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私と向き合う時間 2024 Vol.2【ゲスト:シオリーヌさん】開催レポート

 1月16日(木)、私と向き合う時間「自分たちで選びとる妊活のかたち〜助産師YouTuberと考えよう〜」を開催しました。ゲストは助産師であり、性教育YouTuberとして活動するシオリーヌさんです。

 「たとえば学校の性教育って、予期せぬ妊娠や避妊については取り上げるのに、“子どもが欲しいと思った時に何をすればいいのか”は教えてくれないですよね。そんなふうに教育を受ける機会が少ないのが問題だと思うんです」。そう話す、シオリーヌさんはまるで友達のように、ときに先生のように、参加者から寄せられた「妊活」の問いや悩みにアドバイスをしていきました。

 妊活という難しいテーマながら、シオリーヌさんの明るいキャラクターと軽妙な語り口も相まり、終始なごやかな雰囲気で進行した「私と向き合う時間2024 Vol.2」。開催レポートをお届けします。

シオリーヌさんのほかには2名が登壇。左はファシリテーターの平井莉生さん(FIUME Inc.代表/ライター)、右はWill Conscious Marunouchiプロデューサーの井上友美
「私と向き合う時間」は、ハーブティーとお菓子をいただきながら“対話”を楽しむイベントです。今回は、浜松市「Basil House」のホーリーバジルティー、世田谷区「アラスカ ツヴァイ」の生姜のスコーン 柚子ジャムをご用意

シオリーヌさんの自己紹介

 初めにシオリーヌさんが自己紹介を行いました。

 シオリーヌさんは、助産師、看護師、保健師のほか、受胎調節実地指導員、思春期保険相談士の有資格者。神奈川県立保健福祉大学卒業後、総合病院の産婦人科、精神科 児童思春期病棟に勤務した経験があるといいます。一方で、2017年に性教育の講師活動を、2019年にYouTubeにて動画投稿を開始したそうです。チャンネル登録者数は17.6万人(2025年1月現在)。

>>世の中は、性教育が足りていない。だから、YouTuberになりました。

シオリーヌさん:産婦人科で助産師として働いていた時、様々な患者さんとお会いする中で性教育の必要性を実感することが多くありました。そこで、性に関する情報発信をすることにしたんです。初めの頃はYouTubeのチャンネルで講演活動をしていたんですけど、1回限りの講義では伝えられることにも限界がありますし、性に関する情報はやっぱり若い世代にも広げていきたいという思いが募ってきたので、2019年の2月に「性教育YouTuber シオリーヌ」という名で動画配信を始めました。

 初期の頃は、「コンドームの使い方」「妊娠の仕組み」「おりものってなんだろう」といった学校では教えてくれないけど知っておきたい身近な性の知識を伝える動画を上げていたんですが、今は妊活のこと、妊娠や出産、子育てのことなど、自分の日常生活を発信しています。私の日常生活の中から性に関する情報を受け取っていただくこともできますし、ご自身のライフスタイルを見つめるきっかけになってもらえたら嬉しいな、と思って取り組んでいます。

著書も多数あるシオリーヌさん。『CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識』(イースト・プレス)、『こどもジェンダー』(ワニブックス)、『やらねばならぬとおもいつつ〈超初級〉性教育サポートBOOK』(ハガツサブックス)ほか

参加者の声に応えるトークタイム

これよりトークタイムの開始です。 トークテーマは、妊活にまつわる質問や悩みなど、事前に参加者の皆さんから集めた声の数々。スクリーンに投影しながら、シオリーヌさんに話をお聞きしました。

参加者の声はすべてテーブルの上に並べられ、自由に見ることができました
妊活を検討中の人からすでに取り組んでいる人まで、段階に応じて異なる質問・悩みが寄せられました

【トークテーマ1】妊活の始め方

【参加者の声】

  • 子どもを持つ選択肢を考え始めたばかりで、何から始めればよいかわかりません。
  • 将来妊活を考えているが、自然分娩か無痛分娩か、里帰り出産するか、産婦人科はどこがいいのか等、調べても情報が多すぎて不安になる。

>>妊活の第一歩は、婦人科を受診すること。そして、かかりつけ医を見つけることです。

シオリーヌさん:妊活を考え始めたら、まずは婦人科に足を運び、妊活検査を受けるのがおすすめです。今すぐ妊活を始めなくても、検査で身体の状況を知っておくと、「何歳頃の出産を目指そう」とか、先の行動計画を立てる上で役立つ情報にもなります。中には自分なりのやり方で妊活を始めて、1年、2年経っても自然妊娠しなかったので検査を受けたら原因がわかり、時間を無駄にした、と後悔する方も多くいらっしゃるんです。

 そんな私も妊活経験者です。30歳までに子どもがほしかったので、最初に検査に行ったんですけど、そこでPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)という排卵しにくい疾患があることがわかりました。だから、私の妊活は最初から病院通いすることになったんですが、早いうちに検査を受けておいて良かったと心底思いました。

