4月1日(土)~5月7日(日)の期間、「丸の内から発酵食で心も、身体も、健康に。人も、まちも、元気に」をテーマに、「HAKKO MARUNOUCHI 2023 Spring」を開催します。HAKKO MARUNOUCHIは、心身のウェルネスを叶える日本の食文化「発酵」に着目し、日常の食生活に取り入れる工夫や喜びを学び、発酵食を推奨するイベントです。
今春のHAKKO MARUNOUCHIは、“みんなで健康 みんなの医療 みんなが長寿”をテーマに、丸の内エリアで開催される「第31回日本医学会総会2023東京 博覧会」の会期(4月15日~23日)に合わせて開催。「発酵」を通して丸の内エリア全体で人生100年時代の健康について考える機会を提供します。
【丸の内エリアのお店めぐり】発酵食を味わえる9軒
第31回 日本医学会総会2023東京 博覧会も開催され、健康に対する意識が高まる時期、HAKKO MARUNOUCHI 2023 Springは発酵食を取り扱っている丸の内エリアの9店舗と連携します。寒暖差が大きく体調の揺らぎが出やすい春だからこそ食べていただきたい厳選メニューを展開。長期熟成味噌で仕立てた新提案ドリンクや塩麹漬けのソーセージなど、多様なラインナップが揃っていますので、これらのお店をめぐって、発酵食を味わい、発酵を学ぶきっかけにしてみてください。
>>丸の内のHAKKOのお店は、こちらのリーフレット(PDF表裏)にてご確認いただけます。
【スペシャルトークイベント】おいしくてカラダに嬉しい発酵のはなし
4月22日(土)には、京都で唯一の種麹屋であり、創業約300年以上の老舗「株式会社菱六」代表取締役社長の助野彰彦さん、「株式会社麹の学校」代表・麹文化研究家・元蔵人のなかじさん、発酵料理家の村上友美さんを招いたスペシャルトークイベント「おいしくてカラダに嬉しい発酵のはなし」を開催します。
当日は、ゲストによる発酵人生や麹・日本食についてのトークや、参加者がご自身の体温で3日間育てる「ポケット麹」のデモンストレーションなどを行います。さらに、発酵食たっぷりの一汁一菜の軽食もご提供しますので、ぜひお気軽にご参加ください。参加費無料です。
上の写真:左から、助野彰彦さん(株式会社菱六)、なかじさん(株式会社麹の学校 代表・麹文化研究家・元蔵人)、村上友美さん(発酵料理家)
開催概要
●日時
4月22日(土)13:00~14:30(開場 12:30)
●参加方法
参加費無料/事前予約制(Peatix)。以下のURLよりご予約ください。
https://hakko-marunouchi2023s-st.peatix.com
●参加人数
先着25名様
●会場
MY Shokudo Hall&Kitchen(東京都千代田区大手町2-6-4 TOKYO TORCH 常盤橋タワー3F)
https://mhk-tokyotorch.jp/
●登壇者
京都で唯一の種麹屋(株式会社菱六) 助野彰彦さん
株式会社麹の学校 代表・麹文化研究家・元蔵人 なかじさん
発酵料理家 村上友美さん
●軽食付き
村上友美さんの発酵ワンプレートをご提供します。
写真はイメージです
●期間
4月1日(土)~5月7日(土)
●会場
・MY Shokudo Hall&Kitchen
・みそスープBARほか丸の内エリアの飲食店
>>プレスリリースのダウンロードはこちら
https://shokumaru.jp/wp/wp-content/uploads/2023/03/6efe1e7b61c6113d6373e6b656380e9f.pdf
「みそスープBAR」とは? >> EAT&LEADの活動拠点の1つ「MY Shokudo Hall & Kitchen」で展開している、全国各地の旬の食材や発酵食材を使った具沢山のお味噌汁とおむすびを提供するスタンドが「みそスープBAR」です(営業は平日11:30~14:00)。MY Shokudo Hall & Kitchenでは、“食を通じて”おいしく・身体がよろこぶ食力を高めること。生活者と生産者をつなげること。食を通じてコミュニケーションを高めること。この3つを目的に”食”について知り、学び、つくり、体験するプログラムと仕組みを展開しています。
https://mhk-tokyotorch.jp/
参考
【日本医学会総会2023東京 博覧会について】
「みんなで健康 みんなの医療 みんなが長寿」をテーマに、こどもから大人まで学生から医療に関わる人まで楽しく学べる展示会。最先端の医学・医療・技術の展示から、運動・食事・病院の体験企画まで、健康をキーワードにしたからだにまつわる知りたいがつまった博覧会。
●期間
4月15日(土)~23日(日)
●会場
東京国際フォーラムおよび丸の内/有楽町エリア
●公式HP
https://isoukai-expo.jp/
よく晴れた日曜日の午後、東京駅を眺められる丸ビルのコンファレンスルームは、リラックスできるエッセンシャルオイルの香りに包まれています。輪になって集まって、いよいよ「私と向き合う時間」が始まります。まずは、Will Conscious Marunouchiの主催者である三菱地所・井上友美の挨拶からスタート。
「働く女性の皆さんが悩んでいることや迷っていることをゆっくり話せる機会を作りたいと考えて、長く温めてきた企画を今日こうして開催することができました。関係性の深い家族や友達には心配をかけたくなかったり、話づらかったりする事柄もあると思います。こうしてこの場で顔を合わせたメンバーだからこそ、気軽になんでもお話ししていただきたいです」
これまでにWill Conscious Marunouchiでは、働く女性たちが未来を前向きに見据えられるよう、様々なプロジェクトを実施してきました。「私と向き合う時間」もその一環で、「こうあるべき」といった固定概念に捉われずに、仕事上の悩みやライフイベントの迷い、自分の体や子供を持つことなど幅広いテーマを扱い、共に考える場所を提供していきます。第一回のゲストであるヤムナプラクショナーの池畑薫さんに、自己紹介をしていただきました。
「ヤムナメソッドを教えています、池畑薫です。ヤムナメソッドとは、骨格や筋肉を正しい位置に戻し本来の姿勢や動きを取り戻すエクササイズメソッドのひとつ。もともとスポーツやエクササイズが好きだったのですが、ヤムナメソッドと出会って『これはまず最初に習得するべきものだ』と直感し、今まで続けてきました。続けていくうちに、体のパフォーマンスを上げるだけでなく、本来の自分自身を引き出してくれる方法だと感じたんです」そう語る池畑さんの背筋は天井に向かって垂直に伸び、笑顔は明るく輝いています。
体を動かすのが好きなことを生かして、フィットネスウェアのモデルなどをしていた池畑さん。30歳を過ぎてから「何かを真剣に勉強したい」と思っていた頃にヤムナメソッドと出会ったそうです。その存在を知った2週間後に、アメリカにいるメソッドの考案者のもとで資格取得のための講習があることを知り、仕事の休みを取ってすぐに申し込んだのだとか。「自分の直感を信じて、勇気を出して最初の一歩を踏み出すことが大切です」とは言うものの、直感を疑ってしまったり、挑戦に二の足を踏んでしまう人も多いのでは……。
「自分の直感を信じられたのは、私が昔からマインドフルネスを生活に取り入れていることも関係しているかもしれません。マインドフルネスには、何も特別なものは必要ありません。自分の感覚に敏感に向き合って、集中すること。例えば食事をするときにも、テレビを見ながら食べるのではなく、目の前にある食事の味わいに集中する。あとは日頃無意識にしている呼吸に注目する。目を閉じて、息を鼻から吸って、ゆっくりと吐くことをカウントしながら繰り返してみる。これだけでも自分自身をニュートラルな状態に調整できる、マインドフルネスだと言えます」と池畑さん。
井上も「コンディションやシチュエーションを整えて、『さぁ、マインドフルネスを始めます』というものだと思っていたのですが、池畑さんのお話からすると瞬間瞬間で取り入れられるのですね」と嬉しい発見があった様子。
「私は田舎の小さな島生まれで、古い慣習や価値観を窮屈に感じていました。宴会をしていても女性が給仕係に徹していたり、お年玉の金額が弟よりも少なかったり……。そんなモヤモヤした気持ちを抱えていたら、体にも不調というかたちで現れてしまって……。海を眺めて風を感じる時間を作るなどして、無意識に自分のメンタルを調整していました。だから今も、ヤムナメソッドやマインドフルネスを取り入れることで、自分ができるだけ快適に過ごせるようにしているんです」
ここまで聞くと、会場の皆さんからも「やってみたい!」といううずうずした様子が伝わってきました。ここから実際に、池畑さんに簡単なワークを教えてもらうことに。
「ヤムナプラクティスは、筋肉の流れに沿ってボールを使ってほぐしていきます。ストレスを受けたり嫌な記憶を思い出すと、胃やみぞおちのあたりがきゅーっとする人もいるでしょう。内臓で感じているんです。あとは、股関節。お尻のあたりがガチガチに固まっている人がとても多いんです。股関節は、感情の関節とも呼ばれていて、精神面と密接に関係しています」と池畑さん。ボールを使わずにできるワークの始まりです。
「『頑張らなくちゃ』と力むと、胸やお腹といった体の内側に力が入って硬くなります。椅子の背もたれに体を預けて、ぐーっと体の真ん中を伸ばしてみてください。自分の意識の持ちようで、伸びる部分も変わってくると思います」そう池畑さんに言われた通りに、体をのけ反らせて伸びてみると、気持ちが良い。起き上がったあとには、少し呼吸が楽になっている気がしました。
「そう、大切なのは呼吸です。姿勢の取り方、呼吸の仕方で、体をコントロールできるんですよ。年齢を重ねるとエネルギー循環が悪くなって、脂肪が着く場所も若い頃とは変わってきます。でも深い呼吸ができるようになると、変わってきますよ」そう言って教えてくれたのは、肋骨をほぐして呼吸をしやすくする方法。まずは脇の下の肋骨の部分をさすったり、揉んだりしてほぐしていく。普段なかなか圧をかけないところなので、ちょっと痛い……なんてことも。
「肋骨をほぐしたあとは、力を抜いて深呼吸。胸いっぱいに鼻から息を吸ったら、5のカウントで口からゆっくりと細く長く息を吐きます。まずはこれを5回繰り返してみましょう。肩が上がってしまう人は、肩は動かさずに肋骨が柔らかく広がるように意識してみて」体の中心に空気を入れるようにすると、肋骨が広がるのがわかる。繰り返していくうちに、少しずつ全身がほぐれて、頭もクリアになるようでした。
そうして肩甲骨を動かし、正しい立ち方を教えてもらって、あっという間に30分間のワークが終了しました。ワークで体がほぐれたところで、ひと休み。ハーブティーとヴィーガンドーナツをいただくお茶の時間を挟んで、「私と向き合う時間」は後半へと進みます。
参加者の皆さんの表情も、部屋に入ってきたよりも明るく生き生きとしているように見えます。日頃ストレスを感じていることから、ストレスの解消方法、SNSとの付き合い方まで、ワークの後のフリートークの時間も話が弾みます。
ゆっくりと深い呼吸をし、体をほぐしたあとのお話ですっかり心まで柔らかくなった様子。終了時間となった頃には、「まだまだ話し足りない」という方も。体と心は繋がっているとはよく言うものの、それを自分自身しっかりと実感する会となりました。次回は体と心に影響を与える、ホルモンや更年期のお話です。
<プロフィール>
池畑薫さん
CMやフィットネスモデルとして活動する傍ら、あらゆるエクササイズを経験。無理な運動をすることなく、身体本来の美しさを手に入れる事ができる『ヤムナメソッド』に出会い、ヤムナ認定プラクティショナーとなる。 そのほかにBESJマットピラティスの資格を保持。長年の培った知識から、オリジナルトレーニングなどを取り入れたクラスも開催。 快適で機能的に動かせる身体作りをモットーに、通常レッスンの他、さまざまなイベントやWSを受け持ち、ヤムナの魅力を発信し続けている。
感性を揺さぶる一皿を生み出す「料理人」の創造力、共創力、ロジカル思考に着目したプログラム「EAT&LEADトークサロン-食べることから学ぶ、生きる力-」。ファシリテーターを務めるシェフの薬師神陸さんとともに2名のゲストがパネルトークを繰り広げ、「食」を通じて、新たな価値観や明日を切り開くアイデアと出会える一夜限りのイベントです。2022 年度の Season2 最終回、1月24日(火)に開催された第6回は「食の価値観から見える未来予測―食を通じて五感を呼び覚ます」というテーマのもと、naoさん(JULIA Executive Chef)と諏訪綾子さん(アーティスト・food creation主宰)をゲストに迎え、食の未来を見つめるトークが展開されました。
>>当日のパネルトークの様子は、動画にてご視聴いただけます!
