私と向き合う時間 2024 Vol.1【ゲスト:森田敦子さん】開催レポート
「私はあと少しで60歳になりますが、心がハッピーで、身体的にも豊かになったのは35歳以降のことです」(森田敦子さん)
「35歳から更年期まで、心身の変化とセルフケア〜今の自分を受け入れる〜」というテーマのもと、12月12日(木)に座談会イベント「私と向き合う時間」を開催しました。
ゲストにお迎えした森田敦子さんは、日本のフィトテラピー(植物療法)の第一人者。フィトテラピーとは、植物の持つ生理活性成分を活用して、日々の美容や健康、不調や病気の予防とケア、ケガの治癒促進などに役立てる伝承療法です。
森田さんは“35歳から更年期まで”というテーマに対し、女性にとって35歳以降の“プレ更年期”からが人生本番だ、と話します。 「それ以前、私は体調が悪くて、医者にも子どもは諦めるよう言われていました。でも、42歳と48歳の時に自然妊娠したんですよ」
そんな森田さんのパワフルなトークに魅了された「私と向き合う時間2024 Vol.1」の開催レポートをお届けします。
森田敦子さんの自己紹介
イベントの冒頭では、森田さんが自己紹介を行いました。
まず大まかな経歴をお伝えすれば、大学卒業後に航空会社の客室乗務員となったものの、体調を崩して26歳で退職。その後はフランスに渡り、国立パリ第13大学医薬学部で植物薬理学を学んだそうです。
>>今日は飾らずに、正直にお話ししますね。私がパリへ行った理由──それは実のところ、「逃げる」ためでした。
森田さん:当時、航空会社で働いていた私は難病を患い、8カ月間入院しました。自分で呼吸ができなくなり、あちらこちらの筋肉が動かなくなって。しだいに薬の影響で髪の毛が抜け、肌はお化けにも炎症がおきボロボロ。もうヤケになって看護師さんに八つ当たりし、迷惑をかけるときも。翌日には精神科の先生が私の病室に現れて、ますます心が荒んでいきました。時代はバブル真っただ中、女性も社会進出するようになっていましたが、寿退社するのが幸せ、と言われた時代です。その後、なんとか職場復帰しましたが、どこか知らない場所へ逃げ出したくて、植物療法を学ぶという名目でパリへ渡りました。
森田さん:留学先の大学は医薬学部で、植物学だけでなく体調を整えるための専門知識を学びました。
体調を整えるためには、食欲、睡眠欲、そして性欲、これら3つをバランスよく満たす必要があるんです。
中でも、性科学は日本では全く知られていない分野。帰国後、その大切さを伝えていきたいとデリケートゾーンやパーツケアのブランド「INTIME」(アンティーム)を立ち上げました。しかし、90年代の日本で性の話はタブー。当時は非買運動まで起こりましたが、最近はフェムテックという言葉とともにフェミニンケアも注目されるようになり、女性の身体をちゃんと理解してケアやサポートをしていこうという時代になってきましたね。
参加者の声に応えるトークタイム
自己紹介が終わると、森田さんと参加者の皆さんが1つテーブルの周りに集まりました。
テーブルに並べられていたのは、森田さんに聞いてみたい話のテーマや質問事項など、参加者の皆さんから事前に集めたさまざまな声。この後は皆さんの声をスクリーンに投影しながら、それに応える形で森田さんのトークが進行していきました。
【トークテーマ1】更年期について
【参加者の声】
- 自分の色々な不調を、更年期かな、と思うけど、更年期症状がどんなものかを理解できていないので知りたいです。
- まだ更年期というものを実感していないが、これからどういうことに気をつけて日々を過ごせばいいのかを知りたい。
>>更年期をあまり心配しすぎないで。自分の心と体を最優先して乗り越えましょう。
森田さん:女性は、35歳頃から女性ホルモンの分泌量が徐々に減っていきます。45~55歳頃の『更年期』になると急激に女性ホルモンは減少し、やがて閉経を迎えるわけです。更年期よりも前はいわゆる『プレ更年期』ですね。女性ホルモンが低下するとともに心身の不調を感じる人が多くいます。
私の場合は32歳でフランスから帰国し、38歳で生理が戻りました。というのも、病気の影響で8年間くらい生理が止まっていたのです。病気の影響で髪の毛も抜けてしまったので、当時はカツラをかぶっていました。35歳頃は、体がよみがえってきた、と実感した時期。だから、プレ更年期の頃は体調不安などありませんでした。
更年期は、あまり心配しすぎなくても大丈夫。そう私に教えてくれた人がいます。パリ時代の恩師・ベランジェール先生です。先生は、更年期には2つのことを心がけなさいと話してくれました。
1つ目は、心身に変化が現れた時は見逃さず、その瞬間瞬間にきちんとセルフケアをすること。2つ目は「35歳からは絶対的に“まずは自分”」。会社のため、親のためなど、誰かのために自分を犠牲にして頑張る、ということを一切やってはいけないスタートの年齢が35歳だというのです。 自分の内側から湧き上がってくる思いを優先することが何よりも大切。脳は心の声をすべて聞いていて、ウソをつくと心身に影響をもたらします。
