【FOOD INSPIRATION】ステファノ・ダル・モーロ #イタリアの食文化

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“限りある資源の中で、豊かな食の多様性を次世代へ繋いでいく”そのための知恵や私たちが取り組むヒントを各分野のキーパーソンにインタビューする【FOOD INSPIRATION】。今回は丸の内ビルディング 36階に店を構えるイタリアンレストラン「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ東京店」。イタリアで2番目にミシュラン三ツ星を獲得した名店「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ」の味を日本に伝えるこの店でシェフを務めるのはステファノ・ダル・モーロさん。日本に来て27年になるというステファノさんと、神戸大学名誉教授、NPO法人「ごみじゃぱん」代表理事で日本の食品ロスの第一人者である石川雅紀さんに、日本とイタリアの食文化、そしてそれぞれの国での食品ロスへの取り組みについて伺いました。

イタリアの食文化に学ぶ、食品ロスへの取り組み

日本では自分で料理を作り、家族で食卓を囲む時間が失われつつある

まず、イタリアと日本の食文化の違いについて、「イタリアでは、自宅で料理を作って家族皆で食べることを大切にしています。日本ではそういう時間が減ってしまっていますね」とステファノさん。日本では親の仕事のために子供と時間が合わず朝も夜もバラバラに食事をしたり、便利なコンビニやスーパーの惣菜に頼ってしまう家庭が多いために、食に対する意識が低くなっていると話します。「一品だけでも、自分で料理を作るということが大切です。自分で買い物をすればそれがどこの食材かを気にするようにもなり、健康に良いものを食べようという意識も生まれます。エコ・サスティナビリティ(環境と食品の持続可能性)への関心も高まるでしょう」。

イタリアにはコンビニがなく、24時間365日、ほしいものが何でもあるという環境ではないそう。魚も禁漁の時期がきちんと決められていて旬以外のものがスーパーに並ぶことはなく、野菜や果物、惣菜も過剰に用意されているわけではないので、売り切れることもしばしば。その中でイタリアの人たちは自分の家族が食べる量を計算し、過不足のないように買い物をして、食べ残しなどのロスがないように管理をしているのだそうです。「コンビニやスーパーの惣菜を買うと、どんな食材を使っているかもわかりませんし、家族の食べる量に合わせて作られたものではありませんから、余って捨ててしまうことも多くなります。食品ロスの大きな原因になっていると思いますよ」。

買いすぎない。ゴミを出さない。一人一人の意識が大切

NPO法人「ごみじゃぱん」代表理事として日本の食品ロス問題に取り組んでいる石川さんは、「私たちは日本の一般の方たちに協力していただき『食品ロスダイアリー調査』を実施して、家庭ではどんな理由で何を捨てているかを調べました。その結果、ある程度メニューを決めて足りないものだけを買い足す人は食品ロスが少ないようですね。スーパーで食品を見てからその場でメニューを決める人はロスが多い。計画性を持って毎日の料理を作ればロスが少ないということでしょうか」。それに対しステファノさんは「イタリアではおそらく1週間のメニュープランを大まかに決めておいて、それに沿って食材を買い足していくスタイルだと思います。なのでロスが少ない。冷凍庫に何が入っているかもホワイトボードなどで管理して、きちんと消費していきます」。

「日本では“冷凍庫の中の化石”が多い。余ったものを捨てるのがもったいなくて、とりあえず冷凍庫に入れるけれど、結局食べずに捨ててしまう」と石川さん。「それに、日本人は賞味期限を気にしすぎています。1日でも賞味期限を過ぎるとまだ食べられるものでも捨ててしまう。イタリアでは自分で判断して、まだ食べられるものは捨てませんよ」とステファノさん。家庭ではそのような違いがある一方、イタリアでは社会的にも食品ロスへの取り組みが盛んに行われているのだそうです。「食べられるギリギリになってしまった食品を一流料理人が調理して路上生活者に振る舞う『レフェットリオ』などボランティア活動も盛んです。家庭で食べきれない食材は洋服のようにリサイクルに出すこともできます。近隣の人たちと分け合うことも多いですが、日本ではそういう文化がなくなってしまいましたね」とステファノさん。

 

「日本でも規格外品などを福祉施設などへ提供する『フードバンク』の活動が始まっていますが、運営が大変で広まりづらい部分がありますね」と石川さん。国のバックアップのもと、取り組みがもっと大きなものになることが望ましいと話します。そして私たち一人一人も、真剣に考えなければならない食品ロス。ステファノさんも、「私の店では、来客数のデータをもとに食品の仕入れをグラム単位で厳密に管理し、余らないようにしています。さらに『捨てるのはもったいない』という意識をスタッフ皆が持ち、日々生ゴミが少なくなるようにしていますよ」と言います。

日本では、食べられる食品が年間約643万トンも捨てられていると言われています。私たちも家庭で食べられる以上のものを買いすぎず、生ゴミ・食べ残しを減らすようにしなければなりませんね。

Profile
ステファノ・ダル・モーロ
日本歴27年、「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ東京店」のシェフを務める。ベネチアサミットで料理を作ったイタリアンシェフの巨匠エットーレ・アルツェッタ氏の下で修行後、パリのリストランテ・カルパッチョの総料理長アンジェロ・パラクッキー氏に師事。日本の食材を使いながら、クラシックかつモダンなイタリア料理で自身の完成を表現する。

アンティカ・オステリア・デル・ポンテ
https://www.marunouchi.com/tenants/1125/