WELCOME KIDS in MARUNOUCHI 「フレンチ三國シェフの味覚の授業」
「味覚を鍛えることで脳を刺激して、見る、聞く、嗅ぐ、触る、味わうといった五感、感性を磨くことができるんですね。」
8月6日(火)、夏休み真っ最中の小学生たちが集まったのは、東京・丸の内にある「ミクニ マルノウチ」で行われた「フレンチ三國シェフの味覚の授業」。15組の親子が真剣な表情で三國シェフの話に耳を傾けていました。
「加工食品もいいけれど、たまには自然界のもの、本物の味を味わってほしい」と語る三國シェフ。実は、この”味覚の授業”、1985年にフランスの三ツ星レストランのシェフたちが始めた授業がモチーフ。食文化の乱れが社会問題になっているフランスでは、現在、国家プロジェクトとして、街のあちこちで食育授業が行われているのだとか。フランスと同じく、手軽に購入できる加工食品が増え、子供たちの食習慣の乱れが危惧されている日本では、三國シェフが初めて”味覚の授業”を開催。今こそ食の大切さ、とくに子供の成長期における味覚を刺激することの重要性を広めていきたいと語っています。
「みんなの心、気持ちはどこにあるのでしょうか?」と子供たちに問いかける三國シェフ。
「頭で考えるから頭!」と、即答する子供たちに頬笑みかけ、頭、脳が成長する過程を分かりやすく説明してくれます。
「脳には、前の脳と後ろ脳があるのね。前の脳は、なんと8歳、小学3年生くらいで完成されるんです。ここまでに、みんなはお母さんの味を覚えます。そして、一生、記憶しているんですね。そして、後ろの脳は12歳(6年生)くらいで完成されちゃう。大人になるんですね。」
「舌の上には味蕾(みらい)というのがあります。舌の上にざらざらしているヤツですね。ざらざらの中には、穴が空いていて、穴から味が吸い込まれて、ほっぺの裏の神経を通って、脳を刺激しているんです。」
しかも、味蕾は自然界からとれた天然の味しか吸い込まず、加工された味が来るとキュッと穴を閉じてしまうとも。
「自然界の天然の味はどれも薄味です。子供はみんな濃い、刺激のある味を欲しますが、天然じゃないものは、お腹いっぱいになるけれども、吸収されずに排出されてしまうんです。」
では、自然界にある天然の味とはどういうものなんでしょう?
三國シェフは子供たちに「ここにある甘味、酸味、塩味、苦味ともうひとつ、日本人ならではの味って分かる人?」と問いかけます。答えは「うま味」。
「うま味は日本発の味覚でね、今は世界中の人たちも知っている味。日本料理の出汁に含まれる成分ですね。昆布に含まれるグルタミン酸、かつおぶしに含まれるイノシン酸という成分がその正体です。」
どうやら、この「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」「うま味」の五味をしっかりと舌に記憶させることが”味覚の授業”で大事なことのよう。その後は、自然界からとれた、この五味を味わうテストをスタート。「甘味」の砂糖から、お酢、塩、カカオ、そしてだし汁を順番に味わい、味覚を刺激し、脳もトレーニングです。
そして、後半は、キッズお楽しみの「五味のスイーツ」の時間。「甘味」は紫芋のタルト。「酸味」はハスカップのゼリー、「塩味」は黒ごまキャラメルの牛皮包み、「苦味」はフランス菓子の王道、チョコとコーヒーを使ったオペラ。そして「うま味」は発酵食品であるチーズや、野菜、ベーコンの入ったケーキ。
目を輝かせ、ひとつひとつのケーキに使われている食材はなにか? ひと口、ひと口、味わって食べている様子は、なんとも微笑ましい。同伴していたお母さん方も、子供たちと一緒に「本物の味」を再確認していました。
「味覚を鍛える五感が開花すると、子どもたちは良く見ることができます。人の気持ちにも気がつくし、優しい子供に育ちます。この時期にしかできないことを、どうか自宅に帰っても続けてみてください」と、最後に、三國シェフから、日本の未来を拓く子供たちへの熱いエールが送られました。
味覚は自然と形成されるものではなく、子どもの頃から育んでいくものだということを知っている人は少ないように感じます。ラブテリ 東京&NYが都内某区の小学校5•6年生を対象に行った食事調査の結果では、日本食の旨味食材である昆布を中心とする海藻の摂取量が1日5グラムに満たなかった子どもたちは男の子で38.1%、女の子で53.1%でした。海藻は旨味に加え、ミネラルと食物繊維を豊富に含んでいるため便秘解消にもおススメの食材です。伝統的な日本食材の需要が冷え込み、ケチャップやマヨネーズなどの需要が高まり続ける中、世界遺産登録を目指す日本食を文化にもつ日本人として「味覚教育」を今一度考えてみましょう。