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おいしい教室~お弁当のじかん~「第6回 日本のクリスマス」

食育丸の内プロジェクトの一環としてSoup Stock Tokyoの代表、遠山正道さんをホストに連続7回開催されるシリーズワークショップが丸の内で開催されました。
第6回の今回のゲストは丸の内にも店を構える「イルギオットーネ」のオーナーシェフ笹島保弘さんです。

 本日はコックコート姿で現れた笹島さん。聞けば多忙すぎる日々の中でもはや着替えている時間ももったいない、最近は新幹線でも当たり前のようにこの姿で移動するのだとか。忙しい中ご出演してくださり、有り難うございます。2007年にはイタリア・ミラノで開催された料理サミットに、日本人として初参加を果たされ、現在、京都に3店舗を展開している。2013年、大阪に東京・代々木のレストラン「コードクルック」とコラボした「コードクルック プラス イル ギオットーネ」を開店されました。丸の内にある店にはたびたび顔を出すといいます。笹島さんにとって東京はパリやニューヨークと変わらない場所。刺激的で人が往来し、新しい出会いに溢れている。東京と京都の違いを尋ねると、「旬」という答えが返ってきた。京都では、京都で採れたものを食べるのが基本なのに比べ、東京では日本中、世界中から食材が集まってくる。京都では夏に「鮎とブロッコリーのパスタ」を出せば、「あほか、お前は」と怒られてしまうところだけれど、東京では長野県から取り寄せたブロッコリーを真夏に供してもおかしいとは言われないのです。

また、ごく最近文化遺産になった「和食」ですが、もともとは「京料理」が候補にあがっていたところ、その範囲を広げないと厳しいということで「和食」になったそうなのです。和食、の中には長年の歴史の中で形を変えていったナポリタンも含め、一般の家庭料理も含まれるとか。日本人はほかの文化を吸収して何かを作り出すのが上手だと、笹島さん。いわゆるイタリアンもすべて美味しく着地させてしまうそうです。全体の食の水準が高いのも日本人の食の特徴で、確かにどこのレストランやラーメン屋さんに行ってもほとんど外れる事はなく、たいていが美味しく食事ができます。一方で、イタリアへ訪れると、何度も食べたい街の食堂はたくさんあると笹島さんは言います。小洒落たリストランテではなくて、代々伝わるような食堂の食事こそ、現代のイタリアンなのかもしれません。

本日の出演の前に東北復興支援の食の会議に出席してこられたという笹島さん、ここ丸の内だけでもなんと450店舗もの飲食店があるという事実に驚かされたと言います。東北の食材だからといって、偏見の目をもって風評に流されるのではなく、一生懸命作っている生産者さんの声に耳を傾け、美味しく食べていくことが最大の支援につながるなと思っています、と語ります。

 笹島さんが作るイタリアンは「イノベーティブ・イタリアン」と自身が呼ぶ新しい切り口のイタリアン。和食をベースに作られているのでは?という遠山さんの予測を裏切って、笹島さんの料理のベースはイタリアンなのです。アンチョビやパルメザンチーズ、オリーブオイルにも味噌や醤油などと同じく旨味成分が含まれているのでそれらを基本的な調味料として活用していきます。食材は京都や東京近郊のものを使うため、白トリュフや黒トリュフ以外はほとんどが国産ですが、調味料はイタリアやスペインのものを使うのだそうです。夕方になると京都の家々からはかつおだしの香りが立ちこめます。調味料はその国の食文化を形成していて、人々のDNAを形作っているとさえ言えるのです。笹島さんは長年イタリア料理を作ってきているので「イタリア料理の眼鏡」をかけて食材や調味料に接していると、自ずと選ぶ調味料は現地の物が多くなってくるというわけなのしょう。

