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私と向き合う時間 2024 Vol.3【ゲスト:福田恵里さん】開催レポート

2月13日(木)、私と向き合う時間「仕事と育児のワークライフミックス〜“自信”を育み世界を広げよう〜」を開催しました。ゲストは、女性向けキャリアスクール「SHElikes(シーライクス)」を手がける株式会社SHE 代表取締役・福田恵里さんです。

福田さんのトークの中で印象的だったことの1つが、仕事も家庭も諦めない「全部のせ」というキーワード。自分はどうなりなりたいのかがわからない人、出産とキャリアの二者択一に悩んでいる人、母親はこうあるべきというプレッシャーを感じている人など、様々な思いを抱いて参加した誰もがその言葉をしっかりと心に受け止めたようでした。

芯が強く、自然体で生きる福田さんの言葉に励まされた「私と向き合う時間2024 Vol.3」。開催レポートをお届けします。

登壇者はゲスト・福田恵里さんのほか、写真左のファシリテーター・平井莉生さん(FIUME Inc.代表/ライター)、右のWill Conscious Marunouchiプロデューサー・井上友美の3名
「私と向き合う時間」は、ハーブティーとお菓子をいただきながら“対話”を楽しむイベントです。今回は、浜松市「Basil House」のホーリーバジルティー、世田谷区「アラスカ ツヴァイ」のカカオ&オレンジスコーンをご用意

福田恵里さんの自己紹介

まずは福田さんの自己紹介からスタートしました。

福田さんは滋賀県のご出身。ギャルに憧れていた高校生の頃は、自分が何をやりたいのかがわからず、とにかく名の知れた大学に行くことを目指したそうです。しかし、大学生になると模範的な人生のレールに従って生きてきた自分をつまらなく思えて、とにかく何者かになりたい!とアメリカへ留学。そこで人生の転機が訪れたといいます。

>>女性こそ、自分の身ひとつで働けるWEBスキルがあると良い。その思いが「SHElikes」の原点です。

福田さん:私は、主に20~30代の女性を対象とした学び直しのプラットフォーム「SHElikes」を運営しています。きっかけは、留学先のアメリカ・サンフランシスコで、ITスタートアップを中心とする20代の起業家にたくさんお会いしたことでした。パソコン1台で「世界変える!」と意気込んでいるカッコいい同世代の人たちに刺激されて、私もWEBデザインやプログラミングを学んでアイデアを形にできる人になりたいと思ったのです。でも、帰国後に通い始めたスクールは受講生50人のうち女性は私1人という状況で、すごく違和感を覚えました。子育て中でも在宅で働けるWEBスキルは、女性こそ身につけた方が良いですよね。そこで、学生時代に女性向けのWEBスクールを立ち上げました。

 大学卒業後はWEBスクールを運営しながら、リクルートに就職。その後、退職して26歳のときに「SHE 株式会社」を設立しました。それから8年程が経ちますが、今は2歳と4歳の息子を育てながら仕事をしています。

福田さん:働く女性を取り巻く課題の1つに、出産を機に約半数の人が仕事を辞めている、というデータがあります。約半数って驚きの数値ですよね。さらに、日本の女性の非正規雇用比率は約54%と半数以上。給与総額の平均を見ても、約3倍もの男女差があります。また、日本の女性って自己肯定感が世界最下位と言われていて、「私には無理」「私なんか…」と自信がない人が多いのも課題です。

 そこで、私がいつも言っているのは「自分らしく生きるための武器と勇気を授けたい」ということ。武器=スキル、勇気=マインドで、その両方を身につけることがとても大切です。
 様々な女性とお話していると、実は「何がやりたいのかわからない」「何が向いてるかわからない」という方が大多数なので、SHElikesでは45以上の職種・約200レッスンが定額で学びたい放題。つまみ食いして学んで、まずは「好き」を見つけよう、というところに重きを置いています。

 コンセプトは「She is NO ONE.」(私たちは何者でもない。だからこそ、何にでもなれる)。たとえば「女性だから」「もういい年齢だから」「あの人は特別だから自分とは違う」といったように、無意識の中で自分の可能性を否定している人が非常に多くいますが、自分に貼っているレッテルをはがし、一人ひとりの可能性を解放してほしい、と願っています。

参加者の声に応えるトークタイム

参加者の声は全員が閲覧できるよう、すべてテーブルの上に並べられています

トークタイムは、キャリアやライフステージについての悩みや質問など、事前に参加者から集めた声をスクリーンに投影ながら進行していきました。

【トークテーマ1】仕事と家庭、どちらを選択すべき?

【参加者の声】

  • 仕事と出産時期の悩み
  • 家庭を持ちたいので産休育休を選択する一方、キャリアが不安。復帰できるか、子どものやりたい事を何でもしてあげられる経済力を持ち続けられるか?