●ダイジェスト動画
https://youtu.be/vhkz3pfFSTk
「EAT&LEADトークサロン」は、22年度開催した回は2部構成で行っています。
前半はファシリテーター・薬師神陸シェフと2名のゲストによる、ビジネスや生きることそのものへのヒントにつながるパネルトーク。後半はゲストや参加者が一体となって、それぞれの思考とひとりひとりの気づきをシェアする共創型のワークショップを実施します。
しかし、今回のトークサロンは少しだけ特別仕様。
イベント冒頭に、ゲストの諏訪綾子さんの提案による「マインドフルネスイーティング」と題した、小さな「食体験」を行いました。これは、普段私たちがいかに情報に頼って食べているのかを感じていただくためのワークです。
参加者は目隠しをして、手に持ったスプーンにのせられた食べ物を口に運びます。
全員があじわった後で、ひとりずつ感想を聞いてみれば「美味しいけど、何を食べているのかわからない」「過去に自分が食べたものの記憶をたどって、何のあじか考えてみた」「ゆっくりあじわっているうちに、味わいが2回も3回も変化していった」「色に例えるならベージュ」「草原の中にいるような感覚になった」など、さまざまな声があがりました。中には、「食に携わる仕事をしているのに、あじわいを言い当てられなくて悔しい」という人も。
視覚からの情報を遮断しただけで、何を食べているのかわからなくなってしまうのが不思議に思えますが、この食体験を通じて、いつも私たちがものを食べるときは味覚だけでなく、香り、触感、そして視覚まで、五感を使ってあじわっていることがよくわかります。目を閉じ、感覚を研ぎ澄ましてただあじわうことだけに集中する、少し非日常的な時間を味わえました。
食体験の後は、ファシリテーター・薬師神さんとゲスト2名の自己紹介を経て、トークセッションが始まりました。
【ファシリテーター】薬師神陸さんの自己紹介
虎ノ門ヒルズに「unis」というレストランを構えてから2年1カ月ほど経ちました。週4日間・ディナーのみ、全8席を1日2回転という形で営業しています。「unis」の向かい側にはキッチンラボと呼んでいる、若手シェフたちにお貸出しするシェアキッチンがあります。キッチンラボには、和食から中国料理、バーテンダー、ソムリエ、パン職人まで、多種多様なシェフたちが集まってきていますので、料理ジャンルの枠を超えて意見交換したり、業態開発や商品開発などに取り組んだり、このコミュニティから新たなものを生み出していきたいという思いで2年間走り続けてきました。
https://unis-anniversary.com/
【ゲスト】naoさんの自己紹介
外苑前で、公私ともにパートナーのソムリエ・本橋と2人で「JULIA」というレストランをやっています。カウンター10席、1日1回転のお店で、メニューは10~12皿とぺアリングのコースのみ。すべて国産食材を使用し、国産ワインを提供しています。お店以外にも、ときには有名ブランドのペアリングディナーイベントにシェフとして参加したり、料理学校の講師に呼んでいただいて、料理のテクニックから女性料理人ならではの仕事との向き合い方までお話しする機会もあります。また、私が仕事をする上でなによりも大切にしているのは、生産者さんとのつながりです。各地の生産者さんと直接つながって“語れる食材”を増やし、生産者さんの想いもお皿にのせて料理できるように、お休みの度に日本全国をめぐっています。
https://www.juliahospitalitygroup.com/
【ゲスト】諏訪綾子さんの自己紹介
私は、15年ほど前から「フードアーティスト」として活動しています。数年前には山梨県の水源地である山深い森の中にアトリエを移しました。たとえば昨秋、石川県白山市で行ったプロジェクトは、林業、シェフ、料理旅館、蒸溜所、木工作家など、様々な地元の方たちと一緒につくり上げた3日限りの“森の中のレストラン”。ゲストのドレスコードは長靴、お出迎えは軽トラ、メニューは「100年に一度のテイスト」で、これからの時代の新しいラグジュアリー、豊かさをあじわっていただく体験をクリエイションしました。表現手法は毎回異なりますが、「あじわう」という五感での体験を通じて、コンセプトやメッセージを伝えるクリエイションを行なっています。
https://www.foodcreation.jp/jp/
【本日の「おむすびと味噌汁」のご紹介】
EAT&LEADトークサロンの会場では、薬師神さんがゲストの2人にちなんで考案した「おむすびと味噌汁」が参加者へ振る舞われます。今回のメニューはこちらでした。
●森の香りの焼きおにぎり
●パセリと山椒の栗雑煮
焼きおにぎりには、諏訪さんが暮らす山梨県の道志村でとれた味覚をふんだんに用いています。道志村のお米とお水を使った洋風ピラフのような炊き込みご飯で、川魚、きのこ、クルミ、しその実など、具材も様々。杉板で挟んでから焼きおにぎりに仕上げているため、開けるとふわっと杉の香りが広がります。
味噌汁は、白みそ仕立てのお雑煮。お汁の中にはお餅ではなく、栗とお米でつくったきりたんぽのような具がごろりと。お料理に苦味を生かすことも多いというnaoさんにちなんで、ブロッコリーを苦みが出るまで揚げ、パセリオイルと少量の山椒をアクセントに加えています。
このおむすびと味噌汁が参加者すべてのテーブルに行き渡った頃、パネルトークがスタートしました。
従来のシェフの枠を超えて活動する薬師神さん、革新的な料理で人気を博すシェフのnaoさん、唯一無二の食体験を創作するアーティストの諏訪綾子さん。この3名は日頃からどのような価値観で食と向き合っているのでしょうか、これよりパネルトークの様子をお届けします。
──最初の質問は「なぜ仕事に『食』を選ばれたのか?」。また、食を通じて何を伝えたいからこそ「今の形を選ばれたのでしょうか?」
naoさん:私が食の世界に入ったのは、大学生のときに衝撃的なレストランと出会ったことです。レストランで過ごす時間にすっかり魅了され、その時間を提供する側になりたいと思いました。現在のお店はシェフとソムリエ2人だけで、カウンター席に1日10名のゲストをお迎えしていますが、これは独立してから10年目にようやくたどり着いたスタイルでした。10名のゲストに100点、120点の満足度で過ごしていただくためにはどうしたらいいかをずっと考え続け、満足度を上げるためにサービスを絞りこむことに。当然どうしても諦めざるを得ないこともありますが、お客様ひとりひとりに伝えていきたいこともあるのでこの形を選びました。でも、いずれはもう少しゲストが選択できる余地を増やしていきたいですし、もっと多くの方にお越しいただけるようにしていけたらと思っています。
諏訪さん:私は、学生時代に美術大学で学んだ視覚的なデザインではなく、何か目に見えないものを表現してみたいと考えていました。それが「食」を選んだ理由です。先ほど会場の皆さんに目隠しをしてあじわっていただきましたが、視覚を遮ったときに、期待してあじわう、好奇心であじわう、予感であじわうなど、いつもとは違うあじわい方になりましたよね。中には、過去の体験を思い起こした方もいらっしゃったと思いますが、ときに「あじわい」は時空を超えることもあります。過去の記憶と結び付けてあじわう、誰かを思い出してあじわう場合もありますし、あじわった余韻が長く残って、死ぬ間際まで「あのとき食べた記憶」になる場合もあるかもしれません。究極的には口の中に物質を入れなくても、想像であじわうこともできるかもしれません。生きている以上、食べることと無関係という人などひとりもいませんし、食の可能性は無限です。世の中には、美食やグルメ、空腹を満たすための食、エネルギー・栄養源という食はあっても、それ以外の食は誰も追及していないのではないかと気づき、15年前にフードクリエイションという活動を始めました。キャッチコピーは「そのコンセプト 胃まで届けます」です。
薬師神さん:私の場合、作るのも食べるのも好きだからこの仕事を選びましたが、今はシェフという仕事により多くの可能性を見出していきたいと思って活動しています。毎日レストランに立つだけではなく、キッチンラボを運営することで多くの仲間と出会い、情報や技術を交換しながら、やがて業界全体の底上げにつなげていけたらいいなと思うのです。レストランの1日8名のゲストに対して、お皿の上だけで何かを伝えることにはどうしても限界がありますので、営業を週4日にして、その分、インプットの時間を持つことで、日々の仕事に落とし込んでいくようにしています。
──次の質問は薬師神さんからゲストのお二人へ。食のクリエイティブをするときに“ときめき”は大事だと思いますが、「心がときめくもの、ときめく瞬間ってどんなときですか?」
諏訪さん:私は「答えがないもの」「得体のしれないもの」、あとは「不気味なもの」など、そういったものに妙にときめきますね。そこから「これはなぜ?」と自分の中で問いがたくさん浮かび上がってきて、インスピレーションにつながっていきます。その意味では、森の中にはときめきがいっぱいありますね。
薬師神さん:なるほど。私の場合、ときめくものといえば「食材」かもしれません。たとえば、食材をずらりと並べられて、これを使って新たなおむすびと味噌汁を作らないといけないとなると、何をどう使おうか考えるのはワクワクします。でも、都会のキッチンで作るのと森の中で考えるのでは、同じ食材が並んでいても違うおむすびが出来上がりそうですね。森の中に、何かときめく食材ってありますか?
諏訪さん:子どものとき、おままごとでよく泥団子を作りませんでしたか? そのイメージで“土をあじわうおにぎり”ってどうでしょうか。森の中では5メートル離れただけで、土の手触りも香りも違ってくるので、その場の環境によって食べたときにあじわいも違うと思うのです。森では様々な動植物が生死を繰り返し、循環して堆積していくので、まさに自然のあじわいが土の中に凝縮されていくと思うんですけど…。
薬師神さん:土ですか。すごく面白いですね。私は各地を訪れる度にいろんな塩を買ってきますけど、塩はポータブルの海といえるのかもしれません。塩もそれぞれの海のあじわいが凝縮されたものなので、その土地のことを想像しながら料理を作るのは楽しいです。
naoさん:私がときめくのは、身近な食材を初めての形で出されたときにすごく感動します。以前行ったレストランで、高温で1時間焼き上げたナスが出てきました。皮はカチカチなんですけど、中はトロトロで、衝撃の美味しさでした。自分の発想を超えた料理を見たとき、ときめくと同時に自身のことを振り返るきっかけにもなって、これからもっと頑張ろうと思います。
──最後の質問「それぞれが考える食の未来について教えてください」
諏訪さん:これからますますテクノロジーが進み、バーチャルで「あじわい体験」ができる技術なども出てくるかもしれません。そのとき、私個人としては「進化するか」「退化するか」を基準に選択したいと考えています。もしそのテクノロジーが私たちの持つ感覚や能力を退化させるものなら私は受け入れたくありませんが、私たちの潜在能力が進化につながるものであれば積極的に取り入れていきたいです。
naoさん:私はやはりレストランの未来について考えてしまいます。今後、さらに食の選択肢が増えていく中で、私たち料理人は何を発信したいのか、どう伝えていくかがより大事になっていくだろうと思います。私たちのような“エンターテインメントの食”を提供するお店が人々に選ばれるために、今、何をすべきかを常に考えています。
薬師神さん:食の選択肢が多様化する世の中で、選ばれるレストランであり続けるためには、料理人が楽しみ方の提案や食べる時間のコーディネートまでできるといいのかなと思います。どういうふうに食べてほしいか、しっかりとしたコンセプトをもって提案できることが必要です。料理のレシピではなく人間のレシピというか、「あの人の料理が食べたい」と思ってもらえるように、お皿の上にそのシェフならではの旨みを加えていかないといけませんよね。
naoさん:確かに、料理人が美味しいものを作る技術だけではダメなのは実感します。今、第一線で活躍している人たちを見ても、振る舞いや言葉遣いをはじめ、人として魅力のあるシェフばかり。人間力があるからこそ周囲の人からも支えられ、求められる存在になるのだと感じます。
──最後に、諏訪さんがこんなことをおっしゃっていました。「わたしたちの日々の食や暮らしの根源である水を遡っていくと、そこには森があって、森に関わる人たちがいます。すべては繋がっているんですね。都市で生活する人も日常の根源にあるものを見つめ、体験し、それに関わる人たちと出会ったら、何も知らないで生きるよりもずっと心豊かに、自然と繋がることができます。食べることやあじわうことは、そんな可能性をわたしたちにもたらしてくれると思います。そして料理人というのは、その伝達者ともいえるのではないでしょうか」 。この先、テクノロジーが進み、選択肢が増えたとしても、真摯に仕事と向き合う料理人がつくった一皿はきっといつでも私たちの心を豊かにしてくれます。
トークセッションが終了し、イベントは後半へ。
参加者の皆さんとともに行うワークショップが始まりました。
ワークショップのテーマは「食の未来を考える」。
まずは、手元にあるカードの表面に「10年後の食の未来について、思い浮かぶキーワード」を1つ記入します。全員の記入が終わったら回収し、シャッフルして配布。表面に書いてあるキーワードに関してどう取り組むか、自分なりのアイデアを裏面に記入し、1人ずつ発表していきます。
皆さんの発表を少しご紹介すれば、「サスティナビリティ」というキーワードに対し、アイデアは「私はサスティナビリティを、日本人古来の知恵を学び直すことで実践します」でした。「食材」に対しては「私は食材を、同じ価値観の仲間と共有することで日本の食文化を守っていきます」。
その他に「昆虫食」「共創」「価値の再定義」「オーガニック」「食育」「フードロス」「多様化」など、非常に多岐にわたるキーワードが揃いました。
最後に締めくくったのは、薬師神さんの一言でした。
「皆さんに挙げていただいたキーワードの中には、考えさせられたり、自分も取り入れられるかもしれないと思うものもありました。私は食を通じて何かを届けたいと思っていますが、ときめきだったり、ハピネスだったり、何を届けられるのかということにも迷います。でも、人が期待する以上の時間をお返しすることが料理人の使命だと思っていますので、本日、皆さんにいただいたヒントを明日から生かしていけたらと思います」
>>今回のダイジェスト動画の視聴はこちら!
第6回「食の価値観から見える未来予測―食を通じて五感を呼び覚ます」
*こちらの動画ではパネルトークのみご視聴いただけます。
まるのうち保健室の「働く女性 健康スコア」は、各企業の働く女性たちの課題を見える化するプロジェクトです。昨秋、全14社のご協力のもとで行ったトライアル版の結果を踏まえ、3月8日(水)の国際女性デーに「働く女性 健康スコア」発表会2023を開催いたします。それに先駆け、1月30日(月)、ご参画いただいた企業の方々とともに「働く女性 健康スコア」ワーキングを実施しました。すでに「働く女性 健康スコア」の結果を伝えられた企業の皆様はどのように捉え、これからどのような施策を打っていくのでしょうか? ワーキングの開催レポートをお届けします。
働く女性たちの課題を見える化する「働く女性 健康スコア」は、女性の働きやすい文化醸成に向け、「個人」「コミュニティ(企業・アカデミア)」「社会」という3つの視点から活動している「まるのうち保健室」が新たにスタートさせた産学医連携のプロジェクトです。
スコアの参加方法は、神奈川県立保健福祉大学協力のもと、疫学調査をベースに開発した調査項目で作成したアンケートを女性の方々に回答していただきます。通常、働く女性たちの課題は各社それぞれ異なるものですが、健康スコアを通じて女性従業員たちの声を集めることで、1社ごとに現状と課題が見えてきます。
昨秋行ったトライアル版では全14社に賛同・参画いただいて、3,400人以上の女性から回答を得ることができました。こちらの結果は、3月8日(水)の国際女性デーの日に発表会にてお伝えしていきます。
そして、1月30日(月)に開催した「働く女性 健康スコア」ワーキングは、10社13名の人事担当者にお集まりいただいて、グループワークを行い、今後の課題解決に向けての提言をまとめていきました。
開催のあいさつと「働く女性 健康スコア」の振り返りが行われた後で、さっそくグループワークが始まりました。
AとBの2つのテーブルに分かれた参加者は、あらかじめ用意された質問に対する回答を付箋に書き込んだらホワイトボードに貼っていきます。質問事項はQ1~3まで全3つ。Q1より順を追って、1人ひとり発表しました。
各グループの進行役をつとめたのは、神奈川県立保健福祉大学の吉田穂波教授と黒河昭雄先生です。
【グループワークの3つの質問】
Q1:健康スコアを実施してみて、どんな気づきがありましたか?
取り組む内容に変化がありましたか? 取り組む上で悩みはありますか?
Q2:社員の健康に関するリテラシー向上について、どういった取り組みをしていますか?
Q3:健康に関する施策の社内利用率向上のための工夫や課題はありますか?
Q1については、多くの人が挙げた各社共通の課題は「女性のヘルスリテラシーが低い」「情報の社内周知が難しい」「男性の理解度が低い」でした。たとえば「健康への関心がない人が多く、情報発信をしても受け取ってもらえない」「社内インフラを利用した情報発信は、その他の膨大な情報に埋もれて目に留まりにくい」といった悩みがありました。中には「SNSで情報発信する際に、意識の高い雰囲気ではなく、あえて少しカジュアルに伝えている」という対策をしている会社も。
さらに、もう1つ議論の的となったのは「男性たちをどう巻き込んでいくか」。いまだ管理職は男性が中心で「上司に女性特有の課題を理解してもらえない。取り組みたくても支援してもらえない」といった声が上がっていました。
また、Q 1を振り返ると、月経痛やPMSなどではなく「更年期への関心度が高い」と回答した人が多かったことが意外でした。「若手は健康への関心が低く、健康スコアに参加した方も年齢が高めだった」と前置きした上で発表していた方もいましたが、「今までは自分の中に封じ込めがちだった更年期の悩みを打ち明けやすい社会になり、皆で解決していこうと声を上げる人も出てきているのではないか」という見方も、1つの意見として出ていました。
Q2の「社員の健康に関するリテラシー向上への取り組み」については、圧倒的に多かった取り組みが「セミナーの開催」です。テーマ設定ややり方は各社それぞれでしたが、自社のメンバー特性に合うセミナーを模索し、企画・運営に取り組んでいることが伝わってきました。また、セミナーの参加率を上げるための工夫を発表してくださった方も多く、たとえば「気軽に参加できるランチタイムに行っている」、「アーカイブ配信でいつでも見られるようにしている」、「社内だけで進めるより、外部の企業等とコラボした企画の方が興味を引く」などの他、「インセンティブを付ける」、「参加を義務付ける」といったお話も。中には、「管理職は女性の健康セミナーを受講することを必須にしている」というところもありました。
その他には、ウォーキングイベント、健診補助やスポーツクラブ利用者に対する助成金など、独自性のある施策に取り組んでいる企業もいくつか。1つだけご紹介すれば、現在検討中の企画で「会社の共用スペースに産婦人科の先生に来てもらって、自由に雑談してもらう」というものがありました。雑談をきっかけに、婦人科受診を考える人、自分の健康について思いめぐらせる人が出てくることに期待しているのだとか。ちなみにこの企画は、以前、社内セミナーを開催した際に、終了後にゲストと参加者たちの会話が弾んでいる光景を見て思いついたそうです。
これまでのQ1とQ2は、各自の考えや取り組みを共有する時間でした。
残るQ3はメインディスカッションの時間です。Q3に対する回答を書いていただきながら、これまでに集まった付箋も残せるものは残して、整理・分類し直した上で、議論を繰り広げていきました。
Q3の質問をもとに意見を交わし合った各グループ。
最後に、ここで話し合った内容や結論を、各グループの代表者が発表してくださいました。
Q3:健康に関する施策の社内利用率向上のための工夫や課題はありますか?