高校を卒業した後、レストランのサービスのアルバイトをきっかけにこの世界に飛び込んだ笹島さん。もともとはプロダクトデザイナーになりたかったと言いますが、料理もデザインそのもの。例えば現在笹島さんのもとで修行し店を任されているシェフたちに、笹島さんから飛んでくるのは料理のタイトルのみ。「寒ブリといろんな大根・レッドキャビア」これをシェフやマネージャーが相談して、それぞれが考えたものを作るのだそう。予測もしなかったものが出来上がることもあり、全否定せずに、アドバイスを繰り返して肉付けしていく作業をしていきます。そうすることによって、同じ料理でもそれぞれの店でシェフの魂がこもった、オリジナルの一皿ができあがるというわけなのだそう。イタリアンでは良く見かけるメニューのひとつに「鴨のフランボワーズソース」という料理があるのですが、店ではこれを作ったことがありません。むしろ、このクラッシックなメニューを作るのではなくフランボワーズを柿で置き換えてみたらどうか、などと試行錯誤して欲しいのだといいます。料理は技術ではなくて、自分の頭で考える工程そのものがとても大切なのですね。

今回笹島さんが考えたお弁当のテーマは「日本のクリスマス」。本当は重箱につめるつもりが手違いで可愛らしいお弁当箱になってしまったとの事ですが、それもなんだか微笑ましい姿。さらに、中身は本格的なイノベーティブ・イタリアン。トリュフに見立てた雲子(鱈の白子)、飯蒸しをはさんだ〆鯖とボッタルガ、牛蒡を巻いた鶏のインボルティー二、車エビのグアンチャーレ巻きなどなど、数々のご馳走はどれも、和の食材をイタリアンで料理したものばかりです。冷めてしまうと香りがなくなってしまうので、トリュフなどの香りの強いもの、食べると口の中で香りを感じやすい物を意識したとのこと。テーマをクリスマスにしたのは、いまやクリスマスは仲間と楽しむものになったので、お弁当にしたらどうなるのかなと思われたから。また、どこまでも食はエンターテイメントだと思うから、夢のあるテーマにしたということでした。

 一方、遠山さんのお弁当は、なんと大きな「ケンタッキーフライドチキンのハッピーバーレル?」と思いきや、オリジナルで作られた「センタッキーブライトキッチン」(!?)のパッケージに入ったたくさんの唐揚げ。遠山さんは三菱商事時代に、ケンタッキーフライドチキンに出向されていました。その当時書いたスープストックトーキョーの企画書内で、書いた店の名が「センタッキーブライトキッチン」。唐揚げはお母様のレシピ。かつて幼少時代に招待客が集った自宅のホームパーティで楽しげに食卓を賑わせていたメニューの中でも思い出深いレシピだそうです。和風の味付けが印象的でした。

 今回も生徒さんのプレゼンテーションは2分。クリスマスがテーマのせいか、大きなお弁当が目立ちます。色とりどりの賑やかなお弁当が集まりました。

 今回の”印象的だったお弁当”は近藤千尋さんの「包んだ弁当」。幸田文の描く日本人の文化の特徴「包む」をテーマに、ほんのりと色を感じる白い手鞠寿司と和菓子を2列で用意。もうひとつの”印象的だったお弁当”はコニシマリさんの「真っ白なお弁当」白一色に配されたお弁当は、カリフラワーやささみの酒蒸し、釜揚げしらすなど、白い食材を集めて作られた何層にもなった白いお弁当。中にスノードームが隠れているというクリスマスならではのサプライズな贈り物も。”おいしそうだったお弁当”は池水美都さんの「お赤飯のクリスマスリース弁当」日本の慶事の定番であるお赤飯は、欧米のクリスマスの特別感に匹敵するハレの食べ物。リースをイメージして円に配された様々な丸い料理が並び、色鮮やか。今回のテーマである”日本のクリスマスを感じるお弁当”は荒巻洋子さんの「日本風クリスマス弁当」クリスマスカラーの水引に白い桐の箱。静謐な雰囲気が漂うお弁当には日本のめでたい日に欠かせない鯛の丸焼き、フライドポテトならぬフライド里芋、イチゴケーキの代わりにイチゴ大福と、ウィットが効きながらもおいしそうで美しいお弁当に仕上がっていました。

近藤千尋さんの「包んだ弁当」包んだ弁当コニシマリさんの「真っ白なお弁当」真っ白なお弁当池水美都さんの「お赤飯のクリスマスリース弁当」お赤飯のクリスマスリース弁当

荒巻洋子さんの「日本風クリスマス弁当」日本風クリスマス弁当

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