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vol.01のテーマは「おいしいお出汁の取り方」

講師の大黒谷寿恵さんは2009年に鎌倉で料理教室「寿家」を開業し、ケータリングや出張シェフ、レシピ開発など幅広く活躍。実は今回の会場となったMY Shokudo Hall&Kitchen内にある「みそスープBAR」のメニュー監修も務めています。みそスープBARで大黒谷さんのメニューを提供するにあたって、スタッフが受けた大黒谷さんのレクチャーが、とてもためになるもので、ぜひ多くの人にシェアしたい!ということで、今回の企画につながりました。

ワークショップのスタートは、キッチンの前に集まっての座学から。お出汁はシンプルだけれど奥が深いこと、昆布や鰹、煮干し、それらを組み合わせたものなど、さまざまな種類があることを伝える大黒谷さん。メモを片手に熱心に耳を傾ける参加者の姿も見られました。

今回、実践するのは昆布と鰹のお出汁と、それらを合わせた「合わせ出汁」。取ったお出汁はうま味を感じられる旬のお料理となり、後半の食事タイムに登場します。

出汁を取る前に、まずは素材そのもののお味見を。参加者のテーブルに、昆布と鰹節が載ったお皿が配られます。昆布は利尻昆布、真昆布(天然)、真昆布(養殖)、羅臼昆布、日高昆布の5種類。あとは鰹節、まぐろ節です。

「採れる場所により、昆布の種類が変わります。天然真昆布は道南、利尻昆布は北部、羅臼昆布は知床など北海道の右端が産地です。真昆布は大阪で好まれ、利尻昆布は京都で好んで使われています。一番うま味が強いのは羅臼昆布。緑色がお出汁に出やすいのが特徴です」と昆布の説明を受けながら、それぞれを味見。参加者たちは「味わいが違う!」と驚いて顔を見合わせたり、「鰹節だけで食べることなんて普段ないです」と言い合ったりと、新鮮な体験に。

常温で長期保存が可能な昆布。そんな昆布出汁の魅力について、大黒谷さんは「野菜など、素材のうま味を損なわず、そっと持ち上げてくれるような、ガツンとはこない味わいが特徴です」と、私たちがなんとなく感じていたことを、わかりやすく言語化。この言葉を覚えて帰るだけで、今日はちょっと料理上手になったような気がします。

味見を終えたところで、大黒谷さんによるデモンストレーションで出汁の取り方を学びます。

<昆布出汁を取るポイント>
・昆布を水に浸す。8時間ほどおいてじっくり引き出すとより良い。最低でも30分は浸しておく
・湯の温度は60度。水面からほんのり湯気が出るくらいがベスト。沸騰させないよう注意
・使う昆布の量は1リットル当たり15グラム

特に押さえておきたいのは、使う昆布の量です。「よくレシピにはサイズで書かれていますが、昆布によって厚みと太さはバラバラ。長さではなく重さで量った方が間違いありません。料理店でも重さを量っています」とアドバイス。参加者は「へえ~」と小さく驚きの声を漏らしながら、熱心にメモを取ります。

なお、昆布出汁は水出しも可能。「冷たい料理に使うときには水出しがおすすめです」と大黒さん。

続いてデモンストレーションを行ったのは、昆布と鰹の合わせ出汁。耳にしたことがある「一番出汁」「二番出汁」について学びます。

まずは鰹節について。昆布は常温での長期保存が可能だと紹介されましたが、削られた鰹節の常温保存はNG。鰹節は削ったそばから香りが減り、誤った保管方法だと魚臭さが出てしまいます。

また、鰹節にも種類があると紹介。「一般的に出回っているのは荒節と呼ばれるもの。この荒節から作られるのが希少な本枯れ節です。あとは今日持ってきたまぐろ節、その他、さば節などがあります」

ここで、鰹節の削り方もレクチャー。削るときは鰹節の頭から。一面だけを削るのではなく、鉛筆をナイフで削るときのように三面を作るようにして削るといいとのこと。自分で削るためには削り器が必要ですし、削る手間もかかります。何となく億劫さを感じる人もいるのではないでしょうか。しかし、大黒谷さんは「削りたての鰹節は、通常の半量で十分。ここが自分で削る良さです」と削りながら説明。キッチンにふんわりと漂う鰹節の良い香りが、その説明に説得力を持たせました。

<合わせ出汁(一番出汁)を取るポイント>
・水1リットルで取った昆布出汁に対し、鰹節20グラムが目安
・ザルに湿らせたキッチンペーパーを敷き、ボウルの上に浮かすようにザルを設置しておく
・昆布を取り出し、沸騰直前まで温め、火を消したあとに鰹節を入れる
・アクが出ればアク取りをし、すぐさまザルで一気に漉す。鰹節を入れてから1分もいらない

合わせ出汁の一番のポイントは「火を消してから鰹節を入れること」と「入れたあとのスピード感」。大黒谷さんは「時間をおけばおくほど出汁が出ると思われている方もいますが、それは酸味につながるため、すぐに漉してくださいね」と念押し。取った合わせ出汁を味見した参加者からは「おいしい…」という言葉が漏れます。

「合わせ出汁のすごいところは、これだけで完成されたスープになることです」との大黒谷さんの言葉に、実感したようにうなずく参加者のみなさん。

さて、ここまで聞いて学んだあとは、2人1組でいよいよ実践です!

組み合わせの味の違いも楽しもう。ワークショップスタート

今回は、2人ペアでそれぞれが異なる昆布×鰹節(荒節・本枯れ節)orまぐろ節で合わせ出汁を作ります。

先ほど受けた説明通りに手を動かす間も、お出汁や昆布、鰹節トークで盛り上がります。合わせ出汁で作るお吸い物はスピード勝負なため、料理店では出す直前に合わせて厨房で計算をしながら調理をしていること。作ったあとにすぐ蓋を閉じ、閉じ込めた香りをお客様が楽しめるようにしていることが語られ、飲食店で目の前に出されていた椀物にはそんな背景があったのかと気づかされます。

また、離乳食では「昆布だけで十分」とのマメ知識も。合わせ出汁はおいしすぎるため、まずは昆布だしから始めるのが良いのだそう。「母乳の味はグルタミン酸だと言われているので、昆布と相性がいいんですよ」との説明に、参加者からは「へー!」と驚きの声が上がります。

話しているうちに、どんどん昆布出汁が出来上がります。どれが何の出汁かわかるように、鍋には付箋で印がつけられます。異なる昆布で取った出汁を、それぞれ味見し合うことに。特に参加者が目を丸くさせて驚いたのは、羅臼昆布で取った出汁です。「全然味が違う!」と昆布による味の違いを体感していました。

昆布出汁を取ったあとは、鰹節・まぐろ節を使っての合わせ出汁にチャレンジ。「あ、火を消すんだった」など、おさらいしながら実践します。大黒谷さんは「時間ではなく味を見て」「ためらわずに漉してください」とアドバイス。あっという間に合わせ出汁も仕上がりました。

大黒谷さんからは「おいしさは点ではなく幅。ポイントさえ押さえられれば、『おいしい』の範疇には入ります」と心強い一言も寄せられました。

完成後は投票タイム。今回取った合わせ出汁のうち、参加者が一番おいしいと感じたものは「羅臼×まぐろ節」。その次に人気を集めたのもまぐろ節を使ったものでした。参加者からは「鰹節を使ったものはなじみのある味がした」との感想も。

なお、今回使った昆布のうち、天然真昆布は今後2年ほどで採れなくなるかもしれないとのこと。「海水温の上昇により、海の中にいるものの、腐った状態で生きているものが増えているのだそうです」との大黒谷さんの言葉に、参加者は驚いた様子を見せます。食文化を守ることと環境問題との関係を少し理解できるエピソードでした。

合わせ出汁のおいしさを感じられる旬のお料理を提供

ワークショップを終えたあとは、取ったお出汁を使ったシンプルなお料理を楽しむ時間。今回振る舞われたメニューはこちらです。

・レタスとさやえんどう、焼き椎茸のお浸し
・空也蒸し(豆腐入り茶碗蒸し) 銀あんがけ
・新生姜ごはん
・鰆と蕪、根三つ葉のお吸いもの
・あたたかいお茶

合わせ出汁を温め直すときには、じわじわではなく一気に強火で温め、沸騰させないというポイントも紹介され、いざ実食タイム。

「レタスのお浸しは初めて食べた。おいしい」「ごはんがシンプルなのにとてもおいしい」と参加者たちは箸を進めながらしみじみ。「身体にいいものを食べている満足感がある…」「しみわたる」との言葉も聞かれました。

食事中には、各テーブルを大黒谷さんが回り、参加者からの感想や質問に答えました。

Q 出汁をとった後の昆布の使い道は?
A 煮物や炒め物に入れて無駄なく使いましょう。

Q 自分で引いたお出汁生活を続けるにはどうしたらいいですか?
A 毎日引くのは難しいという方は、就寝前、出勤前に昆布を水に浸けておけば、第一段階をクリアできます。帰ってからすぐに出汁が引けますよ。

Q ごはんがおいしかったので、作り方を知りたいです!
A 米2合に対し、お出汁340ccに薄口しょうゆ50cc、酒50cc、新生姜30グラム。炊飯器であれば水量が少なくて済みます。お出汁があれば、具材がほぼなくてもおいしく仕上がります。

Q 本枯れ節の保存方法は?
A ジップロックやラップなどを使い、乾燥しないように。表面の白い粉はうま味なので、取らないことがポイントです。

Q 煮干しの出汁の取り方は?
A 頭も内臓も取らずに水出しができます。1リットルに20グラムが目安。火にかけてふつふつしてきたらアクが出るため、アクを取り、2、3分ほどでいりこの味が出たとわかったところで完成。味噌汁に使うときには、煮干しごと使ってもOK。煮干しを取り出すときには、ザルで取る程度で使える、漉す必要がない点が手軽で良いです。酸化しやすいため、煮干しは冷凍保存で。おなかが破れているのは煮干しになるときに鮮度が悪かったもの。銀色に光り乾燥しているものを選ぶのがコツです。

この他にも大黒谷さんから出汁についての豆知識が続々と…。「鰹やまぐろは泳ぎ続けている魚なので、筋肉の疲労回復物質を保有しています。食べることで私たちもその影響を受けられるんですよ」、「煮干しにはアミノ酸の種類が多く、バランスよくうま味が入っています。そのため、単体でもおいしいです」と、出汁にまつわる知識をたっぷり浴びたワークショップとなったのです。

参加者からは「お出汁を取るのはもっと面倒くさいことだと思っていた」との感想が多く寄せられました。大黒谷さんは「そうですよね」と微笑み、「1週間に1回など、少しずつ実践してもらえたら。慣れてきたら、いちいち昆布を量らなくても作れるようになりますよ」とエールを送りました。

日本食の味わいを支えてきた「お出汁」。自分で素材から取ることに対し、ハードルが高いなと感じていた人もいたことでしょう。そのハードルを少し引き下げた今回のワークショップ。おいしい食事に舌鼓を打ちながら、「明日からやってみようかな」と口にする参加者の姿が印象的でした。

>>「HAKKO MARUNOUCHI 2022 Spring」イベント概要はこちら

https://shokumaru.jp/hakkomarunouchi2022-sp/

「震災前から福島に関わってきた」ドミニク・コルビオーナーシェフ、コルビさんのお話

今回の使い手を務めるコルビさんは、丸の内シェフズクラブのメンバー。EAT&LEAD主催のイベントにも、数多く関わってきてくださったお一人です。当時から関わりのある三菱地所の井上友美も加わり、コルビさんと福島県との関わりについてトークが行われました。

「福島の食材は、今世界で一番安全で美味しい」と公言しているコルビさん。福島との縁は、震災前の2010年秋から始まりました。

「様々な畑を巡って一緒に収穫をしたり、作物を育てるにあたってのこだわりをうかがったり。福島県に訪れては、そこで作られる食材の美味しさに惚れ込んでいましたね。農家さんにとっての当たり前の食べ方をいかに裏切って、私の料理で驚いてもらうか、頭をひねる作業が楽しくて。実は震災が起きた2011年も、3月1日から8日まで福島にいたんです。福島を離れた3日後に震災が起きたことは、私にとっても大きなショックでした…」

震災直後、いち早く現地での炊き出しを始めたコルビさん。毎週福島に通い、食事を振る舞う日々を送りました。

今回の作り手である吉村さん、佐藤さんとの出会いは、今からおよそ2年前。磐梯町のイベントに共に関わったのがきっかけだったと吉村さんが振り返ります。

「最初は怖そうに見えたのではないですか?どうでしたか?」と冗談交じりに井上が投げかけると、「最初は何を話せばいいのか分からなかったですね」と佐藤さんが笑いながら回答。しかし、コルビさんとの出会いを機に毎年活動を共にするようになり、今ではフランクに話せる仲になったと語ります。

コルビさんも負けじと「このあと、2人も詳しく話すと思います。緊張していると言っていましたが、私よりきっといっぱい喋ります」と冗談まじりに、会場からも笑いがこぼれました。

今回のメニューで使われている食材のうち、さつまいもは吉村さん、トマトは佐藤さんがつくったもの。コルビさんは「本当にさつまいももトマトも素晴らしい!どんなに甘いさつまいもでも、デザートに使うときには砂糖を入れるのが普通です。でも、今回は入れる必要がないほど、吉村さんのさつまいもは上質な甘さなんです。佐藤さんのトマトは、うま味がすごい。『トマトに何か入れてるんじゃないの?』って疑ってしまうほどの強いうま味です。驚きますよ。ぜひあとで味わってみてください」と紹介。会場に料理への期待感を残して、一旦コルビさんは調理場へと戻って仕上げの作業を進めます。

イケメン若手農家集団「ばんだいジオファーマーズ」について。「和屋」吉村さん、「夢農園さとう」佐藤さんの野菜作り

ここで、ばんだいジオファーマーズのお二人にバトンタッチ。ファシリテーターを務めるMY Shokudo Hall & Kitchenを運営する二宮敏さんから「イケメン若手農家集団」と振られ、「一部です(笑)。一部イケメン若手農家集団」と吉村さんが返し、会場は和やかな雰囲気に。

最初は、参加者に向けて磐梯町という町を知っているかどうかを投げかけます。10人近くの手が挙がり、意外と知られていることを驚くお二人。磐梯町は原発から100kmほどの場所に位置し、スキー場や名水100選に選ばれている美味しい水が特長の町。水について、佐藤さんは「磐梯西山麓湧水群のうち、代表的なのは龍ヶ沢湧水です。ふるさと納税の返礼品のペットボトル入りの水にも使われています。地元では蛇口をひねれば名水100選、食器を洗う水も名水100選、お風呂もトイレも名水100選なんです」と紹介。土にミネラルが多く含まれていることも、磐梯産の野菜が美味しく育つ理由なのだとか。