【Aグループの発表】
周囲の働きかけにより、1人ひとりの“自分事化”を進めていく
発表者:日本事務器健康保険組合 藤木様
私たちは非常に多岐にわたって意見が出ましたが、全体を通してみれば「自分事」というキーワードが挙げられます。全体的にヘルスリテラシーが低いとされる人が多く、いかに自分事として関心を持っていただくかが一番の課題です。
現状、情報を伝える方法としては、社内インフラやSNSなどを基本的なツールとして使っているところが多い一方、いくら情報を投稿しても関心のない人は見てくれません。そんな中で、雑談のような気軽な声かけをしたら関心を寄せてもらえたという事例が出てきて、勉強になりました。また、「どこでも自分の好きなスポーツクラブを利用すると助成金をもらえる」というインセンティブを用意している会社もあり、非常に利用率が高いそうです。
ほかに、上司を巻き込んで、評価制度を利用しながら広めていくのが良いのではないか、というアイデアも出ました。まずは上司に理解を深めてもらい、部下に伝えてもらうこと、そして、その上司に対しても何らかの評価があることで社風として健康への意識が熟成されていくのではないかという話に。実際に管理職を目指して仕事するようになると、チームメンバーの健康にも意識がいくようになる、というお話もありました。
いかに「“自分事化”してもらうか」を追求するだけでなく、周囲の人たちの変化とともに1人ひとりの意識を変えていく仕掛けも必要です。最後は、やはり上司や会社組織に理解していただくことが大切だという結論に落ち着きました。
【Bグループの発表】
「個人の理解を高める」と「社内を巻き込む」に並行して取り組む
発表者:株式会社サンシャインシティ 小宮山様
Bグループでは、皆さんの回答を「個人の理解」と「社内の巻き込み方」という2つにカテゴリー分けし、話を進めていきました。
1つ目の「個人の理解」は、主に「全体的にリテラシーの低いこと」がテーマです。その取り組みとしてセミナーを開催している会社が多くありましたが、そこから、参加率を上げる手段についての議論になりました。中には「参加を義務化する」という話も。一歩踏み込んだ手を打つことで、個人のヘルスリテラシーの差が少しずつ埋まっていき、結果としてより良い職場の素地ができ上がるのではないかという意見がありました。
次に「社内の巻き込み方」については、「社内周知が難しい」と「男性の理解度が低い」がテーマです。話が進むにつれ、経営陣・管理職の人たちの理解、アプローチが特に重要だという意見が多く出るように。少し保守的な考え方の男性管理職の気持ちを動かさないと、アクションやサポート体制は生まれません。
その対策として私が提案したい手が、いい意味で「脅す(笑)」。「我が社は社外にこんなコミットメントをしていますよね」など、ダイバーシティ経営理念などを引き合いにして説得する手もあるのではないかと思いました。また、会話の流れを変える手もあります。つまり、まず男性の健康課題について話し始め、女性にはもっと多くの課題があるので真剣に考えてくれませんかという流れで伝えた方が理解しやすくなるかもしれません。男性も女性も一緒になって課題を解決していくことでより良い職場をつくっていきましょう、といったアプローチで、経営陣や管理職の方々も巻き込んでいけたらいいのではないでしょうか。
──Aグループ、Bグループの発表とともに締めくくられた「働く女性 健康スコア」ワーキング。これからも本ワーキングを通じて議論を重ね、ソリューションを加速させて、女性たちの働きやすい環境実現に向けてともに歩んでいきます。
「働く女性 健康スコア」は、女性特有の症状・疾患に対し、企業経由で発信・啓発する手法を探索することを目的に、女性医療コンサルティングを展開するファムメディコと三菱地所との共催で取り組んでいます。
「働く女性 健康スコア」ワーキング 開催データ
【開催日】2023年1月30日(月)
【会場】3×3 Lab Future(大手門タワー・ENEOSビル1階)
【参加企業】アンファー株式会社、株式会社サンシャインシティ、東京海上日動火災保険株式会社、東京産業株式会社、日本事務器健康保険組合、三井物産株式会社、三菱地所株式会社、三菱地所プロパティマネジメント株式会社、三菱地所リアルエステートサービス株式会社、株式会社ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツ ※50音順
【共催】三菱地所株式会社、株式会社ファムメディコ
【協力】神奈川県立保健福祉大学
※本ワーキンググループは、まるのうち保健室のプログラムにご参画いただいた企業様を中心に構成しております。
>>どなたでも自由にご視聴いただける関連イベント
3月8日(水)オンライン開催!
「働く女性 健康スコア」発表会2023
【日時】
2023年3月8日(水)10:30~11:30 ※予定
【参加方法】
Youtubeによる配信(無料・事前申込不要)
以下のURLより、どなたでも自由にご視聴いただけます。
https://www.youtube.com/live/zR6fYqCIH20?feature=share
【内容】
第1部:都心で働く女性3,400人超のアンケート調査「働く女性 健康スコア」結果発表
第2部:登壇者とスペシャルゲストによるトークセッション
【登壇者】敬称略
井上友美(三菱地所株式会社 エリアマネジメント企画部 まるのうち保健室プロデューサー)
吉村泰典(慶應義塾大学 医学部 名誉教授、元日本産科婦人科学会 理事長)
吉田穂波(神奈川県立保健福祉大学 ヘルスイノベーション研究科教授)
浜中聡子(クレアージュ東京 レディースドッククリニック 総院長)
【トークセッション特別ゲスト】
庄司智春・藤本美貴ご夫妻
【共催】
三菱地所株式会社
株式会社ファムメディコ
>>イベントの詳細はこちら
https://shokumaru.jp/wcm2023_event01/
>>プレスリリースはこちらへ!
https://shokumaru.jp/wp/wp-content/uploads/2023/02/15cb9ec7749494a2aad4d5e19e42ae3f.pdf
~イベント1~
「働く女性 健康スコア」は、働く女性を取り巻く健康や就業環境などについて可視化させる、産学医連携プロジェクトです。女性特有の症状・疾患に対し企業経由で発信・啓発する手法を探索することを目的に、女性医療コンサルティングを展開するファムメディコと三菱地所の共催で取り組んできました。
スコア作成の方法は、神奈川県立保健福祉大学監修のもと、疫学調査をベースとした調査項目を開発し、アンケートを作成。業種の異なる参画企業14社の従業員を中心に、3,400名以上の女性にご回答いただきました。
同時に、参画企業の人事担当者が集うワーキングを発足させ、健康スコアの結果をもとに女性の働きやすい環境実現に向け、これからさらにソリューションを加速させていきます。
1月30日(月)には「働く女性 健康スコア」ワーキングを開催。そのレポート記事はこちらよりご覧いただけます。
https://shokumaru.jp/healthscore_working/
3月8日(水)に開催するオンラインイベントでは、「働く女性 健康スコア」から見えてきた調査データや、参画企業による新たなアクションの発表を行います。さらに、特別ゲストとして庄司智春さん・藤本美貴さんご夫妻をお招きし、働く女性の健康を個人や社会の視点で考えるトークセッションを実施します。
>>「働く女性 健康スコア」はこちらよりダウンロードいただけます(PDF)。
開催概要
「働く女性 健康スコア」発表会2023
【日時】
2023年3月8日(水)10:30~11:30
【参加方法】
Youtubeによる配信(無料・事前申込不要)
【内容】
第1部:都心で働く女性3,400人超のアンケート調査「働く女性 健康スコア」結果発表
第2部:登壇者とスペシャルゲストによるトークセッション
【登壇者】敬称略
井上友美(三菱地所株式会社 エリアマネジメント企画部 まるのうち保健室プロデューサー)
吉村泰典(慶應義塾大学 医学部 名誉教授、元日本産科婦人科学会 理事長)
吉田穂波(神奈川県立保健福祉大学 ヘルスイノベーション研究科教授)
浜中聡子(クレアージュ東京 レディースドッククリニック 総院長)
【トークセッション特別ゲスト】敬称略
庄司智春、藤本美貴
【共催】
三菱地所株式会社、株式会社ファムメディコ
【協力】
神奈川県立保健福祉大学、クレアージュ東京 レディースドッククリニック
●登壇者 プロフィール(敬称略)
商業施設の企画運営、PR、ブランディング事業に携わり、丸の内再開発の動きとともに、「食や健康」に関するテーマに着目し、2014年「Will Conscious Marunouchi/まるのうち保健室」を設立。働く女性に寄り添い、キャリアやライフイベントの選択肢を増やすべく、プロジェクトを推進中。
日本における不妊治療の第一人者。特定不妊治療費助成制度の確立、出産育児一時金や妊婦健診の公的助成の増額などの政策立案や、内閣官房参与として少子化対策や子育て支援政策に携わるなど女性の健康力増進に尽力、貢献されて来た。現在、一般社団法人吉村やすのり生命(いのち)の環境研究所代表理事などを務める。
⽇本産科婦⼈科学会専⾨医/医学博士/公衆衛生学修士
医学部卒業後、聖路加国際病院を含め日本、ドイツ、イギリスの医療機関で25年間にわたり産婦人科医として勤務。2008年、米ハーバード公衆衛生大学院に留学後、国立保健医療科学院主任研究官、神奈川県技幹等、民間、アカデミア、行政等で様々な業績を積み現職に至る。公共政策、ヘルスケア、医療、福祉など多領域で女性の健康支援に尽力。『社会人に最も必要な 「頼る」スキルの磨き方 あなたの力を120%発揮させる「伝え方+考え方」』ほか著書多数。4女2男の母。
抗加齢医学に基づいたからだエイジングドック、女性の更年期障害治療等を提供。多くの臨床経験はもちろん、海外のエイジングケアに関わる資格を取得した知識を活かし、 2021年に完全女性専用人間ドック「クレアージュ東京レディースドッククリニック」を開院。国際アンチエイジング医学会(WOSAAM)専門医。米国抗加齢医学会専門医(A4M)専門医。医学博士。
●トークセッション特別ゲスト プロフィール(敬称略)
<品川庄司 庄司 智春>
1995年、品川祐とともにお笑いコンビ「品川庄司」を結成。2001年、コンビで「ゴールデン・アロー賞」芸能新人賞を受賞。バラエティー番組を中心に活躍中。
<藤本 美貴>
1985年2月26日生まれ、北海道滝川市出身。2002年1stシングル「会えない長い日曜日」でソロデビューし、同年、NHK紅白歌合戦にも出場。2009年庄司智春さんと結婚。2012年に第一子となる長男、2015年に長女、2020年に次女を出産し、現在3児のママタレントとしても活躍。第9回ベストマザー賞2016 「芸能部門」受賞、パートナーオブザイヤー2018 受賞。自身のことについて赤裸々に語るYouTubeチャンネル「ハロー!ミキティ」も好評。2023年3月12日にヒューリックホール東京にて20周年ライブを開催。
~イベント2~
「私と向き合う時間」は、対話することを大切にしたオフラインイベントです。
メンタルとフィジカル、それぞれのテーマに合わせてゲストをお招きし、リラックスした空間でゲストや参加者と対話しながら、様々な考え⽅に触れることで⾃分の中の迷いを解決できるヒントを得ていただくイベントです。
2月26日(日)には、ヤムナ認定プラクティショナーの池畑薫さんをゲストにお迎えし、その場でできる呼吸法などの簡単なワークを織り交ぜ、ゲストのライフスタイルや自分との向き合い方について学びます。後半はビーガンスイーツとハーブティーをいただきながら、感想や日頃感じていることを参加者同士でおしゃべりする参加型の座談会を行います。
https://wcm-watashitomukiaujikan-01.peatix.com
3月10日(金)は、株式会社ファミワン 公認心理士/臨床心理士の戸田さやかさんをゲストに迎え、普段知ることのできない「更年期」について学べるプログラムです。丸ビル35階の「サンス・エ・サヴール」のスペシャルメニューをいただきながら、更年期に関するあなたの疑問や体験に専門家からヒントをもらい、皆でゆっくりおしゃべりしませんか?
https://wcm-watashitomukiaujikan-02.peatix.com
【日時】
2023年2月26日(日)15:00〜17:00(開場14:30)
【ゲスト】
池畑 薫(ヤムナ認定プラクティショナー)
【会場】
丸ビルホール&コンファレンススクエア Room4
(東京都千代田区丸の内2-4-1 丸ビル8F)
【参加費】
2,000円(税込)
※ソイプロテインとハーブティーのおみやげ付き
※当日はその場でできる簡単なボディワークを行います。ご自身がリラックスできる服装でお越しください。
【プログラム】
前半:ゲストのライフスタイルや自分との向き合い方に関するトーク、呼吸を整えるボディワーク
後半:お茶とお菓子をいただきながら感想をシェアする時間
お菓子:“私と向き合う時間”のためのビーガンスイーツ
飲み物:ハーブティー
【参加人数】
14名
【お申し込み】
Peatixより事前申し込みとなります。
https://wcm-watashitomukiaujikan-01.peatix.com
【ゲストプロフィール】
池畑 薫(ヤムナ認定プラクティショナー)
CMやフィットネスモデルとして活動する傍ら、あらゆるエクササイズを経験。無理な運動をすることなく、身体本来の美しさを手に入れる事ができる『ヤムナメソッド』に出会い、ヤムナ認定プラクティショナーとなる。そのほかにBESJマットピラティスの資格を保持。長年の培った知識から、オリジナルトレーニングなどを取り入れたクラスも開催。 快適で機能的に動かせる身体作りをモットーに、通常レッスンの他、さまざまなイベントやWSを受け持ち、ヤムナの魅力を発信し続けている。
【日時】
2023年3月10日(金)18:30〜20:30(開場18:15)
【ゲスト】
戸田 さやかさん(株式会社ファミワン 公認心理師/臨床心理士)
【会場】
サンス・エ・サヴール(フランス料理店)
東京都千代田区丸の内2-4-1 丸ビル35F
https://www.hiramatsurestaurant.jp/sensetsaveurs/
【参加費】
5,000円(税込)
※「サンス・エ・サヴール」のスペシャルメニュー代も含まれます(1drink付)
※追加ドリンクはご負担いただきます。
※ソイプロテインとハーブティーのおみやげ付き
【プログラム】
前半:お食事をいただきながら、「誰もが通る“更年期”をどう迎えるか」についてのお話をお聞きします
後半:デザートとお茶をいただきながら感想をシェアする時間
【参加人数】
13名
【お申し込み】
Peatixより事前申し込みとなります。
https://wcm-watashitomukiaujikan-02.peatix.com
【ゲストプロフィール】
戸田 さやか(株式会社ファミワン 公認⼼理師/臨床⼼理⼠)
公認心理師、臨床心理士、生殖心理カウンセラー、がん・生殖医療専門心理士、ブリーフセラピスト・シニア。性や生殖補助医療の専門知識を用いながら、カップル・家族の心理支援をおこなっている。ファミワンではカウンセリングやアドバイス業務をはじめとしたユーザー対応、サービス設計を担当。また、企業や自治体向けのセミナーやイベントに数多く登壇している。
>>プレスリリースはこちら!
https://shokumaru.jp/wp/wp-content/uploads/2023/02/15cb9ec7749494a2aad4d5e19e42ae3f.pdf
感性を揺さぶる一皿を生み出す「料理人」の創造力、共創力、ロジカル思考に着目したプログラム「EAT&LEADトークサロン-食べることから学ぶ、生きる力-」。ファシリテーターを務めるシェフの薬師神陸さんとともに2名のゲストがパネルトークを繰り広げ、「食」を通じて、新たな価値観や明日を切り開くアイデアと出会える一夜限りのイベントです。11月8日(火)に開催された第5回は「土地とつながる食―地域に特化したレストランの在り方」というテーマのもと、長崎県島原市「pesceco」のオーナーシェフ井上稔浩さんと、コラムニストの中村孝則さんをゲストに迎え、土地に根差してレストランを営むことの意義を問い直すトークが展開されました。
>>当日のパネルトークの様子は、動画にてご視聴いただけます!
