【Will Conscious Marunouchi 2024 開催レポート1 】オープニングステージ「働く女性 健康スコア 2024 発表会」
国際女性デー(3月8日)を目前に控えた3月1 日(金)・2 日(土)の2日間、丸ビル1階 マルキューブにて「Will Conscious Marunouchi 2024 まるのうち保健室 〜私と向き合う時間〜」を開催しました。Will Conscious Marunouchi 2024は、働く女性が自分自身と向き合う時間を持つこと、対話することの大切さを再認識していただくために生まれたウェルネスイベントです。
主なコンテンツは、専門家やゲストによるプログラムが充実した「私たちの対話ステージ」、パートナー企業の体験型ブースが並ぶ「私と向き合うカウンター」、そしてプロカメラマンによるフォトフォトセッション&VOICE「私と向き合う、写真と言葉」。初日の11:00には、オープニングステージ「働く女性 健康スコア 2024 発表会」を開催しました。
「働く女性 健康スコア」は、疫学調査をベースに設計した働く女性の健康実態に関するアンケート調査により、データを分析し、レポートにまとめたもので、ここでは2023年度に調査したデータの分析結果を発表しました。さらに、フジテレビアナウンサー・佐々木恭子さんをゲストにお招きし、トークセッションを実施。そんなオープニングステージの模様をお届けします。
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「働く女性 健康スコア 2024」の結果発表
オープニングステージの前半では、「働く女性 健康スコア 2024」の結果発表を行いました。登壇者は、データ分析を担当した神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授・吉田穂波先生と、まるのうち保健室プロデューサー 井上友美です。
>>「働く女性 健康スコア2024」レポートのダウンロードはこちら
この度のアンケート調査には業種の異なる20 社が参画し、女性3,907 名・男性380名にご協力いただきました。調査項目は7つあり、「健康課題」「ヘルスリテラシー」「セルフケア」「就労環境」「生活習慣」「メンタルヘルス」「制度利用」。
冒頭、吉田先生は「今回の調査で最も注目すべきは、『女性特有の症状が仕事に影響している』と答えた女性が全体の88%もいたことです。40代以上の3人に1人は、月経関連の症状とともに更年期症状も併発し、それらの症状が仕事に影響を与えていると回答しました」と報告。更年期を迎えた多くの女性が健康と仕事の両立に苦労している実態が明らかになりました。
また「女性のパフォーマンスに関連する因子は何か?」を追求した結果、「柔軟な働き方」「職場のヘルスコミュニケーション」「生活習慣・心身の状態」の3つが浮上。つまり、これら3つが充足していれば、月経痛やPMS、更年期症状による仕事への影響を軽減できることがわかりました。
そして、これらの調査結果を踏まえた上で、参画企業の方々とワーキンググループによる対話を行いました。ワーキンググループは年2回の開催で、各企業の方々が課題を持ち寄り、自社の状況に合う最適なソリューションを検討していく場です。その中で、先ほどの「女性のパフォーマンスに関連する因子」に取り組む方法について議論を重ね、企業が取り組むべき3つのキーワードにたどり着きました。
女性の健康課題の解決やパフォーマンス改善のために
【企業が取り組むべき3つのキーワード】
- 女性の健康課題別のケア
1人ずつ異なる健康課題を抱える女性たちに対し、会社として何ができるか。ワーキンググループで共有されたソリューション事例としては、「セミナーなどを通じて、女性のライフステージに応じた心身の変化について情報を提供する」「保健師・看護師による相談窓口を設置する」「婦人科の受診サポート体制がある」といった企業がありました。 - 休暇制度利用の促進
