そのものなんです」

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