そんな土地で農業に携わっているのが、ふたりが所属しているばんだいジオファーマーズ。現在、メンバーは11人で来年には12人に増えるとのこと。地元では有名で、NHKやローカル局のテレビやラジオからの取材を受けることもあるのだそう。

そんな勢いのあるばんだいジオファーマーズは、Uターンなどで新規就農したメンバーが多く、吉村さんもそのひとりでした。

「僕はもともと新橋のサラリーマン。実家がコメ農家をしている長男であることもあり、40歳を前にUターンし、農業の世界に足を踏み入れました。主に栽培しているのはさつまいもで、その中でもシルクスイートを多く栽培しています。道の駅や収穫体験で手に取っていただけますよ」

二宮さんから、跡を継ぐことに対して質問を受けた吉村さんは、農家の現状を伝えながら、次のように語りました。

「耕作放棄地が多くあり、若手がやらないといけないという危機感がありました。ばんだいジオファーマーズとしてブランド化していこうと思ったのは、震災からの10年で売り方が大きく変わったからです。風評被害による不安を払拭するためには、僕ら生産者がどんな想いで作っているのかを見てもらい、知ってもらうことが必要だと思いました。福島県産ではなく、ばんだいジオファーマーズの野菜として伝えていきたいなと」

続いては、佐藤さんにマイクが移ります。実は子どものころからトマトが苦手だという佐藤さん。「4人家族で、娘もトマト嫌いなんです」との発言に、会場からは笑いと驚きの声が上がります。

コルビさんがその味に驚いたという佐藤さんのトマトは、生産工程や栄養価について、第三者機関によるコンテストでの受賞歴もある「太鼓判を押された」もの。

「栄養価や糖度など、『美味しい』といった感覚だけでなく、第三者機関によって数値化されて評価いただいて、そういった観点から賞をいただけるというのは嬉しいですね」と佐藤さん。吉村さんも「佐藤さんのトマトは毎年買っている。大玉はもちろん、中玉やミニトマトの甘さには驚きます」と言葉を添えます。

コルビさんの調理シーンを見学し、お料理を実食

ここで、コルビさんの調理の様子を短い間ながら見学する時間が設けられました。参加者は席を立ち、キッチン前に集まります。

コルビさんは作業をしながら、「ドレッシングはオリーブオイルと塩だけです。素材そのものの味を楽しんでくださいね!」と説明。「写真、撮りますか?いいですよ!」とカメラ目線でのポーズを決めるなど、サービス精神旺盛でチャーミングなコルビさんの姿に、参加者は思わず笑いながらスマートフォンのカメラを向けていました。

今回振る舞われたメニューはこちらです。

・低温調理したメープルサーモン会津野菜添え
・佐藤さんのトマトとカワバタ軍鶏のスープ
・えごま豚のロースト 三五八のクルート会津野菜添え
・吉村さんのシルクスイートポテト 酒粕のクリーム 桃とネクタリンのドライフルーツ添え

ドリンクは、地域プロデュースに取り組む本田屋から、メニューに相応しい特別な1杯が用意されました。

・アルコール:福島県磐梯町 榮川酒造の純米大吟醸 會津龍が沢 夏ノ生酒
・ノンアルコール:本田屋本店のリンゴジュース 復古(レトロ)三兄弟(緋の衣)

地元の佐藤さんたちも「飲む機会がなかなかない」と語る1杯です。

サーブが進む中、二宮さんからは「コルビシェフの料理を召し上がる機会はあるんですか?」とおふたりに質問が。吉村さんは「昨年のオンラインの料理イベントでご一緒させていただいた時食べました。自分が作って、普段食べている野菜でも『こんな食べ方があるんだ!』とびっくりしましたね。我々生産者は、基本的にそのまま食べ、ひと手間をかけることがあまりないんですよ」とコルビさんの発送と食材への理解の深さに感服という様子。

我が子から「継がせてほしい」と言ってもらえる仕事にしたい お料理をいただきながらトークセッション

ばんだいジオファーマーズは3人で立ち上げられました。吉村さんは「農家は儲からない、大変といったイメージが強いです。東京の皆さんは、例えばキャベツをいくらで買いますか?」と質問。参加者から「158円くらい」と回答を受け、「磐梯では、道の駅でおじいちゃんおばあちゃんが100円くらいで売ったりしているんです。それでは僕らは食べていけない。ただ、消費者の方がお安いものを求めるのも分かりますから、いかに付加価値を高めていくかが大切だと考えています」と語りました。

「我が子に『儲かるから農業をやってみろよ』と言えるようにしたい。かっこいい仕事だと思ってもらえる仕事にしたい。」こうした吉村さんの発言に、佐藤さんも「継いでくれではなく、継がせてくれよと我が子から言われる仕事にしたいですよね」と言葉を継ぎました。

ここで、コルビさんが顔を覗かせます。「どうですか、おいしいですか?」と大きな声で話し掛けると、会場からは控えめな反応が。コルビさんは「声が足りないなあ」と首を傾げ、「おいしいですかー?」と再度声を掛けます。「おいしいですー!」の反応を得て、コルビさんは満足そうにうなずいていました。

佐藤さんのトマトを使ったスープについて、コルビさんのサポートを務めたMY Shokudo Hall & Kitchenの伊藤さんは「大玉トマトとねぎ、軍鶏、塩だけで作ったスープです。昨日から1時間おきに味見をさせていただいたのですが、どんどんうま味が濃縮されていって驚きました。煮込んでもトマトの美味しさがなくならないのはすごいことです」と説明。

佐藤さんは「栄養やうま味が中に閉じ込められているトマトだからこそですね。今日のスープは日本一栄養価の高いトマトスープだと思います。健康や美容にも直結しますよ」と語り、参加者は「美味しい」とうなずきながら舌鼓を打っていました。

「食べて美味しいと言ってもらえる様子に立ち会える機会はなかなかありません。モチベーションにつながりますね」と吉村さん。立ち込めるいい匂いに、「おなかが空きますね。僕らも早く食べたいです」と笑顔を見せました。

「交流機会を作り、ばんだいジオファーマーズの野菜の魅力を知ってもらいたい」今後のチャレンジ

雪が多く降る会津地方では、冬季に農作業を行うことができません。通年で野菜を提供できないため、消費者と接点を持つことがより大切になります。

ばんだいジオファーマーズではオンラインショップを運営しているほか、関東でのマルシェにも出店。現地での収穫体験も多数企画し、親子に土や野菜に触れる機会を提供しています。

「今後のチャレンジしたいことは?」という質問に、吉村さんは「セロリを作ってみたい」そうで、磐梯地域ではまだ誰も作っていない挑戦となります。佐藤さんは「秋野菜かな」と答えつつも、ばんだいジオファーマーズとしては「消費者のみなさんと交流を持てるシステムを構築したい」とも語りました。

さらに、吉村さんがチャレンジしたいことがもうひとつ。

「僕はイノシシハンターでもあるんです。イノシシというか、イノブタですね。浜通りで飼われていたブタが原発事故後に逃げて磐梯町のほうまでやってきて、野生のイノシシと繁殖してイノブタが増えまして、畑では獣害被害が出るようになりました。一夜で畑を掘り起こしてしまうので、守るために狩猟をしています。ただ、福島のジビエは出荷停止になっているため、食材としては提供できません。いまは全処分となっているんです。この状況を変えていきたいですね」

ジビエへの注目が徐々に盛り上がっている日本において、なんだかもったいないお話。まだまだ風評被害が続いていることを実感するエピソードでした。

食事は終盤、吉村さんのシルクスイートを使ったデザートに。厨房から戻ってきたコルビさんの「美味しいですか?」の問いかけから、デザートについての紹介が始まります。

「当初考えていたレシピでは砂糖を入れていたんですよ。でも試食してみて、入れる必要はないと判断しました。生クリームとバニラ、酒粕、さつまいもしか使っていません」とコルビさん。

吉村さんからは、「熱の入れ方で甘さが変わります。自宅で焼きいもを作るときには、炊飯器の玄米モードで水を半カップ入れ、じっくり熱を入れてください。または、アルミホイルを巻いてトースターに入れ、水なしで40~50分でもいいです。いもを選ぶときには、細くて小さめのものを。火が通りやすくておすすめです」と自宅で生かせるアドバイスもいただきました。

なごやかな雰囲気のまま質疑応答タイムに

コルビさんから「みんな美味しい、美味しいといってくれて嬉しいですね。でも美味しいだけじゃないでしょ? どなたかお話したい人はいませんか?」とリクエストを受け、ここからは質疑応答タイムに。

まずは福島出身の方から、「自分の出身地のメープルサーモンが出てきて嬉しかった。コルビさんが福島県の食材は世界で一番安全で美味しいと言ってくれたことも嬉しかったです。三五八は福島だと漬け床として使うので、こんな風になるんだと衝撃を受けました」と感想が寄せられます。続いて、「普通はトマトって煮込むほどに味が薄まるんですか?」と質問。コルビさんは「そうです。でも今回はいいトマトだから、冷凍したトマトをそのまま入れても味が薄くならないんです。『ブイヨンを入れました』と言ったらみんなが信じたくらい、味が濃いですよね。トマトペーストを入れたかのような濃厚なトマトのうま味になっている。私も驚きです」と佐藤さんのトマトの美味しさを称賛。

続いてマイクを渡された参加者からは、「普段は肉を食べがちで、野菜を食べるときはドレッシングやソースに頼っていました。今日のお野菜は本当に美味しくて、もう無心で食べました。ボキャブラリーが足りなくて美味しいしか言えずにすみません」とコメントがあり、登壇者の3人が大きくうなずく様子が見られました。

これからも美味しい野菜を作りたい

今夜もあっという間の1時間半。最後に、佐藤さんは「みなさんの『美味しい』という声や表情に触れられ、自信をいただきました。やってきてよかったなと思っています。ただ出荷するだけだと、私の手が離れた瞬間に終わってしまいますが、消費者の方と向き合うことで、美味しく栄養があるものを作らねばという気持ちになれます。これからも気を引き締め、自分を律しながら生産していきたいです」とメッセージを寄せてくれました。

続いて、コルビさんからは「福島にぜひ行ってください」との想いが伝えられました。46都道府県を巡ってきたコルビさんにとって、福島は不動の1位だといいます。「現地でトマトをバクバク食べました。皆さんにも、ぜひ現地に行ってもらいたいです」

最後にマイクを握るのは吉村さんです。

「もし風評被害がなければ、私はわざわざ個人名を出して生産していなかっただろうと思います。『最低限の品質を保っていればいいや』と思いながら野菜を作っていたかもしれません。もちろん、原発事故はない方がよかった。でも、事故があったことで磐梯を代表する農家を目指そうと考え方をチェンジできたことも事実だと思っています。本当に美味しいですよ、安全に作ってますよと伝えたいですし、またこうした機会があればイベントに参加していただけたらと思います」

コルビさん、吉村さん、佐藤さんの人柄もあり、笑いも交えながらなごやかな雰囲気で進んだ1時間半。知ることで、選ぶときの基準が“なんとなく”の産地や値段だけではないものに広がる。全3回のHAKKO RESTAURANTを通し、つくり手とつながる良さを実感していただけたのではないでしょうか。

>>「HAKKO MARUNOUCHI 2022 Spring」イベント概要はこちら

https://shokumaru.jp/hakkomarunouchi2022-sp/

5月18日(水)に開催された第1回のテーマは「愛媛の旬を発酵食でさらに美味しく」。講師は発酵をテーマにしたオンライン料理教室「Kitchen studio たべものさし」を主宰し、黒麹甘酒や発酵調味料のオリジナルブランド「1day1spoon」も手掛ける発酵料理家の村上友美さん。愛媛県宇和島市にある味噌蔵で、お味噌のお取り寄せでも人気の井伊商店3代目・井伊友博さんをゲストに迎え、発酵食を使ったメニュー作りに取り組みました。

HAKKO TEAMBUILDINGとは

HAKKO TEAMBUILDINGは、料理を共に作り、共に食べる行為を通じて行うチームビルディング。デスク上で行われるものが多いチームビルディングですが、近年、世界中のクリエイティブスタジオでは、ランチやディナーの時間をシェアすることでチーム力のアップにつなげる動きが見られています。

HAKKO TEAMBUILDINGが体感できるMY Shokudo Hall & Kitchen の伊藤秀美さんは、「まさに『同じ釜の飯を食う』ですね」と微笑みながら、ベルリンを拠点に活躍するアーティスト、オラファー・エリアソンが共同キッチンをスタジオに併設し、チームビルディングに活用している事例などを交えて、本企画の背景を参加者に説明。多様な働き方を個々人が選べるようになったコロナ以降、チームメンバーとのコミュニケーションをなめらかにするため、試行錯誤している企業は多いことでしょう。そんな課題解決のひとつとして、人と人とがつながれる場所=食卓を提案。加えて、共に調理から取り組むことで、仕事中には見えづらい長所やパーソナルなことを知ることができる機会を得られるのです。実は、MY Shokudo Hall&KitchenでHAKKO TEAMBUILDINGを開くに至った背景には、伊藤さんの実体験もあります。

「私が所属する企業はデザイナー、Webデザイナー、編集者、建築家など異なる職種のメンバーが集うクリエイティブスタジオです。当初は、担当者それぞれがどんな仕事をしているか分からない状況でした。一方、私たちに依頼がきていたのは食のプログラム作りや食関連のブランディングの仕事です。当時の私たちは、仕事の合間に自席でお弁当を食べたり、近場のお店で適当に買って食べていたりして…、『食の仕事をいただいているんだから、しっかり食に向き合わないと!』と。そこで、コロナ禍が始まったころにまかないを始めたのです」

自分たちでまかないを作る合間で、家族の話題になったり、異なる部署の人に仕事の悩み相談をする人が出てきたりと、キッチンを共にする良さを実感したメンバーたち。そんな経験も生かし、EAT&LEADと共に開発されたプログラムとなっているのです。

では、どうしたら参加しているみなさんが楽しみながらチーム力をアップできるか? 考えに考えた結果、次のようなルールを設けることにしました。

・仕事の話はできるだけ控えましょう
・ポジティブなシェアをしましょう。できれば一人1回誰かを褒めましょう
・困っている人がいたら助けましょう

仕事上での立場は一旦置いておき、対等な関係性で調理に臨むこと。関係を深めるためにも、メンバーの様子をよく見ること。こうした狙いが込められたルールです。

美味しい香りの広がりと共に、増える笑い。愛媛の発酵食の奥深さを実感。

今回ご参加いただいたのは、株式会社クラレ人事部採用グループのみなさん。プログラムの主旨をアナウンスされたのち、さっそく今回の講師、たべものさしの村上友美さんにバトンタッチ。

