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女性たちの課題を“見える化”する産学医連携プロジェクト「働く女性 健康スコア」発表会2023

毎年3月8日は、女性の権利、政治・経済分野への参加を推進するために、1977年の国連総会で議決された「国際女性デー」です。働く女性の未来の姿に寄り添うプロジェクト「Will Conscious Marunouchi」にとっても大切なこの記念日に、今年は「働く女性 健康スコア」発表会2023を開催しました。

まるのうち保健室「働く女性 健康スコア」は、株式会社ファムメディコとともに取り組む、女性特有の健康課題を“見える化”する産学医連携プロジェクトです。調査方法は、神奈川県立保健福祉大学の協力のもと、疫学調査をベースとした調査項目を開発し、アンケートを作成。今回はトライアル版として、参画企業14社・約3,400名の働く女性たちにアンケートにご回答いただき、データ集計した結果を発表しました。

イベント第1部「働く女性 健康スコア」の結果発表の後、第2部には特別ゲスト・庄司智春さんと藤本美貴さんご夫婦がご登場。お互いに支え合いながら仕事と子育てに励むご夫婦、それぞれの立場から女性の健康課題について考えるトークセッションを行いました。

「働く女性 健康スコア」発表会2023のレポートをお届けします。

第1部:約3,400名の女性のアンケート調査
「働く女性 健康スコア」の結果発表


三菱地所株式会社 エリアマネジメント企画部 部長 服部謙一の挨拶にて開会いたしました。

「働く女性 健康スコア」発表会2023はオンライン配信とメディア発表のハイブリット型で開催され、会場には多数のカメラと記者の方々で賑わっていました。

イベント第1部は「働く女性 健康スコア」の結果発表。
3名の登壇者の発表を、順を追ってご紹介していきます。

【はじめに】「働く女性 健康スコア」の背景と取り組みについて
──井上友美(三菱地所株式会社 エリアマネジメント企画部 まるのうち保健室プロデューサー)


まるのうち保健室は、「女性たちの働きやすい文化醸成」をテーマに掲げ、「個人」「コミュニティ(企業・アカデミア)」「社会」という3つの視点で活動を展開しています。中でも、今回の「働く女性 健康スコア」は、企業の皆様と連携しながら行う「コミュニティ」におけるプロジェクトです。これまでのような男女画一的な調査では把握しづらかった女性特有の健康課題などの領域を“見える化”していこうという取り組みになります。

ちょうど1年前の国際女性デーには、「働く女性ウェルネス白書2022」を発表しました。都心で働く女性たちの健康実態・就労環境などの調査結果をまとめた白書です。今年の「働く女性 健康スコア」はウェルネス白書の結果を踏まえ、そこから生み出した5つのセクションから構成されています。

「働く女性 健康スコア」を構成する5つのセクション
●女性特有の健康課題 ●ヘルスリテラシー ●セルフケア ●就労環境 ●生活環境

また、健康スコアは<設計→アンケート→分析→企業フィードバック>が⼀環となり、企業ごとの課題抽出ツールとして開発されています。今回は14社、3,425名の女性に回答していただきましたが、ご参画の企業様には個別に結果のフィードバックを行ったほか、各社が集まって課題を共有し、解決策をディスカッションするワーキングを開催しました(開催レポートはこちら)。女性たちの声をきっかけに、新たな施策や制度導入など、企業のアクションにつながるような仕掛けづくりを目指して推進しています。

今回の参画企業の中から新制度導入に至った事例紹介
●株式会社アイスタイル
福利厚生サービスに「経腟エコー検査」を新たに導入
●株式会社クリーク・アンド・リバー社
女性に多いがん検診(子宮・乳房)の健診基本項目への組み込み
●三菱地所株式会社
不妊治療・PMS治療の費用補助導入 ※上限あり


【メインテーマ】働く女性 健康スコア」の結果発表
──吉田穂波先生(神奈川県立保健福祉大学大学院 ヘルスイノベーション研究科教授)

「働く女性 健康スコア」は、今まで評価されてこなかったことを可視化する、大きな価値のある取り組みです。今後の課題解決につながるヒントとなるような結果を得られましたので、広くご活用いただければと思います。

「女性特有の健康課題」や「ヘルスリテラシー」に関しては、月経困難症、PMS、更年期症状を感じている人の割合が非常に高く、もはや“誰でも持っているのが当たり前”になっていることがわかりました。また、「知識がある」割合に対して「対処している」人の割合がぐっと下がっている点も注目べきところです。

また、婦人科の受診経験がある人は、全体の85%でした(疾患あり・疾患なし)。ただ、疾患なく婦人科を受診する人、ここに検査や女性特有の症状に対処する目的の人が含まれると思いますが、どの年代も半数以下という低い割合になりました。