ワーキンググループでは、働く上で「何かあればいつでも休める安心感」が重要だという声が多くありました。しかし、そもそも休暇制度があることを知らない、休むと周囲に迷惑をかけるので利用できない、男性上司に「生理休暇」と言いにくいネーミングの問題など、休暇制度が有効に使われていない企業も多いようです。社員のニーズに即した休暇制度の整備が求められます。 - 職場のヘルスコミュニケーションの向上
最終的に目指すべきは「心理的安全性が高く、健康課題について気軽に話せる職場」。上司と部下、女性と男性など、立場の異なる相手の健康課題を十分理解し、相談し合える職場になれば、女性に限らず、すべての人が長く働いていたいと思える理想の会社になるはずです。
これら3つのキーワードを、女性の健康やパフォーマンス改善につながる「個人と企業のアクションポイント」としてここに提言することになりました。
ゲストとともにトークセッション
「働く女性 健康スコア 2024」レポートの発表の後は、トークセッションがスタート。 ゲストは、フジテレビアナウンサーの佐々木恭子さん、クレアージュ東京 レディースドッククリニック 総院長の浜中聡子先生です。
佐々木さんはアナウンサーとしてテレビに出演する傍ら、フジテレビでは管理職として、ご家庭では2人のお子さんの母としての顔を持っています。
最初のスライドで大きく映し出されたのは、「3.4兆円」という数値。これは、経済産業省が今年2月20日に発表した「女性特有の健康課題による社会全体の経済損失額」です(月経随伴症状、更年期症状、婦人科がん、不妊治療の4つの項目を対象に試算)。また、次のスライドでは「働く女性 健康スコア」で行った、企業レベルでの女性特有の健康課題による年間損失シミュレーションに基づくデータも紹介されました。
これらのデータについて「いずれも金額の大きさに驚きます」とコメントしたのは、佐々木さん。「企業としても、女性特有の健康課題に取り組まない理由は1つもないですよね。社会全体でどんなソリューションがあるかを考えていくことで、フェムテック市場が拡大したり、女性の健康課題に対する新たな価値感が生まれていくと思います。また、女性が自分自身のことを語りやすい社会になって、男性の課題にも目が向けられるようになるといいですね」(佐々木さん)
次のスライドには「働く女性 健康スコア チェック10」の項目が映し出されました。
これは「働く女性 健康スコア」を通じて見えてきた課題や実態など、数々のトピックスの中から、特に知ってほしい基本の10項目を集めたQ&A方式のチェック表です。これらの10項目に1つずつ回答していくことで、性別や役職に限らず、女性の健康課題と向き合うきっかけにつながります。
今回は、10項目の中から4項目の設問を取り上げ、それぞれの課題を検討しました。
1つ目の項目は「更年期のつらい症状は誰にでも現れるもの?」
今回の「働く女性 健康スコア」では、「40代以上では、3人に1人が更年期症状や月経関連の症状の両方によって仕事に影響が出ている」というデータが出ましたが、最初に、更年期ドックを提供するクレアージュ東京 レディースドッククリニック の浜中先生に更年期について教えてもらいました。
浜中先生:更年期は誰にでも訪れるライフステージで、その時期の体調不良は、女性も男性も、誰にでも起こり得るものです。特に女性は悩む方の割合が高く、中には治療が必要な人もいるということを、男女ともに知っておいていただきたいと思います。更年期は「ここからが始まり」という時期が明確にあるわけではなく、生理もありながら徐々に更年期が進んでいきます。そのため40代の場合、女性ホルモンの変動による体調不良が起きても、月経か更年期か、あるいは両方の症状が重複しているのかがわからないことも多いです。更年期で最も多い症状は、ほてりと発汗。あと、ただ漠然とした体調不良を抱えている「不定愁訴」という人もいたり、症状の出方も重さも人それぞれ違ってきます。