Vol.1のテーマは「愛媛の旬を発酵食でさらに美味しく」。今回、参加者の皆さんが作るメニューは以下の5品。

・愛媛県産豚肉の生姜焼き
・井伊商店の麦味噌を使った豆腐豚汁
・発酵玉ねぎドレッシングのサラダ
・発酵胡麻ダレの白和え
・減農薬栽培のにこまるごはん

調理に入る前に設けられたのが、イベント名にも入っている「発酵」についてのレクチャータイム。「実は発酵と腐敗はそんなに大きく変わらず、体にいい作用があれば発酵、悪影響を及ぼせば腐敗なのですよ」との説明に、参加者からは「へえ~!」と驚きの声が漏れます。

今回、活躍する発酵食品の一つは甘酒。甘酒の原料には酒粕と米麹の2種類があること、今回使うのは米麹由来の甘酒であることが紹介され、味見用の甘酒が各自ひとさじ振る舞われました。男性参加者は「甘い!」と一言。村上さんは笑顔でうなずき、「発酵のおかげで白米を食べたときよりも甘みが出るんです。今回は、砂糖の代わりに甘酒を使っていきます。生姜焼きの漬け込みにも甘酒を使います。肉の臭み消しにもなりますし、麹には肉を柔らかくする効果もあるんですよ」と普段の料理にもすぐ役立ちそうなノウハウもシェア。

また、豚汁に使う井伊商店の麦みそは、今回のもう一人のゲスト、井伊友博さんが3代目を務める井伊商店のもの。合わせるのは麦みそと相性のいい豆乳です。

簡単な工程の説明を経たあとは、さっそく調理タイムへ。席から立ち上がり、手洗い消毒、エプロン着用と手を動かしていると、自然と場の雰囲気が和むのか、早くも楽しげな雰囲気に。

さっそく役割決めを行います。村上さんからの「普段から料理をする人~!」の呼びかけに、思わず一斉に目を伏せる参加者たち。その一瞬の沈黙に思わず笑いがこぼれながらも、参加者側から「じゃあ、私が野菜をカットする係をやります」と話が進み始めました。

作業が進められる中、村上さんからは随所で全体や個々人にアドバイスが。最初に取り掛かった炊飯では、「麹を入れたあと、少し時間をおけたらベター。また、混ぜると底に甘酒の糖分が溜まり、おこげになるため、それが嫌な場合は混ぜずに炊きましょう」、豚汁に入れるしめじでは、「大きいのは半分に割くといいですよ」と参加者に促します。

野菜のカットを担当したのは2名の女性参加者。切りながら、「これぐらいのサイズでいい?」「何か斜めになってるかも」と会話が弾みます。「切り方に性格が出るよね」と笑い合う姿も見られました。

一方、他の参加者は「すりおろす係」、「調味料を混ぜる係」などを担当。中には「私は応援する係をやります」と冗談交じりに宣言する参加者も。作業が進むにつれ、徐々に笑いが増えていきます。

豚汁用の野菜を炒める工程のときには、「私が追加の野菜を入れますね」、「大根が半透明になったかチェックする係やります!」という具合に、参加者側から自発的に新たな役割を生んでいく場面も。「すごい絶妙なタイミング!」、「勘ですよ~(笑)」など、互いを褒め合うシーンも見られました。

また、合間には「私だけみんなと距離があるんです」というドキッとする発言も。一瞬戸惑った様子を見せた村上さんに、「物理的に。私だけ大阪勤務なんですよ」と返して笑いが生まれるなど、参加者同士だけではなく、講師の村上さん、ゲストの井伊さんとの距離も縮まっていく様子が印象的でした。そんな“距離感”を感じさせないチームワークは、ここがキッチンということもあってより際立ったのかもしれません。

炒めている最中には、材料や味噌に関する話題も。「豚汁にしめじを入れたことがない」と言う参加者がいたり、普段使っている味噌は何味噌かという話で盛り上がったりするなど、職場ではあまり知りえないメンバー同士の食生活も垣間見える機会になりました。

続いては、生姜焼きの仕上げです。強火ではなく、じっくり火を入れるのが美味しく作るコツ。「つい強火でやってしまう」と言う参加者に「せっかちなのでわかります!」と笑って返す村上さん。

そうこうしているうちに、キッチン内に香ばしい香りが充満していきます。そこで、「お皿選び係」、「盛り付け係」が始動。「全員同じお皿にする?」、「白和えは一人一人和えて違うお皿にしたい」と、女性参加者が盛り上がりながらお皿をセレクトしていました。

「心を込めて選びました!」と運ばれたお皿に、各メニューを盛り付け。盛り付け方や量も参加者たちが考えて行います。「一人分だけ白和えが山盛りだよ!?」など、ここでも笑い声が聞かれました。

味噌トークも交えつつの実食タイム

記念撮影を終えたあとは、いざ実食タイム。ドリンクはアルコール・ノンアルコールの2種類をご用意。アルコールは新居浜市「近藤酒造」の真穴みかんを使ったクラフトジンを使ったジントニック。ノンアルコールは西予市「無茶々園」の有機レモンを使ったさっぱりレモンサイダーです。

「ごくごく飲めてしまえる味ですが、アルコール度数は40%なので気を付けてくださいね!」と村上さん。その味わいに、アルコールを選んだ参加者からは「確かに」という感想が聞かれました。

料理では、男性参加者から「豚汁がまろやか」との感想も。井伊さんとの味噌トークになり、井伊商店の麦みそは国内でも珍しく大豆が一切入ってない麦みそであること、無添加の味噌は冷凍保存すれば品質を高く保って保管できることが紹介されました。「国の指針で味噌にも賞味期限を設けるようになりましたが、それまで味噌には賞味期限はなく、当たり前に長期保存されるものだったんです」との説明に、参加者たちは興味深い様子で聞き入っていました。

終始和やかなムードで進んだ第1回目のHAKKO TEAMBUILDING。あっという間に時間が過ぎ、「美味しかった」「楽しかった」と笑顔でのお開きとなりました。

HAKKO TEAMBUILDINGで楽しく美味しくチーム力の向上を

第1回終了後、全体の様子を見ながらサポートをしていた伊藤さんに、今回の様子について伺いました。

「調理の最中でそれぞれの出身地のお話が出てきたり、家庭で食べている味噌の話題になったりと、和やかな雰囲気が良かったです。今後、もっと良いプログラムにしていくため、今後もがんばりたいです」

キッチンと食卓を囲む時間が、チーム力の向上につながる。HAKKO TEAMBUILDINGは、今後もミシュランの星付きトップシェフから学べたり、生産者の方をお招きしたりと魅力的な講師の方々のラインナップ。このプログラムを通じて、今後どのようなコミュニケーションが生まれるのか、ビジネスパーソンの方々がその感覚を仕事に生かしていってくださるのか、私たちも楽しみです。

>>「HAKKO MARUNOUCHI 2022 Spring」イベント概要はこちら

https://shokumaru.jp/hakkomarunouchi2022-sp/

vol.2のゲストはたべものさしの村上友美さん、井伊商店3代目当主の井伊友博さん

今回登壇していただいた村上さんは、発酵をテーマにしたオンライン料理教室「Kitchen studio たべものさし」を主宰し、黒麹甘酒や発酵調味料のオリジナルブランド「1day1spoon」も手掛ける発酵料理家。そして宇和島市にある味噌蔵・井伊商店3代目の井伊さん、ファシリテーターを務め、MY Shokudo Hall&Kitchen内「みそスープBAR」の運営者でもある二宮さんと、3人とも愛媛県出身者。そんな愛媛県には様々な名産品がありますが、麦味噌もそのひとつ。

「闘病を経て、麹に出会った」たべものさし 村上さんトーク

その麦味噌おむすびがお客様にとても好評で、現在はレギュラー商品にもなっているのですが、監修を手がけたのが村上さん。「発酵料理ならお手の物なわけですが、そもそもなぜ発酵に関わるようになったのでしょうか?」。この二宮さんの問いかけに、村上さんは20代後半で経験した闘病生活について語りました。

「29歳でがんの診断を受けました。先生になぜがんになったのか尋ねたところ、『あなたの場合はストレスと食生活です』と言われたのです。悪いものを食べていたわけではないし、ビタミンも摂っていたのに…。と当時は衝撃を受けました。人生のどん底でしたね。そこから食を見直し、栄養士資格を取れる学校に入りました」

「場合によっては5年後には亡くなっていたかもしれない」と先生に言われたという村上さん。幸い初期段階で治療を受けられたため、闘病期間は短期で済んだのだそうです。「助かった命を使って食を伝える仕事をしたい」。その想いを実らせ35歳で独立を果たし、食の大切さを伝える料理教室を開きました。

生徒さんから身体の不調についての相談を受けたり、「身体にいいものって美味しくないですよね」と話を聞いたりする中で、「じゃあ、身体にやさしくて美味しいものを」と一念発起した村上さん。自らいろいろと試すも、なかなか続けられるものに出会えなかったのだそう。そんな村上さんが、福岡で出会ったのが麹でした。

「麹作りについて学び始めた時に『これだ』と、まるで天啓を受けたかのよう。そこから発酵にのめり込みました」

それまでは「美味しくて楽しい料理教室」だったところに、発酵を採り入れはじめた村上さん。当初は生徒さんからは驚きや戸惑いの声が聞かれたのだそうです。

「中には『そういうものは求めていない』とおっしゃられる方もいましたが、一方で『知りたい』という方もいて、半々に分かれましたね。そのため、美味しくて楽しい料理教室と、発酵について学ぶ教室とテーマを分けてやっていました」

3年前からは発酵に特化した料理教室に切り替えたという村上さん。課題として感じていたのは「発酵を日々の食生活に馴染ませる」こと。「私自身、何も続かない人でしたから」と冗談を交えつつ、「どうすれば毎日の食事に発酵を、無理せずに採り入れられるかを考え、調味料の『さしすせそ』を麹に置き換えればいいと思い付きました。無意識の習慣にしてしまえばいいのだと。砂糖は甘酒、塩は塩麹、醤油は醤油麹といった具合ですね」。

置き換えであれば、あとは日頃の料理と変わりがありません。始めてみると、今までで1番続けやすいと体感できたのだそう。実は一般的な甘酒が苦手なのだという村上さんは、自分が続けられる甘酒を自ら開発。その経験を活かして、オリジナルブランド「1day1spoon」を展開し、黒麹甘酒のサブスクリプションサービスを手がけているのです。フルーティーな味わいで、現在定期便を利用している方は300人ほどに上るほどの人気ぶり。

「個人で作っているので、どうしても数に限界があるんです」と言う村上さんに、「麹は生き物だから非常に気を遣う。逆に少量で作ってらっしゃるのはすごいことです」と井伊さん。「最初は販売するつもりがなかったのですが、コロナの影響もあり急に甘酒が注目されるようになったんですよ。勉強しながら取り組んでいます。でも、麹のお世話をするのは本当に楽しくて。変な話、そのたくましく育っていく姿に涙が出ることもあるんですよね」と笑顔で語る村上さんの言葉を、参加者の皆さんは熱心に聞き入っていました。

インテリアデザイナーから味噌蔵の3代目に。井伊商店・井伊さんの麦味噌

ここで、後ほど参加者に提供される料理の仕上げのため、村上さんはキッチンに。井伊さんへバトンタッチ。稼業を継ぎ、味噌蔵の3代目を務める井伊さんですが、そのキャリアはとてもユニーク。「井伊さんのキャリアはインテリアデザイナーからスタートし、味噌蔵を継いだ方なのです。まず、なぜ継ごうと思ったのか、ルーツの話から伺いたいです」と二宮さんが問いかけると、経歴の意外性に驚いたような声が会場からも上がりました。

「出兵した祖父が戦地から生きて戻ってきたあと、味噌蔵で修行を転々としてから36歳で創業したのが井伊商店です。それを継いだ父は、元は建設業で橋を作っていたので、僕と同じように最初から味噌づくりをしていたわけではありませんでした」

「それは知らなかった!」と驚く二宮さん。井伊さんは「僕は建築家になりたくて、広島の大学に入りました。30歳で独立するのが夢で、山口県の設計事務所に入りました。3年で退社するつもりで懸命に学び、愛媛に帰郷。インテリア事務所で仕事をしながら将来の顧客探しをしていました。すると、やはり『帰ってこないのか』と家族に言われたのです」。

「継いだのは僕が長男ということもあります。あとは、下に2人いる弟の方が僕より出来がよく、いい大学に行っていたため、彼らに継がすのもなあ…、と思ったんですよ」。この発言には、思わず会場からも笑い声が。決め手となったのは「祖父の代から続く味噌蔵を潰してしまうのはさみしい」との想い。こうして、井伊さんは28歳で井伊商店の跡を継ぐことを決意しました。

なお、その当時、井伊さんに味噌の知識は全くなかったのだといいます。井伊さんの味噌の思い出といえば、「発酵させる麹風呂がある部屋に、よく叱られては閉じ込められていたこと。怖かったので味噌屋を継ぐのは嫌だったんですよね」。情景が浮かぶこのエピソードにも、二宮さん、参加者たちから笑いが聞こえました。

そんな井伊商店がある宇和島のエリアには、半径200メートル以内につい最近まで4軒の味噌屋がありました。残念ながら、最近そのうちの1軒が後継者問題により閉業となったそうですが、愛媛県宇和島の味噌屋の多さが伺えます。

それにしても、特に関東地方の人には馴染が薄いであろう麦味噌。はたしてどんな味噌なのでしょう? 井伊さんによる解説は九州地方の食文化からはじまります。昔は砂糖が高級品で、沖縄では偉い方との食事には砂糖を使ってもてなす風習があったとか。沖縄に近い鹿児島では、沖縄から砂糖が入ってきていた他、鎖国時代に外国との出入口だった長崎の出島では砂糖が扱われていました。そのため、九州には醤油に代表される甘いものの文化があり、近隣地域である愛媛県、山口県など、現在麦味噌が食べられている地域に、甘い麦味噌が浸透してきたのではないかと考えられているそうです。

しかし戦後、新幹線の開通や瀬戸大橋の完成など、物流が変わる中で、全国で多くを占める米味噌文化もこのエリアに伝わり麦味噌も徐々にその影に隠れるように…。

「2015年の麦味噌出荷量は全国で4.5%と少なくなってきています。麦味噌は美味しいのはもちろんですが、食物繊維が豊富で体にもいいんです。今日、召し上がって、気に入っていただけると思いますので、ぜひ皆さんで消費量の底上げをしてもらえたら嬉しいですね」との井伊さんの言葉に、うなずく参加者も見られました。

そんな井伊商店の麦味噌に使われているのは、愛媛県が生産量全国1位を誇るハダカムギ。大豆を一切使わない、全国でもかなり珍しい味噌蔵です。

井伊商店では、初代のころから変わらぬ製法を守り、現在でも機械を入れているのは製造工程中2カ所のみ。蔵も創業時から建て替えはせず、「蔵の写真を見せた人から『バイオハザードみたいだね』と言われるほど、カビだらけなんです」と井伊さんが言うように、歴史を感じさせる雰囲気を醸し出しています。