>>「ワーク」と「ライフ」をミックスさせれば、2倍の幸せが訪れます。

福田さん:私が大事にしている「ワークライフミックス」という考え方があります。ワークライフバランスいうと「ワーク」と「ライフ」がどちらかしか選べないという前提のもと、バランスを取ろうという考え方になると思いますが、私の実体験では「ワーク」と「ライフ」が「or」ではありませんでした。子どもを産んだからこそ仕事がもっとできるようになったし、仕事しているからこそ子育てが楽しくて、どちらも選んだことによって人生の豊かさが拡大したという感覚が強いのです。「ワーク」と「ライフ」をミックスさせて幸せの総和を最大化する、という考え方を持っていると、どちらかを犠牲にする罪悪感に捉われることはなくなります。

 私は、長男を妊娠している時に会社がトラブルに見舞われ、会社を存続させるために代表に就任しました。1億円の借金を背負いながら出産し、代表取締役就任と同時に2カ月の育休に突入。どれかを選択するのではなく「全部のせ」で乗り越えることができました。

福田さん:代表就任直後という状況を考えれば、普通は育休を取っている暇などありませんが、SHEは女性の子育てと仕事の両立を応援している会社です。私が育休を取らなければ会社のポリシーに自ら反してしまうので、メンバーに私の価値観や意思決定をする際に守りたいスタンスなどを明文化して、育休に入りました。どういうことを伝えたのかといえば、クオリティか、コストか、スピードか、その中からコストだけを重視したらクオリティは下がりますよね。でも、イノベーションは二項対立を超える創意工夫をした先にこそ生まれるもので、そういう仕事の仕方をしてほしいといった話をしました。

 復職したら、なんと私が休む前よりも会社の業績が伸びていたんですよ。リーダーが不在だとメンバー同士の結束力が高まったり、個人個人の力が高まったりするのだと改めて実感しました。

 産育休を取ることで、今のキャリアを維持できなくなるのでは、と不安を感じている方は多いと思います。でも、子どもがいると今まで行ったことのない場所に足を運んだり、新しい視点に目が向くようになって、メンバーのマネジメントと子育てには通じる部分があることも気づきました。産育休を自分の可能性や視点を拡張する時間として活かせたら、きっと「ワークライフミックス」につながると思います。

【トークテーマ2】より良い両立の形とは?

【参加者の声】

  • 妊娠中で、出産後の働き方や生き方を考え中。今までは仕事第一で、リーダーの役割も担ってきた。産後は子供や家族を第一にしながらも、母としてどんな姿を子どもに見せられるか大事だと思う。人生全般で考えた時の子どもとの時間、仕事を含めた自分の時間、旦那さんと過ごす時間、それぞれどれくらいの比率で、また時系列としてどう変化させていくべきかなど、中長期的視点で伺いたい。
  • 産休後、仕事へ復帰したが仕事を任せてもらえない。コミュニケーションが上手くいかない。他の方の両立の仕方を知りたい。

>>自分の時間を大切にし、自分の気持ちに正直でいられる道を選択してください。

福田さん:「子どもとの時間、仕事を含めた自分の時間、旦那さんと過ごす時間」をどうしたらいいかという方の声、お気持ちがよくわかります。でも、私は“全部諦めない人”で、どれもかけがえのない時間です。

 最近『自分の親に読んでほしかった本』という本を読んだのですが、「子どもは親の言う通りにはしない、親がする通りにする」といったことが書かれていました。子どもは親の振りを見て育つというので、きちんと“なりたい自分”になっている親の姿を見せることも大事だと思うのです。

 わが家の場合は「週2ルール」を設けています。たとえば会食や友人との食事など、週2日は自由に夜の予定を入れていいというルールです。夫婦でgoogleカレンダーを共有していて、もし予定がかぶったらベビーシッターさんをお願いします。親は子どものために時間を使うもの、という考えが一般的かもしれませんが、自分の時間を大切にしていた方が子どもに対していつも笑顔でいられますよね。夫婦で価値観をすり合わせているので、私はストレスなく過ごせています。

 「復帰後に仕事を任せてもらえない」というお悩みの方は、詳しい状況がわからないので間違っているかもしれませんが、もしかしたら、子育てが大変だから仕事量を調整してあげようと、会社としては良かれと思っている可能性もあるのではないでしょうか。まずは1人で悩まずに、自分の意思をきちんと伝えた方がいいと思います。私はもっとこういう仕事をしたいとか、ここまで働けるんですということを伝えてみて、それでもやはり仕事が回ってこないのであれば、リアルに働き先を変えることを検討してもいいのかもしれません。我慢するより、自分の可能性を信じて新たに挑戦しても良いと思います。

途中で10分間のグループワークを実施。同じテーブルの人同士、自由に会話しました
グループワーク中は登壇者たちもテーブルをまわり、参加者の会話に参加しました

【トークテーマ3】育児中は自分の能力が発揮できない?

