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【Will Conscious Marunouchi 2024 開催レポート2 】私と向き合う時間特別企画「円満な家族の関係性って?」

「Will Conscious Marunouchi 2024」の2日目、3月2日(土)に「私と向き合う時間」の特別企画としてステージプログラムを開催しました。テーマは「円満な家族の関係性って? ~第3者の視点を交えて見てみよう~」。ゲストにイラストエッセイスト・犬山紙子さんをお迎えし、私と向き合う時間・ファシリテーターの平井莉生さん(FIUME Inc.代表/ライター)とまるのうち保健室プロデューサーの井上友美の3人でトークセッションを行いました。

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左は「私と向き合う時間」のファシリテーターをつとめる平井莉生さん。右はまるのうち保健室プロデューサーの井上友美

通常の「私と向き合う時間」は、毎回ゲストとともハーブティーを飲みながら、すべての女性にとって大切なトピックスについて対話していくイベントです。たとえば、更年期や妊活、自分の魅力の見つけ方など、普段はあまり口に出して言わない話題を取り上げ、自分自身を見つめ直すきっかけを提供しています。

「家族の関係性」をテーマに掲げた今回のステージプログラムについて、プロデューサーの井上は「夫婦をはじめ、近しい関係の人ほどコミュニケーションを取るのが難しいと感じることがありますよね。でも、その答えを考えるきっかけもなかなかありませんので、本日この場を借りて突き詰めてみたいと思います」と話しました。そして、著書の中で、夫婦円満のためのルールを見出した犬山さんにぜひ話をお聞きしたかった、と。

犬山紙子さんは著書『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』(扶桑社)を通じて、夫婦生活が壁にぶつかったときにどう乗り越えていけばいいのか、その答えを求めて様々な夫婦にインタビューを行っています。そんな犬山さんが「Will Conscious Marunouchi 2024」のステージの上で、語ったこととは──。

トークセッション「円満な家族の関係性って?」

ステージの冒頭、まるのうち保健室プロデューサーの井上が「関係が近くなればなるほどコミュニケーションが難しいと思う」と言ったことに対し、「その通りだと思います」と返した犬山さん。そんなやり取りから、トークセッションがスタートしました。

犬山紙子さんは、まもなく結婚10年目を迎える夫と今年7歳になる娘さんの3人家族だといいます

平井さん:さっそくの質問ですが、犬山さんが考える「円満な家族像」というのはどういうものですか?

犬山さん:先ほどの「関係が近いほどコミュニケーションが難しい」という話から言えば、夫婦とか子どもとか、親友とか、親しい間柄の人とは境界線が曖昧になることがあって『言わなくてもわかってくれるよね』のように自分と相手の気持ちが一致していると思い込んでしまうことがあります。そのためコミュニケーションを取らなくなったり、面と向かって話し合うこと、本音を伝えることが気恥ずかしく思えるように。でも、私はこれまでいろんな夫婦に取材してきて、気づいたことが「円満な関係性とは、お互いが対等に話し合えること」。ケンカしないから円満というわけではなくて、心理的安全性が保たれた場所で、一緒に話し合える関係があるのが理想の家族像です。

平井さん:「話し合える関係性」ってすごく基本的なことのような気もしますけど、自分の胸に問うてみると、本当にできているのか自信がありません。

犬山さん:大概の場合、お互いに触れないようにしていますよね。自分も傷きたくないし、相手を嫌な気持ちにもさせたくないし、ケンカになるくらいなら、私が我慢する方がいいっていう方が多いと思います。

平井さん:本日のイベントに先駆けてインスタライブをしたときに、犬山さんが話し合う時に大切にしていることとして「味方同士」というキーワードを教えていただきました。こちらの説明をお願いできますか?

