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美味しい山梨を作るプロジェクト 共同レシピ開発編

シェフ同士の交流から生まれる新たな価値

 いよいよ、笛吹市にあるブライダルヴィレッジ・ミラベルの厨房を貸し切って、共同レシピ作りがはじまった。 それそれ、イタリアン2チーム、和食、中国料理、フレンチの5チームに分かれて作戦会議。使いたい食材の打ち合わせや、目指す料理の方向性などを決めていく。とくに山梨県で働く若手シェフたちは、日本を代表するトップシェフたちの発想やアイディアに驚きの連続の様子だった。
厨房には、食材探しツアーを経て厳選された地元の新鮮な食材が準備されていた。
秋から冬にかけて本番を迎える「天然鹿」に注目したのは、意外にもジビエで使い慣れたフレンチチームではなく中国料理チームだった。中央市にある「四川菜館」で腕を振るう藤原順一シェフは、山梨県出身で東京の料理店で腕を磨いた経験もある。

「この見事な鹿のもも肉を、ウコン、生姜、ニンニクなど滋養効果のある薬味、季節の野菜といっしょに土鍋で煮込むのはどうでしょうか」
そう提案すると、丸の内にある「四川豆花飯荘」の遠藤浄シェフも、
「僕たちは四川料理だから豆板醤を使ったメニューもやりましょう。鹿のローズ肉を使った四川チリソースなんていいんじゃないでしょうか」
と、次々にアイディアが飛び出す。そして、そんな会話の間にも中華包丁を豪快に操り、次々に下ごしらえを進めていく。結局、「甲斐サーモン・トマト・ホウレンソウのゆば巻揚げ」を含む三品を完成させた。

山中湖村にある「お食事処大豊」の厨房を預かる羽田豊さんは、およそ100年の歴史を誇る江戸前寿司の名店、「銀座寿司幸本店」の杉山衛さんの仕事に見入っていた。
「僕たちのような地方の料理人が、東京の一流シェフといっしょに仕事をさせてもらうこと自体、すごいことなんだと思います。まるで手の届かない、雲の上の存在の先輩とご一緒させてもらうのですから、とても緊張しています」
杉山さんの狙いは、せっかく生で食べることを目的に生産された「甲州サーモン」を寿司ネタとして考えているようだ。
「私どもの店ではお寿司にワインを合わせるお客様が多くいらっしゃいます。山梨はワインの産地でもあるので、ただ握るのではなく、少し遊びを施して、山梨が誇る甲州ワインとのマリアージュをめざしたいと思います」
寿司ネタといえば魚。杉山さんは必然的に甲州サーモンに興味を示していた。しかし、そこはプロである。食材が悪ければ使うことができない。中でも川魚は独特の臭みがあるのでハードルは高い。江戸前寿司では、寿司ネタを酢で〆たり、醤油に漬け込むなどひと手間の仕事を施すのが流儀である。
杉山さんの指示にしたがって、サポートに徹する羽田さんが甲州サーモンに包丁を入れる。目の覚めるようなオレンジ色の身を試食した杉山さんはニッコリ。この状態であれば握りでイケるとワインや柑橘などを使ってサーモンにひと仕事。
2種類の握りと、甲州ワインビーフ、栗、サツマイモ、天空かぼちゃなどを用いた江戸前のバラチラシを完成させた。

この他、「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ」総料理長ステファノ ダル モーロシェフは信玄豚を使ったラグー(煮込み)でイタリアンの王道を見せつけ、「イル ギオットーネ」オーナーシェフ笹島保弘シェフは、山梨の郷土食材で、小麦粉で作ったほうとうを使ったパスタで地元関係者を驚かせた。「ル・シズィエム・サンス・ドゥ・オエノン」 のドミニク・コルビシェフは山梨産の野菜を使ったフレンチの定番ポトフを披露。柚子と地元の醸造酢を使ったグリーンマスタードをアクセントに添えた。
3時間にも及ぶ共同レシピ作りはこうして幕を閉じた。どのチームも作り出したら止まらない。食材を前に料理人魂に火が付いたようだ。

翌月、11月7日(日)には、今回のプロジェクトの集大成として、実際に食材を提供してもらった生産者、山梨に住む一般の方を招いた「イートアカデミー in 山梨」が開催され大盛況のうちに幕を閉じた。
今回のプロジェクトは、丸の内シェフズクラブのメンバーが、丸の内を飛び出し、地元のシェフといっしょに食材を探し、共同レシピ作り、地元の人に披露するという半年もの時間をかけたイベントだった。

四川豆花飯荘・遠藤浄シェフは今回のプロジェクトの意義をこのように語る。
「同じジャンルで、しかも地方で頑張るシェフには刺激を受けます。素晴らしい食材があると、共同で料理を作るといっても言葉は不要なんです。だって、同じ料理人ですから到達点は同じです。こうしたシェフ同士の交流が日常的に行われるようになれば、地域の素晴らしい食材がもっと首都圏に広がるのではないでしょうか」

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