「なぜ、昔の製法を守るのですか?」という二宮さんに、井伊さんは「味が変わるのが怖いからです」ときっぱり。蔵や味噌作りに使う木製の蓋についているカビは、すべて井伊商店の麦味噌の味を作るために必要不可欠なもの。そのことがよくわかる話として、井伊さんはこんなエピソードを語ってくれました。

「コロナ禍になってから、味噌を仕込んでみたいという連絡をいただき、愛知県とイギリスの方に種麹と井伊商店が使っている蓋を送りました。同じものを使えば同じ味噌になるのかなと思っていたのですが、送ってきてくれた完成品を食べてみたところ、全く味が違ったのです。蔵に住んでいる菌やカビを含めた環境により味が変わるんだなと。変えてはいけないんだと改めて思いました」

麦味噌を始めとした発酵食メニューをご提供

ここで、本日のメニューが登場。今回のメニューはこちらです。

・宇和島 井伊商店の麦味噌を使った焼き豚たまご飯風
・大洲市 梶田商店の醤油麹たれ
・西予市 みそスープBAR自社農園の減農薬ごはん(にこまる)
・愛媛県産野菜のサラダ~愛媛県産米甘酒玉ねぎドレッシングをかけて~
・松山揚げと井伊商店麦味噌のお味噌汁
・愛媛県産フルーツの黒麹甘酒がけ
・【アルコール】新居浜市・近藤酒造の真穴みかんを使ったクラフトジンのジントニック
・【ノンアルコール】西予市・無茶々園の有機レモンを使ったさっぱりレモンサイダー

ごはんに使われた米は二宮さんとお父様親子が栽培しているもの。「まんまるい、粒の大きな米で、食べたらにこにこするということで『にこまる』と名付けました」と二宮さん。

順々にサーブされる中、キッチンから戻ってきた村上さんが、改めて今回使った井伊商店の麦味噌の特長、本日のメニューについて紹介します。

「井伊商店の麦味噌は、本当にいろいろな料理を美味しくしてくれ、それだけで味も香りも付けられます。今回は豚肉に付け、今治市のソウルフードである焼き豚卵飯に近いものに仕上げました。なお、焼き豚は本来味噌を使わないメニューですが、今回はあえて味噌を使って作りました。醤油麹を使って作ったたれを混ぜて食べてください」

汁物は、「味噌汁かスープか悩んだ」と明かしてくれた村上さん。最終的に、数日前に井伊さんが普段飲んでいる汁ものを聞き、わかめと松山揚げの味噌汁に決定したのだそうです。

試食タイム中にも、3人でのトークは続きます。麦味噌の使い方について、村上さんは「肉を漬けるときは短くて1~2時間。2~3日じっくり漬けてもいいです。オーブンで焼いてもいいですね。今回は30分ほど蒸して調理しています」と作り方を紹介。

「他に何に使えますかね」と尋ねる二宮さんに「1番はやっぱりお味噌汁。米味噌にはない甘さに癒されます。あとはマヨネーズと混ぜてキュウリに付けたり、ドレッシングに少し加えてもいいですよ。魚を漬けてもいいですね。漬けたあとの味噌は、味噌汁に入れて加熱すれば余すことなく使えます」と次々に麦味噌活用術が紹介されます。

とはいえ、味噌は育った土地のものが…という人も多いはず。そんな方にも「他の味噌と合わせても美味しいですよ。私も愛知県の豆味噌と麦味噌を合わせたりしています」という使い方も教えていただきました。

「使い方も堅く考えずに色々試していただきたいですが、発酵食の取り入れ方も自由に。特定の菌を摂ったらいいというより、いろいろな菌を摂るのがいいと思っています。菌には相性があるので、いろいろなものを試しながら、自分の体に合うかどうかを探っていくと楽しいですよ。そうすることで、飽きずに毎日何かしらの菌を摂り入れられるのではないかと思います」との村上さんの言葉を聞くと、早速いろんな発酵食を試したくなるものです。

「自分に合った発酵食を見つけてほしい」質疑応答タイム

最後は、参加者からの質疑応答タイムです。最初に寄せられたのは、「市場に出回っている味噌は本当の味噌じゃない。生きているお味噌と死んでいるお味噌があると聞いたことがあります。見分け方はありますか?」というもの。

まずは、井伊さんが「1番は表示を見ること。避けた方がいいのは表示内にカタカナがあるものですね。それは添加物が余計に入っているということですので」と回答。さらに、「味噌には加熱処理しているものと非加熱のものとがあり、腸にいいのは非加熱の味噌を生で食べることです。ただ、加熱・非加熱は表示が義務化されていません。1番いいのは蔵元にどんな作り方をしているか問い合わせること。うちの蔵にも食にこだわっている人から時に問い合わせがありますが、こうした質問はウェルカムです。直接確かめるのが1番ですよ」とのアドバイスも。質問した方以外の方も興味深くメモを取る様子が見られました。

村上さんは「本来の味噌は大豆、塩、麹が原料ですが、添加物を加えたものが世に出回っている背景には、私たち消費者が求めている現状を踏まえての経営判断があります。消費者の私たちが意識や行動を変えていくことで、発酵文化が長く続いていくのではないでしょうか」というメッセージを寄せてくれました。

続いては、「コロナ禍で運動不足になったのか、おなかが減らなくなった。発酵食品はおなかにガスが溜まると聞いて避けていたのですが、食べても大丈夫なのでしょうか」という質問。この疑問には、村上さんが次のように回答しました。

「発酵食といっても全て同じではなく、それぞれに特性があります。何か一つ好きなものを2~3週間ほど食べ、やめてみるといった実験をしながら体質に合うものを探してみてはいかがでしょうか。やめたあとに調子が良くなった場合、そのときに食べていたものは相性が悪いのかもしれないということが分かると思います」

知ること、そこから行動することで「発酵」を次世代につなげられる

あっという間の1時間半。最後に、井伊さんは「麦味噌は関東であまりなじみがないこともあり、今回のイベントに人が集まるか不安がありました。これだけの方が参加してくれてびっくりしています。ふるさとで食べてきた味噌汁を大切にしていただくことが、日本の発酵文化を守ることにつながるのではないかと思います。これからも体に良いものを摂っていただけたら」と挨拶。

続いては村上さん。「料理教室から発酵を広める活動を始めましたが、こんなに晴れやかな場で話を聞いてもらえる機会を得られるまでになり、感動しています。腸内を整えることは心にも影響があることが調査で分かってきています。今回の話から興味を持っていただいた方は、ぜひ発酵食生活を実践してもらいたいです。習慣化することで、気持ちが弱くなったときに助けてくれるんじゃないかなと思います」と語ってくれました。

知ることが、食文化を守ることにつながる。つくり手、使い手から話を聞いて知識を深め、舌で発酵食の魅力を再確認するひとときをお過ごしいただけたのではないでしょうか。3回にわたって、参加者のみなさんと一緒に発酵について学ぶ「HAKKO RESTAURANT」。第3回「震災から11年、災害・風評被害の解決の一歩」についても、レポートをお届けします。

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今、“フードロス”と向き合う時代だからこそ、6月15日(水)から3日間開催される「丸の内グラムマルシェ2022」へ足を運んでみませんか?丸の内グラムマルシェとは“無駄なく消費する量り売り”をテーマにした、グラム単位で商品の購入ができるマルシェです。「食」を通じて私たちの心身の健康や地球環境と私たちのウェルネスな関係を考える「EAT&LEAD 」プロジェクトの一環として2013年から開催。コロナ禍もあり2019年以来、3年ぶりの実施となります。当日は、無添加の自家製天然酵母パンの店、宮内庁御用達の珈琲豆の店、青空市場が手がけるオーガニック野菜の店といったこだわりいっぱいの店々が並ぶほか、SDGs達成に向けた活動を推進する「大丸有SDGs ACT5」と「4Nature」のコラボによる、各家庭の生ごみを肥料として育てた野菜の店など、環境や人に優しい商品を扱う店舗も多数登場します。

この丸の内グラムマルシェへ訪れれば、とびきりおいしいものと出会えるだけでなく、お店の人との会話やそれぞれの商品、そして“量り売り”を通じて、フードロスやSDGsへの意識がより高まります。食材や産地に対する理解をぜひ深めてみて下さいね。

【開催概要】
日時:2022年6月15日(水)~17日(金) 11:00~19:00 予定
会場:丸ビル1F 「マルキューブ」(東京都千代田区丸の内2-4-1)

【出店一覧】
・バルクフーズ
主な商品:ピーナッツバター、トレイルミックスなど

・珠屋小林珈琲
主な商品:ロイヤルブレンド、スペシャルティブレンド、1Cup Drip blendなど

・Shimizu Chef. Lab
主な商品:天使のほっぺ、カカオカヌレ、クリームチーズあんパンなど

・CSA LOOP
主な商品:新にんにく、葉付きビーツ、葉付きにんじんをはじめ、季節の野菜

・青空市場
主な商品:レモン、さくらんぼなど

・つくばきくらげ販売
主な商品:きくらげ

・伊奈京
主な商品:鹿児島県知覧産荒茶、紀州南高梅はちみつ漬など

・道の駅北前船松前 一般社団法人海共舎
主な商品:松前産・天然春採れふのりなど

・田村商店
主な商品:ナッツ類ほか

・はるセレクション
主な商品:パッションフルーツ、レモンなど

・日本の御馳走えん
主な商品:お出し汁など

・FARINA
主な商品:食パン、コツネットなど

【プレゼント企画「グラムコンテスト Supported by ビオセボン」実施!】

期間中は、フランス発のオーガニックスーパーマーケット「ビオセボン」とコラボしたプレゼント企画も実施します。まるでヨーロッパのマルシェに並んでいるようなワゴンのはかりを使用し、決められた重さをピッタリ量ることができた方にビオセボンの素敵な商品をプレゼント! グラムマルシェでお買い上げいただいた方のみ、ご参加いただけます。

【SDGs活動をよりお得に楽しく!】
本イベントはSDGs達成に向けた活動を推進する「大丸有SDGs ACT5」ともコラボします。当日会場でお買い上げいただいた方には、「ACT5 メンバーポイント」をプレゼント。ぜひ「ACT5メンバーポイントアプリ」をダウンロードしてご参加ください。たまったポイントでSDGs関連の商品やサービスと交換できるなどお楽しみがたくさんです。

詳細はこちら:大丸有SDGs ACT5 公式サイト:https://act-5.jp

>>プレスリリースはこちら
https://shokumaru.jp/wp/wp-content/uploads/2022/06/mec220603_grammemarche.pdf

働く女性にフォーカスを当て、かつ臨床データと個人の主観を交えた「働く女性ウェルネス白書2022」の稀少性

会場には女性のキャリアや健康、ライフスタイルの分野に精通する多くのメディアの方々にも集まっていただき、「働く女性ウェルネス白書2022」への注目度がうかがえます。白書の調査結果と提言を解説する第一部、まるのうち保健室のプロデューサーである井上友美、神奈川県立保健福祉大学 ヘルスイノベーション研究科 教授 吉田穂波さん、株式会社ファムメディコ 取締役CVO 佐々木彩華さん、神奈川県立保健福祉大学 理事長 元厚生労働審議官 大谷泰夫さんが登壇しました。

まず最初に、井上が本調査の特徴や意義について紹介。「これまでまるのうち保健室では、“働く女性の選択肢を増やす”という想いのもと、健康管理に対するアプローチを行ってきましたが、今回は医療コンサルティングを手掛けるファムメディコとの協業により、オリジナル健診プログラムを開発し、医療分野に踏み込んだ調査を行い、企業・社会に対して調査から見えた課題を提示するところまで行きつくことができました」と本調査に対する想いを語り、4つの特徴・意義があると解説。まずひとつめは「希少性の高い働く女性を母集団とした調査」であること。働く女性にフォーカスを当てた健康・就労実態に関わる調査は世界的にも例が少ない、学術的な新規性が認められています。次に「働く女性たちのライフスタイルや価値観と臨床データの網羅的な分析」をしたこと。臨床データを含む健康調査として参加者全員が経腟超音波検査を実施していること。そして、「性差における女性健康への理解促進を焦点とした企業連携」を促進することで、調査から見えた課題を社会に向けてシェアすることができました。さらに今回の調査を契機に「企業主導でのソーシャルイノベーション」として、女性を取り巻く環境を見つめなおし、働きやすい文化醸成を、街を挙げて進めていきたいと今後の展望を宣言。

それに対し、「臨床データと個人の主観の双方を扱えていることが大きい」と神奈川県立保健福祉大学の吉田さん。これまで片方のデータはあったものの、両データがそろうことで検証ができた意義の大きさを「主観データは、参加者ご本人の訴えがなければ私たちは把握することができないもの。300名を超える参加者の方の声があって実現したこの新しいタイプの調査に参加できたことを非常に嬉しく思っています」と喜びの想いと共に語ります以下、調査結果について吉田さんより解説がされました。

今回、調査に参加してくださった女性は313名。そのうち、参画企業からの参加は221名、個人での参加者は92名となりました。年代は20代が32%、30代が36%と若年層が最も多く、62%が独身者でした。

印象的な結果として、経膣超音波検査で有初見率が26%となったこと、参加者の63%が隠れ貧血とされたこと、低用量ピルの服用率が全国平均の約5倍の15%であったことが挙げられました。また、このうち経膣超音波検査について、吉田さんは「有所見者の3人に1人が婦人科の受診経験がなかった」とし、日常の中で、婦人科を受診する機会をもっと、社会全体で増やしていく取り組みが必要だと語ります。

また、生活習慣についての調査では、平均睡眠時間が全国平均よりも短い6.3時間という結果に。また、BMIの平均値や肥満の割合は全国平均よりも低いものの、体脂肪率が肥満に該当する「隠れ肥満」が33%存在することが判明。体重と身長から割り出すBMIだけではなく、体組成の測定も行い、隠れ肥満の見落としを防ぐ必要があると説明されました。

働く女性の就労環境を調査したデータからは、リモートワーク実施者はPMSが軽い傾向があり、時短、フレックス制度による婦人科疾患リスクが軽減されているという事象も見られました。職場での上司や同僚との日常会話の多さや、リモートと対面のコミュニケーションのバランス、就業時間の自由度が仕事におけるパフォーマンスや健康状態の維持との相関関係にあることを読み取ることができました。

白書を通じて見えた、女性が働きやすい環境づくりに企業、社会ができること

調査結果を踏まえ、ファムメディコの佐々木さんは「上司のサポートや理解をもっと深め、自分のペースで仕事ができる裁量権を渡していくことで、生き生きと働く人が増え、結果、PMSの身体症状を感じにくくなる可能性が示唆されているのではないかと思います」と説明。「女性社員の健康就労課題に対して取り組みを始めている企業が非常に増えてきていますが、一方で女性の課題が多岐に渡るため、何から始めていいか分からないという声も多く寄せられています」と、振り返ります。企業に向けた、女性の健康サポートの取り組みに関する指南も今後必要なのかもしれません。