佐々木さん:私も時々レディースクリニックを訪れて、更年期の検査しています。今のところはまだ更年期ではないみたいですが、もし何かあったら迷わず医療のサポートを受けようと思っています。でも、「働く女性 健康スコア」のデータを見て思ったのですが、健康課題を抱えている女性の割合がこんなに多いのに、私の周りの同世代で、更年期で仕事を休んいる人はほとんどいません。後輩の中にも月経関連で休む人はあまりいないので、「我慢して頑張っている」のか「休むほどのことではない」のか「どうしても言えない」のか、よく考えて相手の話を聞く必要があるなと思いました。
2つ目の項目は「職場の人間関係と女性の健康状態は相関性があるの?」
まずは、職場で管理職として多くの部下を抱えている、佐々木さんに意見を聞きました。
佐々木さん:相関性はほぼイコールではないでしょうか。私の職場でも、管理職の人たちはいかに相談しやすい空気を作り、自分たちの価値観を押しつけずにじっくりと対話するか、そんな環境を作ることがミッションになっています。たとえば、健康不安がある時は気持ちも落ち込んでしまうので、解決の糸口がわからないくらい複雑に絡まった状態になっていることもありますよね。そんな時はゆっくり話をしていくうちに、どこまで自分自身でやれそうか、逆にサポートはどれほど必要か、少しずつ答えが見えてきます。
吉田先生:自分は上司なのだから、正解を提示したり、的確なアドバイスをしないといけないと思ったりするかもしれませんが、「心配だけど、様子をみていこうね」と一緒に悩む姿勢があるだけで十分だと思います。今回の調査からは、職場の人間関係が良好で、周りの人が理解して受け止めてくれる、ただそれだけで女性たちの症状が楽になったり、メンタルの状態が良くなったり、働きやすさが向上したりするという統計学的な結果が出ています。
佐々木さん:確かに、健康課題は一人ひとり全然違って、相談された時に私の理解の範疇を超えていることがあります。その時は、おこがましいと思いながらも「私も一緒に勉強するよ。もし私が、理解が及ばないことを言ったら、遠慮なく言って」と話すよう心がけています。
3つ目の項目は「男性のみなさん、“女性の不調”に対する声掛けに困ったことはありますか?」
初めに「男性のみなさん」の部分について、「働く女性 健康スコア」のデータ分析を担当している吉田先生に補足説明してもらいました。
吉田先生:今回の健康スコアでは、初めて男性の方にもアンケートを行いました。その結果、9割の男性が「女性の健康問題については声をかけにくい」「全社的に何か対処すべきではないか」と感じていることがわかりました。でも、決して男性たちの配慮が足りないわけではなく、いくら体調が悪そうだと思っても、どう声をかけていいのかわからないのが本音だと思います。
佐々木さん:来年の調査に向けてリクエストしたいのですが、女性たちに「男性上司からこういう声掛けをされたら嬉しかった」などの好事例を聞いていただけたらと思いました。また、女性の健康課題を女性の管理職が対処するだけでいいのか、という議論もありますよね。でも、私は男性の健康課題についてわからないことがいっぱいあるので、女性も男性も性別を超えて、管理職の人は“対話する能力”を学ぶようにしたらいいと思います。
吉田先生:管理職の方々が解決策を持っていなかったとしても、きちんと話を聞いてくれるだけで心強いはずです。「自分は助けられているし、守られている」「頼ることは弱いことではなくて、乗り越えるための強さなんだ」という風に頼るスキルである「受援力」を発揮して、誰でもSOSを出すことができる雰囲気をつくることは重要だと思います。
浜中先生:「一人ひとりを大切にしてくれる環境で話ができること」は本当に効果的です。要は、人それぞれにバックグラウンドがあって、ご家族のこと、お子さんのこと、介護の問題や夫婦関係に悩んでいる方もいますよね。そういった人生のいろんなものを抱えた上で、加齢による体調変化が起こると症状が重くなることがありますが、近くに相談できる相手がいるだけで、症状が出たとしても回復までの道のりが全然違ってきます。さらに、体調が良くなった後の体の軽くなり方が違ったり、モチベーションの低下、体調不良のリスクも減らせると思います。
最後の項目は「生理がつらいとき、休めていますか?」
浜中先生のクリニックにも生理に関する女性たちのリアルな声が集まるそうで、最初にコメントをお願いしました。
