私と向き合う時間 Season2 Vol.1【ゲスト:谷尻直子さん】開催レポート
目の前の人や物事、そして自分を大切に、愛を持って接すること。
ゲストと一緒にハーブティーを飲みながら、わたしたちにとって大切なトピックスについて語り合う「私と向き合う時間」。2シーズン目の第1回である今回は、料理家の谷尻直子さんをゲストに迎え、「自分らしいキャリア 〜妻業、母業と、自分自身のバランス〜」をテーマに開催しました。
予約制レストラン「HITOTEMA」を主宰しながら料理家として活躍している谷尻直子さんは、ファッションからキャリアをスタートさせたそう。スライドで直子さんの写真を投影しつつ、幼少期から今までどう歩んできたのかを振り返るところから会の始まりです。
アパレルの販売員時代に留学を決意した直子さんは、100万円貯金することを目標にアルバイトを掛け持ちし、無事に達成して単身渡英。帰国後はスタイリストアシスタントを経てフリーのスタイリストとして活動し、公私ともにパートナーでもあったファッションデザイナーと一緒にブランドを立ち上げます。しばらく駆け抜けたのち、シーズンごとに新しいものを作り出すサイクルやブランドの方向性に疑問を持ち、ブランドとパートナーシップを解散。新しい道へと歩みを進めます。
雑誌の記事で感銘を受けたフードディレクターに、「仕事がしたい!」と連絡をしたことをきっかけに食の世界へと踏み入れた直子さん。現在のパートナーである夫・谷尻誠さんとの間に生まれた第一子を文字通り抱えながら、「HITOTEMA」を開店させるに至ります。現在は、休日に海や山などの自然に触れ合うことで心と体のメンテナンスをし、パートナーと連携して家族の時間と仕事の時間をそれぞれ作っているそうです。料理家、妻、母と様々な役割を務めて自分らしく働く直子さんですが、どのようにバランスをとっているのでしょうか。
自分をよく知り、
周りの尊敬する友人たちからも学び取る。
会の中盤からは、事前にみなさんから集めた声を改めて並べてみながら、対話の時間です。「やりがいのある仕事を見つけるには?」、「安定した今の職場と、自分のやりたいことを見つけて転職するか」、「子育てと仕事を両立するコツは?」、「年を重ねることで変化したこと」などコメントが書かれたカードがテーブルの上にずらり。直子さんはテキパキとそれらを選別して、「バランス」「こども」「キャリア」「ラブ」「コミュニケーション」のグループに分けていきました。
「キャリア」のお悩みについては、天職の見つけ方や転職の選択を迷っている意見が目立ちました。「私はもともと、レストランをやろうだなんて思ってみたこともなかったんです。自宅にお友達を呼んで食事会を開催している様子を見ていた夫が『お友達もすごく喜んでくれているみたいだし、お店にしたら?』と背中を押してくれました。意識せずとも自分がやっていて、他人に求められることはありませんか?それが、あなたらしい仕事かもしれませんよ」という声に、会場のみなさんも深く頷いてメモを取ります。続いて「バランス」のトピックスへ。やはりここでは、子育てや家族との時間と仕事との両立に悩んでいる方が多い様子。「多忙なパートナーとは朝食後にコーヒーブレイクをしに外に出ることで、ともに過ごす時間を作っています。子供と過ごすときは、目の前にいる子供に集中します。だからこそ自然の中での遊びも食も、巻き込んで一緒に体験して楽しむことを大切にしていますね。トライ&エラーを繰り返して自分に合うやり方を見つけています」忙しい日々の中で、意識的に時間を捻出している直子さん。海や山で過ごす余暇は、自分らしさを取り戻すための大事な機会なのだそう。
ここでみなさんにも、自分と向き合うためにやっていることについて聞いてみました。「子供が寝たら編み物をしている」、「書く仕事に挑戦し始めました」、「通勤時間に未来日記をつけています」など参考になる興味深い意見が飛び出しました。一人一人の話を丁寧に聞き、真摯に答えていく直子さんから、みなさんに「身の回りの親しい人を5人思い浮かべてください」と質問が。「思い浮かべた5人の平均が、あなた自身を表しているそうです」とのこと。「初対面の人を集めての食事会では、トークシートを作る」や「何かに迷ったら、頼れる人をランチに誘って、ご馳走する代わりに話を聞いてもらう」など、理想の自分でいるためのたくさんのヒントを教えてくれました。目の前の人や物事に真剣に向き合い、愛を持って接する。直子さんはそうして、自分らしいキャリアを紡いできたことがよくわかる会となりました。参加していただいたみなさんも、自分だったらどうするかの糸口を見つけていただけたのではないでしょうか。
撮影/高村瑞穂 文/平井莉生