●ダイジェスト動画(ご登壇3名の終了後の一言コメント付き)
https://youtu.be/-nr2dfamgsI
「EAT&LEADトークサロン」は、EAT&LEADの前身となる「食育丸の内」プロジェクトが2008年にスタートして以来、数々の料理人たちと関係を深める中でたどり着いた方向性の1つともいえるイベントです。地域や生産者さんとつながり、地域の「食」の課題と向き合い、クリエイティブ力を生かして1皿を生み出す料理人の言葉に耳を傾ければ、私たちにも多くの“気づき”が見つかるかもしれません。
毎回、お迎えするゲストは「食にまつわる仕事をする人」と「異業種で活躍する人」の2名。
ファシリテーター・薬師神陸シェフと2名のゲストが、ビジネスや生きることそのものへのヒントにつながるパネルトークを行います。
また、イベントの後半では、ゲストや参加者が一体となり、それぞれの思考とひとりひとりの気づきをシェアする共創型のワークショップを実施。今回は「あなたと食のルーツを探る」というテーマで、過去と現在、自身を形成する「食」について振り返りました。
【ファシリテーター】薬師神陸さんの自己紹介
私は、虎ノ門ヒルズで「unis」という全8席のレストランをやっています。2019年12月にオープンし、まもなく2年が経とうとしているところです。営業は夜だけ、週4日間のみ。残りの時間は、併設する「ソーシャルキッチン」というキッチンラボで、様々なシェフと企画・開発などをしています。ここではバーテンダーさんと和菓子職人さんが一緒に何かを作ったり、中華の料理人さんとチョコレート職人さんがコラボしたり、他ではあり得ない交流が生まれ、キッチンをハブにして小さなコミュニティが形成されてきました。最近は、ようやく今まで積み重ねてきたことを公の場でお披露目する機会が増えてきていまして、コロナ禍で取り組んできたことが実を結びはじめているのを感じています。
https://unis-anniversary.com/
【ゲスト】井上稔浩さんの自己紹介
生まれ故郷の長崎県島原市で「pesceco(ペシコ)」というレストランを営んでいます。見上げれば雲仙普賢岳、見下ろせば有明海、そんな場所にあるレストランです。コンセプトは「里浜ガストロノミー」。地元の漁師さんや市場、志ある農家さんとつながって、お魚とお野菜をテーマにしたお料理を作っています。たとえば、昔ながらの伝統食・エタリを発酵させた塩辛(エタリとはイワシのこと)とバターを活かしたタルトとか、ワタリガニと島原素麺で作ったかにそうめんとか(島原湾で獲れるワタリガニのことは「多比良ガネ」と呼びます)、地域に存在する食材や食文化を掛け合わせて作った1皿を楽しんでいただけるレストランとなっています。
https://pesceco.com/
【ゲスト】中村孝則さんの自己紹介
今はコラムニストという肩書きですが、もともとは雑誌の編集者で、ライフスタイル、ファッション、旅、いろんなテーマで取材をしてきました。ここ10年くらいは「食」に特化して、様々なシェフやレストランと仕事をしています。本日のイベントは“土地”というテーマですが、私も国内はもちろん、海外にも仕事でよく足を運んでいます。薬師神さんとも愛媛へ食材探しの旅をしたり、大分の別府で温泉の湯気で作った「地獄蒸し」を味わったことがありましたね。また、長年「ダイニングアウト」というプロジェクトをやっていまして、日本各地へシェフと一緒に行き、その土地の食文化を再構築して新たなオリジナル料理を作る、ポップアップの野外レストランを開催しています。海外の仕事では、まずコロンビアの親善大使をしていますね。コロンビアは生物多様性が世界トップクラスの国で、現地のマーケットに訪れると面白いんですよ。あと、10年前からイギリスの「世界のベストレストラン50」の日本の評議委員長を務めていまして、世界各国の名店へ食事に行く機会が多くあります。他には、EUとの契約で、イタリアのチーズ「グラナ・パダーノ」のアンバサダーなどもやっています。グラナ・パダーノという名は、産地名を適切に使用している“地理的表示”の1つ。3年前に日本とEUは経済連携協定を結び、関税を撤廃するという点に広く注目が集まりましたが、その中に地域の「食」の名前を保護する取り組みがあることもぜひ知っていただきたいですね。
【本日の「おむすびと味噌汁」のご紹介】
EAT&LEADトークサロンの会場では、薬師神さんがゲストの2人にちなんで考案した「おむすびと味噌汁」が参加者へ振る舞われます。今回のメニューはこちらでした。
●2つの産地の にこまるおむすび
●具雑煮風蓮根もち 味噌仕立て
おむすびは、品種はいずれも「にこまる」で、長崎産と愛媛産、産地違いのお米を2種類使用。長崎産にこまるは、井上稔浩さんの故郷・島原の天然水、有明海の矢堅目の藻塩を使った「長崎 塩おむすび」に。愛媛産にこまるは、四国カルスト天然水、愛媛県大洲市・梶田商店の「たつみ麦味噌」を使って焼き上げた「愛媛 味噌焼おむすび」に仕上げました。中村孝則さんと食材探しの旅をしたこともある薬師神さんの故郷・愛媛の味覚を込めた、麦味噌の甘みがふんわりと広がる焼きおむすびです。
味噌汁は、島原の郷土料理「具雑煮」をイメージして作った1品。本来は海の幸とお餅が入る具雑煮をアレンジし、旬のレンコンを使用しています。具材は、えび、あなご、鶏肉など、いろんな具をゴロゴロと入れたレンコン餅。レンコンのすり流しに「たつみ麦味噌」を入れたお汁でいただきます。
このおむすびと味噌汁が参加者すべてのテーブルに行き渡った頃、パネルトークがスタートしました。
東京にレストランを構え、第一線で活躍するEAT&LEADトークサロンのファシリテーター・薬師神さん、故郷の長崎県島原市で「里浜ガストロノミー」を標榜する新進シェフの井上さん、世界の名店を渡り歩く「美食」のエキスパート・中村さん、この3名によるパネルトークは果たしてどんな展開になったのでしょうか。
──最初の質問は「今の土地をどうして選ばれましたか?」です。井上さんの場合は島原のご出身ということでしたが、ご自身の食の表現の場としてなぜ故郷を選ばれたのでしょうか?
井上さん:単純に地元が好きで、愛着があるからです。18歳で島原を出て、その後、東南アジアを中心に各地を旅しました。もちろん旅は楽しいし、きれいな風景とたくさん出会えましたけど、おかげで地元の魅力に気づくことができたのだと思います。私が料理を始めたのは鮮魚店を営む父の影響が大きくて、自分も小さい頃から父と一緒に市場へ足を運んでいましたが、当時の漁業は活気があり、魚もたくさん獲れていました。でも、大人になった頃には、漁協が減っていたり、漁師さんが少なくなっていたり、魚も獲れなくなっていたのです。そこで、自分がレストランをつくることで、再び島原の海を豊かにできないかと考えました。たとえば、むやみに魚を獲り過ぎず、良質な魚だけを少量獲るようにすれば価値が高まりますよね。だから「里浜ガストロノミー」というテーマのもと、料理を通じて、海と接点を作り、環境とつながりを持ち、ここに存在する意義のあるレストランでありたいと思いながら、日々、取り組んでいます。
薬師神さん:私も地元・愛媛でレストランを作らないかとお声がけいただいたこともありましたが、なかなかチャレンジするには至りません。地方では外食する頻度が少なく、給料日とか記念日とか、ちょっと贅沢をする時だけです。特にフレンチともなると結婚式でしか食べる機会のない人も多いですし、井上シェフのようにイタリアンだったとしても、コース仕立てというよりもパスタやピッツァをイメージする人が多いので、お店を軌道にのせるまでに高いハードルがありますよね。それと、情報が集まる場所で自分なりに変換しながら物事を考え、新しいものを作っていきたいという思いもあって、あえて東京という場所を選んでレストランをやっています。
中村さん:世界の人にアンケートをとると、日本を旅する目的の1位は圧倒的に「食・食体験」や「食文化」なんですよ。つまり、そこへ足を運ばないと食べられない料理を求めてやってくる。“そこでしか食べられない料理”というのはいろんな理由がありますが、特にその土地から持ち出せない食材を活かしていることですね。近年、各地にわざわざ旅をする理由となるレストランが増えていて、日本の魅力向上につながっていると思います。ちなみに、コロンビアではカピバラを食べるんです。かわいそうだと思うけど、これが非常に美味しい。あれはまた食べたくなる味ですね。
──その土地ならではの「食」を通じて、どのようなことを伝えたいとお考えでしょうか? また、地元や国内外、どのようなお客様に向けてお料理を届けたいと思っていますか?
井上さん:当初は、地元の方へ向けてイタリアンのレストランをやっていました。でも、せっかく産地が近くにあるのだから、もっと地元食材を活かそうという発想に変わってから、地元以外のお客様へ目を向けるようになりました。たとえば、地元の人はそうめんが好きで、毎日のように食べたりもしますが、「レストランで食べるものではない」という反発もあったのです。でも、旅で訪れたお客様に提供すると「やっぱり島原といえばそうめんだよね」と捉えてくれて、そんなことを続けているうちに、地元の人も「そうめんという素晴らしい食文化を伝えてくれてありがとう」という雰囲気になってきました。私は地域に文化として根づいている食材を使うことを一番大切にしていますが、それが今の自分にとっての強い個性となっています。
薬師神さん:私は普段から全国の産地をめぐっていますが、東京に入ってこない知名度のないローカル食材もいろんな食材と掛け算し、新たな楽しみ方の提案をすることで付加価値を持たせていきたいと思っています。東京の強みは、何といっても優れたインフラです。翌日にはモノが届くという便利さを活かし、各地から届いた様々なものを掛け合わせることができるわけです。レストランにお越しくださるお客様には、常に「自分なりの解釈でこういう料理にしました」と提案していきたいと思っています。
中村さん:薬師神さんがおっしゃったことは非常に納得で、今、「食」のインフラは加速して充実しています。新幹線が物流サービスをやろうとしていたり、生で食べないと美味しくないものも東京にどんどん集まるようになってきました。食材も良い、シェフも良い、あとはもっと発信することが必要です。食文化やシェフという日本の武器を、ここ丸の内から世界へ積極的に発信していきたいですね。
薬師神さん:これまでのように“課題解決に食を通じて取り組もう”ではなく、これからは“課題解決のカゲに料理人あり”という時代になってほしいと思っています。すでにあるブランディングに「食」をはめていくというよりも、料理人たちが社会課題に目を向け、自らメディアを作れる時代になりましたよね。今日は会場に料理人の方も多数お越しいただいて嬉しいんですが、こういう場を増やして、料理人さんが「自分にも何かできるかな」って考えてもらえる機会をもっと増やしていきたいです。
中村さん:レストランがメディアになったというのは、ここ15年くらいのことですよね。料理人が情報の発信源になっているという点では彼らの時代だと思うし、一方、取り組まなければいけない課題が多く、彼らの負担が増しているかなとも思います。だから、本日のような公の場で課題をシェアするのはすごく大事なことです。また、私たちも料理人たちを応援することで、食環境の保全につながるのだと思いますよ。今、主な「食」の課題は、資源の枯渇と労働環境の悪化。そんなこと昔は考えなくても良かったんですけど、これからはあれは食べちゃダメ、それは発信してはいけないと制約の多い時代になってきます。その時、料理人たちの技術力と発想力が活きてくるはずです。
井上さん:資源の問題については、産地にいると、農産物も海産物も良くない部分も見えてきます。海や畑に影響を与えていたり、自然環境の変化があったり、今、自分たちがやれていることが数年後にはできなくなるかもしれないという危機感があるのです。東京には良い食材が集まってくるかもしれませんが、もし産地がダメになってしまえば東京もダメになってしまいますよね。だから、本日のような場で、みんなで工夫や知恵を絞り合い、より良い食材を守っていくためにできることを考えていきたい。それが食文化を次の世代に残すためにも必要なことで、今のひとつひとつの選択しだいで未来は変わっていくと思います。
──島原の食材や食文化が、意識的に守ろうとしないと守れない状況になっているともお聞きしましたが、その点についてはいかがですか?
井上さん:そうですね。文化はどんどんなくなっていくもので、たとえば自己紹介の時に触れた「エタリの塩辛」も、昔は獲れた時に塩漬けをし、保存食として欠かせないものでした。今は冷凍などのテクノロジーが発達し、それを作らなくても生きていける世の中になって、どんどん作られなくなっています。でも、あの塩辛の素朴な美味しさが失われてしまうのは寂しいですし、テクノロジーによって食べ物が均一化され、地域の食文化がなくなっていくと地域の個性がなくなっていくわけです。田舎とはいえコンビニもありますし、便利になった一方で、昔はあったけど今はないというものが当たり前にあります。そういうものを地元のおじいちゃん、おばあちゃんから教えていただいて、その知恵や工夫を料理に活かし、今の時代に合う美味しさに変えて発信していきたいと思っています。
今、料理人は美味しい料理を作ることだけに専念するのではなく、「食」を取り巻く課題に挑み、発信する時代。東京で仕事をする人も、地方に拠点を持つ人も、それぞれの目線で自分なりに行動することが大切で、1人でも多くの料理人の意識が変わっていくと日本の「食」は本質的な豊かさを取り戻していくのではないか、そんなメッセージが伝わってくるパネルトークとなりました。
トークセッションが終了し、イベントは後半へ。
登壇者も参加者も一緒に行うワークショップが始まりました。
テーマは、「あなたと食のルーツを探る」。
会場内の全員が2つの質問について回答を用紙に記入し、1人ずつ発表していきます。
【2つの質問】
●あなたの食の原体験を教えてください。
●今のあなたを作っている食はなんですか。
1つ目の質問「食の原体験」で、一番多かった回答はやはり“母の手料理”です。
たとえば、余った冷ごはんで作ってくれた塩むすび、「大海(だいかい)」という煮物(新潟県村上市の郷土料理)、フレンチトーストとそのパンの耳で作った揚げパン、今も実家に帰ると必ず食卓に並ぶ幼少期からの大好物・さつまいもの天ぷらといった回答がありました。
また、“母の味”ではなく、“父の味”や“祖父母の味”が原体験という人も。
飲食店を営んでいた父が作る洋食、半ドンだった土曜日に父が作る焼きそばとテレビの『吉本新喜劇』がセットになった昼ごはん、祖父が作った大きなぼた餅など。
そして、ゲストの中村さんの原体験は?といえば「幼稚園の頃に食べた、レバーとブルーチーズ」。世界にはこんなに美味しいものがあるのか!と衝撃を受けた2品だそうで、その後も美味しさの基準としてご自身の中でずっと生き続けている原体験だと話します。美食の世界に精通した中村さん、さすがのご回答でした。
井上さんは「妻の実家に初めて結婚の挨拶に訪れた際、義理の祖母が作ってくれたほうれん草の白和え」。若くして亡くなった奥様のお父様が好きだったもので、折に触れては義祖母が食べきれないほど作るそうです。その思い出を込めたほうれん草の1皿を、井上さんのレストランでは冬の定番メニューとして供していると言います。
薬師神さんは「宮大工だった祖父の家に併設された工場で、灯油ストーブの上で作る鍋料理『いもたき』」。小学校から帰ってきて、工場の職人さんたちと食べるいもたきは、里芋がドロドロになるほど煮詰まり、目分量で作るので味も毎日違ったそうですが、それがとびきり美味しかったのだと話してくれました。
2つ目の質問「今の自分を作っている食」で、最も多かった回答は“お米”でした。
たとえば、母から送られてくる実家の田んぼでとれたコシヒカリ、東京から移住した先・白馬村のミルキークイン、毎朝、家族のために鍋で炊き上げる白米など。また、子どもの頃にサッカーの試合前に縁起を担いで食べていた赤飯のおむすびを、今も何かに挑戦する機会がある度に必ず食べるという人もいらっしゃいました。
ゲストの中村さんは、先ほどのご回答・レバーとブルーチーズとは打って変わって「胡麻と海藻」。胡麻は、薬師神さんと大分に行った時に買った小鹿田焼のすり鉢で毎日大量にすり、みそ汁に入れたり、ほうれん草と和えたりしているそう。また、海藻は主にふのりで、胆汁を活発にするという健康面で取り入れているとのことでした。
井上さんは「つながりのある生産者さんの野菜で作った料理」。自分が食べているもの全部が、どこで生まれ、誰がどのように育てたかがわかっていると嬉しいし、日々、有難みを感じながら味わうことができるから、という実に井上さんらしいご回答でした。
薬師神さんは「ごはん」と「店のまかない」。ごはんは、“ビールとごはん”もいけるほど白米好きで、毎日欠かさず食べるそうです。また、レストランで発生する食材の端材を100%使い切るよう考えてまかないを作っていることは、今の自分を形成する上で大切なものになっていると言います。アナゴの尾だけで作ったアナゴ丼、グリーンアスパラの下の方だけをグリルして作った焼き浸しなど、お客様には出さない端材を活かした料理をスタッフみんなで美味しく味わっているそう。ちなみに、まかない作りは、主にスーシェフの担当なのだとか。冷蔵庫の食材管理の面で、下の子よりも現場を指揮するスーシェフの方が適しているためで、薬師神さんのお店のチームワークの良さを窺わせるお話でした。
こうしてワークショップを終え、閉会を迎えたEAT&LEADトークサロン。実は今回、これまで開催してきた4回とは少し異なる点がありました。それはビジネスパーソンが中心の集まりではなく、食従事者の参加者が過半数を占めていたこと。それを踏まえた上で、薬師神さんが「料理人をはじめとする食従事者の皆さんこそ、EAT&LEADトークサロンに参加し、もっと視野を広げてもらえたら嬉しい」と力説する場面もありました。最後に、薬師神さんの言葉をご紹介します。
「世の中にはお金にはならないけどやった方が良いこともあれば、お金にはなるけどやらなくていいこともいっぱいあって、限られた時間の中で必要なものを選択するのは難しいところですが、EAT&LEADトークサロンのような場に参加する機会を増やし、思考めぐらす時間は大切だと思います。また、私の場合、お店を週4日の営業にしてインプットする時間を増やしていますが、日々いろんなものに追われ、余白を持てなくなると自分を振り返ることができなくなりますよね。今の時間の使い方に疑問を持つことも重要で、自分にとって何を優先すべきか、ぜひ一度考えてみてください」(薬師神さん)
「EAT&LEADトークサロン」今後の開催予定
【第6回】2023年1月24日(火)「食の価値観から見える未来予測」
ゲスト:naoさん(JULIA Executive Chef)× 諏訪綾子さん(アーティスト/food creation 主宰)
>>参加者募集中!お申し込みはこちらから
https://shokumaru.jp/talk_02/
>>今回のダイジェスト動画の視聴はこちら!
