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おいしい教室~お弁当のじかん~「第3回 お麩会弁当」

第2回目となる今回のゲストが、「ユナイテッドアローズ」取締役会長の重松理さんです。ファッションの世界のみならず幅広く活躍中の重松さんに、会社の運営のこつからご自分のファッション、お弁当までいろいろなお話を聞きました。今回は2回目とあって、参加者の皆さんは少し落ち着いた表情。今回重松さんから提案されたお弁当のテーマ”トラッドマインド”に沿った「お弁当」を作って持ち寄り、一同に披露、講評が行われます。「食べる楽しさ」と「クリエイティビティ」の二側面から楽しむ時間となりました。

 同年の1989年に「株式会社ユナイテッドアローズ」を設立し代表取締役社長に就任しました。その後15年間でユナイテッドアローズは大きく成長を遂げ、全国各地に店舗を増やし、2003年上場を果たした後、重松さんは会長に就任します。ブランドも数多くなっていました。重松さんが会長になられてからしばらく業績が落ち込んでしまいます。「お客様が求めるものを見定めていく作業」をするために再び社長に戻ると、これまでは挑戦や情熱の強さで立ち上げてきた数多くのブランドも、不採算であったらそれがお客様に届いていないと判断し閉める決心をしました。本来お客様が求めているものに耳を傾けることで業績を回復させていったのです。

 重松理さんはとにかくお洒落な出で立ちでいらしてくださいました。この日のジャケットは東南アジアのイカットと呼ばれる生地を仕立てて作ったもので、日本の着物地の絣のような大きな柄があるのに、シンプルに落ち着いた雰囲気で着こなしていらっしゃいました。昔からファッションはもちろん、文化、食文化など衣食住にまつわる事に興味が絶えず、最初に就職した婦人服メーカーに在籍中に現在の創業メンバーと共にビームスを立ち上げました。重松さんが当時26歳の時でした。BEAMSの第1号店の店長として務め、その後は株式会社ビームス常務取締役を経て1989年に退社します。10周年目を機に立ち上げた食と住の開発部門を進めていく段で社長と意見がすれ違い、当時の自己啓発セミナーでお会いした女性社長に「自分が好きな事ができる社長になればよい」とアドバイスを受けて、現在のユナイテッドアローズを立ち上げる事を決めたからでした。

 そんな重松さんがテーマに出されたのが”トラッドマインド”。これはユナイテッドアローズの商品開発の開発理念です。常に伝統と歴史を意識して、それを進化させて時代にフィットした新しいものを作るという意味が込められている造語です。もともとは創業時に目指していたのは「進化した老舗」だったのですが、「虎や」の黒川光博社長が「伝統とは進化の上にしか作り上げられない」とおっしゃっていたことがきっかけで、目指す形が変わりました。「進化する老舗」というのが正しいのだなと今は思っています。そういって取り出したお弁当はシンプルで、懐かしい和風のお弁当でした。「ですからお弁当も子どもの頃から食べ親しんだものを持ってきました。」

お弁当の中身は、京都では御馴染みのピリリと風味がある青実山椒のおにぎり、子どもの頃から好きな卵焼き、肉団子、酸っぱいもの好きなので、若布ときゅうりのごま酢あえ、はすと人参とごぼうのきんぴらにもお酢が利いています。ふだんは忙しくてなかなか家庭料理を味わえない重松さんを想い、毎日奥様がお弁当を作るそう。素早く食べられるように握られたおにぎりにも愛情が詰まっています。これが重松家の「トラッドマインド弁当」。

 一方ホストである遠山正道さんのお弁当は、お題である「トラッド」からロンドンを連想し、「もしロンドンにおにぎりやがあったら」というテーマでお弁当を作ってみました。赤いおにぎりはパプリカの混ぜご飯、ドライトマトとケッパーがはいって程よい酸味。黄色いおにぎりはターメリックご飯、中にはクリームチーズとアンチョビが入っています。海苔のおにぎりはチーズの混ぜご飯のなかに梅干しの代わりにオリーブの実が入っています。食材の置き換えをしてどれも彩り鮮やかに楽しんで作られています。ロンドンの街中にこんなおにぎり屋さんがあったら、行列間違いなしでしょう。

 生徒さんのお弁当の講評は、持ち時間1人あたり1分という短い時間の中で行われます。予め考え抜いてきたそれぞれのコンセプトをお弁当を広げながら発表していきます。緊張感が漂う中、ひとつひとつ丁寧に作られたお弁当に都度歓声があがります。いつものお弁当、とっておきの食材、記憶を辿った母親の味、器や布に思い入れのあるもの、などバリエーション豊かなお弁当が集まりました。

 最後に参加者全員の投票で票が集まったのが”印象的だったお弁当”は霧箱にアンパンが入ったシンプルで潔い近藤千尋さんの「霧箱にアンパン弁当」、”おいしそうだったお弁当”は、大分の地鶏を取り寄せて作った工藤可絵さんの「代々受け継ぎたい弁当」、そして今回のテーマである”トラッドマインド”は、細く裂いたカニの鮮やかな赤色をリボンに見立て、おにぎりを中身が見えない贈り物のようなもの、と捉えて作った下田知世さんの「おにぎり弁当」の3つでした。

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