知っておきたい夏に起こる身体の不調

夏場のビジネスパーソンを悩ませるお腹の不調

 照りつける太陽とは対極にキーンと冷えた室内。寒暖の差や猛暑というストレスで自律神経が乱れがちなこの季節。夏に入ってから「どうにも胃腸の調子が…」という人も少なくないのではないでしょうか。
養命酒製造株式会社が行った20代〜50代のビジネスパーソン1,000名を対象にした調査によると「夏は心身の疲れを感じる」と回答した人はなんと9割(89.0%)にも昇り、4人に3人は夏に疲労感を抱えているという結果が出ています。とくに胃腸の調子が良くないと回答している人は男女ともに半数以上に昇ります。

この時期気になる「胃バテ」と「腸バテ」

 なかでも夏場の胃腸のコンディションに関しては「胃バテ(胃の不調•食欲不振)」が男性で64.2%、女性で74.2%にもなり「腸バテ(腸の不調•下痢•便秘)」は男性で58.2%、女性で67.8%と、多くのビジネスパーソンが夏場は胃腸の不安を抱えながら働いていることがわかっています。夏バテのひとつに「胃腸障害」があり、以下のような症状が挙げられます。

胃の調子は記憶力と関係する!?

 他の季節と同じように食事をしていても胃腸障害を抱えると栄養吸収には大きなダメージが生じます。胃と深い関係にあるビタミンといえばビタミンB12。ビジネスパーソンの記憶力を支える大切なビタミンです。(胃がん患者は胃の切除後ビタミンB12欠乏症により悪性貧血や記憶障害を発症するリスクが高いため、ビタミンB12の投与を行います。)
ビタミンB12は動物性たんぱく質に含まれるビタミンであり、消化吸収には胃酸(塩酸)が必要不可欠です。よって胃炎などの症状にかかってしまうとビタミンB12の吸収率は大幅に低下します。

 ビタミンB12は蓄積ができるビタミンですので、急に欠乏症状が生じるわけではありませんが、慢性的なストレスを自覚している方は貧血症状や記憶力の減退には注意が必要です。

夏場の運動不足が腸バテを促進!?

 暑くなると誰もが体力を消耗し、運動へのモチベーションが低下するもの。普段なら使う階段も散歩も億劫になり、クーラーの効いた室内で過ごす人も多いのではないでしょうか。照りつける太陽を前に「一夏くらい…」と思ってしまいそうですが、ギブス固定状態や宇宙空間などの筋肉を使わない環境にいると人は1日約1%ずつ筋力が低下していくことがわかっています。胃や腸も筋肉運動によって動いていることを忘れてはいけません。汗をかくほど激しい運動は必要ありませんが、オフィスでは簡単なストレッチや階段の上り下りは意識できるとよいでしょう。

 ただでさえ胃腸に不安を感じやすいこの季節ですから、暴飲暴食、アルコール、刺激物(辛いもの)、タバコなどの過剰摂取は控え、いつにも増して胃腸を労りましょう。胃腸を労るといえば「キャベジン」が有名ですが、キャベジンとはビタミンUのことを意味します。キャベツから見つかった栄養素で、傷ついた胃腸の粘膜を修復する作用があることが注目されています。キャベツには他にも胃の修復を助ける作用のあるリゾファチジル酸(LPA)を作り出す働きがあるため「食べる胃腸薬」と呼ばれています。ただし、これらの有効成分は熱に弱いため、キャベツは生で食べましょう。(繊維の消化が悪いため、食べ過ぎは厳禁です。)

次号ではより詳細な「胃腸の健康を高める食事」をお届けします。

炭火焼肉トラジ Chun Ha Chu Dong
妻家房 丸の内オアゾ店
サムゲタンは韓国の宮廷料理で、疲れた胃を癒す食べ物とされています。鶏肉やなつめは胃の機能を高める働きがあり、食欲が低下したときにもおススメの一品です。

細川モモ

両親のガン闘病をきっかけに予防医学に関心をもち、渡米。以後、年の1/3を各国のリサーチに充てる傍ら資格を取得し、健康食品会社の開発部に所属。独立後に始めた講演活動は年間150本以上、47都道府県に渡り、09年の春に医療•健康•食の専門家によるプロフェッショナルチーム「Luvtelli 東京 & NewYork」を日本とNYに発足。11年に企業や大学とともに世界一規模の「卵巣年齢研究」を実施し、論文発表を精力的にこなす。2013 ミス•ユニバース•ジャパン オフィシャルトレーナーとして美女たちの食事指導を担当。指導内容をまとめた「タニタとつくる美人の習慣」(講談社)は7万部を突破し、不健康な痩せ願望女性を減らそうという試みがNHK「おはよう日本」、NHK WORLDにて特集される。テレビ朝日「BeauTV VOCE」他出演•女性誌掲載多数。聖マリアンナ医科大学東横病院とコラボしたオリジナル血液検査「プリンセスプラン(¥34,300-)」が大好評。

文・細川モモ

データ出典
・夏バテと胃腸不調に関する生活者タイプ別実態調査(養命酒製造株式会社調べ)
・アメリカ農務省(USDA)×タフツ大学共同研究
・栄養医学研究所