第5回「土地とつながる食―地域に特化したレストランの在り方」
*こちらの動画ではパネルトークのみご視聴いただけます。
働く女性が自分自身と向き合う時間をつくること、そして対話することの大切さを再認識していただくことを目的とした体験型ウェルネスイベント「Will Conscious Marunouchi 2022 まるのうち保健室〜私と向き合う時間〜」。10月27日(木)・28日(金)の2日間にわたって開催された本イベントのレポート【前編】では、伊藤華英さん(競泳元日本代表)と廣瀬俊朗さん(元ラグビー日本代表キャプテン)をゲストにお迎えしたオープニングステージを、【後編】では会場内の様子をご紹介しました。そして【番外編】でお届けするのは、会期2日目に「私の対話ステージ」で行われたフジテレビ『ノンストップ!』サミットの特別ステージの模様です。
10月28日(金)13:30、私の対話ステージ前に設置されたイスは女性のお客様でほぼ満席となり、にわかに高まる期待の中、いよいよその時を迎えました。会場に『ノンストップ!』のテーマ曲が響き渡り、司会を務めるフジテレビ渡辺和洋アナウンサーの掛け声とともに姿を現したのは、千秋さん、大神いずみさん。『ノンストップ!』の毎週金曜の恒例企画、主婦・女性が気になるテーマを生で徹底討論する「サミット」が初めてスタジオを飛び出して、丸の内へやってきました。
*番組でのオンエアは終了しています。
丸の内で議論するテーマは、「プレ更年期は30代から⁉ ホルモンとの付き合い方」。
千秋さん、大神さんは、いかに更年期を過ごし、どのようにホルモンと付き合っているのか、それぞれ経験や見解を語りました。また、ゲストのお二人の他に、公認心理士/臨床心理士の戸田さやかさん、まるのうち保健室プロデューサーの井上友美も登壇し、医療現場からの視点や都心で働く女性たちの声も交えながら進行。そんな『ノンストップ!』サミットの特別ステージの模様をお届けします。
【ゲスト】
◆千秋さん タレント
◆大神いずみさん タレント
【登壇者】
◆戸田さやかさん 株式会社ファミワン 公認心理士/臨床心理士
◆井上友美 三菱地所株式会社 まるのうち保健室プロデューサー
【司会】
◆渡辺和洋さん フジテレビアナウンサー
特別ステージ:テーマ「プレ更年期は30代から⁉ ホルモンとの付き合い方」
渡辺アナ:まずはゲストのお二人に質問です。何か更年期症状はありますか?
千秋さん:周りの人はよく「更年期」と言うけど、私自身、体の不調は全然ない。でも、以前、寝ている時に汗を超いっぱいかいたことがあって、そのとき「あ!更年期だ」って、家族に汗を触らせたことがある。
大神さん:更年期症状、私はフルコースできています。40歳を過ぎた頃から何だか体調がおかしいなって思い始めて、45歳くらいで「これは更年期だ」って認定しました。でも、現在53歳で、そろそろトンネルを抜けそうかなというところですね。
渡辺アナ:なるほど。では、そもそも更年期というのはどんな時期なのか? グラフにしたものがありますので見ていきたいと思いますが、戸田さん、詳しく教えていただけますか?
戸田さん:更年期というのは、思春期とか老年期とか、そういった誰にでもあるライフステージの1つです。女性の場合、更年期の時期に女性ホルモンの1つ「エストロゲン」の分泌量が急激に下がっていきます。エストロゲンは、肌のツヤ、髪の毛のハリ・コシといった美容にまつわる機能、認知機能、自律神経系のバランスにも影響するホルモンで、減少すると、大量に汗をかく、心臓がバクバクするなど、様々な体調の変化を起こす場合があります。日本人女性は平均50.5歳で閉経を迎えますが、その前後5年間が更年期症状の起きやすい時期です。ただ、自分がいつ更年期に入ったのかは、閉経が起きてから過去を振り返らないとわかりませんよね。そのため、更年期症状の備えとしては、体の状態を日々モニタリングし、もしかしたら?と自ら変化に気づくということが大切です。
渡辺アナ:更年期症状が出始めるのは45歳頃の方が多いわけですね。でも、それよりももっと早いタイミングで出る人もいるのでしょうか?
戸田さん:そうですね。いわゆる「プレ更年期」と呼ばれるもので、30代後半から不調を感じる人もいます。
渡辺アナ:プレ更年期ですか。まだ更年期の自覚がない年齢の時に、理由はわからないけど体調がおかしいということになると不安になりますよね。井上さんはまるのうち保健室のプロデューサーとして更年期にまつわる相談を受けることがあるそうですが、働く女性からはどのようなお悩みが寄せられていますか?
井上:頭痛とか、疲れやすい、眠れないとか、そういったお声を耳にすることはありますが、仕事を優先にし、生活習慣の乱れが原因だと思っている人が多いように感じます。プレ更年期というお話もありましたが、初期の頃は女性ホルモンが関係しているとはなかなか想像しにくいのかもしれませんね。
千秋さん:私は、自分が更年期になっているか、いないかが、いまだにさっぱりわかっていないんですけど、やっぱり更年期になるのは嫌なことなのかな? どれだけ怖いものかがよくわからないし、避けられるものなのかどうかもわからないので教えてほしい。
戸田さん:そうですね。更年期はライフステージの1つなので必ず全員にやってきます。でも、更年期症状は個人差があって、全くない人もいれば、大神さんのようにフルコースという方もいます。だから、生活やお仕事に支障があるほど重症な方は病院に行ったり、漢方やサプリメントを利用するなど、それぞれの状況に応じて適切な対処をすれば良いと思います。
大神さん:「ずっと頭が痛いけど、更年期だから仕方ない」と自分で勝手に判断するより、病院に行って調べてもらった方が安心ですよね。もしかしたら、実は脳に何か病気がある可能性もあるし、ホルモンバランスが崩れているせいですねとバシッと診断してもらえれば、自分の中で不調の受け止め方が違ってくると思うんです。
渡辺アナ:何も判断基準がないまま、自分だけで考えているとどうしたらいいのかわからない人が多いと思いますが、自分の状態を知ることができるチェックシートというものがあります。これは日本人女性特有の更年期症状の程度を把握するためのシートなんですが、ゲストのお二人は何点でしたか?
上の写真のチェックシートで、更年期指数の合計点による「指標」は次の通り。【0~25点】上手に更年期を過ごしています。年1回の健康診断を受けましょう。【26~50点】バランスのよい食事、適度な運動を行い、無理のないライフスタイルを送り、更年期障害の予防に努めましょう。【51~65点】産婦人科または更年期外来、閉経外来を受診し、薬などによる適切な治療、生活指導、カウンセリングを受けましょう。【66~80点】長期間(半年以上)の計画的な治療が必要でしょう。【81~100点】各科の精密検査を受けましょう。更年期障害のみであった場合は、産婦人科または更年期外来、閉経外来などで長期の計画的な治療が必要でしょう。
千秋さん:私は「0~25点」のところだった。「怒りやすい・すぐイライラする」はもともとそういう性格なので4点。あと「疲れやすい」も昔からそうなので2点かな。
大神さん:私はチェック項目のすべての症状を経験していますけど、程度でいえば、最近は少しずつ弱くなってきたものもあるんです。合計は46点でした。
戸田さん:51点を超えると医療機関の受診を検討された方が良いのですが、それ以下の方は様子を見る形で大丈夫だと思います。また、特に60点以上の方は臨床的な観点から日常生活の支障が大きいと思いますので、直ちに受診することをおすすめします。
渡辺アナ:実際に、大神さんは病院へ行かれたことがありますよね?
大神さん:45歳くらいまでは「寝たら治る」と、その都度、症状をやり過ごしていたんですけど、ある時からめまいが強くなり、フラフラして立っていられなくなったので、原因を突き止めようと婦人科に行ったのが最初です。血液検査してもらったら「ホルモンバランスがめちゃくちゃです」って言われ、更年期だと認定していただいた。それまで何年間も我慢していたので、すでに更年期初心者ではなかったと思いますが、診断を下してもらったおかげでこれから1つ1つ対処していこうという覚悟ができました。でも、もう少し手前の段階で更年期の準備ができていたら、もっと穏やかに仕事も家庭生活もできたかもしれませんね。
千秋さん:私は何も症状がないし、病院は怖いのであまり行きたくない。だけど、理由がわからないまま体の不調を抱えているより、理由がわかった方が怖くないかなと思います。
大神さん:そう。自分の体の状態を知っていた方がどうにかできる術があるというか、1人で我慢していた期間の方がよほど怖かったです。
渡辺アナ:恐れずに病院に行くことが大きな前進になるということですが、受診をする場合、一体どんな検査をするのか、不安を持ってらっしゃる方も多いと思います。そして、病院に行く前の準備も大事ということで、そのポイントをご紹介しましょう。受診の際、いろいろ聞かれるそうなので、漠然とした記憶ではなく、前もってメモしておいて、正確に先生に伝えられるようにすることが大事なんですね。
戸田さん:月経の周期などは、その時に気分の変化とともにメモやアプリなどの記録しておくとスムーズで、3か月程度のデータをまとめておくと良いと思います。また、通常時と体調の悪い日の比較も診察の時に大事なポイントになったりするため、日々健康のモニタリングなど記録を取っておいて病院で伝えることも有効です。
大神さん:この質問事項は、私もすべて口頭で聞かれました。何も準備していなかったので、月経の周期とかうろ覚えでしたし、飲んでいる薬もメモしておくことも大切だと思いますね。
渡辺アナ:そして、診察ではどんな検査をするのか、その検査を受けてどういった対処法があるのかは、それぞれ大きく分けて4つあるそうです。
戸田さん:まずは採血をしてホルモン値を計る他、血糖値など一般的な項目も見て、他の病気が隠れていないか調べます。経腟エコーや細胞診なども、がんなどの他の病気がないかを確認するために行います。対処法は、更年期障害の初期の方は食事や睡眠など生活習慣の見直しの指導を受けることが多いですね。あとは、漢方やサプリを飲みながら経過を観察していくこともあります。血液検査の結果、ホルモン値が低い場合にはホルモン補充療法になり、ホルモンを補充する薬、貼り薬や塗り薬などを使うようになります。
大神さん:私はめまい緩和のために、最初はプラセンタのサプリを飲んでいました。でも、いよいよめまいが激しくなった時に、病院でホルモン補充療法が良いのではないかと言われて、今「メノエイドコンビパッチ」というシールをお腹に貼っています。あと飲み薬を飲んでいたら、こんなに違うんだ!と驚くほどめまいがなくなりました。
渡辺アナ:思いきって病院に行けば、きっと自分に合う解決方法が見つかるわけですね。井上さん、まるのうち保健室には「病気に行って症状が緩和されました」という声も寄せられていますか?
井上:はい。やはり病院に行くまでが時間がかかってしまうとか、どんな検査をされるんだろうという不安をお持ちの方は非常に多いようです。でも、ネットで調べるよりも、治療を経験された身近な方から直接お話を聞いた方が一歩踏み出す勇気が出ると思います。
渡辺アナ:更年期と向き合う上で、周囲の人とのコミュニケーションをとることも大切ですよね。実は今回、大神さんからお悩みを1つお預かりしています。「家族にどこまで相談するのか悩む」とのことですが、これはどういったお悩みでしょうか?