【トークテーマ2】心身の整え方について
【参加者の声】
- ホルモンバランスの整え方が知りたい。
- 34歳になってから疲れやすく、夕方になると顔がくすむようになりました(疲れ顔)。何か改善策があれば教えてほしいです。
>>女性ホルモンが減少しても、その時、味方してくれるホルモンもあります。
森田さん:更年期を迎えると、たとえばホットフラッシュ(上半身の発汗、のぼせ)が起こったり、イライラしたり、なんとなく涙が出てしまったり、激しいむくみが出たり、人それぞれさまざまな症状が出ます。
私も45歳を過ぎてからは体調の変化を感じました。昔は50mを7秒台で走れたのに、足が上がらなくなって20秒くらいかかるようになりましたし(笑)、徹夜ができなくなったり、疲れやすかったり、肌の老化が気になったり……。女性ホルモンが減っていくのはどうしようもないことです。でも、今日はその時に味方してくれる2つのホルモンをお教えしますね。
まずは骨で作られるタンパク質の一種「オステオポンチン」。
女性ホルモンの減少に伴い、骨量が減少し、骨の健康に影響を与えることがあります。その対策としては、縄跳びなどのジャンプ運動が効果的です。1日10回程度から始め、継続的に取り組むことで骨を鍛える効果が期待できます。
あとは筋肉から分泌される「マイオカイン」という物質があります。私は小学校の頃からソフトボール部でキャッチャーをしていたため、中腰の姿勢には自信があります。マイオカインを増やすには、腰をしっかり落としてスクワットを行うのが効果的です。大殿筋を鍛えることができますが、あまり激しくやる必要はありません。
これらは更年期の健康を維持するお手伝いをしてくれるホルモンです。ケアする時は、漠然と「どうやら骨を鍛えると良いらしい」とか「筋肉を鍛えてみよう」と思うのではなく、あのホルモンが出やすくなるからこれをするんだ、ときちんと背景を知った上で取り組んだ方が長続きすると思います。
【トークテーマ3】生活習慣・セルフケアについて
【参加者の声】
- フィトテラピーを学び始め、“セルフケア”ときちんと向き合うようになりました。森田先生ご自身で特に気をつけられている生活習慣のポイントが知りたいです。
- 冷えと乾燥が気になります。
>>おすすめのセルフケアは、実にシンプル。冷え対策には、ハーブの力を活用しましょう。
森田さん:私がパリで徹底的に教え込まれたことは、いかにセルフケアが大切か、ということ。そんなことを言いながら、信じてもらえるかわかりませんが、一番良いセルフケアはずばりラジオ体操です。ラジオ体操は筋肉運動とホルモンの状態を良くするパーフェクトな体操なんですね。
あとは、夜は絶対に携帯を見ないこと。画面の光が目に入った瞬間に、眠りを促すホルモンのメラトニンが出なくなります。メラトニンが出ると体内の熱が放出され、脳を冷やします。赤ちゃんも眠くなると温かくなって、前髪が汗で濡れてきますよね。人は脳を冷やさないと深い眠りに入れないんです。そのノンレム睡眠が、今日気になったことや嫌な気持ちを消去して、翌日の爽快感ややる気につながっていきます。
森田さん:あと、私も冷え対策は入念に行っています。女性にとって冷えは大敵。体温が1℃違うと免疫力が4倍違う、と言われていますよね。冷え対策のために覚えておきたいハーブは、4つあります。
1つ目はジンジャーで、ぜひ実践していただきたいのが生姜湯です。スライスした生姜を天日干しにしたら、パリパリと割って、お湯をかけ、てんさい糖などを入れます。そこに生の生姜をすりおろして投入。乾燥生姜と生の生姜は含まれる成分が違いますので、必ずどちらも入れてください。この生姜湯は3日に1回くらいのペースで飲むと良いと思います。
2つ目は、エッセンシャルオイルのゆず。好きな植物油にゆずオイルを数滴落としてマッサージをするとリモネンという成分が血中へ入っていき、体を温めてくれます。
3つ目は中級編で、ヴァンルージュ。赤ブドウの葉のことで、最近は日本でも買える店が増えています。赤ブドウの葉にはアントシアニン類のポリフェノールがたくさん入っていて、冷えが強い人には試してほしいハーブです。好きなハーブティーの中に入れて飲んでください。
最後はちょっと上級編で、ギンコビロバ(ギンコ)。イチョウの葉っぱのことですね。ヨーロッパでは薬に近い扱いをされているハーブで、生姜やゆずでは体温がなかなか上がらない人にも効果的。また、体温が低いと妊娠しづらいので、妊活中の人にもおすすめです。
【トークテーマ4】妊活について
【参加者の声】
- フルタイムで仕事をしながら、不妊治療を2年間続けてきたが、2度ほど流産してしまい心が折れました。希望や期待をしてしまうのが怖く、今は不妊治療をお休みしています。何度も諦めようと思いつつ、心の底では諦めきれていません。何か良い考え方やアイデアはありますか?