犬山さん:話し合う前に「今夜、話し合いたいことがある」と伝えると、何を言われるのだろうと相手を逃げ腰にしてしまいます。まずは、話し合いの心的ハードルを下げることが大切です。話し合いをしようと言う前に、私はあなたの味方でありたい、という気持ちを先に伝えて、家族というチームをどう良くしていくかを話し合いましょうと伝えます。お互いに味方同士だと確認し合っておけば、相手を論破するというより、お互いの意見を尊重しながら、建設的にどうやって前に進めばいいのかという話し合い方ができることを、身をもって体験しています。

平井さん:犬山さんが「私たちは味方同士だよね」と言えるようになるまでは、ケンカムードで話し合うこともあったのでしょうか?

犬山さん:それはもうくさんありました。もともと私がおしゃべりなのに対し、彼はどちらかというと大人しくて控えめな性質。私だけがしゃべっていると、まるで責め続けてるようにも見えてしまいますし、相手の意見もきちんと聞くこともできませんよね。そして結局、私のやりたいようにすべてが進むことになってしまって、これではいけないなと反省しました。そこで「彼がなぜ話さないのか」を突き詰めてみたところ、「話してもわかってもらえない」とか「どうせ最後まで聞いてもらえない」という過去の経験が障害になっているのではないかと考えたのです。それから私は「途中で口を挟まないから、今思ってることを教えて」と言うようにして、相手の話を否定しないよう気をつけました。すると、彼は最後まで聞いてもらえたという成功体験を、私は相手の話を最後まで聞けたという成功体験を積み重ねることになり、徐々にいい関係を築けるようになってきたと思います。

井上:犬山さんがそんなふうに夫婦の関係について考えるようになったのには、大きなきっかけがあったのですか?

犬山さん:彼と結婚することになったときに、いい人だしずっと一緒にいたい、なるべく離婚はしたくない、という心理がありました(笑)。そこから、大きな壁を乗り越えた経験のあるいろんなご夫婦に話を聞きに行くようになって、さまざまなヒントをいただきました。あと、そのほかに大きな影響を受けたのがカップルカウンセリングです。私は自分のことばかり話してしまったり、怒りっぽい性格で、逆に彼は自分のことを責めてしまう性格。お互いの性格を尊重し合うにはどうしたらいいか、一度プロの話を聞いてみたいと思ったのです。

犬山さん:海外に比べて、日本はまだカウンセリングが一般的ではないと思います。だから、絶対数が少ないこともありますし、興味があっても踏みとどまってしまう人は大勢いますよね。実際に、私がカウンセリング行ってきたよと言ったら、友人・知人から「どこ行ったのか教えて」という声をたくさんいただいて、トータル20人くらいに同じところを紹介しました(笑)。でも、カウンセリングの先生とは相性の合う・合わないが大きいので、「もし自分と合わなかったら、遠慮せずに他に行ってみて」と伝えるようにしています。あと、最近は直接対面しなくても、オンラインやメールなど、カウンセリングの方法も多様化していて、自分が利用しやすいところを見つけるといいと思います。カウンセリングに行くタイミングは、深刻になってからよりも軽い悩みの時点で行った方が断然いい。病気の場合も早期発見が大切でしょう。「今は円満だけど、このままいくと何か起こるかも」という予感の頃に“予防医療”として活用するのがいいと思います。

平井さん:犬山さんはどうやってご自分に合うカウンセラーさんと出会ったのですか? 選ぶ基準はありますか?

犬山さん:私は、まずエビデンスがあることを重要視して探しました。つまり、大学などで心理学を勉強されていて、公認心理士、臨床心理士の資格を持ってらっしゃる方ですね。あとは、あまりにも値段が高すぎないこと。診断の領域によっても変わってくるとは思いますが、30分3千円〜5千円くらいが相場という印象です。30分2万円ともなるとハードルが高いですよね。あとは、夫婦の分野を専門にされている方とか、家から通いやすいところとか、基本的には自分の好みでいいと思います。

井上:私たちも「オンラインまるのうち保健室」というプロジェクトで無料カウンセリングを期間限定開催していたり、今日も会場でカウンセリングサービスのご紹介をしていますが、カウンセリングって、具体的な相談事を提示できないなら行ってはいけないのではないか、と思ってしまうことが一歩踏み出せない理由の1つだと思います。でも、思いきって体験してみると、自分の中で絡み合っている気持ちを解きほぐしてもらえて、今までうまく言葉にできなかったことが話せたりしますよね。世の中のニーズはきっともっとあるはずです。