また、今回は検診プログラムの同日に助産師相談会も実施。そこに寄せられた相談内容について、20~30代の若年層が月経痛やPMS、特にピルの服用やミレーナなどに関する相談が多かったことに対し、40代以降は更年期に関わる相談が多く見られたと紹介されました。また、現時点で妊娠の予定はないものの、将来の妊娠に対する悩み、身体づくりへの関心度の高さも、AMH(卵巣年齢)の検査を付与した人が全体の12%と最も多かったことや、「将来的に子どもが欲しいと思っているが、年齢的なリミットを考慮しながら、今何をすべきか?」、「卵子凍結について詳しく聞きたい」といった質問が多く寄せられたことからもうかがえました。

最後に、社会・コミュニティ(企業・アカデミア)・個人ができることについての提言を発表。企業やアカデミアに対し、女性特有の症状や疾患を学ぶ機会の創出や課題抽出、サポートし合える環境づくりの促進を推奨しました。

さらに、会の中では「働く女性ウェルネス白書2022」のアドバイザーを務めた慶應義塾大学 名誉教授 吉村泰典さんより映像でコメントが寄せられました。吉村さんは生殖医療の第一人者であり、現在でも女性のヘルスリテラシー向上に走り続けている人物です。本調査ではPMS、不妊症、更年期症状について、その症状や対処法に関する理解度も調査したのですが、どの症状についても「症状は知っているが対処法は知らない」と回答した人が最も多く、症状を感じていても「通院経験がない」と約4割の人が回答。女性個々人のリテラシーを高めるためのアクションを社会、コミュニティ、個人が手を取り合って進めていくことの重要性を強調しました。

「本調査の目的はさまざまな働く女性の健康問題を取り上げ、問題解決のためのヘルスリテラシー向上を目指すことにあります。白書には次の5つの特徴が見られました」と特筆すべき点を挙げてくださいました。

(1)女性の月経に伴う諸症状に対するヘルスリテラシーが必ずしも高くない
(2)産婦人科受診率の低さ
(3)社会・企業は、女性が働きやすい環境と文化の醸成を役割として担うべき
(4)男女の生物学的差異と性差にとらわれないこと、2点の理解が必要
(5)自らの生活習慣を見返し、ベストパフォーマンスができるように心掛けることがヘルスリテラシー向上にもつながる

「白書を通して、全国の働く女性のヘルスリテラシーの向上が大いに期待される」と吉村さん。様々な現場を見てこられた吉村先生からのエールに、勇気づけられます。

続いて、神奈川県立保健福祉大学 理事長の大谷さんは「今回の取り組みは、いわゆるエポックメイキングな白書であり発表イベントではないか」とコメント。「女性の疾病リスクが30代から発症していることがデータから明確になりました。この結果をもとに、男性モデルを軸に構成されている様々な施策を見直し、女性の健康課題をオプション的なものとしてとらえず、正面から向き合っていかなければなりません。業界、地域を超え衛生行政の変革に至る、ヘルスイノベーションの発火点になることを期待しています」とその背景を説明するとともに、助産師にも光が当たったことにも注目すべきだと語り、構想を含め3年を要した本調査に、改めて関係者へのねぎらいと感謝の言葉を述べていらっしゃいました。

バービーさんを交えて本音トーク! 女性が働きやすい環境はどうしたらつくれるの!?

後半では、フォーリンラブのバービーさんを招き、井上、佐々木さんとトークセッションを行いました。実は、バービーさんは自身のYouTube「バービーちゃんねる」ではメイクや美肌をテーマにした動画だけでなく、生理やピルといった女性の悩みについてもオープンに発信されています。今回、等身大の働く女性たちの今に寄り添っていただけるゲストとしてお招きしました。

まず1つ目のテーマは「PMS、月経時のパフォーマンス低下について」。普段の自分と比べて「20%低下する」と回答された調査結果に対し、バービーさんは「本当は40%ほど減っているかもしれない。それを少なく見積もって20%としているのかもしれません。実際に自分自身が生理痛とどんな風に付き合っているのか…流されるままですね(笑)」会場に笑いかけます。「日々意識をしていても、いざ波がきてしまったらあらがえないんですよね」との一言に、登壇メンバーだけでなく、会場にいる多くの女性陣もうんうんと頷きます。

2つ目のテーマは「ピルの服用率」。参加者の15%が服用しているという結果に対し「まるのうち保健室の取り組みを始めた、2014年ごろは数%だったのに、この数値の伸びには想像以上でした」と驚く井上に対し、「以前は避妊目的が多かったものの、今はヘルスケアの目的で使う方が増え、オープンにしやすくなっているのかもしれません」と佐々木さん。その説明に納得しつつもバービーさんからは「私も飲まなければ症状が抑えられなかったのですが、逆に言うとピルを飲まなければ動けない人がたくさんいることの裏返しでもありますね」と鋭い考察も。

そして、テンポよく「婦人科受診のしづらさ」という3つ目のテーマに話は進みます。「痛い、怖いと思っている人が多いのかもしれません」と言う井上に対し、バービーさんは「私なんか婦人科のかかりつけ医を3つ持っているんです。なかには怒る先生など、相性が悪いと感じる場合もある。私はネットで評判や先生の顔を見て、寄り添ってくれそうだなと判断してから受診します。実際には診察の時間もあっという間。一瞬なので受診してほしい」と、なんとなく婦人科を敬遠している女性にとって心強いお言葉。とはいえ受診することが「恥ずかしい」という気持ちも…。「でも、カーテンで仕切られているのは日本だけだと聞いたことがあるんです。お気遣いポイントがあると思っていただいて」という言葉に、さらに婦人科との気持ちの距離感が縮まった視聴者も少なくないはず。また、佐々木さんから受診するにあたって「子宮頸がん検診と経膣超音波検査は別。子宮頸がん検査だけでは不十分なので、ぜひ経膣超音波検査も受けてほしい」というアドバイスもいただきました。

最後のテーマは「働く環境について」。バービーさんは「私は組織で働く人間ではないので、自分でスケジュール調整をしやすい面があります。ただ、会社員のパートナーを見ていると、女性が妊活や子育てとキャリアとの両立をするのは相当難しそうだと感じます」と、働く女性が置かれているシビアな環境についてしみじみと共感。ただ、環境を整えるためには「女性から声を挙げていくことも大切。知らないがゆえにサポートできていないところもある」とし、「言いにくいところもあるかもしれませんが、私はドッキリ企画で落とし穴に落とされたりお酒を飲まされたりしたら困るなど、積極的に周りとコミュニケーションを取っています。言えない立場の人もいるだろうなとも思いますが、何とか言えるところから言っていければ」と激励の言葉も。

最後に設けられた質疑応答では、参加者から「肥満という言葉に過敏に反応し、食べなくなってしまう女性もいる。隠れ肥満の対策についてより詳細に知りたい。」との質問が寄せられました。この質問に対し、吉田さんは「隠れ肥満は体脂肪率の問題であるため、BMIで見ると痩せていてもなり得る。大切なのは筋力を付けることなので、栄養バランスを整えた食事や運動が大切です」と、多くの女性が抱える難問に学術的な見地から回答。まるのうち保健室は食事と運動(加えて睡眠)の大切さを訴え続けてきましたが、継続的に伝えていかなければいけないということを実感する締めくくりとなりました。

あらためてデータとして働く女性の健康実態が明らかになった本調査。バービーさんを交えてオープンに女性ならではの身体のことやPMSなどの悩みが話されましたが、こんな風に一人で抱え込まず、明るく話せるムードづくりこそが、女性が働きやすい環境作りの第一歩なのかもしれません。本取り組みをモデルケースとし、今後さらに多くの企業や女性たちを巻き込む活動へと展開してまいります。

>>「働く女性ウェルネス白書2022」のダウンロード
https://shokumaru.jp/report2022/

>>発表会事後リリースはこちら
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000148.000043503.html

当日の様子を動画でご覧いただけます
>>アーカイブ動画はこちら

>>「まるのうち保健室」の詳細はこちら
https://shokumaru.jp/hokenshitsu_2022/

vol.1のゲストは梅原陣之輔さん・浅利妙峰さん・青柳拓次さん

第1回は体験型レシピメディア「海のレシピプロジェクト(https://uminorecipe.jp/)」との連携企画。日本財団が推進する「海と日本プロジェクト」は、全国の海の現状を自分事化してもらうことを目標に活動しています。その海のレシピプロジェクトにも参加している3名をゲストに迎え、美味しく、楽しく、食にまつわる課題に考えていきます。

料理を作っていただいたのは、八雲茶寮総料理長、FOOD NIPPON代表の梅原陣之輔さん。日本の風土が育んだ素材や郷土料理などの工夫や知恵を生かした料理を身上とする料理家で、2006年、大分県のレストラン型アンテナショップ「坐来 大分」(東京・銀座)の総料理長に就任し、現在も顧問を務めます。今回の料理のポイントとなる発酵食は、リモートでの参加となった大分県佐伯市にある「糀屋本店」9代目で“こうじ屋ウーマン”の異名を持つ浅利妙峰さんが手掛けたもの。糀文化の普及と伝承のため、イベント参加や執筆など意欲的に活動しています。そしてイベントに美しい歌声で華を添えるのは、音楽ユニット「LITTLE CREATURES」で活動しつつ、国内外の舞台音楽も多数手掛けている青柳拓次さんも登場。

トークセッションに先駆けて、海のレシピプロジェクト実行委員の青木佑子さんによる挨拶が行われました。

「当初イベントが予定されていた2月から3月の2か月間、ここMY Shokudo Hall & KitchenのみそスープBARにて、発酵料理で味わう大分の里山里海というコンセプトで『海のレシピプロジェクト』のコラボメニューを提供しました。梅原さんに監修していただいたのですが、とても美味しくて好評で。公式サイトでも梅原さん監修の料理レシピと浅利さんから教えていただいた本を紹介しています。今回のようなイベントやWEBサイトで、料理家さんや生産者さんたちの食や海に対する想いをお伝えすることで、皆さんと一緒に海の未来について考えるきっかけになればと思っています」

続いては、青柳拓次さんによる生演奏です。曲は、「海は広いな」の歌い出しで有名な童謡の「海」。ギターに乗せられた温かい歌声に包まれ、会場は穏やかな雰囲気に。浅利さんは懐かしむように感想を口にしました。

「いい歌ですよね。誰もが歌った覚えがあって、聴いて海のさざ波と情景が心に広がっていったと思います」(浅利さん)

イベントの幕分けを祝うようにサーブされたのが「大分県の食材に触れる、里山里海ショートコース」。今回のゲストである梅原さんと浅利さんは、ともに大分県出身。大分の素材の良さを知り尽くしたお二人によるアイデアが詰まった品々が並びます。

気になるコースの内容は「佐伯ぶり“りゅうきゅう”こうじ納豆添え」、「原木しいたけとめぶとの南蛮漬け 初夏野菜を添えて」、「とり飯とひじきの小むすび」、「ごま出汁うどん」、「抹茶のブランマンジェ 糀あずき」、そして飲み物は焼酎(毛利)ソーダ、もしくは大場煎茶のどちらか1つをお好みで。

「“りゅうきゅう”は沖縄から漁法とともに伝わった漬けにする郷土料理です。糀屋さんのこうじ納豆と軽く和えながらお召し上がりください。新茶の時期ですので、デザートはブラマンジュを用意しました。糀屋本店さんの糀でゆでて、一緒に寝かせて発酵させた小豆を添えてあります」(梅原さん)

「南蛮漬けに使っている“めぶ”とは、全国名称ではケンジクダイと言いまして、小さな魚です。今が旬ですがあまり流通しておらず、東京ではなかなか召し上がれないので、お楽しみいただければと思います。ごま出汁うどんも佐伯の郷土料理の1つで、魚を焼いて調味料と合わせてペーストにしたものをのせたうどんです」

参加者のみなさんは、料理が運ばれるたびに、興味深いまなざしを向けたり、湯気に乗せられた香りを嗅いだり…。まさに五感を使って楽しんでいらっしゃるようでした。

海辺の風土を守るために私たちができること

参加者のみなさんは料理をいただきながら、梅原さんと浅利さんが登壇するトークセッションに耳を傾けます。テーマは、「海辺の風土を守るために私たちができること」。お二人にとって海はどのような存在なのでしょうか?

「私たちのご先祖様は瀬戸内の水軍でした。島津に加勢したことがきっかけで現在の大分県の佐伯の地に移り住んだため、私たちにはうみんちゅの血が流れているのです。江戸時代の海は、現代で言うところの高速道路。人や物だけでなく、日本各地の情報を運んでくれる重要なもの。今でも佐伯の人は別の地域から来た人を見つければ、『ちょっとお茶飲まん? 話聞かせて?』というような感じで、オープンハートの方が多いですね」(浅利さん)

「私は大分でも九州の真ん中の日田という盆地の出身で、山に囲まれたところなので、海は憧れです。食文化でいえば塩蔵ものと干した魚の文化ですね。お盆に食べる“たらおさ”という郷土料理があるのですが、タラの身を干したもの。先祖を敬うという文化が残っている土地なので、私にとって“たらおさ”が海の思い出ですね」(梅原さん)

同じ大分県でも海辺の出身と山間部の出身になる浅利さんと梅原さん。しかし「海も山も切り離された存在ではないんですよ」と浅利さん。

「毛利のお殿様は治山治水といって『山が豊かであるから海が豊かである』と考えていました。山から流れてくるプランクトンが豊富に含まれたその土から海が豊かになっていくということだと思っています」(浅利さん)

「大分にはさまざまな海岸線があります。北部には平地があってエビが安定的にたくさん採れます。臼杵市はフグ、佐賀関は関サバが有名で、佐伯市はリアス式なので魚類が豊富。海の幸が豊かなのは、山のおかげでもあるんですね」(梅原さん)

海と山の繋がり。海に囲まれ、山も多い日本という国だからこそ実感できそうなものなのに、言われないとなかなか気付けないこと。山が豊かだからこそ、美味しい魚が獲れるということなんですよね。では、そんな美味しい魚を、さらに美味しくするアイデアとは?