- 転職先での昇進を打診されている中、年齢的に最後のチャンスとして妊活にも取り組みたくジレンマがある。
>>「まずは自分」。無理をしないで、自分の心と身体に正直に生きてみませんか?
森田さん:2度の流産、本当に苦しかったでしょうね。何か良い考え方やアイデアはありますか、と書いてありますが、「諦めきれていない」という気持ちが残っているなら諦めないで、心のままに生きてほしいと思います。
人それぞれご事情は違うことですが、妊娠に向けては、当然、身体を整えることが大切です。中でも、膣の粘液力が重要。粘液は目や鼻に異物が入った時にも出ますが、粘液力って免疫力とイコールともいえるものです。妊娠とは一見関係なさそうに感じますが、免疫力を高めることも欠かせません。ご自身の身体のことをよく知り、必要なケアをしてあげてください。
あと、パートナーには、絶対にウソをつかないでほしいですね。次の方の声で「昇進と妊活のジレンマ」を抱えている方もそうですが、会社の上司へ正直に話し、私を昇進させれば損をさせないことも伝えて(笑)、自分の選択を後押ししてもらえるような状況がつくれると良いなと思います。
アドバイスになっていないかもしれませんが、今は自分の思いをはっきりと言える時代になりつつありますので、無理せず「まずは自分」で生きてみませんか? 何よりも自分の心と体を一番に考え、その上で進むべき方向を選択していきましょう。
森田さんのメッセージ
あっというまの1時間半が過ぎ、最後に森田さんからメッセージをいただきました。
森田さん:私は体を壊し、一度すべてを諦めました。でも、42歳と48歳で妊娠した時に、女性の身体は案外ミラクルだな、と思いました。やはり、きちんとケアをすれば応えてくれるんですね。だから皆さんも、フィトテラピーでも良いですし、漢方でも、ほかの方法でも、自分にしっかりと手をかけてほしいと思います。また、自分がご機嫌になれるために、わがままになれるために、自分が自分の一番の応援団でいることが大切。それこそが更年期の一番の防御につながるのだと思います。「まずは自分」を貫いて、更年期でも自分らしい日々を過ごしてください。
森田さんが自分らしくまっすぐに生きることで、周囲の人たちも笑顔になる。周囲の人たちの笑顔が、森田さんをもっと幸せにしてくれる。森田さん流の「まずは自分」は決してわがままを貫くものではなく、きっと自分を取り巻く人たちと幸せに生きていくための術なのではないでしょうか。その証拠に、イベント終了後の参加者の方々はみんな笑顔で、会場は温かい空気に満たされていました。
「私と向き合う時間 2024 Vol.1」開催概要
【日時】 2024年12月12日(木)18:30〜20:00(開場18:15)
【テーマ】35歳から更年期まで、心身の変化とセルフケア〜今の自分を受け入れる〜
【ゲスト】森田敦子さん(植物療法士 / 株式会社サンルイ・インターナッショナル代表)
【会場】 MIX MARUNOUCHI(東京都千代田区丸の内2-5-1 丸の内二丁目ビル2F)
【参加人数】35名
【参加費】1,000円(税込) ※お茶とお菓子つき
今後の開催予定
【Vol.2】
2025年 1月16日(木)18:30〜20:00(開場18:15)
テーマ:自分たちで選びとる妊活のかたち〜助産師YouTuberと考えよう〜
ゲスト:シオリーヌさん(助産師/性教育YouTuber/株式会社Rine代表取締役)
【Vol.3】
2025年 2月13日(木)18:30〜20:00(開場18:15)
テーマ:仕事と育児のワークライフミックス〜“自信”を育み世界を広げよう〜
ゲスト:福田恵里さん(SHE株式会社 代表取締役)
撮影/高村瑞穂