大神さん:それはですね。どうしても体がつらい時は横になったりするわけですが、そうすると夫や子どもが「お母さん、今日なんかダラダラしてるね」とか「昨日、飲み過ぎたのかな」とか言われて、全然いたわってもらえないんです。夫には言えたとしても、子どもは心配しちゃうかなと思って、体調が悪いとはあまり言えないですしね。ある日、本当につらかったので「今日は1日寝かせてもらいます」って寝たことがあって、そのときは家族も少しわかってくれたみたいですが、いまだに伝え方には悩んでいます。
戸田さん:更年期症状は病気ではないということで、自分自身も軽視しがちですし、周りの方も軽く見てしまうところがあると思います。でも、一般的な知識として「更年期の女性はこのような苦しい症状が起きやすい」「そのときは家族のサポートが必要で、家事を代わってあげようか、無理しないでと声をかけてあげるだけでも安心する」ともっと広く認知されて、実践していただけるご家庭が増えると良いですよね。私が一番効果的だと思うのは、お父さんが子どもに対して「お母さんは具合の悪い日があるんだから、俺たちで助けよう」と言ってくれることです。
大神さん:夫からそんなことを言ってもらえたら泣いちゃうかも。
千秋さん:私はこういう場にそぐわない発言かもしれないんですけど、少し年上のママ友が多くて、更年期だという話が出た時に「カッコいい」と思った。私も早く更年期って言いたい、みたいな。で、ちょっと眠たい時も「仕方ないよ、更年期だから」って言ったり、家で「私、更年期だから」っていっぱい言っていたら、娘から「ウソでしょう」と言われるようになった。でも、昔は更年期と聞くとおばさんの病気というイメージがあって、私は絶対なりたくないと思っていたけど、年齢が近くになったら考え方が変わって、どうせみんながなるなら、私も早くなって「カッコいいでしょう」と言えた方が良いって思えてきて。更年期がポップなものというか、恐いものというより大人になった印として、誰でも普通に通り過ぎる信号みたいな感じになれば良いなと思います。
大神さん:千秋ちゃんらしい。こないだね、友達とおしゃべりしながらご飯を食べていた時に、2人揃ってダーッと汗をかいたんです。2人ともホットフラッシュになっていることに気づきながら、お互いに何も言わなかった。本当は「今、キテるでしょう」って笑い合えたらいいのに、何となく言いにくいんですよね。
千秋さん:私も、ママ友が「汗をいっぱいかくので、冬でもハンカチがいる」って話していた時に「へー」とか言ったんだけど、私が汗をかいた時に「私も更年期になった」とすぐ言いました。私にとってはタブーとかではなくて、久しぶりに会っても「更年期どうした?」「私はまだかも」「もう過ぎたかも」みたいな話を気軽にしています。
大神さん:私も更年期とは長いお付き合いになってきて、そろそろトンネル抜けるかなというところにきていますけど、最初、具合が悪くなった時よりは今の方が話をしやすくなっていると思います。ほんの少しの間で時代の空気が変わったというか。以前は「更年期」というと年寄り扱いみたいな言葉を返されたんですけど、今はみんなに受け止めてもらいやすくなったので有難いなと思うし、病院で気軽に相談しやすくなったこともあるので、自分の症状を正しく知って、きちんと更年期と向き合える世の中になったら良いなと改めて思いました。
井上:お二人のお話を伺っていたら、自分が更年期を迎えた時も怖がらずにいられそうだと思えました。また、ママ友など女性同士なら比較的話しやすいことも、職場の中で声を上げられず、病院に行けずに困っている人も多くいますので、企業の皆さまにも本日のお話に耳を傾けていただいて、それぞれの職場環境に生かしてもらえたら嬉しいなと思いました。
更年期は、国籍も関係なくすべての人が経る時期だからこそ、大人の印としてもっとカッコいいイメージになれば良いよねと話す、千秋さん。公には話題にしくいところもあるという更年期障害について、率直に語ってくださった大神さん。更年期に立ち向かう働く女性たちの勇気となる言葉が詰まったステージになりました。
「Will Conscious Marunouchi 2022 まるのうち保健室 〜私と向き合う時間〜」開催概要
【開催日時】2022 年10 月27 日(木)・28 日(金)各日11:00〜19:30
【開催場所】丸ビル1 階マルキューブ(東京都千代田区丸の内2-4-1)*参加無料
【主催】三菱地所株式会社
【協力】株式会社ファムメディコ、株式会社ファミワン、神奈川県立保健福祉大学
【パートナー企業】アシックスジャパン株式会社、アンファー株式会社、株式会社eminess、株式会社エポラ、株式会社SMILE CREATE GROUP、株式会社ブレインスリープ、株式会社ベジモ、ライオン株式会社(五十音順)
【企画協力】フジテレビ『ノンストップ!』
10 月27 日(木)・28 日(金)に開催された「Will Conscious Marunouchi 2022 まるのうち保健室〜私と向き合う時間〜」。働く女性が自分自身と向き合う時間をつくること、そして対話することの大切さを再認識していただくことを目的とした体験型ウェルネスイベントです。「食」の大切さから女性特有の疾病リスクまで、女性の体と心の健康のために役立つ幅広いテーマの情報発信を行いました。多くの女性たちで賑わった2日間のイベントの様子をレポートします(記事の後編/前編を読む)。
伊藤華英さん(競泳元日本代表)と廣瀬俊朗さん(元ラグビー日本代表キャプテン)をゲストに迎え、賑やかに開催したオープニングステージ後の会場は、ゆっくりとした心地良い時間に包まれていました。
そんな会場内の様子をこれよりご紹介します。
丸の内仲通りに面したドアから丸ビルへ入ると、すぐに目に飛び込んでくるのが「私と向き合う時間」という文字。大きなパネルボードがお出迎えしてくれました。
実は、このパネルもイベントの企画の1つ。
来場者は、テーブルに用意された三日月形の付箋を1枚手に取り、心、体、未来をキーワードに「今、自分にかけてあげたい言葉」を記入します。三日月形の付箋は、名付けて「Voice Card」。書き終わった「Voice Card」はパネルボードに貼ってもらって、できるだけ多く集めていくことで、働く女性たちの声を可視化するという企画です。
オープニングステージのゲストのお二人も「Voice Card」に記入しました。
パネルボードを通り過ぎれば、会場が広がっています。
会場内で、常に多くの人で賑わっていた場所といえば「私と向き合うカウンター」です。
5 つのテーマ「食・免疫力の回復」「適度な休息と運動」「セルフケア・自律神経の調整」「エイジングケア・更年期」「未来を考える対話」に関連のある企業のサービスやプロダクトが並ぶカウンターで、スタッフと会話しながら知識や情報を得ることができる場でした。
ランステーション、カフェを併設した総合ストア「ASICS RUN TOKYO MARUNOUCHI」は、「歩く」と「走る」、「アクティブに動く」を支えるプロダクトを展示していました。
会話をしながら自分に不足している栄養素を考え、相談できるカウンター。こちらを利用すると不足栄養素が詰まったスイーツを1つもらえました。抹茶のポルボロン(タンパク質)、枝豆のバーチディダーマ(鉄)、ピスタチオとケールのクッキーサンド(マグネシウム)、プルーンといちじくのバー(食物繊維)。
女性のデリケートゾーンのお手入れをテーマにしたこちらでは、新商品「Femtur(フェムチャー)」のタッチ&トライを体験できました。この商品を使うとフェミニンフローラ(デリケートゾーンの常在菌)のバランスを整えてくれるそうです。
ウィメンズ整体サロン「POWWOW Premium 丸ビル店」は、マルチリフトローラーによるミニ施術を実施。POWWOWオリジナルのマルチリフトローラーは、自宅で腹筋+全身がほぐせる優れものです。
まるのうち保健室で現在進行中のプロジェクト「働く女性 健康スコア」のアンケートで、ひとりひとりが私と向き合う時間を。植物療法士が調合した“お野菜以上、お薬未満のハーブティー”のブランド「Herb Are You?」をいただき、ホッと心を緩めながら、自身の健康のコンディションと向き合います。
「働く女性 健康スコア」のアンケートは、スマートフォンより回答できました。
こちらは「私たちの対話ステージ」。
オープニングステージの終了後も多彩なテーマのステージが目白押しでした。
写真は、テーマ「聞いてみたかった!妊活の最新トレンド」。株式会社ファミワン所属の不妊症看護認定看護師・西岡有可さん(写真左)と公認心理士/臨床心理士・戸田さやかさん(写真右)が登壇され、将来の選択肢として「卵子凍結」の可能性を話してくれました。
さらにこの「私たちの対話ステージ」では、会期2日目にフジテレビ『ノンストップ!』サミットを開催。ファミワン所属の公認心理士/臨床心理士・戸田さやかさんもご登壇し、「プレ更年期は30代から⁉ ホルモンとの付き合い方」というテーマの下、熱のこもったトークが繰り広げられました。
その様子は、イベントレポート【番外編】へ続きます!
>>イベントレポート【番外編】に続く
フジテレビ『ノンストップ!』サミットを開催!ゲストは、千秋さん&大神いずみさん
「Will Conscious Marunouchi 2022 まるのうち保健室 〜私と向き合う時間〜」開催概要
【開催日時】2022 年10 月27 日(木)・28 日(金)各日11:00〜19:30
【開催場所】丸ビル1 階マルキューブ(東京都千代田区丸の内2-4-1)*参加無料
【主催】三菱地所株式会社
【協力】株式会社ファムメディコ、株式会社ファミワン、神奈川県立保健福祉大学
【パートナー企業】アシックスジャパン株式会社、アンファー株式会社、株式会社eminess、株式会社エポラ、株式会社SMILE CREATE GROUP、株式会社ブレインスリープ、株式会社ベジモ、ライオン株式会社(五十音順)
【企画協力】フジテレビ『ノンストップ!』
10 月27 日(木)・28 日(金)に開催された「Will Conscious Marunouchi 2022 まるのうち保健室〜私と向き合う時間〜」は、働く女性が自分自身と向き合う時間をつくること、そして対話することの大切さを再認識していただくことを目的とした体験型ウェルネスイベントです。「食」の大切さから女性特有の疾病リスクまで、女性の体と心の健康のために役立つ幅広いテーマの情報発信を行いました。多くの女性たちで賑わった2日間のイベントの様子をレポートします(記事の前編/後編を読む)。
上の写真:本イベントのオープニングステージにゲスト出演した、伊藤華英さん(競泳元日本代表)、廣瀬俊朗さん(元ラグビー日本代表キャプテン)。ステージ終了後、会場内の「私と向き合うカウンター(体験コーナー)」を見学されました
時は初日の正午過ぎ、会場内をぐるりと見渡せば、お昼休み中のオフィスワーカーからベビーカーを押すお母さんまで、様々な女性たちが足を止め、興味深そうに話を聞いたり、商品を手に取ったり、アンケートに答えたり、思い思いのひとときを過ごしていました。
丸の内仲通りに面した窓の向こうに緑を臨む、丸ビル1階マルキューブで開催されたイベント「Will Conscious Marunouchi 2022 まるのうち保健室〜私と向き合う時間〜」は、穏やかな時間が流れる空間の中、働く女性たちに向けて力強い発信を行い、盛況のまま2日間の会期を終えました。
本イベントのコンテンツは、主に以下の3つです。
◆私たちの対話ステージ(メインステージ)
専門家をお招きして知識を深めるステージ。日々の暮らしに活かせるノウハウ、セルフメンテナンス、自分らしい生き方など、2日間を通じて全7つのステージ企画を行いました。
>>28日(金)には、フジテレビ『ノンストップ!』サミットを開催!ゲストは、千秋さん、大神いずみさん(イベントレポート【番外編】へ)
◆私と向き合うカウンター(体験コーナー)
本イベントの5 つのテーマ「食・免疫力の回復」「適度な休息と運動」「セルフケア・自律神経の調整」「エイジングケア・更年期」「未来を考える対話」を体験できる、今の自分自身の状態と向き合うコーナーです。
◆まるのうち保健室ラウンジ(相談ラウンジ)
女性のライフイベントや健康についてリラックスして気軽に学び、対話ができる、ウォークインで立ち寄れるラウンジ。体の不調から職場での悩みまで、何でも気軽に相談することができます。また、「PMS・月経」「更年期」「プレコンセプションケア(プレ妊活)」「女性のホルモンバランスを『食』で整える」の4つのテーマのセミナーを開催。
10月27日(木)11:00~のイベントの幕開けを飾るオープニングステージでは、競泳元日本代表の伊藤華英さん、元ラグビー日本代表キャプテンの廣瀬俊朗さんをお招きしてトークセッションを実施。働く女性たちがより日常を過ごしやすくなるためのヒントが詰まったステージになりました。
まずは、このオープニングステージの様子をお届けします。
【ゲスト】
◆伊藤華英さん スポーツ科学博士/競泳元日本代表/一般社団法人スポーツを止めるな 理事/1252プロジェクトリーダー
◆廣瀬俊朗さん 株式会社HiRAKU 代表取締役/元ラグビー日本代表キャプテン/一般社団法人スポーツを止めるな共同代表 理事)
【登壇者】
◆佐々木彩華さん 株式会社ファムメディコ 取締役CVO/薬剤師
◆岡本真澄さん 神奈川県立保健福祉大学 イノベーション政策研究センター研究員
◆井上友美 三菱地所株式会社 まるのうち保健室プロデューサー
冒頭には、まるのうち保健室プロデューサー井上友美が登壇。ご挨拶するとともにイベントの趣旨を説明しました。
その後、神奈川県立保健福祉大学の岡本さん(写真左)が、昨年度の3月に発表した「働く女性ウェルネス白書2022」について紹介。その分析データから浮かび上がってきた、働く女性の就労実態や健康意識・課題などを説明しました。
続いて、株式会社ファムメディコの佐々木彩華さん(写真右)が説明してくださったのは、現在進行中のまるのうち保健室の取り組みについて。働く女性の健康実態を調査し、企業やコミュニティで活用できる指標を作成する「働く女性の健康スコア」と、女性特有の疾患や妊娠準備のために開発した「まるのうち保健室オリジナル健診プログラム」を紹介しました。
そして、いよいよトークセッションが始まりました。
トークセッション:テーマ「“自分らしく”あるためにひとりとみんなができること」
トークテーマは「“自分らしく”あるためにひとりとみんなができること」。
テーマに合わせて用意した3つのキーワードに従って、ゲストの伊藤華英さん、廣瀬俊朗さんにご自身の経験談やアイデアなどをお聞きし、日頃から不調に悩む女性たちへメッセージを発信しました。
トークテーマ「“自分らしく”あるためにひとりとみんなができること」
◆キーワード1:女性特有の症状やケア
◆キーワード2:ベストパフォーマンス・チーム力
◆キーワード3:見える化することの意義
【TALK SESSION】
井上(司会):今回、伊藤さん、廣瀬さんをゲストとしてお招きしたいと思った理由の1つに、お二人が活動していらしゃる「1252プロジェクト」があります。まずはこちらのプロジェクトについて教えていただけますか?
伊藤さん:ありがとうございます。みなさん「1252」という数字を聞いても、何のこと?と思いますよね。1年は52週間あり、そのうちの約12週間は月経期間にあたるということを数字で示したくて、また男性にも知ってもらいたくてこの名前にしました。1252プロジェクトは女子学生のアスリートたちに向けて、自身の月経の周期など、女性の体に関する医学的な知識を学んでもらうための活動です。東大病院と連携して教材を作り、誰でも気軽に見やすいようにインスタグラムを通じて発信しています。
廣瀬さん:最近、僕も娘に生理がきまして。そのこととどう向き合ったらいいのか、このプロジェクトを始めるまで全くわかりませんでした。今は「生理がきたら赤飯炊く」という時代ではなく、婦人科のことを学び始めるきっかけになる出来事。男性のみなさんにもぜひ関心を持っていただきたいと思います。
井上:一番身近な自分の体のことなのに、月経も、妊娠・出産も、義務教育の中で接することはほとんどありませんし、きちんと学べる機会は少ないですよね。だからこそ、学生の方へアプローチするという点にすごく意義があると感じました。
伊藤さん:私自身、水泳競技をやる中で月経のことで相当悩んでいましたし、体重制限のある競技をやっている人は無月経になってしまう場合もあります。10代で無月経になってしまうと骨が成長できず、今後の人生に大きな影響を与えることになりますよね。体のコンディションとアスリートとしてのパフォーマンスの密接な関係を考えながら、1252プロジェクトに取り組んでいます。
◆キーワード1:女性特有の症状やケア
井上:本日のトークテーマ「“自分らしく”あるためにひとりとみんなができること」の1つ目のキーワードは「女性特有の症状やケア」です。伊藤さんは先ほど、以前は月経のことで悩んでいらしたとおっしゃっていましたが、アスリートとしてコントロールできない女性特有の症状をどのように乗り越えてきましたか? エピソードがあれば教えてください。
伊藤さん:私が陸に上がってから10年、その間にだいぶ時代が変わってきたなと感じています。当時は、薬=ドーピングにつながるというイメージがあって、ピルを飲むという選択をすることは簡単ではありませんでした。でも、オリンピックが内定したら、期間中ずっと月経期間にあたってしまうということがわかり、病院で中容量ピルを処方してもらうことになりました。時期をずらすだけなら中容量ピルを1回飲むだけでいいのです。ただ、飲んだら体重が4~5キロ増えてしまって、結局、力を発揮することができなくて。そのとき、コンディションを整えられなかった悔しさ以上に、月経に対する知識がなかったこと、自分で判断できなかったところに大きな後悔がありました。ピルを飲むなら、どんな副作用があるかをしっかり知りながら、4年間のうちに計画的にコンディショニングをしていくべきだったな、と。大学院時代は、低用量ピルを服用して不正出血に悩んだこともありますし、紆余曲折を経てようやく今は落ち着きました。
井上:まるのうち保健室「働く女性 ウェルネス白書2022」の調査では、都心で働く女性は全国平均の約5倍の人がピルを服用していることがわかりました。ピルの正しい知識が広まりつつあり、時代がようやく変わってきつつあるのを感じますね。
伊藤:そうですよね。女性は10代で月経が始まって50代まで付き合う人が多いそうなので、気持ちよく仕事をしたり、毎日を笑顔で過ごすための選択肢として、自分でホルモンバランスを調整することも大切だと思います。まるのうち保健室などを活用しながら女性のみなさんにももっと知ってほしいですね。
◆キーワード2:ベストパフォーマンス・チーム力
井上:次のキーワードは「ベストパフォーマンス・チーム力」です。廣瀬さんは、ラグビー日本代表のキャプテンもお務めになられましたが、自分がつらい状況のときに、周囲の環境や人の支えがあったのではないでしょうか。
廣瀬さん:すごく大事な観点ですね。現役時代は毎日キツい練習をしないといけなくて、「しんどい、嫌だな」と思っていましたが、近くに雑談ができる仲間がいるだけで気持ちが楽になったり、「次はこうしてみたら?」とアドバイスくれる人がいてくれたおかげで「よし、がんばろう」とモチベーションが保てました。だから、周囲の環境や人の支えというのは大切で、たとえば会社なら、上司に自分の考えていること、抱えている課題を素直に相談できるような関係性があると良いですよね。僕の場合は、エディー・ジョーンズという監督がめちゃくちゃ怖かったんですけど、その間にいた日本人のコーチに声をかけもらって助けられたこともあったので、もしかしたら第三者的な立場で少し離れたところから助けてくれる人も有難いですよね。周囲に自分の声を聴いてくれる人がいる環境があってこそ、自分のパフォーマンスが維持できるのだと思います。
井上:もしチームの中に苦手な方がいたら、どのようにコミュニケーションとりますか?