「塩糀をぜひ魚料理に使ってみてください。塩糀には水分を引き出してくれる作用があります。塩糀に魚を漬けておくと水分が出てくるので、抜けた時点で冷凍すれば美味しさそのままに冷凍できます。必要なときに戻してフライや煮つけにするなど使い方はいろいろ」

「魚の身をほぐしてトースターやオーブンで焼いてごま出汁にしてみるとか、好きな調味料の中に入れて保存をしてパスタにするなどのアレンジを試すと、魚の新しい魅力に気付けます」

決して難しいことではなく、家に帰ってすぐにでも試せるテクニック。こうじ屋ウーマンらしい手法に大きくうなずく参加者の姿も。梅原さんのアイデアもまた、魚の楽しみ方の引き出しを1つ増やすきっかけになったでしょう。会場の参加者のみなさんに挙手を求めたところ、多くの方が週に3回以上は魚を食べているとのこと。意外に多い(?)ことに驚きつつも、美味しい魚が住む場所である海が、乱獲による資源の枯渇や環境汚染など、穏やかではない課題を抱えていることにお二人とも危機感を持っているそう。

「料理人として、持続可能な海への取り組みを何か支援できないか、生産者の方や流通業の方と一緒に勉強会を行っています。環境にちゃんと配慮した食材を、どのように価値を付けて提供していくかということを考える時代に入ってきていることは間違いありません」(梅原さん)

「山と海の間には私たちが住んでいる里があります。里で暮らし、自然の恵みを享受している私たちこそ、海、山、里を守ることを学んで実践していくという時代が来ているのかと思います」(浅利さん)

ゲスト2名の口調は冷静ではあるものの、意志の固さを感じるものがありました。

海への思い出を語り合うトークタイム

イベントも終盤に近づいたところで、青柳さんが再登壇。最新ソロアルバム『輝板』から「波」、前作『まわし飲み』から「銀の月の下で」といった海にまつわる曲が披露され会場はまた癒しの空間に。

そして青柳さんが海のレシピプロジェクトと共に取材で関わり曲のアレンジをした、思い入れのある長崎県五島市の民謡「五島ハイヤ節」。歌い手がいなくなったこの民謡を追って旅した青柳さんの姿を収めた動画も同時に上映されました。動画の中には、鮮やかな緑の山々に囲まれた海の風景、活気ある漁の風景、海や山で暮らすカニや鳥などの生き物が映し出され、青柳さんの歌声と相まって、ここが東京であるということを忘れてしまうくらい。自然と体を揺らす参加者は、きっと優しい波に揺れている気分だったに違いありません。歌い終わった後の青柳さんは、大きな拍手に包まれ、はにかむような笑顔に。

会場の一体感がリモートで大分県から参加する浅利さんにも伝わったようで、「小舟に乗ってゆらゆら揺れながら海の上にいるような、そんな懐かしい体験をさせていただきました」と目を細めてらっしゃいました。

きっと、歌を聞いていた人それぞれが、思い思いの“海”を思い浮かべていたはず。

「海なし県で生まれたこともあり、海を見るともっと遠くに行けるような気がしていた」「ギリシャ旅行に行ったとき、エーゲ海の美しさに魅了されました」
「以前の職場に勤めていたとき、コロナ禍で懇親会ができずさみしい思いをしましたが、上司が海釣りに誘ってくれました」
「親戚が全員四国にいるため、刺身といえば叔父が朝に瀬戸内海で釣ったヒラメでした。今となったら贅沢だと思います」

これらのコメントは会場の参加者から集めた「海の思い出」。その場面が思い浮かぶような詩的なものや、誰もが共感できそうな楽しい海の思い出など、日本国内から海外での体験まで幅広いエピソードが寄せられました。

その中で「光る水平線、まれびと」と書いたのは梅原さん。

「光る水平線を見て、すごくワクワクしていた思い出があります。『まれびと』はあの世から来る人を指すこともありますが、どちらかといえば浅利さんの言っていたように、新しい文化を運んでくるという意味ですね」(梅原さん)

青柳さんは「沖縄久高島の手つかずの海岸で、大昔の動物たちと同じ景色を見たような気になったこと」と書きました。

「久高島は神々の島といわれるところで、海岸の石ころ1つ持ち帰ってはいけない。原始の海とほとんど変わっていないのではないかという感覚になりました」

名残惜しい雰囲気が漂う中、イベントも終了の時間に…。ゲスト3名の振り返りの言葉で締めくくります。

「すべての命は海から生まれる。ルーツとなっている海をいかにきれいに残していくか、突き詰めて考え、みんなで手をつないで守っていく。みんなで手を上げれば高波が続いて大きなうねりになる。今日の会にはそんな雰囲気を感じました」(浅利さん)

「消費者のニーズを取り入れながら、少しでもいい商品や未来を創ろうと思っている生産者はたくさんいます。できればそういった方々とつながっていただいて、ともに海と食に良い未来を築いていけたらと思います」(梅原さん)

「僕は普段、音楽ばかりやっているので、何でも音楽家として見ているところがあります。食の専門の方々の目線が理にかなっていて、そういった方の視点で環境を知るということがすごく新鮮でした」(青柳さん)

大分の食材を中心とした里山里海のショートコースを味わいながら、生演奏の音楽を聴き、トークセッションで海のこと身近に感じられた本イベント。都会の喧騒を忘れて五感で楽しめる時間となり、心なしか帰り際の参加者のみなさんの表情も柔らかくなっていたように感じました。

>>「HAKKO MARUNOUCHI 2022 Spring」イベント概要はこちら

https://shokumaru.jp/hakkomarunouchi2022-sp/

 

第3回のゲストは平野紗季子さん・梅川壱ノ介さん

ファシリテーターを務める薬師神陸さんは、虎ノ門ヒルズの1階に店を構える「unis」のシェフ。誕生日や記念日などのハレの日に利用することをコンセプトに、有田焼のお皿に映像を投影したり、オリジナルの音楽を流したりするなど、ミュージアム感も大切にしたレストランです。隣接するシェアキッチンでは、外部シェフのイベントや商品開発などのサポートを行っています。

ゲストは、フードエッセイストの平野紗季子さんと舞踊家の梅川壱ノ介さんをお迎えしました。平野さんは文筆活動をする傍ら、企業の食文化事業のサポートや、菓子ブランド「(NO) RAISIN SANDWICH」の代表を務めています。梅川さんはバレエダンサーとしてキャリアをスタートし、歌舞伎俳優を経て、日本舞踊を専門とする舞踊家として活動しています。

本来、このイベントはゲストにちなんだストーリーを薬師神さん考案の「一汁一菜」を頂けるのが魅力でもあるのですが、残念ながらオンライン配信となり、ゲストのみの試食となりました。

ゲストたちの好きな食材や生まれ育った故郷のお話しなど二人を作り出す背景をインタビューするなかで出来上がったのが、「はんざき柚子と牛しぐれのアールグレイ香りむすび」と、「ディルの香るもち麦といりこの味噌スープ」です。

おむすびにはゲスト2名が九州出身ということで、甘い醤油を使用。赤ワインを加えて煮込んだ牛しぐれを、アールグレイの茶葉で炊いたご飯で包み、皮の柔らかさに特徴のあるはんざき柚子を使用した柚子胡椒をトッピング。お味噌汁は「シンプルに言うと豚汁ですね」と薬師神さん。出汁はパンチェッタというハムと、平野さんの好きないりこ出汁。梅原さんの氏神神社の近くにあるお食事処「大はら茶屋」のオリジナルの麦みそを使用し、ディルを加えました。シチリア料理ではディルとイワシを合わせることがあり、今回のお味噌汁でも相性の良さを確かめることができたようです。

平野さんは「和食に西洋食材を入れたらどうなるかという好奇心もあり、ハーブのディルをリクエストしました。薬師神さんの創造性の跳躍の飛距離に感動しました」とフードエッセイストらしく、豊富な語彙力でコメント。

ツアーにも携帯するほど「大はら茶屋」の麦みそが好きだという梅川さんは、「いつも食べているものとはまったく違う味わいですね。食べながら、味覚があっちに行ったりこっちに行ったりして楽しかったです」と熱のこもった声で語りました。

「届ける声・届く声」をテーマにパネルトーク

パネルトークの冒頭で薬師神さんは「ここ丸の内はビジネスパーソンの方も多くいるエリアで、何かを「伝える」ということもビジネス上大切なスキルですから、そのような人たちに刺さるアウトプットの方法と届いたその先を意識し、『届ける声・届く声』にしました」と、テーマを決めた理由を話しました。

続いて「テーマに決まったとき、最初に紗季子さんが浮かびました。言葉のチョイスが面白く、和気あいあいとお話ができるかと思いました。梅川さんのキャリアは、フランス料理から入り、日本の食材に目を向けた僕のキャリアと似ていて、和と洋のバランスについてお聞きしたいです」とゲスト2名を招いた理由を紹介しました。

薬師神さんの言葉を受け取った梅川さんは「華やかさで魅了するバレエの世界を飛び出し、形式美や平面的な美しさを重んじる日本舞踊の世界へ入って来たときは、戸惑いもありました。しかし次第に、大きな動きで物理的な広がりを見せるのではなく、凝縮された和の動きで鑑賞する方の想像力に広がりを与える日本舞踊の魅力に気付くようになりました」と語りました。

文章で「届けること」を生業にしている平野さんは、まずは自身が感動することを大切にしているといいます。

「食べ物は消えゆく芸術で、その儚さに魅せられます。最も大切なのは、目の前で消えゆく現象に対してどれだけ感動できるか。それがないと、エッセイに残そうとしても偽物の言葉になってしまうので」と届ける側の姿勢を話しました。

「最近関心のあること」について問われると、平野さんは取材で訪れた岩手県遠野市のオーベルジュでの体験を語りました。

「そのオーナーは料理人であり、米農家であり、醸造家でもある。その方が一番大切にしているものが土でした。リジェネラティブな農法といって、土を再生するために必要な種を埋めて、実った作物を食べる。芯が通った活動されている方に出会えるのが楽しいです」

梅川さんはコロナ禍になり、健康な生活があってこその文化や芸術だと感じ、そこから新たな発想を得たといいます。

「健康のために大切なのは食事だと思いました。食事は毎日のことだからこそ、毎日食事によって幸せになれる可能性がある。そこに感動があれば、もっと幸せになれるのではないでしょうか。そこで『小さな踊りの会』を考案しました。レストランでおいしい食事を食べつつ、日本舞踊を見て楽しんでいただくという企画です」

薬師神さんは情報過多の現代社会において、汲み取る能力が落ちていくことへの懸念を示しています。「紗季子さんや梅川さんのように届けることが上手な人たちは、まず感じ取ることが上手です。感じ取るためには詰め込みすぎず、楽しむ余白が必要だと思います」

ここで、リクエストに応えて梅川さんが短い舞を披露。それを鑑賞した平野さんは「時空を超えた」と感動を口にしました。

話題は変わり、平野さんの著書「味な店」から言葉を借り、それぞれが思う「味な人」について語り合いました。

「料理人にはそれぞれ価値観があり、物語があります。塩対応な料理人でも、背景にある物語を知れば味な人だと知れることもあります。そういった味な人に出会ってもらうための、ドアを作りたいですね」(平野さん)

「粋なものを持っている人も、味な人だと思います。私が日本舞踊や歌舞伎の世界で粋だと感じたのは、自分がしたことを自慢げに話さないこと。その奥ゆかしさを美しいと思います」(梅川さん)

「どのジャンルの料理も時代に合わせて変わるものですが、寿司、鰻、蕎麦などの専門食は、伝統を守りつつ寄り添うように微調整をしていく。そういった料理人を味だと思います」(薬師神さん)

パネルトークの途中には、視聴者から質問が寄せられました。

Q さまざまな活動をなさっている平野さん。キャスティングで大切にしていることを教えてください。

平野さん:ぱっと頭に思い浮かんだ人をキャスティングしています。シンプルに好きで一緒に仕事をしたい人など、直感を大切にしていると思います。その一歩手前を見ると、自分の言葉を言語化していますね。企画書にしてみると、コンセプトがはっきりして何が足りないのかが見えてきます。そこで思い浮かんだ人に声を掛けています。

薬師神さん:私も一緒ですよ。楽しいと思える人と仕事をしたいですね。忙しいとクリエイティブなことを考える時間がなくなります。余白を作るためにも、意図的にunisの営業を週4日営業にしています。

Q 受け取る感性を研ぎ澄ませるための余白作りに行っているルーティーンがあれば教えてください。

梅川さん:朝起きて、コーヒーを飲みながら、その日やることを考えるというシンプルなものです。毎朝行っていると、その日その日で感じ方やコーヒーの味に違いがあることが分かります。その違いに気付くことで自分との対話ができる。その冷静になれる時間を持つことが余白につながっています。

平野さん:どんなに疲れていても、1日1回は絶対においしいものを食べるようにしています。会社員時代、夜中の2時くらいまで仕事をすることがあり、「自分はなんて空っぽなんだろう」と感じたことがありました。その時間まで営業しているお店に行ったとき、春菊のすり流しを出してもらい、それを飲みながら泣きました。「どんなに疲れていても、自分はモノを感じることをしないといけない人間なのだ」と気付いてからは、おいしいものを食べてから寝ようと決めています。それが自分の時間を生きるということだと思います。

薬師神さん:パソコンのデスクトップと携帯電話のメモ機能の中に「頭の中」というフォルダを作っています。そこにフレーズやデザイン、写真など気になったものを入れています。アイデアが必要になったとき、そのフォルダを確認して引っ張り出しています。

「届く声」には届ける人に豊かな感性とそれを研ぎ澄ませるための余白があると気付かされるイベントになりました。イベント終了後、3名は以下のように総括をしました。

「トークイベントへの出演経験が少なく最初は緊張していましたが、異分野のスペシャリストの方とお話をしているうちに、共感したりしてもらったりできて楽しくなり、幸せな時間を過ごすことができました」(梅川さん)

「おいしいおむすびとお味噌汁、そして梅川さんの舞を見ることができ、とても贅沢な時間を過ごせました。これからもこのイベントが末永く続いていくことを祈っています」(平野さん)

「今日もとても楽しかったです。第1回目は『ブランディング』をテーマにパネルトークやワークショップを行いました。そこでは『消費者が社会に求めているものをかなえてくれる会社が好き』という答えが導き出されました。第2回目のテーマは『健康』でした。自分を知ること、そのための時間を作ることが必要で、最終的に余白が大切だということに落ち着きました。第3回も余白が話題になり、すべての回を通じて、余白が大切だと感じました。来期もさまざまなゲストをお招きし、会場で皆さんとお会いしたいと思います。会場に来るのとオンライン上では、感じられる熱量がまったく違うと思います。おいしいおむすびとお味噌汁を召し上がっていただき、ゲストともっと直接的にコミュニケーションを取っていただけたら、私もとてもうれしいです。ですから、また次回も開催したいと思っています」(薬師神さん)

「届ける声・届く声」をテーマに、異分野のトップランナー視点のトークが繰り広げられました。2022年1月17日、2月22日、3月15日の3回に渡って行われた「EAT&LEADトークサロン」、今後の活動にもぜひご期待ください。


こちらにて今回のトークサロンのアーカイブ動画をご視聴いただけます。

「届ける声・届く声」<アイデンティティの見せ方。相手に伝わる表現とは?>
https://www.youtube.com/watch?v=qvvMuBxKzEE

第1回のレポートはこちらから
若林洋平さん(Maison Rococo 株式会社 CEO)×行方ひさこさん(ブランディングディレクター)
「ブランド・クリエーション」<ブランドづくりにおける思考のプロセスとは?>
>>https://www.youtube.com/watch?v=OBWwqGdtL98
>>イベントレポートはこちら
https://shokumaru.jp/talk_01_01/

