キッチンでチーム力UP!
「HAKKO TEAMBUILDING」vol.01「愛媛の旬を発酵食でさらに美味しく」レポート
5月18日(水)に開催された第1回のテーマは「愛媛の旬を発酵食でさらに美味しく」。講師は発酵をテーマにしたオンライン料理教室「Kitchen studio たべものさし」を主宰し、黒麹甘酒や発酵調味料のオリジナルブランド「1day1spoon」も手掛ける発酵料理家の村上友美さん。愛媛県宇和島市にある味噌蔵で、お味噌のお取り寄せでも人気の井伊商店3代目・井伊友博さんをゲストに迎え、発酵食を使ったメニュー作りに取り組みました。
HAKKO TEAMBUILDINGとは
HAKKO TEAMBUILDINGは、料理を共に作り、共に食べる行為を通じて行うチームビルディング。デスク上で行われるものが多いチームビルディングですが、近年、世界中のクリエイティブスタジオでは、ランチやディナーの時間をシェアすることでチーム力のアップにつなげる動きが見られています。
HAKKO TEAMBUILDINGが体感できるMY Shokudo Hall & Kitchen の伊藤秀美さんは、「まさに『同じ釜の飯を食う』ですね」と微笑みながら、ベルリンを拠点に活躍するアーティスト、オラファー・エリアソンが共同キッチンをスタジオに併設し、チームビルディングに活用している事例などを交えて、本企画の背景を参加者に説明。多様な働き方を個々人が選べるようになったコロナ以降、チームメンバーとのコミュニケーションをなめらかにするため、試行錯誤している企業は多いことでしょう。そんな課題解決のひとつとして、人と人とがつながれる場所=食卓を提案。加えて、共に調理から取り組むことで、仕事中には見えづらい長所やパーソナルなことを知ることができる機会を得られるのです。実は、MY Shokudo Hall&KitchenでHAKKO TEAMBUILDINGを開くに至った背景には、伊藤さんの実体験もあります。
「私が所属する企業はデザイナー、Webデザイナー、編集者、建築家など異なる職種のメンバーが集うクリエイティブスタジオです。当初は、担当者それぞれがどんな仕事をしているか分からない状況でした。一方、私たちに依頼がきていたのは食のプログラム作りや食関連のブランディングの仕事です。当時の私たちは、仕事の合間に自席でお弁当を食べたり、近場のお店で適当に買って食べていたりして…、『食の仕事をいただいているんだから、しっかり食に向き合わないと!』と。そこで、コロナ禍が始まったころにまかないを始めたのです」
自分たちでまかないを作る合間で、家族の話題になったり、異なる部署の人に仕事の悩み相談をする人が出てきたりと、キッチンを共にする良さを実感したメンバーたち。そんな経験も生かし、EAT&LEADと共に開発されたプログラムとなっているのです。
では、どうしたら参加しているみなさんが楽しみながらチーム力をアップできるか? 考えに考えた結果、次のようなルールを設けることにしました。
・仕事の話はできるだけ控えましょう
・ポジティブなシェアをしましょう。できれば一人1回誰かを褒めましょう
・困っている人がいたら助けましょう
仕事上での立場は一旦置いておき、対等な関係性で調理に臨むこと。関係を深めるためにも、メンバーの様子をよく見ること。こうした狙いが込められたルールです。
美味しい香りの広がりと共に、増える笑い。愛媛の発酵食の奥深さを実感。
今回ご参加いただいたのは、株式会社クラレ人事部採用グループのみなさん。プログラムの主旨をアナウンスされたのち、さっそく今回の講師、たべものさしの村上友美さんにバトンタッチ。
Vol.1のテーマは「愛媛の旬を発酵食でさらに美味しく」。今回、参加者の皆さんが作るメニューは以下の5品。
・愛媛県産豚肉の生姜焼き
・井伊商店の麦味噌を使った豆腐豚汁
・発酵玉ねぎドレッシングのサラダ
・発酵胡麻ダレの白和え
・減農薬栽培のにこまるごはん
調理に入る前に設けられたのが、イベント名にも入っている「発酵」についてのレクチャータイム。「実は発酵と腐敗はそんなに大きく変わらず、体にいい作用があれば発酵、悪影響を及ぼせば腐敗なのですよ」との説明に、参加者からは「へえ~!」と驚きの声が漏れます。
今回、活躍する発酵食品の一つは甘酒。甘酒の原料には酒粕と米麹の2種類があること、今回使うのは米麹由来の甘酒であることが紹介され、味見用の甘酒が各自ひとさじ振る舞われました。男性参加者は「甘い!」と一言。村上さんは笑顔でうなずき、「発酵のおかげで白米を食べたときよりも甘みが出るんです。今回は、砂糖の代わりに甘酒を使っていきます。生姜焼きの漬け込みにも甘酒を使います。肉の臭み消しにもなりますし、麹には肉を柔らかくする効果もあるんですよ」と普段の料理にもすぐ役立ちそうなノウハウもシェア。
また、豚汁に使う井伊商店の麦みそは、今回のもう一人のゲスト、井伊友博さんが3代目を務める井伊商店のもの。合わせるのは麦みそと相性のいい豆乳です。
簡単な工程の説明を経たあとは、さっそく調理タイムへ。席から立ち上がり、手洗い消毒、エプロン着用と手を動かしていると、自然と場の雰囲気が和むのか、早くも楽しげな雰囲気に。
