心の風邪を予防する食卓

幸福ホルモンは食べて作られる!

 生きていれば誰もが引く可能性のある「心の風邪」。ついに五大疾病のひとつになった「うつ病」ですが、働き盛りの丸の内ビジネスパーソンにとっても予防したい病気の一つではないでしょうか。
心の風邪を予防するためには「幸福ホルモン」と呼ばれる「セロトニン」を意識した生活を営みましょう。セロトニンは ①朝日を浴びること ②リズム運動(咀嚼や呼吸法)をすること ③「心の風邪を予防する食事」をすることなど、いくつか方法がありますが、今回は③の食事に着目してみましょう。なぜなら幸福ホルモン「セロトニン」の材料である「トリプトファン」は人の身体では作り出せず、日々のお食事から取り入れることが大切だからです。

明日の心の健康をチャージする食材は?!

 セロトニンの材料である「トリプトファン」は必須アミノ酸といって、人の身体では作り出せないものです。食材で必須アミノ酸を含むのは肉や魚、大豆などの「たんぱく質」と呼ばれるもの。セロトニンに限らず、私たちの身体は全部で20種類のアミノ酸で作られています。そのうち9つのアミノ酸のことを「必須アミノ酸」といい、これらは体内で作り出すことができません。
9つの必須アミノ酸がバランスよくパーフェクトに含まれている食材を「良質たんぱく質」といい、どの食材がどれくらい必須アミノ酸を含んでいるかは「アミノ酸スコア」によって得点化されています。スコアが高いほどたんぱく質としての価値が高くなり、身体の材料の充足率が高まります。

アミノ酸スコアアミノ酸スコアご飯+納豆で食卓のスコアを100に!

 スコア表をみると肉や魚、卵などが高得点であることに対して、パスタやパンの主原料である小麦は低スコアであることがおわかりいただけると思います。実は、小麦はそのままではたんぱく質としての利用価値が低く、菓子パンやカップ麺だけでは明日の身体を作る上であまりに心もとない食事内容といえます。だからこそパンや麺にはツナや卵、魚介類を合わせて明日の身体の材料をチャージしましょう。
ちなみに米のアミノ酸スコアは65点。米は必須アミノ酸のひとつ「リジン」だけが不足しているのですが、そのリジンを豊富に含んでいるのが大豆製品です。つまり、ご飯に納豆を合わせることは食卓のアミノ酸スコアを100にすることであり、理にかなった食べ方であるということ。納豆はトリプトファンも豊富に含んでいるため、心の健康にも一押し食材です。

セロトニンにはダイエット効果も!

 セロトニンは「精神を安定させる」という働きだけでなく、実は「食欲を抑制する」働きもあり、ダイエット効果も期待できます。強いストレスを感じたとき、無性に甘いものが食べたくなるという経験をされた方は少なくないと思いますが、甘いものや肉類には一時的にセロトニンの分泌量を高める働きがあるため、ストレスが多いときほど甘いものへの欲求が高まります。ストレスからくる「どか食い」を予防するためにもセロトニンの材料となるトリプトファンを含む肉や魚を意識して食べましょう。カップ麺やおにぎりだけでは食欲は満たされても身体(脳)は満たされません。

女性はセロトニンを不足させやすい?

 うつ病の患者数は女性の方が多いことは知られていますが、女性は男性に比べて脳内のセロトニン合成が少ないことがわかっています。とくに月経前の体調不良期(PMS期)はセロトニンの受け取りを阻害する物質が分泌されるため、情緒不安定に陥りやすい傾向にあります。
その上さらにダイエットによって食事量全体が少なかったり(現在の日本女性の平均摂取カロリーは終戦直後の女性の摂取カロリーを下回っています)、肉や魚などのカロリーが高い食品を避ける傾向にあるため、女性はセロトニン不足に陥りがち。下記の「ポーションあたりのトリプトファン含有量トップ8」を参考に、是非食生活を見直してみてください。

トリプトファン含有量トップ8落ち込んだときこそお魚を食べましょう。

 心の健康を保つ上で是非食生活にプラスしていただきたいのがDHAを含むお魚です。DHAは脳の記憶力を高めるだけでなく、セロトニン値の低下を防ぐ働きがあり、心の安定にも一役買ってくれます。実はこのDHAも身体の中で作り出すことができない脂肪酸のため、「必須脂肪酸」と呼ばれています。 心の安定を保つために必要不可欠である「セロトニン」も「DHA」も私たちは自分の力で作り出すことができないわけですから、日々の食事がいかに心の健康に大きな影響力をもっているかがおわかりいただけると思います。ポーションあたりのDHA含有量ランキングは以下を参考にしてください。

 食材から体内でセロトニンを合成するためには、トリプトファンの他にビタミンB群やマグネシウムなども必要になります。「食育丸の内」のスターシェフが手がけるレシピで「心の風邪予防」に最適なレシピをご紹介しますね。
アンティカ•オステリア•デル•ポンテ(丸の内ビルディング36F)のスターシェフ、ステファノ ダル モーロ氏が手がけた
「米粉のタリアテッレ 豆乳スープ仕立て 金目鯛と東京野菜のメリメロ」

この時期丸の内でランチを食べるなら魚のカルパッチョが一押し。
必須アミノ酸と必須脂肪をチャージし、身体も脳も満たされましょう。

細川モモ

両親のガン闘病をきっかけに予防医学に関心をもち、渡米。以後、年の1/3を各国のリサーチに充てる傍ら資格を取得し、健康食品会社の開発部に所属。独立後に始めた講演活動は年間150本以上、47都道府県に渡り、09年の春に医療•健康•食の専門家によるプロフェッショナルチーム「Luvtelli 東京 & NewYork」を日本とNYに発足。11年に企業や大学とともに世界一規模の「卵巣年齢研究」を実施し、論文発表を精力的にこなす。2013 ミス•ユニバース•ジャパン オフィシャルトレーナーとして美女たちの食事指導を担当。指導内容をまとめた「タニタとつくる美人の習慣」(講談社)は7万部を突破し、不健康な痩せ願望女性を減らそうという試みがNHK「おはよう日本」、NHK WORLDにて特集される。テレビ朝日「BeauTV VOCE」他出演•女性誌掲載多数。聖マリアンナ医科大学東横病院とコラボしたオリジナル血液検査「プリンセスプラン(¥34,300-)」が大好評。

文・細川モモ

データ出典
・五訂増補 日本食品標準成分表 2010
・国連連合食料農業機関データ参照及び米国臨床栄養士による計算表