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「Food Made Good Japan Awards2021」レストランにとってのサステナブルを考える

イギリスでは2010年から1年に1度開催されてきた「Food Made Good Awards」。2021年11月15日に行われた「Food Made Good Japan Awards2021」は、日本では初めての開催となりました。会場は常盤橋タワーのMY Shokudo Hall & Kitchen 。オンラインでのライブ配信も行われました。

アワードを主催する日本サステイナブル・レストラン協会は、イギリスのSustainable Restaurant Association(SRA)と連携し、日本で立ち上げられた団体です。メンバーとなるレストランの他、企業、サプライヤーとパートナーを組み、グローバル・ローカル組織と協働しています。

イギリスのSRAでマネージング・ディレクターを務めるJuliane Caillouette-Nbleさんからは、本アワード開催にあたり次のようなメッセージが寄せられました。

「日本でアワードが開催されることに興奮しており、日本の実践者の皆さんの多大な努力、参加者であるレストランの皆さんに感謝しています。ファイナリストの方々の健闘を祈っています。素晴らしい取り組みについて話を聞くことが楽しみです」

当日の様子はYOUTUBEでも公開中!

今回の評価のポイントは?

「どのように原料がとられ、どういった経路、加工、消費がされているのか、システムとして改善を図ることが廃棄ロス削減につながります。また、サスティナビリティに関する取り組みをレストラン内だけで進めるのではなく、お客さんや社会との窓口となり、外にも広げていく役割を担うことを期待しています」と語ったアドバイザー、三沢行弘さん。同アドバイザーの山口真奈美さんも「レストランは前向きにサステナブルな気づきを得られる素敵な場」だとし、各レストランの規模が大きくなっていったときに、どうすれば調達や関わる人たちの働き方を良いものにできるのかを考えることが大切だと述べました。

食品ロス問題ジャーナリスト井手留美さんは、環境部門に対し、食材を使い切ること、調理に使うエネルギーを減らすことを評価ポイントに挙げる他、食品廃棄ロス改善が「経済」「環境」「倫理的な問題」の3点の改善につながると説明。認定NPOフェアトレード・ラベル・ジャパンの潮崎 真惟子さんは、オリジナリティのある発想から生まれた取り組みのユニークさを評価し、今後はNPOやNGO、地域コミュニティと連携することで、レストランの枠組みに留まらない活動をより一層期待したいと発言しました。

いよいよ受賞レストランの発表です!

本アワードで選ばれる賞は、大賞の他、調達、環境、社会部門の計4つです。ノミネートされたレストランの中から、どのレストランが受賞するのでしょう?

■調達部門

調達部門に選ばれたのは、「KITCHEN MANE」。野菜の生産者、魚介類を仕入れている漁師を直接訪問し、未利用魚の積極的な利用などを行っています。直接調達することで、トレーサビリティの確保ができていること、地産地消にも積極的に取り組んでいます。親会社が定めている調達方針は包括的で具体性があり、行動に落とし込みやすい点が高く評価されました。調達の際の温室効果ガスの排出量を最小限に抑える取り組み、グランドメニューをあえて定めていない点も受賞に至った理由です。

(受賞コメント)
今後とも、持続可能な社会に向けてどういった活動をしていけば、この先の未来で楽しく食を続けられるのかを問い続けていきたい。難しく考えるとどこから手を付けていいか分からなくなるため、まず身近にある調達など、できるところから始めていくことが大切だと思います。

■社会部門

「御料理茅乃舎」が受賞しました。顧客だけではなく、雇用している社員を大切にしている点が評価につながりました。生き生きと働ける制度の他、スキルアップ支援制度や休暇制度、ワークライフバランスの推進を積極的に実施。また、国内の社会貢献活動団体への寄付活動も行っています。提供メニューにおいては、健康と栄養を考慮したメニュー開発をコンセプトとし、顧客からも「健康に配慮した食事」と認知されている他、アレルギーにも個別対応。これらの素晴らしい活動を総括し、社会部門受賞となりました。

(受賞コメント)
博多から40~50分行ったところにある山の中、蛍が出たり、夜には鹿が降りてきたりといった環境にある店です。今後ともサステイナブルをキーワードにがんばっていきたいです。自分たちの店だけではなく、社会のことを考えることで、少しずつサステイナブルな意識が芽生えてくるのではないかと思います。