シオリーヌさん:あと、かかりつけの婦人科を見つけることも大切ですよね。1軒目の病院で先生と話してみて、もし相性が悪いなと感じたら、いろんな病院をくるくるとめぐっていただいても全然良いと思います。先生は、自分の大事な治療を任せる人。でも、いろんなタイプの人がいて、自分と合わない人もいるのは当然です。

 検査を受けた後に、転院することだって可能です。紹介状を書いてもらえば、すでに受けた検査を転院先では行わずに済む場合もあると思います。「転院するのは申し訳ない気がする」なんて声も聞きますが、医療者にとってはよくある話なので気にしなくて大丈夫。ほかの先生の意見も聞いてみたい、別の治療方針を相談したいなど、転院したい理由を堂々と伝えて「紹介状を書いてください」とはっきり言っていただいて全く問題ありません。

【トークテーマ2】妊活と仕事の両立

【参加者の声】

  • 妊活をどの程度職場の人に開示するのか
  • まさに妊活中で、在宅ワークの合間を縫って治療に通い続けることができましたが、フル出社する方針へ変更されてしまい、今後どのように妊活を続けられるか不安があります

>>周囲と連携しながら、自分が過ごしやすい状況をつくることを目指して。

シオリーヌさん:妊活をしていると、急に「明日病院に来てください」と連絡が来て、仕事があるのにどうして?なんて思うこともありますよね。私は自分の妊活のプロセスをすべて動画にあげていたんですが、仕事との両立に悩んでいるという方からのコメントは本当にたくさんいただきました。でも、皆さんの声を聞いていて感じたことは、正解はない、ということです。職場の人との関係性、職場の雰囲気など人それぞれ事情が違うので、ご自身で答えを出していただくしかないのです。ただ、1つ言えることは「自分の過ごしやすさ」を第一に考えて良いのではないかな、と感じています。

 妊活していると話せば気を遣わせるから、と周囲へ配慮して言えない方もいらっしゃいますが、マネジメント側の人にとっては急に休まれるより、事前に知っておけばフォローできる環境を作ったり、対策につなげられる可能性もありますよね。
 もちろんプライベートなことなので、言いたくなければ無理に言う必要はありませんが、開示した方が働きやすくなるのではないか、近くに理解者がいると安心ではないか、と思うのであれば話をするのも1つの手だと思います。直属の上司ではなく人事部に話せば、会社の制度を教えてくれる場合もあるかもしれませんし。一人で抱え込まずに頼れるものにはどんどん頼って、自分の過ごしやすい環境を手に入れていただくといいかなと思います。

シオリーヌさん:職場の問題だけでなく、夫婦で妊活に対する温度感が違うという悩みを抱えている方も多くいますよね。通院や服薬など、どうしても女性側に負担が偏るので仕方のない部分もあるのかもしれませんが、妊活を始める時に、自分はどれほどの熱量で子どもが欲しいと思っているのかをきちんとお話をしておくと良いと思います。

 私も最初に、どこまで治療しますか、という話をパートナーとしたんです。人工受精でできなかったらやめますか、それとも体外受精までステップアップしますか、体外受精をやる場合は何回までやりますか、そういった具体的な目標を決めてから治療を始めました。おかげで、私は大きなすれ違いを感じずに済みましたが、もし妊活が始まってから途中でお互いに気持ちが変わることがあればもう一度きちんと話せば良いだけです。話し合うことって、自分の気持ちも疲れるし、頭も使うし、時間も必要だし、気苦労もある行為なんですけど、お互いに面倒くさがらずに向き合うことで夫婦関係も良好でいられると思います。

途中で10分間のグループワークを実施。同じテーブルの人同士、自身の妊活の状況や妊活にまつわる疑問など、自由に会話しました
グループワーク中は登壇者が各テーブルをまわりました。初めは緊張感があったのに、話し始めると止まらなくなったテーブルが多数
シオリーヌさんもいくつかのテーブルをまわって、質問に答えたり、参加者の体験談に耳を傾けました

【トークテーマ3】情報と上手く付き合う

【参加者の声】

  • 不妊治療中で次が三度目の移植です。冷え性を治したいのですが、何からやったらいいのかわからない&腰が重くてなかなか取り組めません。
  • 子どもは欲しいものの、高齢出産に対する各種リスクに対する不安があります。 

>>情報や知識は、自分が後悔しないための材料。材料をたくさん集めて、選択しましょう。

シオリーヌさん:「冷え性を治したいけど、腰が重くてなかなか取り組めない」というお声がありますが、それなら無理して取り組む必要はないかな、と思います。「温めましょう」は科学的に根拠のある情報かわかっていないところもあって、産婦人科医の先生の中には重要視していない方もいらっしゃいますし、子宮ってお腹の真ん中にある臓器で、比較的冷えにくい場所にあるんですよ。