第2回のレポートはこちらから
下川穣さん(株式会社KINS 代表取締役)×伊達公子さん(テニスプレーヤー)
「身体が嬉しい食事」 <身体をととのえること -”調える”と”整える”>
>>アーカイブ動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=ZXnkE5PiXLg
>>イベントレポートはこちら
https://shokumaru.jp/talk_01_02/

第2回のゲストは下川穣さん・伊達公子さん

第2回のゲストは、株式会社KINS 代表取締役の下川穣さんとテニスプレーヤーの伊達公子さん。下川さんは菌を取り入れることで体質改善をする「菌ケア」の考案者。伊達さんはテニス解説やジュニア育成をする傍ら、ベーカリーストア「FRAU KRUMM」のプロデュースも行っています。

そんなゲスト2名が通うレストランである「unis」のシェフを務めるのが薬師神さん。誕生日や記念日などのハレの日に使用することをコンセプトにしたレストランで、1.5か月ごとにメニューが変わるコース料理が魅力の一つです。薬師神氏は「『食 × 健康』というテーマで、生きることや日常のヒントを、異なる業界で活躍するゲスト2名から聞き出したいと思います」とイベントの趣旨を説明しました。

本来、このイベントはゲストにちなんだ薬師神さん考案の「一汁一菜」のメニューを頂けるのが魅力でもあるのですが、今回は残念ながらオンライン配信となり、ゲストのみの試食となりました。

「このイベントを行っているTOKYO TORCH 常盤橋タワー3Fには『みそスープBAR』があり、おむすびと味噌汁を販売しています。せっかく同じ場所で開催するイベントなので、ゲストにちなんだ食事を同じフォーマットで提供しようというアイデアが浮かびました。今回はゲスト2名に合わせ、『菌活』をテーマに味噌を取り入れた食事にしました」と薬師神さん。

暦は立春ということで、おむすびの具材にはふき味噌を採用。発芽玄米を使用し、冷めてもおいしく食べられるおむすびに仕上がっています。味噌汁に使用しているのは福井県のマルカワ味噌。「蔵で採れた野生酵母を使用しており、菌ケアの側面から見ても効果が期待できます。この味噌蔵さんは本当にすごいんです」下川さんが熱弁。

味噌汁はカツオと昆布で出汁を取るのが一般的ですが、今回は豚肉とアサリで取り、トマトを入れてアクアパッツア風に。使用した味噌の量は通常の1/4ほどですが、出汁のおかげでうま味をしっかり楽しめると薬師神さんが説明しました。

この味噌汁を飲んだ伊達さんは「人間はおいしすぎるものを食べると無口になりますね。出汁のうま味が一般的なものとは異なりますし、トマトが入っていることにも衝撃を受けました。大きいどんぶりで飲みたいくらいおいしかったです」と感想を述べました。

身体を「調えること」と「整えること」をテーマにパネルトーク

一汁一菜の食事レポート後はパネルトークに。トークテーマの設定について、薬師神さんは次のように語りました。

「最近、サウナブームや腸活ブームで『整った』という言葉をよく耳にします。それはどういう状態なのかを考えたのがきっかけでした。料理人にとって「調う」という漢字は、「調理」や「調味」のように、よりおいしくするために使います。「整える」は体がいい状態ではないときに使います。異なる業界で活躍するお二人は、それぞれ整えるために何をしているのかお伺いしたいと思いました」(薬師神さん)

薬師神さんの質問に対する伊達さんの回答には、アスリートらしさが表れていました。

「私は朝目覚めたときから整え始めています。現役時代は、まさに体が資本でした。同じように8時間寝ても目覚めがいい時、ちょっと悪い時、体が重い時と状態はさまざま。寝ている状態でどの筋肉が張っているか確認し、起きてストレッチをしながら、改めて張りを確認したり、触ったりします。選手時代から続けているルーティーンで、今でも行ってしまいます。自分の体をいい状態に戻そうと自然に考えて動く自分が嫌いではないですね」

朝から晩まで腸内フローラのことを考えているという下川さんは、菌ケアのために3つのことが大切だと言います。

「『整える』と言えば、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)を整えることです。『菌を取り入れる』『いい菌を育てる』『菌の邪魔をしない』の3つが大切です。菌を取り入れるということは、発酵食品を摂るということです。『菌を育てる』ためにはポリフェノールやオメガ3、ほかにも先ほど食べたおむすびに入っていた発芽玄米が有効です。最も重要なのが『菌の邪魔をしない』こと。ストレス、運動不足、睡眠の質の低さも影響します。私の場合、会食続きで食生活が乱れたり運動不足になったりすると、スマホを使って仕事をしながらウォーキングをしています」(下川さん)

トークから派生して、話題は朝ごはんに。飲食店を経営する薬師神さんは夕食の時間が遅いため、朝はさほど空腹感がなく、バナナ1本などエネルギーになるようものを摂るだけにとどめていると話しました。それに対し、下川さんは菌ケアの側面から、伊達さんはアスリートとして次のように語りました。

「仕事柄難しい人もいますが、夕食はなるべく早く取り、朝食をしっかり取る。一日の活動は朝に始まるため、朝昼はしっかり食べます。夜は体を休める時間ですから、夕食は少ないほうがいい。地中海に住んでいる方々はとても健康で、食と健康に関する論文の数でいえば、地中海料理が1位です。彼らは昼に最も多く食べて、夜は少しのパンとチーズ、ワインで終了。『朝は王様のように、昼は貴族のように、夜は貧者のように食べよ』という言葉の通り、朝食から夕食にかけて食べる量を少なくしていくという流れが、実は腸内環境を整えるために有効です」(下川さん)

「基本的に朝食は食べますね。お米は大好きですが、コーヒーを飲まないと一日が始まらないため、必然的に洋食です。1回目の現役のときはたくさん食べていましたが、2回目の現役のときはそれほど食べませんでした。どのみち朝食後、アップが終われば食べ、試合後に食べてといったように、小腹が空いたらすぐ食べるからでしょう。今はパンとコーヒー、それにフルーツくらいですね。薬師神さんがおっしゃったように、夕食が遅くなり、翌朝はお腹が空いていなければコーヒーのみということはあります。食べたら体を動かして、汗をかく。出し入れをしっかりすることを意識して整えています」(伊達さん)

そもそも「調っている・整っている」の指標はどのようなものなのか?回答は三者三様でした。

「『昨日、何を食べましたか?』と聞くと、昨日のことすら思い出せないくらい食事を意識されていない方がほとんどだと思います。体が勝手に整ってくれるよう、食べ合わせや、1週間のうちにメニューがかぶらないようにすることは強く意識していますね」(薬師神さん)

「気分がいいとか、体調がいいとか、『整う』の指標はさまざまですが、体の声に耳を傾け、欲しているものを摂ることにしています。例えば試合後のように疲れていると、肉を無性に食べたくなることがあります。そのなかで、薬師神さんと同じように取り入れるものや、量のバランスを考え、整うように意識はしていますね。例えば昨日は肉だったから、今日はお魚にしようというふうに」(伊達さん)

「私は健康や精神状態がお腹に表れやすい体質です。だから『整っている』状態というのは、お腹が張っていたり、痛かったりせず、存在を意識しなくても良い状態ですね。また、お腹に症状が表れるときは、不安感を抱えているサイン。そうすると決断するときに臆病になるもの。仕事をする上でも、お腹の調子の良しあしを意識しています」(下川さん)

次に話題に上がったテーマが、日々のパフォーマンスを上げるための、メンタルの保ち方です。伊達さんは好きでいたり、情熱を持ったりすること。苦手意識があったり、興味がなかったりすることでも、その中で興味を持てるものを見つけ、考えて向き合う姿勢が、モチベーションにつながっているといいます。

伊達さんの意見に同意を示しつつ、薬師神さんが意識しているのは、「ベストパフォーマンス」よりも「ファインプレー」だといいます。

「先輩シェフである須賀洋介さんに言われて印象に残っているのが、『ファインプレーをし続けろ』という話です。ベストパフォーマンスは自分が最高だと思う状態です。それに対しファインプレーというのは、他人に意識が向いているように思えます。相手の期待や想定を少しでも超えること。それがファインプレーだと思っていますし、常に意識することが大切だと思います」(薬師神さん)

それを受けた伊達さんは、テニスプレーヤー人生を振り返り、次のように語りました。

「自分の限界を決めないこと。失敗を繰り返すことは、パフォーマンスを上げることにつながると思います。自分のテニス人生を振り返っても、ジャンプアップできた前は、必ず怪我をしていたり、スランプに陥っていたりします。失敗することを恐れずに挑戦する精神が、ベストパフォーマンスにもつながっていると思います」

「私は近視眼的になっているときは、判断を誤りがち。しかし『そもそも何のために会社を始めたのか』や『目標のために今何をすべきか』と広い視野で考えると、自ずと進むべき道が見えてきます。ではそうなるために何をするかというと、お風呂に入ってバカみたいな顔をします。湯船に体を沈めて力を抜き、子ども時代に戻ったように惚けます。それをルーティーンにすることで、頭の切り替えをしています」(下川さん)

自身と向き合い、気づきを得るという視点や時間を持つことの大切さに気付かされる有意義なイベントになりました。イベントの終わりには、3名は以下のように総括をしました。

「まったく異なるキャリアを歩んでいるお二人とお話しできて、本当に貴重な時間を過ごせました。自分自身のことを理解していない方が多い中、お二人はとても内省している。僕も自分自身と向き合うことがすごく好きなので、今後も逃げずに向き合い続けることが大切だと実感しました」(下川さん)

「食文化が多様化していて、さまざまなものを食べていますが、アスリートでない今も食事をしっかりと意識しています。なにせ120歳を目指しているので。健康は体と心の二つに言えることです。お二人の話を伺う中で、心の健康を保つためにはバランスの良いライフスタイルが大切だという共通点を発見しました」(伊達さん)

「どうやったら自分が整うのか、理解していただきたい。食べることは体を作ることなので、生きるために一番大切なことです。もしかしたら晩御飯を食べながらこのトークセッションを観ている方もいるかと思います。今まさに食べているものについて考える時間を捻出する。喉を通るものに興味を持っていただけたのであれば、EAT & LEADのテーマ『食べることは生きること』というテーマに沿って、気付きを与えられたと思います」(薬師神さん)

異分野のトップランナー目線で「身体が嬉しい食事」をテーマに、プライベートにまで踏み込んだそれぞれの流儀が垣間見れるトークが繰り広げられました。


こちらにて今回のトークサロンのアーカイブ動画をご視聴いただけます。

第2回「身体が嬉しい食事」 <身体をととのえること -”調える”と”整える”>
>>https://www.youtube.com/watch?v=ZXnkE5PiXLg

第1回のレポートはこちらから
若林洋平さん(Maison Rococo 株式会社 CEO)×行方ひさこさん(ブランディングディレクター)
「ブランド・クリエーション」<ブランドづくりにおける思考のプロセスとは?>
>>アーカイブ動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=OBWwqGdtL98
>>イベントレポートはこちら
https://shokumaru.jp/talk_01_01/

第3回のレポートはこちらから
平野紗季子さん(フードエッセイスト)×梅川壱ノ介さん(舞踊家)
「届ける声・届く声」<アイデンティティの見せ方。相手に伝わる表現とは?>
>>アーカイブ動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=qvvMuBxKzEE
>>イベントレポートはこちら
https://shokumaru.jp/talk_01_03/

第1回のゲストは若林洋平さんと行方ひさこさん

第1回のゲスト、Maison Rococo株式会社CEOの若林洋平さんは2018年に日本初のラグジュアリービール「ROCOCO Tokyo WHITE」を立ち上げ、ビールのブランディングを行ってきた当事者。そして、ブランディングディレクターの行方ひさこさんは、地方創生や工芸、商品開発など、ブランディングに携わることを生業としています。今や、人もレストランもいまやブランディングの時代。星付きレストランなどの一流店でのみ扱われ、ビールに新たな価値を吹き込んだ日本初のラグジュアリービール「ROCOCO Tokyo WHITE」はどのようにして生まれたのか? ブランドのストーリーづくりやコンセプトワークも手掛ける行方さんの視点も交えて、「ブランドづくり」の真髄を探ります。

冒頭で、ファシリテーターを務める薬師神さんは「新型コロナウイルス感染症の流行拡大が懸念されるなか、1回目を無事に開催できたことをうれしく思います。私はコロナ禍に入った2020年、虎ノ門ヒルズにレストラン『unis』をオープンしました。レストランの運営だけでも大変な状況ですが、よりシェフの可能性を見出すため、営業を週4にし、週3は併設したラボで外部シェフによるイベントや商品開発などを行っています」と挨拶。日頃からお世話になっている若林さん、行方さんを初回のゲストに招いたと紹介しました。

このイベントはゲストにちなんだ薬師神さん考案の「一汁一菜」のメニューを頂けるのが魅力でもあります。メニューはおむすびと味噌汁です。メニュー選定の背景について、料理を手掛けた薬師神さんは次のように説明しました。

「EAT&LEADの活動拠点であるここ3階では、日頃からおむすびと味噌汁を提供しています。そんなキッチンで開催するイベントの初回だからこそ、おむすびと味噌汁を提供できればおもしろいのではと思いました」

おむすびには、行方さんがブランディングに携わる八女茶を使用。トマトも使用した、ピラフのようなおむすびです。また、味噌汁の味噌は、薬師神さんの出身地である愛媛県の麦で作ったもの。具材には里芋が使われ、横にはライムが添えられています。薬師神さんは「途中で味噌汁に絞って召し上がってみてください」と説明。若林さんのラグジュアリービール「ROCOCO Tokyo WHITE」に合ったおむすびと味噌汁です。

ブランド作りについて語るトークイベント

続いて始まったトークイベントでは、まず若林さんがラグジュアリービールを開発した背景について語りました。

「Maison Rococoは、私とアメリカ人、カナダ人との3人で創業した会社です。中学から大学院までアメリカ留学をしていたことから、3人とも日本を外から見ることができた。物事には、離れて見るからこそ見えてくる良い面、悪い面があります。私が気づいたのは、日本で高級レストランに行ったとき、乾杯に日本のお酒が使われないということでした。日本の食は世界に誇れると思っているのに、乾杯のときにはメイドインフランスのシャンパンを使う。そのことに悔しさを覚えたのです。『最初はビール』という言葉があるのに、高級レストランではそれができない。じゃあ、そういった店でも誇らしく乾杯できるビールを作ればいいと思ったのが、ラグジュアリービールを作ろうと思ったきっかけです」(若林さん)

自分のブランドを確立すべく動いてきた若林さん。一方、行方さんは今回の料理に使われていた八女茶など、外部のもののブランディングを手掛けるのが仕事です。同じブランディングでも、両者が大切にしていることは違うのではとの薬師神さんの問いかけに対し、両者は次のように回答しました。