犬山さん:そうなんです。今、井上さんが話してくださった通り、カウンセリングに行くとまずは自分の話をするわけです。そうすると相手が“傾聴”してくれる。最後まで静かに自分の話に耳を傾けてくれる人の前では、自分でも気づかなかったような感情がどんどん出てくるんですね。つらい気持ちで話していたわけではないのに、気づけば泣いていたりするんです。自分の気持ちを洗いざらい話せて、整理できるというだけで、価値があることだと思いました。私はささいなことでもすぐに怒っていましたが、心理テストなどをしたら、本当は甘えたいのだということがわかりました。うまく甘えられないことが怒りという形にすり替わっていると聞いた時に、ものすごくしっくりきて。以来、イライラしたときに、たとえば甘える形で夫に話しかけてみたり、甘いお菓子を食べたりしてある程度はコントロールできるようになりました。

平井さん:カウンセリングはどういう流れで行われるものですか?

犬山さん:私の場合は夫婦で訪れて、まずは2人がそれぞれ先生と話をして、そのあと2人で話し合いをします。先生から何か指示があるわけではありませんが、家で2人で話す時よりも、やはり第三者の方、特にプロの方がそこにいるだけで冷静に話せますよね。そこで、相手の不満がわかったり、逆にこんなことに感謝してくれてるんだっていうことがわかったり、普段はわからないことが知れて良かったです。でも、男性はカウンセリングに一緒に行こうと誘っても、乗り気ではない人も多いと思いますが、たとえば「私には今悩みがあって、カウンセリングに行ってみたいけど1人では怖いからついてきてくれない?」という誘い方をして、ついてきてもらう手もあります。そのときはカウンセラーの先生に、こういう誘い方をしています、と事前に伝えておく方が安心ですね。うちの夫も最初は乗り気ではありませんでしたが、行ってみたら良かったようで、今も継続して行っています。

平井さん:女性の場合は、ガールズトークとか、感情を吐き出す機会が意外とあると思いますが、男性は誰かに弱音を吐く場が少ないことはあるかもしれません。でも、男性にも自分の気持ちを話していい場所を作ってあげられるのも、カウンセリングの素敵なところだと感じました。

犬山さん:おっしゃる通りですね。男性も、男友達同士でもいいですし、日頃から、お茶しながらお互い傾聴し合ったり、悩みや弱みをもっとカジュアルに見せたらいいと思います。カウンセラーさんが女性の場合、この女に俺の何がわかる、と少し上から目線で接する方もいるそうです。でも、話を丁寧にしっかりと聞いてくれる、そこから的確な答えを出してもらえるっていう体験をして、どんどん心を開いていく男性もいるという話を聞きました。

平井さん:犬山さんから「傾聴はどこでも使えるコミュニケーション術」というキーワードを事前にいただいていたのですが、残り時間がなくなってしまいました。

犬山さん:ほんの少しだけお話しすれば「傾聴のスキル」を学ぶと、パートナーに限らず、仕事相手にも、友人にも、そして子供とも上手くコミュニケーションが取れるようになると思います。たとえば、子供に「こうした方がいい」とか「それはあなたが悪い」とか言うのではなくて、まずは相手の話に共感し、相づちを打ちながら最後まで聞き切ることが大切。聞き切るって、実はなかなか難しいのです。でも、傾聴を実践すると自分も成長できますし、相手にも「聞いてもらえるなんて、自分の意見には価値があるんだ」と思ってもらえます。双方にとって最良のコミュニケーションだと思いますので、家庭でも仕事でも、ぜひ活用してみてください。

──最後に「毎日、自分が機嫌よく暮らしていくためには、身近な人にもいい精神状態でいてもらうことが大切なことだと実感しました」という平井さんのコメントとともに、この度の「私と向き合う時間」のステージプログラムはクロージングとなりました。なお「傾聴」をはじめ、夫婦円満のためのルールをもっと詳しく知りたい方は犬山紙子さんの著書をぜひご覧ください。

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