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二大シェフによるスペシャルディナー 恵比寿 笹岡×四川豆花飯荘

【笹岡】和食と中華って料理の組み立て方がそもそも違うと思っていました。例えば、火入れひとつとっても和食の場合は鍋を沸騰させることなんてまずありません。穏やかにフツフツと火を入れて、じっくり食材に味を含ませて、お客様に提供する直前に再び温める。一方、中華の場合、食材の下処理をした上でその旨みを逃さないように一気に火を入れて味を決める。まさにスピードが命ですよね。しかし、遠藤さんの仕込みや調理を見ていて新たな発見があったんです。それは、確かに中華と和食は、完成までのプロセスは違う。けれども、求めている着地点は同じなんだなということです。「食材の旨みを逃さずに引き出す」、「食感や出来上がりの色を重視する」「食材そのものの味を尊重する」。結局、目指しているゴールが同じであれば、あとはコースの組み立て方や味のバランスは何とでもなる。よし、これはいけるぞって思いました。

【遠藤】お互いお店で料理は食べても、違うジャンルの料理人の厨房に入る機会はないじゃないですか。私も和食が好きで食べる機会も多いのですが、昔から和食の出汁って興味がありました。よし、今回は王道の中華食材フカヒレに和食の繊細な出汁を合わせよう。試作の段階から笹岡さんに「昆布」「カツオ」「昆布とカツオ」「宗田節」「サバ節」と様々な和食の出汁を味見させてもらいました。これは貴重な経験でしたね。中華の王道は上湯と呼ばれる最上級の チキンスープを使うのですが、それに負けないフカヒレに合う出汁は昆布とカツオの合わせ出汁でしたね。中華のスープで下煮をして、臭味や雑味をとった後に、スッキリとした合わせ出汁で仕上げる。これが本当に合うんですよ。考えてみれば同じ海の素材だし、こういうのもアリだよね。そうお客様に思って頂けたのが本当に嬉しかったですね。

【笹岡】最初の一皿は和食の王道「お浸し」を出そうと決めてきました。開催場所が中華のレストランということもあり、最初の一皿でサプライズをやろうと。しかも、ちょうど季節は晩秋、暦の上では「立冬」も間近でした。 そこで、茄子と舞茸にはあえて焦げ目をつけ、晩秋のお野菜の代表でもある春菊と合わせました。中華では表現しにくい季節感をコースに盛り込みたいという趣向です。そして、煮しめ、茶碗蒸し、土釜ご飯などの和食の様々な技法コースに取り入れました。中でも締めのご飯。今回は新米だったということもあり、これだけは中華の強烈な窯では難しいので、普段使い慣れているガス台で慎重に炊きあげました。

【遠藤】中華のシェフの頭の中には、カツオと昆布の合わせ出汁でフカヒレを煮るなんて考えないですよね。これは面白い。今回、私は最初から「融合」にこだわりました。中華と和食を別々に出すのではなく、ひとつの料理として、同じ皿の中でちゃんと完成されていないと面白くないじゃないですか。最初の皿はサプライズで和食。次の前菜はバランスよく中華と和食を半々。それ以降のお皿は、まさに日中融合の創作でしたね。こういう挑戦は大事だと思います。こういう機会がなければ絶対に考えないし、このイートアカデミーは料理人にとってはとても貴重で幸せな時間なんですね。

【笹岡】これからの季節は根菜のシーズンでしたが、中でも人参はよかったですね。コースの中でも、極力、伊賀野菜は皮付きで提供しました。とくに「煮しめ」は、人参、かぼちゃ、里芋、レンコンなどを別々の鍋で時間をかけて煮しめました。関西では人気が高い伊賀米も、米の粒は小さかったのですが、給水させるとこれが見事に膨らみ、香り、味ともに申し分ないですね。生産者の気持ちに応えるのが料理人の使命ですから、素材の味を潰さないで引き出すことが重要ですね。

【遠藤】印象に残っているのはホウレン草。今回はフカヒレ料理の付け合せに使いましたが、目の覚めるような味の濃さがあって、濃厚なフカヒレの味を切るのに最高でした。あと、伊賀牛のヒレ肉の柔らかさには驚きました。ヒレであってもうっすらと霜が入っているので柔らかいのは当たり前なんですが、やはり上等な肉でしか体験できない食感はあるものです。これからも生産者との交流を深めていきたいですね。何より野菜の作り手に喜んでもらうことが一番ですから。

【笹岡】遠藤シェフって繊細なんですよね(笑)。別に見た目がそうじゃないとかそういうことではないのですが、最後の盛り付けまで手を抜かない。中華の厨房を見るのは初めてでしたが、驚くと同時に面白い。とても貴重な体験をさせて頂きました。

【遠藤】何かが突出するのではなく、お互いにバランスよく穏やかに料理ができました。とても満足です。今度は私が和食の厨房に出向いてアウェイでやってみたいですね。楽しみにしています。

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