経腟超音波(エコー)検査の実施率は、全体平均71%でした。経腟エコーは婦人科疾患の発見には欠かせない検査で、昨年に実施した「働く女性ウェルネス白書2022」調査では、子宮筋腫、卵巣嚢腫などの婦人科疾患が4人に1人の割合で見つかりました。「自社の健診で補助の対象になっているかわからない」と回答した人も多くいましたが、企業にはぜひ補助制度を導入していただきたい大切な検査です。

低用量ピルの服用率は、全国平均の約5倍にあたる約15%。都心部で働く女性には低用量ピルが広がりつつあり、避妊薬としてではなく「ヘルスケア」の目的で服用している人が多いこともわかります。さらに、日頃からピルで不調を緩和している女性の方が、仕事への満足度、昇進意向、やりがいを感じているということも明らかになりました。

「子供を持つこと」に関する調査では、将来的に子供を持ちたいと思いながらも、悩みや不安を抱えている人が多いことがわかりました。また、不妊治療の経験・予定者、卵子凍結に関心を持っている人も多く、それぞれの女性が妊娠できるタイミングに対応できる制度づくりの大切さを再認識する結果でした。

また「男性社員の理解度」は、A社では70%、B社は23%など企業差が非常に大きくなりました。さらに分析したところ、「上司や男性社員から理解されていると感じている」「職場の雰囲気が良好」という女性ほど、月経困難症やPMS、更年期症状が緩和するという驚くべき結果が出ました。また、更年期女性にターゲット絞って解析したデータも同様の結果に。病院が出す処方箋ではカバーしきれない勤務環境や、受け止めてくれる人々の存在感が社会的な処方箋となって、症状の緩和、ストレス軽減につながるようです。


【講評】結果から見えてくること
──吉村泰典先生(慶應義塾大学 医学部 名誉教授、元日本産科婦人科学会 理事長)

本日発表された「働く女性 健康スコア」から3つの点に注目しました。

1つ目は、女性のヘルスリテラシーの問題です。今回は都市部の企業を対象にした調査ですが、全体的にリテラシーが高いとはいえない結果で、地方の企業ともなればより低いことが予想されます。たとえば、大多数の人が月経困難症を感じながら、約4分の1の人しか対処していません。今回、参画された企業の方々には女性従業員のリテラシー向上に取り組んでいただき、他の企業にも良い影響を広げてもらえたらと期待しています。

2つ目は、就労環境は全体的に良いのではないかということです。女性の健診項目の見直し、不妊治療の費用補助などの制度があると、女性たちが自らの健康課題を考え、知るきっかけになります。女性のヘルスリテラシー向上のため、ひとりひとりの意識を変えるには、企業や社会のサポートが必要です。制度づくりは企業によって差があることも見えてきましたが、たとえば「健康スコア」を導入するだけでも第一歩になると思います。

3つ目は、男性の理解について。特に経営者・管理職の男性に、女性の健康へ理解を深めていただくと企業の生産性が向上するという点でも重要ですし、企業価値を高めることにつながります。ご存知の方も多いと思いますが、月経困難症による経済損失は5,000億円とも言われています。これまで、社会や企業が女性の健康をサポートすることは余計なコストと捉えられてきましたが、これは人的資本への投資です。経営戦略として、企業が女性の健康に取り組む時代になったのではないでしょうか。

>>イベント第1部の発表資料「働く女性 健康スコア」のダウンロードはこちら
※グラフ等のデータ、吉村先生のコメント全文も掲載しています。

第2部:特別ゲスト・庄司智春さん、藤本美貴さん
働く女性 トークセッション

第2部のトークセッションは、庄司智春さん・藤本美貴さんが「夫婦で登場する機会は少ないので、嬉しいけど恥ずかしい」とお互いに照れながら、まるで結婚式の入場のように並んで歩いてくるシーンから幕を開けました。

登壇者は、特別ゲストの庄司智春さん・藤本美貴さんご夫婦のほか、井上友美(三菱地所株式会社 エリアマネジメント企画部 まるのうち保健室プロデューサー)、浜中聡子先生(クレアージュ東京 レディースドッククリニック 総院長)の4名。トークテーマは「自分らしく働き続けるための、私のためのセルフケア、周囲へのサポート」です。

最初に、本日のテーマ・働く女性の健康課題について問われると、「うちは夫婦間のコミュニケーションが多い方なので、健康面についてもよく話します」と、庄司さん。「僕は現在47歳なんですが、この世代の男性って女性の問題に踏み込むと気持ち悪いと言われそうと思うところがあって、昔は距離をおいていました。でも、結婚して14年、いろんな話をしているうちに、今ではきちんと美貴さんの身体を労われるようになりました」と言います。

一方、「女性同士でも口に出してもらえないとわからないので、男性はもっと難しいだろうと思います」と話す、藤本さん。「私もモーニング娘。にいた時、十何人も女の子がいると『あの子、なんだか機嫌悪いな』と思うことありましたけど、後で『そういうことだったんだ』って気づきました」と言いますが、女性同士でもわからないとは一体なぜでしょうか? 浜中先生が回答してくれました。