■環境部門

ほぼ満場一致で「BOTTEGA BLUE」が選ばれました。食材を丸ごと使用し、端材を出さない「ノーズ・トゥー・テール調理法」やベジブロス作り、コンポストの活用といった工夫で、食品廃棄がほぼゼロに。テイクアウト用にもプラスチック製品を一切使わず、サプライヤーとはリユースできる通い箱を活用。無駄な容器包装廃棄物を出さない取り組みを行っています。従業員のリサイクルに関する教育も徹底し、再生可能エネルギーの使用率も100%と、環境負荷を軽減する取り組みが受賞につながりました。

(受賞コメント)
迷いながらやってきた自分のやり方に自信を持てました。光栄です。四季折々の風物詩に恵まれていた自分の子ども時代にタイムスリップすることは難しいですが、少しでもあの頃の景色、感覚に戻れるよう、取り組んでいきたい。

■大賞

「haishop café」が受賞。社会の今までの概念を変えるような取り組みが評価されました。看板メニューにはヴィーガンメニューを据え、地元市場から出る廃棄野菜をジュースにして販売するなど、地域の食品ロス削減にも貢献。自社や経営者だけではなく、地域や従業員を巻き込みながらサスティナビリティの新しい取り組みを進めています。従業員を「サステイナブルデザイナー」に任命することで、一人一人が自ら考えて工夫し、組織全体で取り組みを発展させる仕組み作りを実施。学生、地域、NPOとも連携して取り組みを進め、社会的な発信をビジネスと両立させていることへの評価が、大賞の受賞へとつながりました。

(受賞コメント)
サステナブルの道と食の道をどう進めていくのかを考えています。僕たちの活動は自分たちだけではなく、多くのパートナーの支えがあって進められてきたものです。何よりも、弊社スタッフ、「サステイナブルデザイナー」が対話を繰り返し、一つ一つ積み上げてきたことが受賞に至った理由だと思っています。サステナブルは「あり方」。ずっとあり続け、追求していきたいです。私たちもまだまだ完璧ではなく、日々勉強の日々。これから取り組む人にも、完璧でなくていいから多種多様な人と対話をし、小さくていいから選択、決断、実践を大切にしてほしいと思います。

受賞発表後、アドバイザーたちからメッセージが寄せられました。ここでは、アジアベスト50レストランで「サステナブルレストラン賞」を授賞したレフェルヴェソンスのシェフであり、自身の様々なサステナブルな活動に取り組む生江史伸さんからのメッセージをご紹介します。

「飲食業を通して、サスティナビリティについて起こせるアクションは多岐にわたるため、一つ一つの問題に解決方法が必要です。複雑かつエネルギーのいることと思いますが、日々の自分たちの業務以外で、そこにどれだけの力を発揮できるのか、それこそが人間性の発露であり、レストランとしての仕事の最重要事項ではないかと思っています。問題が山積みになっている中、一つ一つに向き合い、疑問を持ち続けて一つでも取り組んでいってもらいたいですね。『できない』と嘆くのではなく、働きながらできないことへの解決方法も見出していけたら、すごく楽しい世界になるのではないでしょうか」(生江さん)

レストランができる、サステナブルは取り組みとは?

総評として、主催者の下田屋毅さんは「2020年、2021年はコロナによる厳しい状況があった」と触れ、「困難な状況で人間としてどうあるべきなのか、どう健康を維持していけばいいのか感じさせることが運営側にもあったのではないか。サスティナビリティを推進する上で、環境とどう共存していくのか、どう調達して提供していけばいいのか、より一層気づかされたのではないでしょうか」と述べました。そうした大変な状況下においても、加盟店のメンバーとコミュニケーションを取って進められてきたことにお礼を述べ、「活動を大きくしていくためにも、今後とも一緒にやれたら」とまとめました。

続いて、理事の小松武司さんが閉会の挨拶を述べました。

「インフラが整わなければ実現できないこともたくさんあり、企業が動くことが重要です。高い意識がリードするため、ここに集っている皆さんのリーダーシップに感謝しています。SDGsは人権の問題と環境の問題とに切り分けられますが、集約するとすべて人権の問題であると考えています。今の環境問題は、未来の人権問題につながるためです。今、我々が代償を払うことで、未来の人権問題を先送りにしないことが重要。ぜひ、この受賞で拍車をかけ、次世代に送ることのないよう、活動を進めていっていただきたいと思います。協会としても、賞をスタートとして取り組んで参りたいと思います」