浜中先生:やはり、実際に生理休暇は利用されにくい状況があります。有給扱いにならないという企業もありますが、なによりも「生理でお腹痛いので休みます」とは言えない人が多いようです。女性は12~14歳くらいに初潮が始まって、閉経までの約40年間、生理と付き合う必要がありますが、痛み止めを飲んだり、お腹を温めたりして自力で何とかしようとする人がほとんど。「女として生まれたからには仕方がないもの」「我慢しないといけないもの」という認識が根深くあり、それが治療に至るまでの遅さにつながっています。生理の悩みはきちんと口に出して言っていい、そのことをどの世代の人にも知っていただきたいです。
佐々木さん:生理の日には厳しい仕事もいっぱいあります。たとえば、屋外ロケではお手洗いに行けるタイミングがあるだろうかとドキドキしながら過ごしたり、周りが全員男性スタッフだと、やたらとお手洗い行かせてくださいとは言いにくいことも。もしかしたらそういった形のつらい思いをしている女性も多いかもしれません。
井上:生理関連の症状は個人個人で差があるとはわかっていますが、以前、友人から救急車を呼ぶほどだったと聞いたことがあって、それは自分の想像をはるかに超えていました。困った時にいきなり相談するよりも、普段、体調がいい時に身近な人と自分の体調について会話をしておくことも大切なのかもしれません。
浜中先生:社会生活に困るほどの症状があれば、医療が介入し、改善できる可能性があります。特に注意してほしいのは、生理による不調の原因が、卵巣嚢腫、子宮内膜症など、婦人科疾患によるものだということも大いにあり得るということです。だからこそ決して我慢せず、自分の状態を把握するという意味でも、婦人科を受診していただくのが最善です。
佐々木さん:今、浜中先生から、自分の体のことなのだから「まずは自分でしっかりと対話をしなさい」というメッセージをいただいたと思いますが、先ほど吉田先生からは「受援力」というキーワードをいただきました。要は「援助・サポートを受ける力」のことだと思いますが、自分も会社の後輩も含めて、この「受援力」をしっかりと発揮していきたいですね。やはり、自分の体にとって「自分が主人公」でいることが大事。たとえば、誰かの相談を受けても私にはよくわからないことがいっぱいあります。誰かに相談するときは「つらくてできません」と言うだけではなく、「自分はこういう状況で、医師の所見ではこうである」や「自分自身のできる範囲からオーバーする部分に対し、どのようなサポートを受けられたら自分は働き続けることができるか」と、私自身も含めて主体性を持って話せる相談者になりたいと思いました。
井上:確かに「自分を開示していくこと」も大切かもしれません。更年期症状は女性にも男性にも起こりうるものです。最近は理解や把握が進んできたと思いますが、一方で、更年期を迎えるのはリーダーや管理職の年代。本当は誰かに頼りたいのに頼れない立場の方々で、声を上げにくいこともあるかもしれません。
佐々木さん:私は自分の弱さもさらけ出しますし、どちらかというとサポートを求めるタイプです(笑)。でも、わからないことは専門的な知識を学ぶ場がほしいな、とも思います。知識がないと自分だけでは抱えきれないことも出てきますよね。
──ステージのまとめとして、まるのうち保健室・プロデューサー井上が最後に「いずれは『働く女性のための取り組み』と、あえて言わなくてもいいような世の中になってほしいなと思います」とコメントしました。「2014年にスタートした『まるのうち保健室』は、今年で10年目です。当時、出会った方がキャリアを重ね、家族を持つという選択をし、現在の状況をご連絡くださる機会も増えて、時代やライフイベントに関する価値観など女性を取り巻く環境は少しずつ移り変わり始めていると感じています。これからも『まるのうち保健室』は、働く女性1人ひとりの今や未来に寄り添える活動を続けていきたいと思っていますので、どうぞご期待ください」(井上)
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https://www.creage.or.jp/dock/menopause/