「生理は、誰にでもあるのが当たり前。だからこそ、生理を理由とした体調不良は口に出さない人が多く、自分で何とかしようとする傾向が強くあります。でも、生理痛にも別の病気が隠れている可能性がありますし、もっと気軽に婦人科を受診していただきたいですね。また、庄司さんがおっしゃったように、世代的に女性の問題に踏み込みにくい男性は非常に多くいます。そういう人は、まず正しい知識を持っていただくことが大切です。もし体調不良に悩む女性がいたら手を差し伸べて、正しいアプローチができるように社会全体の認知を広げていただきたいと思います」(浜中先生)

「まるで僕が男性代表みたいな言い方になりますけど、男性のスペックとして女性への知識は持っておいた方がいいですよね。モテることもありますし(笑)、人としての信頼度も高くなる。うちでは日頃から本当に小さなことでも話すようにしていますが、これから男性は女性への踏み込み方をマナー?というかスペックとして持ち合わせたほうがいいと思います」(庄司さん)

確かに男性の理解も重要ですが、女性たちも自分事として“セルフケア”を意識してほしいところです。藤本さんに聞けば、「私は若い頃から過度のダイエットもしたことがないですし、生理痛も少ない方なので婦人科の病気の知識はあまりない」と言います。でも「美容院に行くくらいの感覚で、かかりつけの婦人科を持っておくと安心すよね」とも。

「女性のセルフケアとしては、まずは低用量ピルのことを知っていただきたいです」。そう話す浜中先生は、ピルは“低用量の女性ホルモン”だと理解するのがいい、と続けます。「ピルは避妊薬というよりも、月経困難症を緩和するなど、ホルモンバランスの乱れを改善してくれる治療薬です。女性は11~13歳くらいで初潮がきて、思春期を迎え、やがて妊娠・出産というイベントがあります。40代の半ばからは更年期に入っていきますが、女性の人生は常に女性ホルモンの影響を受けています。だからこそ、人生のどのタイミングでも『女性ホルモンのバランスが年齢相応であること』が大切です。女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンの2種類がありますが、病院で分泌量を測定して、必要なら最低限の量を補充して体調を整えることもできます」(浜中先生)

「女性ホルモンが2種類あることも知らなかったですし、量を測定できることも初めて知りました」(藤本さん)

そして話題は、女性ホルモンから男性ホルモンへ。「男性も男性ホルモンが減少して、更年期症状が出る人がいます。男性の場合も分泌量を測り、必要な方には補充します。通常の人間ドックは生活習慣病やがんの検査が中心で、ホルモン量まで調べることはありませんが、たとえば奥さまの誕生日には2人で検査を受けるなどルールを決めて、定期的に夫婦で一緒に受けていくこともおすすめです。毎年の検査データを蓄積して、総合的に判断できる仕組みをつくっておくと今後のためにいいと思います」(浜中先生)

そして、トークセッションはいよいよ終了へ。
最後に、お二人はこのようなコメントをくれました。

「私も妊娠・出産を経験していますが、その経験の中では全く知り得なかったことを聞けました。ママ友とももっと気軽に話したいですし、みんなに教えてあげたいと思いました」(藤本さん)

「夫婦の会話の中で『私がイライラしている時も、すべて受け止めてよね』とか言われることもあるんですよ。今度からは、証拠としてホルモン数値を見せてもらおうかな(笑)。でも、これからもずっと一緒に生きていくのだから、仕事もプライベートもサポートし合っていけたらと思います」(庄司さん)

「働く女性 健康スコア」発表会 2023 開催概要

【日時】 2023年3月8日(水)10:30〜11:30
【共催】三菱地所株式会社 、株式会社ファムメディコ
【協力】神奈川県立保健福祉大学、クレアージュ東京 レディースドッククリニック
【スコア参画企業】アンファー株式会社、株式会社アイスタイル、株式会社 クリーク・アンド・リバー社、東京海上日動火災保険株式会社、東京産業株式会社、日本事務機器健康保険組合、株式会社丸ノ内ホテル、三菱地所株式会社、三菱地所プロパティマネジメント株式会社、三菱地所 リアルエステート株式会社、株式会社ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツ(五十音順、他 3社)

>>「働く女性 健康スコア」資料のダウンロード
https://shokumaru.jp/wcm/report2023/

>>プレスリリースのダウンロード
https://shokumaru.jp/wp/wp-content/uploads/2023/03/9d187c0b7af791fca2bfc34ab975d5ef.pdf

>>イベントアーカイブ映像の配信
第一部「働く女性 健康スコア」発表会のみご視聴可能です。
https://www.youtube.com/live/zR6fYqCIH20?feature=share

 

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