今回の受賞者の取り組みは多岐にわたり、レストランのサスティナビリティ活動が単なる食品ロス削減への貢献に留まらないことがわかる結果となりました。レストランがSDGsに取り組むことは、地域コミュニティやお客さんなど、その先に取り組みを広げていくことにつながります。「今、向き合わないことは、未来を生きる人たちから搾取すること」だと認識し、小さくとも今できることから始めていきたいものです。

最後に、今回ファイナリストにノミネートレストランを下記にご紹介します。それぞれの取り組みをぜひ参考にしてみてください。

・BOTTEGA BLUE(兵庫県芦屋市)
「もったいない精神」を大切に、フードロスをゼロにする取り組みを当たり前のように行っています。また、路地裏農園での有機栽培や若手の教育への注力など、さまざまなチャレンジも行っているレストランです。

・PIZZERIA GITALIA DA FILIPPO(東京都練馬区)
商店街内の空きテナントを2件買い取り、地域コミュニティへの貢献を行っているピッツェリアです。

・御料理茅乃舎(福岡県久山町)
メニューの半分が野菜料理という、西日本最大のかやぶき屋根を持つ店。地元米農家から米を調達し、店で籾摺りから仕込んでいます。料理だけではなく、店全体で和のサスティナビリティを発信する日本料理屋です。

・BELLA PORTO(大阪府大阪市北区)
レストランから車で1時間ほどの場所に畑を設け、若手と共に通っています。農家と二人三脚で野菜作りに挑戦。

・KITCHEN MANE(神奈川県横浜市)
漁師から未利用魚を箱ごと送ってもらって料理に使うなど、お客さんが尋ねたくなるメニューを提供。気づきを与えられる工夫を凝らしています。

・haishop café(神奈川県横浜市)
ヴィーガン料理の提供や契約農家の規格外野菜の店舗販売、社会課題をテーマにした映画の上映会など、さまざまな取り組みを実施。その物事がなぜ大切なのか、背景部分の発信を継続的に実施しています。

・KIGI(東京都千代田区)
魚が獲られる漁港にまで意識を向けたり、使用製品をフェアトレード製品に切り替えたり、近くの有機栽培農家から野菜を仕入れたりといった取り組みを行っています。コンポスト大臣を任命し、ミニマムな循環も実践。

・OPPLA’! DA GITALIA(東京都練馬区)
地元農家から食材を仕入れ、野菜をふんだんに使ったイタリアン料理を提供。子ども向けピッツァ作り教室の開催、障がい者が生産に携わる農作物の仕入れ、商品のパック詰めを福祉施設に依頼するなど、地域コミュニティへの貢献にも積極的に取り組んでいます。

・SELVAGGIO(愛媛県松野町)
滑床渓谷という大自然の中、ミネラル分が豊富な水が流れる環境にある店。松野町の山菜や愛媛県宇和島の鯛など、地元の旬の食材を豊富に使用する、自然と共生するレストラン。

・L’OSIER(東京都中央区)
3年連続でミシュラン3つ星を獲得しているフレンチレストラン。フランスの料理を空間からサービスまで体現させています。シェフ自らが全国各地の生産者を回り、信頼できる農家と共に有機栽培や土壌改善、微生物を使った新農法を実験しながら普及しています。

・FARO(東京都中央区)
新しい食文化を発信するため、2018年にリニューアルオープン。イタリアをキーワードに、ヴィーガンなど多様性に対応できる料理を提供。「美味しく食べて、体の中から美しく」を求めるお客さんに応えています。

・Graal(宮城県仙台市)
素材から季節を感じてほしい、宮城の食文化を伝えたいという思いを持つシェフが料理を手掛けています。東北地方の第一線でサスティナビリティの空気を浸透させたいというオーナーの判断により、東北のSRA第1号店として今年からSRAに加盟しました。

・Niseko Chise Garden(北海道ニセコ町)
農家発のレストラン。ほとんどの食材を自社農園から仕入れています。自然栽培にこだわり、レストラン建設の際の建材も環境に配慮されたものを使用。地域の学校活動に食分野で参加するなど、網羅的かつローカルにサスティナビリティ活動を行っています。

・日本料理 富成(石川県輪島)
完全予約制の和食レストラン。ほとんどの食材を能登地域内から調達。料理長は町の漁業協同組合の事務局長も務め、川や里山の保全活動、小学校への食育活動にも取り組んでいます。

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