さっそく役割決めを行います。村上さんからの「普段から料理をする人~!」の呼びかけに、思わず一斉に目を伏せる参加者たち。その一瞬の沈黙に思わず笑いがこぼれながらも、参加者側から「じゃあ、私が野菜をカットする係をやります」と話が進み始めました。
作業が進められる中、村上さんからは随所で全体や個々人にアドバイスが。最初に取り掛かった炊飯では、「麹を入れたあと、少し時間をおけたらベター。また、混ぜると底に甘酒の糖分が溜まり、おこげになるため、それが嫌な場合は混ぜずに炊きましょう」、豚汁に入れるしめじでは、「大きいのは半分に割くといいですよ」と参加者に促します。
野菜のカットを担当したのは2名の女性参加者。切りながら、「これぐらいのサイズでいい?」「何か斜めになってるかも」と会話が弾みます。「切り方に性格が出るよね」と笑い合う姿も見られました。
一方、他の参加者は「すりおろす係」、「調味料を混ぜる係」などを担当。中には「私は応援する係をやります」と冗談交じりに宣言する参加者も。作業が進むにつれ、徐々に笑いが増えていきます。
豚汁用の野菜を炒める工程のときには、「私が追加の野菜を入れますね」、「大根が半透明になったかチェックする係やります!」という具合に、参加者側から自発的に新たな役割を生んでいく場面も。「すごい絶妙なタイミング!」、「勘ですよ~(笑)」など、互いを褒め合うシーンも見られました。
また、合間には「私だけみんなと距離があるんです」というドキッとする発言も。一瞬戸惑った様子を見せた村上さんに、「物理的に。私だけ大阪勤務なんですよ」と返して笑いが生まれるなど、参加者同士だけではなく、講師の村上さん、ゲストの井伊さんとの距離も縮まっていく様子が印象的でした。そんな“距離感”を感じさせないチームワークは、ここがキッチンということもあってより際立ったのかもしれません。
炒めている最中には、材料や味噌に関する話題も。「豚汁にしめじを入れたことがない」と言う参加者がいたり、普段使っている味噌は何味噌かという話で盛り上がったりするなど、職場ではあまり知りえないメンバー同士の食生活も垣間見える機会になりました。
続いては、生姜焼きの仕上げです。強火ではなく、じっくり火を入れるのが美味しく作るコツ。「つい強火でやってしまう」と言う参加者に「せっかちなのでわかります!」と笑って返す村上さん。
そうこうしているうちに、キッチン内に香ばしい香りが充満していきます。そこで、「お皿選び係」、「盛り付け係」が始動。「全員同じお皿にする?」、「白和えは一人一人和えて違うお皿にしたい」と、女性参加者が盛り上がりながらお皿をセレクトしていました。
「心を込めて選びました!」と運ばれたお皿に、各メニューを盛り付け。盛り付け方や量も参加者たちが考えて行います。「一人分だけ白和えが山盛りだよ!?」など、ここでも笑い声が聞かれました。
味噌トークも交えつつの実食タイム
記念撮影を終えたあとは、いざ実食タイム。ドリンクはアルコール・ノンアルコールの2種類をご用意。アルコールは新居浜市「近藤酒造」の真穴みかんを使ったクラフトジンを使ったジントニック。ノンアルコールは西予市「無茶々園」の有機レモンを使ったさっぱりレモンサイダーです。
「ごくごく飲めてしまえる味ですが、アルコール度数は40%なので気を付けてくださいね!」と村上さん。その味わいに、アルコールを選んだ参加者からは「確かに」という感想が聞かれました。
料理では、男性参加者から「豚汁がまろやか」との感想も。井伊さんとの味噌トークになり、井伊商店の麦みそは国内でも珍しく大豆が一切入ってない麦みそであること、無添加の味噌は冷凍保存すれば品質を高く保って保管できることが紹介されました。「国の指針で味噌にも賞味期限を設けるようになりましたが、それまで味噌には賞味期限はなく、当たり前に長期保存されるものだったんです」との説明に、参加者たちは興味深い様子で聞き入っていました。
終始和やかなムードで進んだ第1回目のHAKKO TEAMBUILDING。あっという間に時間が過ぎ、「美味しかった」「楽しかった」と笑顔でのお開きとなりました。
HAKKO TEAMBUILDINGで楽しく美味しくチーム力の向上を
第1回終了後、全体の様子を見ながらサポートをしていた伊藤さんに、今回の様子について伺いました。
「調理の最中でそれぞれの出身地のお話が出てきたり、家庭で食べている味噌の話題になったりと、和やかな雰囲気が良かったです。今後、もっと良いプログラムにしていくため、今後もがんばりたいです」
キッチンと食卓を囲む時間が、チーム力の向上につながる。HAKKO TEAMBUILDINGは、今後もミシュランの星付きトップシェフから学べたり、生産者の方をお招きしたりと魅力的な講師の方々のラインナップ。このプログラムを通じて、今後どのようなコミュニケーションが生まれるのか、ビジネスパーソンの方々がその感覚を仕事に生かしていってくださるのか、私たちも楽しみです。
>>「HAKKO MARUNOUCHI 2022 Spring」イベント概要はこちら
https://shokumaru.jp/hakkomarunouchi2022-sp/