「通常、ブランディングというと何かをやらなければならないと思うかもしれませんが、重要なのは何をやらないのかにフォーカスすることだと思います。ROCOCO Tokyo WHITEは、高級レストランで飲めるシャンパンに代わるビールを目指していたため、そのイメージに合わないところにはあえて卸しませんでした。また、ブランディングと製品・サービスの品質が一致していることも重要です。製品・サービスがブランドより下回ると信頼をなくしてしまいますから」(若林さん)

「ブランドは世の中に対する姿勢や立ち位置を示すこと。やることとやらないことを決めるのは元より、広い視野で見て抽象度を上げ、解像度を上げていくことが大切。その繰り返しで唯一無二のブランドにしていきます」(行方さん)

次に薬師神さんが投げかけたのは、私生活におけるルーティーンの有無です。行方さんは「基本的にルーティーンという言葉があまり好きではない」と語り、あえて違う方法を選び、当たり前だと思っていることを当たり前ではないと思えるよう心掛けていると説明しました。若林さんは「バランスがキーワード」とし、バーンアウトしないよう、何事もバランスを取るように意識していると語りました。

続いて語られたのは、ブランディングをしてみて気づいたことについてです。若林さんも行方さんも、「ブランドを作るのは人」だと指摘します。

「人間の延長線上にブランドがある。ROCOCO Tokyo WHITEを成長させるためには、自分たちブランドを作っている側がもっといい人間にならねばと思っています」(若林さん)

「その方々の人となりがブランドに乗って広がっていく。お手伝いをする段階でどこまで深く考えられるのか。伴走しながら一緒に考えていけたらと思っています」(行方さん)

トークイベント後に設けられた質疑応答タイムでは、以下のような質問が会場・オンライン参加者から寄せられました。

Q ブランディングをしていく中でうまくいかなかった事例、こうした方が良かったと感じる事例があれば教えてほしい。

若林さん:ROCOCO Tokyo WHITEは、狙い通りブランディングができたといえる。ただ、ブランディングができても、それで終わりではないと感じています。店に卸していただいた後、最終的にはエンドユーザーにオーダーしてもらうところまでいかなければならない。その行動変容の方がブランディングより難しいと実感し、日々悩んでいます。

Q 学生の間に意識しておくべきことは何か。

薬師神さん:「こうしたい」という思いの強さからブランドができているため、まずは「僕がこうしたい」を持つことが大事。最近は「こうしたい」がない学生が多いと感じているが、多少エゴでもいいし間違っていても構わないので、「僕だったらこう」を持ってほしい。

若林さん:日本では平均を求められるが、アメリカでは強みにフォーカスすることが是とされる。一つでもいいから人に負けない何かを持つのが重要。それを実現しやすいのは好きなことをやることではないかと思う。

行方さん:好きなことや強みが分からない人もいると思う。私は少しでも興味を抱いたものに関する本を9冊ほど読むようにしていた。ある程度の知識が多角的に入ることで、本当に興味があるかどうか判断しやすくなる。心が動かされることを手当たり次第に掘っていくと、一定のところでふわっとつながることがある。気負わずにやっていってもいいのでは。

Q ブランドを作る際、どの程度のライフサイクルを見据えているか。

薬師神さん:こういうブランドじゃなきゃいけないという思いはあまりなく、時代に沿って転換できればすごくいいと思う。時代によってニーズも世代も変わっていくため、unisは週4営業というスタイルは維持しつつ、時代に沿ったキッチンのあり方、アドリブ力を大事にしたい。

行方さん:臨機応変。世の中の変化は激しく、スピードも速まっていくので、執着しない、傾倒しないことを心がけている。

若林さん:そもそもブランドが浸透するまでには時間がかかるものだと思っている。短期的なブームで終わるものではなく、じわりじわりやって100年後にも存在するようなブランドを目指す方がいいと考え、ロングタームで見るようにしている。目先のアイディアに惑わされず、信じているものを一歩ずつきちんとやっていきたい。

ワークショップ「愛されるブランドになるために求められること」

後半には45分間のワークショップが行われました。会場参加者を3グループに分け、それぞれが好きなブランドとその理由についてセッションを行います。薬師神さん、若林さん、行方さんの3名も各テーブルを移動しながら参加。和やかな雰囲気で進められました。

最後には、各テーブルの代表者が結果を発表しました。

「さまざまな業種や製品のブランドが出てきたが、グループ分けしてみたところ、ブランドそのものが身近な存在であることが重要なのではという意見が出た。人間味があるというか、ファンとのコミュニケーションが身近なところが重要なのかもしれない」

「新しいブランドよりも歴史のあるブランドが多く挙げられた。また、使うことで気分が上がったり、自分の居場所がここにあると感じられたりする気持ち面に作用するブランドも多かった」

「業界トップを誇るブランド、ニッチだが根強いファンがいるブランドの2パターンに分けられると感じた。多くのお客様に愛されること、根強いファンに愛し続けてもらえることとそれぞれ戦略には違いがあるが、どちらも究極的にはお客様のことを考えているのだろうと思った」

トークイベントからワークショップまで、盛り上がりを見せた第1回。最後に、3名からは以下の言葉が寄せられました。

若林さん:ディスカッションを聞かせてもらい、ブランドとは答えがないものなのだと感じた。人間にも「これをやれば絶対にいい」という正解がなく、ブランドと同じだと思う。ユーザーの課題を解決できればニーズがあり、ブランドとしても評価されると思うが、その課題も一つではないところが難しいしおもしろい。多くの意見があり参考になりました。

行方さん:ブランドというともう少し憧れが出てくるかと思っていたが、共感、安心できるブランドを好ましく思っているものが多かった。共感の時代と言われているが、まさにそういう時代なのだなと感じました。

薬師神さん:それぞれのテーブルの色が出ていておもしろかった。現代は、ネットに操作されて、よく見るブランドをいいと思わされるような、ITに揺さぶられている側面があると感じる。参加者の方々には、これからも揺らがない骨のある部分を持っていただきたいし、僕たちもよりきちんとしたブランドを作るため、肉付けしていかなければいけないと思いました。

一汁一菜を味わいながらトークイベントでインプットし、ワークショップでアウトプットする本イベント。後半では、参加者同士のコミュニケーションも活発に行われ、聞くだけでは終わらない良さを感じられる時間となりました。


こちらにて今回のトークサロンのアーカイブ動画をご視聴いただけます。

「ブランド・クリエーション」<ブランドづくりにおける思考のプロセスとは?>
>>https://www.youtube.com/watch?v=OBWwqGdtL98

第2回のレポートはこちらから
下川穣さん(株式会社KINS 代表取締役)×伊達公子さん(テニスプレーヤー)
「身体が嬉しい食事」 <身体をととのえること -”調える”と”整える”>
>>アーカイブ動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=ZXnkE5PiXLg
>>イベントレポートはこちら
https://shokumaru.jp/talk_01_02/

第3回
平野紗季子さん(フードエッセイスト)×梅川壱ノ介さん(舞踊家)
「届ける声・届く声」<アイデンティティの見せ方。相手に伝わる表現とは?>
>>アーカイブ動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=qvvMuBxKzEE
>>イベントレポートはこちら
https://shokumaru.jp/talk_01_03/

腸内環境を整え、免疫力を高める「発酵食」は人を元気にする!

腸内環境と免疫力は密接な関係にあると言われています。そもそも腸には体内の免疫細胞のうち、およそ6割が集中しているとされており、この免疫細胞を活性化させることが、外部からの病原体と戦う免疫力の向上につながるとされています。そんな免疫力のアップの助けとなるのが「発酵食品」。発酵食品には、乳酸菌をはじめ、人間の身体に有用な善玉菌が豊富に含まれており、積極的に取り入れることで生きた菌が腸にダイレクトに働きかけるほか、加熱されるなどして死菌になったものは腸内細菌の餌となって腸を活性化します。

会場:MY Shokudo Hall & Kitchen/みそスープBAR

2021年8月に常盤橋に誕生したEAT&LEADの拠点「MY Shokudo Hall & Kitchen」を中心に“人と街を発酵させる”4つのプログラムを展開します。

東京都千代田区大手町2-6-4 TOKYO TORCH 常盤橋タワー3F
TEL:03-6665-6989
【営業時間】 平日9:00~21:00
※みそスープBARは11:30~なくなり次第終了
※イベント開催時は定休日となります
※営業日は公式サイトでご確認ください
https://mhk-tokyotorch.jp/

発酵食の魅力を体験する4つのプログラム

PROGRAM.1

食にまつわる課題を美味しく考える夜
実際に食事をしながら食のストーリーについて学ぶレストランを各月1日限定で開催。つくり手である「生産者」と使い手である「料理人」を登壇者に迎え、食べ手である私たち「消費者」が、明日からの行動をどう変えていくべきかを、おいしく考える一夜に。

■vol.1「海辺の風土が育む、料理とものがたりfeat.海のレシピプロジェクト」
日程:2022年5月12日(木)
監修:八雲茶寮総料理長、FOOD NIPPON代表 梅原陣之助さん、糀屋本店・こうじ屋ウーマン 浅利妙峰さん(リモート出演)、音楽家 青柳拓次さん(“海の唄”ミニライブ開催)
MENU:大分県の食材に触れる、里山里海ショートコース

■vol.2「日本の食文化「発酵」を次の世代につなぐ」
日程:2022年5月19日(木)
監修:たべものさし 村上友美さん、味噌蔵・井伊商店3代目当主 井伊友博さん
MENU:麦味噌など愛媛ならではの発酵食を使ったショートコース

■vol.3「震災から11年、災害・風評被害の解決の一歩」
日程:2022年6月10日(金)
監修:フレンチ割烹ドミニク・コルビオーナーシェフ ドミニク・コルビさん、ばんだいジオファーマーズ 吉村和也さん(和屋)/佐藤栄祐さん(夢農園さとう)
MENU:福島県の食材を使った、初夏を感じるショートコース

お申し込みはこちら!
>https://eat-and-lead.peatix.com

開催概要はこちら
>https://shokumaru.jp/hakkomarunouchi2022_2/

PROGRAM.2
発酵食を自分の手で
毎日の食生活に発酵食品を手軽に取り入れ、腸の中から元気な身体づくりを目指して。発酵のスペシャリストを講師に迎え、実際に手を動かしながら発酵食の知識を養います。

【開催日程】
■vol.1「おいしいお出汁の取り方ワークショップ」
日程:5月23日(月)19:00~20:30
講師:料理家 大黒谷寿恵さん
■vol.2「いろいろ糀のワークショップ -おいしい活用方法も!-」
日程:6月23日(木)19:00~20:30、6月25日(土)15:00~16:30
講師:料理家 大黒谷寿恵さん

お申し込みはこちら!
>https://eat-and-lead.peatix.com

開催概要はこちら
>https://shokumaru.jp/hakkomarunouchi2022_3/

PROGRAM.3

キッチンでチーム力UP!これからの時代は、料理でチームビルディングを
夕方仕事を少し早めに切り上げてチームみんなでキッチンに立ち、旬の食材をつかってディナーをワイワイとつくる。そしてみんなで一つのテーブルを囲み、同じメニューを食べ、知識ではなく感覚を共有していく。キッチンでの親密なコミュニケーションは他者への気遣いを高め、チーム力を高めることにも繋がります。人気料理人をナビゲーターに迎えた、少人数制のスペシャルなチームビルディング。

【開催日程】
■vol.1「愛媛の旬を発酵食でさらに美味しく」
日程:5月18日(水)
講師:たべものさし 村上友美さん
■vol.2「東北・味覚のレッスン – 自宅のキッチンから思考を変える-」
日程;6月9日(木)
講師:フレンチ割烹ドミニク・コルビ オーナーシェフ ドミニク・コルビさん
■vol.3「海を感じる、作る、味わう!演劇メソッドを用いた海の幸クッキング」
日程:6月29日(水)
講師:料理家 大黒谷寿恵さん ・ 演出家 大谷賢治郎さん
■vol.4「DELISH KITCHEN食材活用術 -おうちの冷蔵庫からフードロスを考える-」
日程:Coming Soon
講師:DELISH KITCHEN /さすてな食堂

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開催概要はこちら
>https://shokumaru.jp/hakkomarunouchi2022_4/

PROGRAM.4

「MY Shokudo Hall & Kitchen」内にある「みそスープBAR」では、全国各地からセレクトした食材で毎朝丁寧に出汁をひき、具沢山のお味噌汁とおむすびを平日11:30~販売しています。期間中は、人気料理人監修のお味噌とおむすびをいただけます。メニュー化で大切にしたのは「心と身体をホッとゆるめること」「食べることで誰かの応援になること」「地球のためになる(フードロス削減)こと」。ぜひ一度ご賞味ください。

■vol.1「おうちのフードロスを考える おむすび&お味噌汁」
日程:2022年6月1日(水)~6月30日(木)
監修:DELISH KITCHEN さすてな食堂

詳しくはこちら
https://shokumaru.jp/hakkomarunouchi2022_1/

丸の内エリアで発酵メニューを扱う店舗をご紹介!

HAKKO MARUNOUCHI MAP

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※新型コロナウイルスの感染状況により、イベントは縮小開催、延期または中止となる場合がございます。

毎日の食生活に発酵食品を手軽に取り入れ、腸の中から元気な身体づくりを目指して。発酵のスペシャリストを講師に迎え、実際に手を動かしながら発酵食の知識を養います。

【開催時間】
各回平日19:00~20:30、土曜日15:00~16:30

【定員】
会場参加/各回先着10名、オンライン参加/先着30名(※6/25開催回)
※各回の申込はすべてPeatixでの事前予約制となります

【参加費】
おひとり6,000円(税込)
※材料費、お食事代含む
※オンラインでの参加の場合は材料費、送料含む
※会場参加の場合:ペアもしくはチームでのお申込でお一人あたり500円OFF

【開催日程】
①5月23日(月)19:00~20:30/会場開催
「おいしいお出汁の取り方ワークショップ」

②6月23日(木)19:00~20:30/会場開催、25日(土)15:00~16:30/会場開催・オンライン開催
「いろいろ糀のワークショップ -おいしい活用方法も!-」

講師:料理家 大黒谷寿恵さん

料理家。石川県金沢市出身。大学卒業後、料理の世界へ。日本料理店で学び3店舗の料理長経験後、2006年kurkku cafeのディレクター兼料理長に就任。2009年より鎌倉で料理教室「寿家」を開業、ケータリング、出張シェフ、レシピ開発を精力的に行う。2015年に「にほんのごはん」のサイト立ち上げ、共著書「和サラダ/和マリネ」(エイ出版)

お申し込みはこちら!
>https://eat-and-lead.peatix.com

【会場】
MY Shokudo Hall & Kitchen/みそスープBAR
東京都千代田区大手町2-6-4 TOKYO TORCH 常盤橋タワー3F
https://mhk-tokyotorch.jp/

 その他、3つのプログラムも参加者募集中!
https://shokumaru.jp/hakkomarunouchi2022-sp/

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