【参加者の声】

  • 3歳の子育て中。求められるレベルと現実(能力)とのギャップ。加えて子育てと仕事の両立に悩んでいる。
  • 子育てをしながら働いていて、仕事も育児も、何事にもセーブしてしまっている気がする。少しでも無理をしたらバランスが崩れて、立ち行かなくなるようで怖くなり、前向きな「やってみよう」ができていない。そんな自分にもフラストレーションを感じる。

>>すべてを背負わず、“なりたい自分”のために大切なことを選択すればいいと思います。

福田さん:そもそも育児しながら仕事をしていること自体が本当にすごいことで、自分にぜひ自信を持っていただきたいです。あとは「自分がどうなったら幸せか」「自分がどうありたいか」を言語化し、自分にとって必要なことを見極めることが大切だと思います。

 その上で、求められるレベルを完璧にこなさなくても良くて、ある程度、取捨選択してみてはいかがでしょうか。求められているものの中から”なりたい自分”と合致する部分があれば積極的に行って、違うと感じることは無理してやらなくてもいいと思うのです。

 「全部のせ」をするには、自分がやらないことを決めるのも大切です。私の場合、実は家事なのです。仕事の時間、子どもや旦那さんとの時間、自分の時間のプライオリティを上げると、家事の時間は極力なくしたいので、たとえばIoT家電を導入したり、食器洗浄機などを活用したり、時には家事代行さんを頼むなどの手段を駆使しています。「母親なんだから」といった罪悪感や無言のプレッシャーは自分が勝手に囚われているだけだと考え、ポジティブでワクワクした気持ちで解決できればいいですよね。

 日本の女性はいろんなものを背負い過ぎていると思います。女性活躍社会だ、少子化対策だとか言われたり、育児と仕事を両立したり、女性管理職比率を30%にするために役職を与えられたり、女性の負担は増す一方。国がもっと全力でバックアップしてくれないと割に合わないと思っているんですが、この社会の中で頑張ってる私たちって最高に偉いです。

【トークテーマ4】少子化の日本

【参加者の声】

  • 少子化の日本、どうなるんだろう。

>>みんなで声を上げ、サービスや制度の充実を求めていきましょう

福田さん:少子化になると、たとえば東京都が第1子の保育料を無償化するといった話など、子ども一人ひとりに対する教育サービスなどが充実していくので、子どもを産むという選択をしやすくなる側面もあるのかもしれません。

 最近、保育料を経費化しよう、という活動に署名したんです。仕事をする上で、交際費は経費として認められているのに、保育料はダメというのは少しおかしいと思いませんか? うちは週1ペースでベビーシッターさんも頼んでいますが、それも経費にしてほしい。シッターさんは誰もが利用しているわけではありませんが、こういったサービスが普及すればさらに女性たちが働きやすい社会に近づくと思います。

 子どもが3人以上いると所得税が大幅に控除される制度を導入している国もありますが、海外の成功事例なども取り入れながら、子育てがもっと魅力的なものになる社会の仕組みを整えてほしいと思います。

最後のメッセージ

閉会の時間を迎え、福田さんからいただいた最後のメッセージをご紹介します。

福田さん:今日は登壇者として参加しましたが、私も皆さんと同じように悩み、自己肯定感の低さに苛まれながら、なんとか日々を乗り越えてきました。もし夜寝る前に、この世界で自分1人が頑張ってるんじゃないかと孤独を感じたら今日のことを思い出して、誰だって同じように不安を抱えているのだから明日も頑張ろうと思ってもらえたら嬉しいです。今日は、この社会の中で戦ってる仲間の皆さんと時間をシェアできたことがとても幸せでした。

本当に大事なものは何か…自らと対話を繰り返しながら、自分にとって必要のない荷物を1つずつ下ろしていくと世界の見え方が変わってくるかもしれない、という福田さん。これから壁にぶつかった時に、立ち向かう勇気となるアイデアと出会えたイベントとなりました。

「私と向き合う時間 2024 Vol.3」開催概要
【日時】 2025年2月13日(木)18:30〜20:00(開場18:15)
【テーマ】仕事と育児のワークライフミックス〜“自信”を育み世界を広げよう〜
【ゲスト】福田恵里さん(SHE株式会社 代表取締役)
【会場】 MIX MARUNOUCHI(東京都千代田区丸の内2-5-1 丸の内二丁目ビル2F)
【参加費】1,000円(税込) ※お茶とお菓子つき

 

撮影/高村瑞穂

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