廣瀬さん:その人にもその人なりの正義があると思うので、同意はできなくても理解することが大事かなと思います。伊藤さんはどうですか?
伊藤:苦手な人がどんな人か気になって、すごい調べます。逆に好きなところを見つけたいし、会話をしたいと思って、逆に積極的にコミュニケーションとろうとするかも。どんな人とも対話を大事にしたいなと思っています。
◆キーワード3:見える化することの意義
井上:3つ目のキーワードは、「見える化することの意義」です。これまで話を伺っていて、伊藤さんは自分のコンディションがなかなか見えづらい状況で、大舞台に臨まれ、いろんなご苦労をされてきたと思いますが、「見える化」と聞いてどのようなことを思いますか?
伊藤さん:私の場合、自分の気持ちを「書くこと」をよくやっています。実は、自分はこんな風に思っていたのかとか、自分がこんなことで嫌な気持ちになったのかとか、書いてみると改めて気づくことが多いのです。自分の気持ちを知ると、気持ちを整理することができて、私と対話することになります。月経についても、周期をチェックしたり、基礎体温を計るだけで、体の中で起きていることが数値化されて見えるようになるので、コンディションを整えやすくなり、次のアクションにつなげられると思います。
井上:気持ちを書いたり、スコア化すると、誰かに自分のことを伝えるときの共通言語になりますよね。先ほど、廣瀬さんから上司とのコミュニケーションという話がありましたが、男性の上司に話しづらい生理のことも、コンディションシートのようなものがあれば、それを見せるだけで間接的なコミュニケーションになりそうですか?
廣瀬さん:そういうものがあれば、ファクトやデータをもとに声がけができるので良いなと思いました。もし自分が上司だったとして、女性部下の体調悪そうなときに「大丈夫?」とか「最近どう?」とか、恐れずに声がけする勇気が持てそうですし、女性の側はそんな上司をぜひ温かく見守ってほしいですね。今の時代、男性たちも学びの過渡期だと思いますし、お互いが歩み寄りながら、より良い社会を作っていけたらいいなと改めて思いました。
学生アスリートも働く女性たちも、体の不調を見える化し、自分と向き合う時間を作ってほしい。女性1人1人が自分と対話することでパフォーマスが上がり、企業にも社会にも女性たちの力が最大限に生きてきますよね。性差の違いにおける体や心の健康について、男女共に学び支え合う──28万人のビジネスパーソンが集うここ丸の内から、これからの働き方や社会のありかたのヒントが詰まったトークセッションとなりました。
この後は、心地良い時間の流れる会場の風景をご紹介します。
イベントレポート【後編】へ!
>>イベントレポート【後編】へ続く
“体験”と“会話”に満ちた会場の風景をめぐる
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2日間限定の「まるのうち保健室〜私と向き合う時間〜」体験型ウェルネスイベント オープニングステージに伊藤華英さん、廣瀬俊朗さんがゲスト登壇(掲載URL)
左は「恵比寿 笹岡」の笹岡隆次さん、右は「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ」のステファノ・ダル・モーロさん
10月28日(金)に初開催したイベント「Farm to Table」は、EAT&LEADと丸の内シェフズクラブのコラボ企画です。丸の内エリアにある3店舗、日本料理「恵比寿 笹岡」、イタリア料理「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ」、フランス料理「Sens & Saveurs」が参加しました。
当日、参加者が集合した場所は、2022年5月に大規模リノベーションが完了した大手町ビルの屋上。約4,000m²の屋上空間「Sky LAB」に併設された、都内最大級のシェアリング型コミュニティ IoT 農園「The Edible Park OTEMACHI by grow」です。この農園でシェフと一緒に収穫体験をし、その食材を使った特別メニューを各レストランで楽しみます。
そして今回、密着取材したのは「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ」の総料理長、ステファノ・ダル・モーロさんでした。
左は、この農園を運営するプランティオ株式会社の共同創業者/CEO 芹澤孝悦さん。本イベントは芹澤さんの農園案内からスタートしました
「The Edible Park OTEMACHI by grow」は、いわゆる区画貸しの農園ではありません。海外では一般的な“共同栽培型”。園内の野菜をみんなで育て、農園の楽しさを共有するコミュニティとして機能しています。
「この農園の野菜を育てているのは、近隣のオフィスワーカーや飲食店、住民など、農業のプロではありません。誰でも栽培を可能にしているのが、私たちが開発した、growと呼ばれるナビゲーションシステムです。プランターに挿したセンサーが温度や日照などのデータを収集し、AIが水やりや間引きの必要性を通知。それによって、知識や経験を問わず、あらゆる人が楽しく野菜を育てられる仕組みがあるのです」(プランティオ株式会社の共同創業者/CEO 芹澤孝悦さん)。
こうした都市型の農園について、ステファノシェフは料理人として期待を寄せていると話します。「イタリアの田舎のレストランは店のすぐ近くに畑があって、毎朝、そこで育てている野菜やハーブを摘みながらメニューを考えるんです。特に摘み立てのハーブは香りが良いので、素材の味を大切にするイタリア料理では、新鮮なハーブを使うことがとても大切。以前から東京でも同じように料理がしたいと考えていたので、こうした農園が丸の内にできてとても嬉しいです」。
この日、収穫を体験したのは、ミント、バジル、ベビー小松菜、ピーマン。「どんなハーブが料理に適しているか」「どう調理すると美味しく食べられるか」など、シェフとの会話も楽しみながら、料理に使う野菜を参加者全員で収穫していきました。
「天候に恵まれない日々が続いていましたが、無事に収穫ができて嬉しいです」と話すのは、食に興味があり、以前からこの農園を利用しているという参加者の大学生。他にも、今回の「Farm to Table」に参加したことで農園の存在を知ったというオフィスワーカーは、「職場の近くにこんな場所があったなんて驚きました。これが一体どんな料理になるのか楽しみです」と、新鮮な体験を楽しんでいる様子でした。
ひと通りの収穫を終えたら、いよいよレストランへ。ステファノシェフは「先に行って仕込んできます。楽しみにしていてください」と一足先に、笑顔でお店へ向かっていきました。
到着したのは、丸ビル36階にある「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ」。レストランの厨房にお邪魔してみると、早速、採れたての野菜が調理されていました。火にかけられていたのは、ピーマンです。濃い緑色がみずみずしく、これだけでとても美味しそう。今回、ステファノシェフが作る特別メニューは全部で5品。先ほど収穫した野菜のほか、東京野菜もふんだんに使い、どれも野菜を主役にした彩り豊かな料理になると言います。
一方、メニューの内容を知らされていない参加者たちは、期待で胸がいっぱいの様子。この頃には参加者同士の交流もあり、隣り合った人同士での会話も弾みます。家庭菜園をしている人が多いようで、育てている野菜についての話にも華が咲きました。
まず運ばれてきたのは、アペリティーボです。小平市のカリフラワーのボイルをモンブランのような一口サイズに仕立てた一品。続いて、ストゥッツィキーノ(付き出し)は、カボチャのスープ。ムース状の濃厚なスープで、まるでスイーツのよう。2品続けて可愛らしい見た目と優しい味に、緊張もほぐれます。
そして、いよいよ収穫した野菜を使った料理が運ばれてきました。前菜となるアンティパストは、6種類以上の野菜やハーブを使ったパイ。具材は、ソテーしたしいたけ、蒸したにんじん、グリルしたあやめ雪かぶ。パイの上には収穫したピーマンのソテー、セミドライのミニトマト、ボイルしたカリフラワーなど。ひとつずつ調理法を変えることで素材の持ち味を最大限に生かす、手の込んだ一品です。
複雑な味を絶妙にまとめたシェフの技に、とある参加者は「野菜だけしか使っていないとは思えないほど、旨みのようなものを感じます」と驚き、また、お父さんと一緒に参加していた小さな姉妹は「いつも食べられないピーマンが食べられた!」と笑顔でいっぱい。自分で収穫したからこそ、感動もひとしおです。
さらにサプライズとなったのは、添えられているバジルとミントを合わせたソース。アイデアの面白さはもちろん、摘み立てでしか出すことができないフレッシュな香りに、多くの参加者たちが魅了されていました。
そして、今回のコースの主役、小松菜のソースを使った緑鮮やかなパスタの登場です。皿が運ばれてくる度に、「どんな料理だろう」「収穫した野菜はどれだろう」と参加者たちの目が釘付けになるステファノシェフの料理ですが、農園の豊かな緑を想起させる美しいパスタにはひときわ大きな声があがりました。
この日に使われた小松菜は、国分寺で栽培されたもの。そして、先ほど収穫したベビー小松菜も添えられています。小松菜と言えば、全国4位の収穫量を誇る、東京を代表する野菜。今回のイベントにもぴったりな食材です。ペースト状にした小松菜のソースにはイタリア産グアンチャーレの香ばしい香りと旨みをプラスし、仕上げにペコリーノロマーノチーズをひと削り。実に食欲をそそる一品に仕上がりました。
デザートを経て、最後にステファノシェフの挨拶で会の終わりを迎えます。
「イタリア料理は、食材ひとつひとつの味を感じることができるシンプルな料理。だからこそ、新鮮なものを使うことに大きな意味があります。一番良いのは、食材の様子を毎日見ながら、使う直前に収穫して、サッと料理に使うこと。市場を通じて仕入れたものでも、今日のようにすぐ近くの畑で採れたものには敵いません。何より、毎日畑を見ることで、土地にも愛着が湧いてきます。このイベントをきっかけに、そうした地産地消の魅力が少しでも伝わったら嬉しいです。今日はありがとうございました」。
屋上農園とステファノシェフの料理を通じて、五感で堪能した「Farm to Table」。実際に“地産地消”を体験し、丸の内の新たな可能性を感じながら、驚きと感動にあふれた1日となりました。
*「Farm to Table 」は、「東京味わいフェスタ 2022(TASTE of TOKYO)」連動企画として開催しました。
10月28日(金)に初開催した「Farm to Table」は、「東京味わいフェスタ 2022(TASTE of TOKYO)」の連動企画として行いました。同日、丸の内の行幸通りでは「東京味わいフェスタ 2022」のオープニングイベントを実施。小池百合子東京都知事をはじめ、三國清三さん(ミクニ マルノウチ)、笹岡隆次さん(恵比寿 笹岡)、ステファノ・ダル・モーロさん(アンティカ・オステリア・デル・ポンテ)など料理人の方々、JA東京中央会の代表理事会長・城田恆良さんと3名の生産者が登壇し、東京の多彩な「農」と「食」の魅力を語りました。
世界有数の大都市、東京。煌びやかなイメージがありますが、実は農業も身近な存在です。
例えば、小松菜は江戸川区の小松川が発祥の特産品で、生産量は全国4位。都市部、山間部、島しょ部のそれぞれで、地域の特性を生かしながら農業が営まれているのです。
そんな東京の農業には、他県にはない大きなメリットがあります。それは、消費地が近いこと。生産地と消費地が隣接し、都内で生産された農作物は多くが市場を通さず、直売所での販売や直接取引によって消費されています。また、産地と近いほど輸送エネルギーを削減することができ、消費者にとっては新鮮な野菜が手に入りやすくなる、サステナブルで価値の高い「Farm to Table」を実現することができるのです。
東京・四ツ谷の迎賓館のほど近く、閑静な住宅街に佇むフレンチレストラン「オテル・ドゥ・ミクニ」が2022年12月末をもってクローズされることが発表されました。これまで日本のフランス料理界をけん引され、37年間にわたって育て上げてきた四ツ谷のレストラン「オテル・ドゥ・ミクニ」をクローズし、小さなレストランに建て替える決断をされたというのです。三國シェフといえば、今から20年以上も前、日本有数のビジネス街である東京・丸の内が、ビジネス特化の街から賑わいのある街へ再構築に挑んだ際、大きな貢献を果たしたお一人。三國シェフに、今の心境をお聞きするとともに、丸の内とともに歩んできた日々を振り返っていただきました。
>>EAT&LEADの三國清三シェフ関連記事
●インタビュー記事
【FOOD INSPIRATION】三國清三 #食の感性を育む
●「丸の内シェフズクラブ」活動レポート
大人の食育を推進する「丸の内シェフズクラブ」総会が開催されました!