 妊娠という現象は、必ずしも努力が報われるわけではなかったり、予期せず妊娠したり、なかなか思い通りになるものではないなと実感しています。だから、リフレッシュできたり、リラックスできたり、自分の気持ちがポジティブになれるケアは積極的に取り入れていただきたいのですが、「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」が募り、どんどんプレッシャーが増していくと心が疲れてしまうので、無理せずに、身体だけでなく心もしっかりとケアしていただきたいと思います。

 また、出産年齢については、確かに35歳を超えると、高血圧のリスが上がる、妊娠合併症の件数が増えるといった事実はあります。でも、リスクを恐れて子どもを諦めることがベストな答えなのかはご自身で決めていただくしかないことなので、まずはその選択をするための材料を揃えていただくといいのかなと思います。たとえば、出生前診断をするのはどうかなど、自分でいろいろと調べても良いですし、経験者の話をいっぱい聞いたり、病院の先生にとことん聞くのも良いですし。広く情報を集めて、今の自分にはどういう選択肢があり、その選択の先にはどういう未来が待っているのかをよく考えて、ぜひ後悔のない選択をしていただきたいなと思います。

【トークテーマ4】妊活をどう乗り越える

【参加者の声】

  • 妊活がなかなかうまくいきません。悪い意味で何事も頑張ってしまう(欲の手離れができない)性格のため、仕事も遊びもセーブできず、どちらも中途半端になってしまっていることで自責の念に駆られます。どのように気持ちの整理をつけていけば良いでしょうか。
  • 不妊治療のクリニックに通って1年と少し。2回連続で流産をしました。最初は気楽な気持ちで始めた病院通いでしたが、自然妊娠できている友人に話すと惨めな気持ちになり、不妊治療を経験している友達も治療の程度に差があり。夫以外に不妊治療のことを話せる人がいなくて、八方塞がりな気持ちになっている。

>>マイペースを心がけて。自分の中できちんと納得できた時に、一歩前へ進めると思います。

シオリーヌさん:「仕事も遊びもセーブできず、どちらも中途半端」と書いてくださった方がいますが、「 中途半端な妊活」なんてないと思います。逆に、日常生活に全力で気を配り、できる治療をすべてやり、妊活をフルコミットしている、というのが”完璧”なんでしょうか。自分が納得できる形で、心地いい温度感で取り組めていれば、それがその人にとっての正しい妊活だと思います。

 「妊娠できた友達に話すと惨めな気持ちになったり、夫以外に話せる人がいない」というお気持ちを書いてくださっている方もあまり焦らないでください。妊活の状況が自分と全く同じ人は絶対にいませんし、身体のことも、仕事の問題やパートナーの価値観なども、自分にしかわからないものです。だから、もし突き放されたように聞こえたら申し訳ないのですが、自分の妊活を他人と100%分かち合うことは難しいと思います。他人と比べても仕方ない、と考えられるようになれば少し楽になると思いますし、何よりも自分が納得できる状況をつくることが一番大切です。

 あと、おすすめしたいのがカウンセリングです。カウンセラーさんがいる不妊治療クリニックもありますが、カウンセリングって誰でも気軽に利用していいものなんです。家族でも友達でもない第三者のカウンセラーさんに話を聞いてもらうと、モヤモヤした気持ちを整理できたり、自分の気持ちに名前をつけてもらってホッとしたり、とってもスッキリします。私自身も事あるごとにカウンセリングに行くんですが、皆さんにも対処法の1つとして知っておいてもらえたらと思います。

最後のメッセージ

充実した1時間半が過ぎ、最後にシオリーヌさんからメッセージをいただきました。

シオリーヌさん:自分の妊活を他人と共有する機会ってなかなかありませんが、今日は気持ちを出し合ったり、情報を交換したり、貴重な時間を過ごせたと思います。妊活って人生の中でとても大きな出来事ですよね。だからこそ、1つひとつ自分が納得のいく選択を積み重ね、後悔のないように向き合っていただきたいですし、妊活に取り組んだ経験がいずれ自分の中に良い形で残っていくよう心から願っています。

イベントが終了し、会場を見渡せば、皆さんとても良い表情。中には、シオリーヌさんの言葉が心に届いた人、本音で話すことができた人、隣の人からヒントをもらった人…など、同じゴールを目指す人たちとともに同じ時間を過ごし、今まで心の内に秘めていた妊活の悩みが前向きに変わった人も多くいた、かもしれません。

「私と向き合う時間 2024 Vol.2」開催概要
【日時】 2025年1月16日(木)18:30〜20:00(開場18:15)
【テーマ】自分たちで選びとる妊活のかたち〜助産師YouTuberと考えよう〜
【ゲスト】シオリーヌさん(助産師/性教育YouTuber/株式会社Rine代表取締役)
【会場】 MIX MARUNOUCHI(東京都千代田区丸の内2-5-1 丸の内二丁目ビル2F)
【参加費】1,000円(税込) ※お茶とお菓子つき

撮影/高村瑞穂

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