2年後、私は70歳になるのを機に、37年間営んできた全80席のレストランを全8席の小さなお店にすることにしました。年内に四ツ谷のレストラン「オテル・ドゥ・ミクニ」を閉店し、建て替え、2年後に新たな店をオープンさせる予定です。
私のこれまでのシェフ人生は大きな挑戦の連続でした。
世界という舞台に立てたからこそ見えてくる日本の良さをたくさん知っています。「食を文化にする」という大きなミッションのもと、料理と日々向き合うことはもちろんのこと、社会活動を多く経験してきました。数々の経験の中でも、丸の内においても街づくりの一端を担わせていただいたことは思い出深い出来事でした。
けれど年齢を重ね、いつしか、このまま前に突き進むと最後に燃え尽きることができないのではないか、と感じるように。過去に何かを置き忘れて、大事なことをやり残したのではないか、と思うようになったのです。その答えが、8席の小さなレストランでした。20代の頃にパリで修業し、帰国した時に思い描いていた夢のレストランを実現させよう、と。お客様と会話しながら、その日の食材で料理を作って提供する、シェフという仕事と向き合う日々──。80歳になるまで、そんな10年間を過ごしていけたらと考えています。
四ツ谷「オテル・ドゥ・ミクニ」の壁に飾られている、1986年の三國シェフのポートレイト。三國シェフの当時の夢があと2年後に実現することになります
振り返れば、私が丸の内仲通りにレストランを構えることになったのは1999年のことでした。
もともと丸の内は日本屈指のビジネス街でしたが、オフィスワーカーがいなくなる週末ともなると街は静寂に包まれていました。そこで街のイメージを変え、新たな賑わいづくりに向けた再開発のプロジェクトが動き出したのです。その時、三菱地所さんより私に声が掛かりました。
私に与えられた最大のミッションは「銀座、有楽町から丸の内へ人の流れをつくること」。課題は、人々にどう馬場先通りを渡ってもらうか。馬場先通りの向こうにある私の店に人が集まれば、周辺にも他のお店を増やしていけるという“点から面へ広げる”仕掛けづくりを、丸の内再開発の黎明期に担うことになったのです。
そして、オープンさせたのが「ミクニズカフェ・マルノウチ」でした。
1999年12月にオープンした「ミクニズカフェ・マルノウチ」
お店のコンセプトは、“ファイブ・ミールズ”(朝食、昼食、カフェ、夕食、夜食)。朝から夜遅くまで営業し、時間帯によってそれぞれ異なる過ごし方が楽しめるお店にすることで、ワーカーから主婦の方まで、あらゆる方にご利用いただけることを目指しました。
特に画期的だったのは、パン工房を併設したことですね。当時、店内で焼き上げたパンを提供するお店はまだ少なかったため、外から見えるガラス張りのパン工房で、早朝から職人たちが生地を練り、窯に向かう光景は大きな話題を集めました。
また、お昼には、休みが1時間しかないOLさん向けに「クイックランチ」という40分の時間制のメニューを用意。ゆっくりランチを味わいたい方と急いで美味しいランチを楽しみたい方、いずれのニーズにも対応できるよう工夫したのです。
かくして、ミクニズカフェ・マルノウチは人気店となり、街の賑わいづくりの突破口になることができました。
丸の内エリア再開発といった時代の大きな流れの中で、街の文化が「食」から生み出されていくという“源流”がここにあったといっても過言ではありません。
写真はミクニズカフェ・マルノウチの地下1階にあった「レストランミクニ マルノウチ」。1階のイタリアンテイストのカフェに対し、こちらはフレンチレストランで、2軒が同時にオープンしたことも話題を集めました
現在の丸の内仲通りの風景。1999年に「ミクニズカフェ・マルノウチ」がオープンして以来、通り沿いには様々なお店が軒を連ねるようになり、多くの人で賑わうメインストリートとなりました
「ミクニズカフェ・マルノウチ」のオープンからちょうど10年後、2008年には「食育丸の内」プロジェクトが丸の内でスタートし、その活動の推進役として翌年に「丸の内シェフズクラブ」が誕生しました。
丸の内エリアを中心としたオーナーシェフらが集い、様々な「食」を通じた活動を行う「丸の内シェフズクラブ」は、社会性のある食育活動を通じて、街に豊かな時間や交流を生み出しました。また、料理人の可能性を広げ、チャレンジの場にもつながりましたね。
最も刺激的だったのは、料理のジャンルを超えたキッチンの交流です。当時はまだ異なる料理ジャンルのシェフが集まって1つのコースを作るという企画はとても珍しく、私にとっても新しい挑戦となりました。各料理によって火の扱い方や食材へのアプローチは異なるのですよね。それは我々としても学ぶところが多く、スタッフにも良い刺激となりました。そして、何よりお客様が面白がってくださったことが印象深く心に残っています。様々な角度から常識を覆す「そうきたか!」という演出をするのが私は大好きなのです。
そして、この丸の内シェフズクラブのコミュニティの強さは、東日本大震災の際に活かされます。これまでに育まれた地域との関係性や活動のノウハウで、「Rebirth東北フードプロジェクト」を立ち上げました。丸の内と東北のシェフや生産者らがタッグを組んで、東北食材のリブランドや商品開発など、復興支援を10年かけて行いましたね。
2018年には、クリスマスイルミネーションが輝く丸の内仲通りに、真っ白なテーブルクロスがなびく25mのロングテーブルを登場させ、皆さんを“あっ”と言わせたことも。この丸の内シェフズクラブ10周年記念イベントとして開催した「ロングテーブル“絆KIZUNA”」はとても印象的な企画でした。一般の方はもちろん、活動を通じてご縁のあった生産者の方々とテーブルを囲み、料理を振る舞いました。このイベントは私の発案したもので、当初は「車道にテーブル!?」と皆さん笑っていましたけれど、見事に実現しましたよね(笑)。
2018年11月8日開催の丸の内シェフズクラブ10周年記念イベント「ロングテーブル“絆KIZUNA”」の風景。丸の内シェフズクラブを代表する4名のシェフが、それまで食育活動の一環で訪れた各地域の食材を使った特別メニューを提供しました
丸の内シェフズクラブは、今年で13年。思った以上に良い形で活動が育ち、この次の10年も非常に楽しみに感じているところです。
正直言えば、最初は「3年持てば良いかな」と思っていました(笑)。ともすれば競争相手にもなり兼ねない同じエリアのシェフ同士が繋がって活動をともにするなど、あまりにも前例のない取り組みだったからです。その反面、前例ない取り組みだからこそ、試してみる価値があると感じましたね。
この街と出会って20年余り。今年、丸ビルも20周年を迎えましたね。
その間に「食」を通じて多くの人で賑わい、新たな活動が丸の内の文化として結びついていくということを目の当たりにすることができました。
丸の内が日本の食材・生産者さんと繋がりの深い街になってくれたことも嬉しい出来事の1つです。私はずっと以前から全国各地の産地をめぐり、日本の食材を使って料理を作ってきましたが、素晴らしい日本の「食」や生産者さんのことをもっと広く知ってほしいと考えていました。東京の人々に、地方と繋がることで自分たちの暮らしや「食」がどれほど豊かになるか、実際に体験していただきたい、と。
一方で、東京にも1万件以上の農家さんがいて、江戸東京野菜や東京野菜の価値にも気づいてほしいとも思っていました。東京の地産地消が進むと、消費者にとってはより新鮮な野菜を手に入れられますし、遠方から運ぶよりも輸送エネルギーを削減することができますよね。
そういった発信をする時にも、丸の内ほど最適な場所はありません。
東京駅の目の前に位置する丸の内は、東京の中心地。つまり、日本の中心地です。この街から発信すれば日本中、さらには世界へ広がっていく可能性があります。
今の丸の内は、丸の内シェフズクラブのメンバーのように一緒に街を盛り上げていこうという仲間が増え、アイデアもアクションも活発な街になりました。
文化の躍動が丸の内を魅力的に輝かせ、これからより多くの話題を発信し、人々の心をもっと動かす街に成長していくだろうと期待しています。
【PROFILE】
シェフ 三國清三/Kiyomi Mikuni
1954年北海道増毛町生まれ。15歳で料理人を志し、札幌グランドホテル、帝国ホテルを経て、1974年に駐スイス日本大使館料理長に就任。その後、ジラルデ、トロワグロ、アラン・シャペルなど、スイスとフランスの三ツ星レストランで8年間にわたって修業を重ねる。帰国後、1985年に東京・四ッ谷にオテル・ドゥ・ミクニをオープン。1999年には、東京・丸の内にミクニズカフェ・マルノウチ(2006年閉店)、2009年にはmikuni MARUNOUCHIをオープンさせる。2013年、フランスの食文化への功績が認められフランソワ・ラブレー大学にて名誉博士号を授与。2015年フランス共和国よりレジオン・ドヌール勲章シュバリエを受勲
日々の“食”から未来へのアクションを考える「SUSTABLE(サステ―ブル)2022」。
第6回は、未利用魚の有効活用を題材に、2名のゲストとともに水産業の持続可能性について考えました。
【第6回ゲスト(順不同)】
◆ 但馬漁業協同組合 参与 丸山和彦氏
◆ 恵比寿 笹岡 主人 笹岡隆次氏
まずは、但馬漁業協同組合(以下「但馬漁協」)の丸山和彦氏より、但馬漁業の特徴についてお話しいただきました。
但馬漁協の活動拠点は、日本海に面する兵庫県の北部。但馬漁協はこの地で底曳網漁を中心とした沖合漁業を展開しており、松葉ガニや甘エビのほか、白エビ、ノドグロ、ホタルイカ、ハタハタ、アナゴなど、、、様々な魚種が水揚げされています。なかでもハタハタやホタルイカの漁獲量は実は兵庫県が日本一なのだとか。
「底曳網はその名前の通り、網を海底に向かって打って時間をかけて引き上げるという漁法。水深100mから800m程度のところに、1,000mから2,000mもの長さのロープ網を打った後は、3時間くらいかけて引っ張り上げます。魚が獲れたら、船の上で船員が魚種別・サイズ別に選別をして梱包。時間があれば途中、仮眠や休憩を取りつつ、この作業を3〜5日船上で繰り返すという、かなり過酷な漁業なんです」と丸山氏。
但馬漁業協同組合 丸山参与
但馬の漁業では、水産業を持続可能にしていくために、様々な取組みを実践されています。その1つが、水産資源保護を目的とした休漁期間の設定。
「例えばベニズワイガニのカゴ漁業では、6月から8月は休漁期間としています。規制上は、本来6月は漁に出ても構わないのですが、資源管理のために漁師さんが自主的に休業しています。また水深1,700m以下の深い部分には稚ガニが多数生息しているので、そこでは漁をしないようにしたり、カゴに小さなカニが逃げられるような脱出リングをつけたりしています」と丸山氏。年々水産資源が減少していることを間近で感じているからこそ、それらを守るために何年も前から漁師さんが自発的な努力を重ねていると言います。
また、持続的な水産業を考える上で見過ごすことができないのが、漁業従事者の減少問題。
「高齢化や後継者不足により、漁業従事者が不足しています。解決策として、インドネシアなどの外国人実習生の力を借りていますが、船の老朽化とともに廃業する漁師さんもおられます」と丸山氏。平成19年には約1,800人もいた組合員ですが、毎年約2〜3%の漁師さんが廃業していく状況が続いていることや、但馬の漁獲量も年々減っていることを、丸山氏は様々なグラフを用いて説明しました。
そのほか、外国船による違法乱獲や地球温暖化による水温の上昇なども、水産資源を枯渇させる原因となっているそう。そのような状況で、持続可能な水産業を実現するために、但馬の漁業では禁漁期間設定のほかにも「稚魚の再放流」、「底引網の網目の拡張」、そして「休漁期間中の海底清掃」などに取り組んできました。
但馬の海を守る活動について説明する丸山氏
そして、水産業の持続可能性を高める但馬漁協の取り組みとして近年注目を浴びているのが、「未利用魚の有効活用」。
「未利用魚」とは、漁獲されても、知名度の低さや大きさ(小さすぎる等)の問題で市場での取引対象にならない魚のことで、その多くが破棄されているのが現状です。つまり、「未利用魚」は水産資源の大きなロスであり、なおかつ漁師の収入にもならないという問題を抱えています。丸山氏によると未利用魚は全漁獲量の約3割を占めるそう。網目の拡張など小さい魚を漁獲しない工夫を施しても、このような問題が発生してしまうということに会場からは驚きの声も。
この問題を前に丸山氏は、市場で買い手がいないなら、漁協が買おうと決心。漁協内に新たに企画流通部門を立ち上げ、未利用魚の商品開発や流通販促に着手しました。「未利用魚に値段が付くことで、漁師の収入が向上する。それ少しでも漁業を続けてくれる人が増えたらとの想いでした」と丸山氏。
未利用業の商品化について語る丸山氏
但馬漁協が手始めに企画した商品は、未利用魚を用いた「魚醤」。地元の醤油蔵とともに開発に取り組みました。1年かけてじっくりと醸造、発酵させた魚醤シリーズは、今では7種にもなり、人気商品のひとつとなっているそうです。続いて、海苔の生産全国2位という兵庫県の地位を生かし、魚醤を使った味付け海苔や佃煮を商品化。そのほか、地元の水産高校の生徒とともに、缶詰の「のどぐろ飯」を開発し、備蓄品としても活用されているそうです。
このようにして但馬漁協は、廃棄されていた未利用魚を商品化することで付加価値をつけ、海のフードロスを削減すると同時に漁師の収入向上を実現しています。
但馬漁協が展開する未利用魚の商品
「現在こうして商品化できているのは未利用魚全体の1%だけ。持続可能な漁業の実現のためにはまだまだ規模が小さいので、今後も継続的に調査や研究に取り組んでいきたい」と丸山氏は今後の意気込みを語りました。
その頃、会場に漂ってきたのはお出汁の良い香り。お楽しみの試食の時間です。
今回は、丸の内シェフズクラブのメンバーでもあり、新丸の内ビルにも店舗を構える「恵比寿 笹岡」の笹岡隆次氏に、未利用魚となった“ニギス”を使ってお食事をご用意いただきました。
●メニュー
ニギス有馬煮
茄子オランダ煮
千切り野菜のおひたし
ニギス時雨煮
キノコの炊き込みご飯
お味噌汁
小ささが原因で未利用魚となったニギス。笹岡氏の手により、実山椒とともに甘辛く煮詰めた“有馬煮”と、頭と内臓をとって生姜と炊いてすりつぶし“時雨煮”という素敵な2品に仕上がりました。
「イベント前に数種類の未利用魚を送っていただいたのですが、今回はニギスを使用しました。未利用魚が届いた時は、“ええ!結構大きいけど、未利用魚になってしまうの??”と少し驚きましたが、確かに一般的なニギスは、二回りほど大きいので、市場に乗らないラインがこのサイズなんでしょう」と笹岡氏。
未利用魚を手に取ったときの感想を話す笹岡氏
実際、仕込んでみると魚体が小さいことでとても扱いづらく、捌くと身として残る部分はわずか。「笹岡」の料理人の皆様が苦労して仕込んでくれたそうです。
そんな笹岡氏の苦労話に丸山氏も、「そうなんです。未利用魚は加工処理が本当に大変。今年も未利用魚を購入して組合の加工場でドレス処理をしましたが、全て手作業なので、加工賃が高くついてしまうことも課題の1つです」と添え、未利用魚を商品化することの難しさを伝えました。加工場を探すことも、6次産業化の難しさの1つであると丸山氏は話します。
会場参加者のテーブル
続いて、話題は笹岡氏と兵庫県の食材とのつながりに。
過去に兵庫県へ食材探しの旅で訪れたことがあるという笹岡氏。その際に但馬漁協を訪問したこともあるそうです。「兵庫県には日本海も瀬戸内海もありますね。どの漁場も素晴らしかった。但馬漁協さんではカニを食べさせていただきましたが、本当にびっくりするくらい甘くて、とても印象に残っています」と当時を振り返ります。
「ただ、そのカニも年々漁獲量が減少していて、今年の冬はかなり値段が高騰しそうです」と丸山氏。水産業界が抱える問題をここでも伺い知ることができました。
水産業界の変化については、全国各地の生産者とつながる笹岡氏の元にも、様々な声が届いているようです。
「どこの産地も、『海の環境が変わった』と仰います。今まで獲れなかったはずの魚が獲れるようになったと。例えば福島沖で、暖かい場所でしが獲れないはずのサワラが揚がるようになったり、羅臼の鮭の定置網にブリが入り始めたり」と笹岡氏。水温上昇は丸山氏も日々感じているようで、但馬でも8月になると30度超えることもあると応じました。
私たちの活動が引き起こした気候変動が、魚の生態系を変えていること、そして水産業にも大きな影響を与えていることがわかります。
実は、昨年から始まったSUSTABLE全12回の中で、和食の店舗を構えるシェフをお招きしたのは今回が初めて。笹岡氏に「和食」について伺いました。
笹岡氏は、「旬を生かし、素材を無駄なく使い尽くす和食は、今後も残していくべき文化です」と伝えた上で、「日本人のライフスタイルの変化に伴って、今では和食は手のかかるイメージから敬遠される傾向があるのかもしれません。料理人の世界でも、和食を志す若者は減少しているようです。お店で和食の魅力を伝えるだけでなく、こういった機会に和食の良さを伝えていくのも僕たちの役割ですね」と話してくれました。心温まる一汁三菜を頂いたあとの笹岡氏の言葉は会場参加者の胸に響きます。
会を締めくくるクロージングトークでは、お二人に今後の展望を伺いました。
丸山氏は、「働き盛りで料理に時間を割けない方や高齢者でも、手軽に美味しく魚を食べていただけるような商品開発を進めていきたいです。これからも「無添加」と「おいしさ」にこだわっていきたい。ライフスタイルの変化を捉え、電子レンジでも焼きたてのお魚の味が再現できるような商品を、今後展開できたらと思っています」と今後の6次産業化への意気込みを力強く話しました。魚に付加価値を与え、漁業従事者の環境改善につなげようとする丸山氏の意欲と活動が、水産業界の大きな活力となっていることを伺い知ることができました。
続いて笹岡氏は、「これからの料理人は、料理に根底にある食材のバックグラウンドや物語を知り、お客さんに伝えていくことが大事だと思います。今回の但馬漁協さんのお魚や魚醤も同じ。丸山さんの取り組みを知る前と後とでは、食材と向き合う時の気持ちが違うはずです」と、消費者と生産者を繋ぐ料理人として果たすべき役割についてお話し下さいました。
食の「作り手」である生産者と「使い手」である料理人との対談から、海の変化や水産業が抱える課題について学ぶことができました。「食べ手」である私たち消費者のどんなアクションが、未来の水産業を支えることに繋がるでしょうか。
SUSTABLEは、みんなが未来について考えるきっかけを提供する場所。今年度を締めくくる最終回でも、お二人のゲストがたくさんのヒントを与えてくれました。
SUSTABLE 2022 第6回「未利用魚の有効活用」実施概要
【開催日時】2022年10月27日(木)18:30〜20:00(開場18:00)
【開催場所】MY Shokudo Hall&Kitchen(東京都千代田区大手町2-6-4 TOKYO TORCH 常盤橋タワー3F)
【出演者(順不同)】但馬漁業協同組合 参与 丸山和彦氏、恵比寿 笹岡 主人 笹岡隆次氏
【定員】会場参加30名/オンライン参加500名
【参加費】会場参加1,000円/オンライン参加 無料
【主催】大丸有SDGs ACT5実行委員会/三菱地所株式会社 EAT&LEAD
転載元:「大丸有SDGs ACT5」記事
https://act-5.jp/act/report_miriyougyo/
※大手町・丸の内・有楽町地区(大丸有エリア)を起点にSDGs達成に向けた活動を推進する「大丸有SDGs ACT5」の活動については、WEBサイト(https://act-5.jp/)をご覧ください。