「まるのうち保健室~私と向き合う時間~」レポート【前編】 伊藤華英さん&廣瀬俊朗さんのステージから開幕した体験型ウェルネスイベント
10 月27 日(木)・28 日(金)に開催された「Will Conscious Marunouchi 2022 まるのうち保健室〜私と向き合う時間〜」は、働く女性が自分自身と向き合う時間をつくること、そして対話することの大切さを再認識していただくことを目的とした体験型ウェルネスイベントです。「食」の大切さから女性特有の疾病リスクまで、女性の体と心の健康のために役立つ幅広いテーマの情報発信を行いました。多くの女性たちで賑わった2日間のイベントの様子をレポートします(記事の前編/後編を読む)。
上の写真:本イベントのオープニングステージにゲスト出演した、伊藤華英さん(競泳元日本代表)、廣瀬俊朗さん(元ラグビー日本代表キャプテン)。ステージ終了後、会場内の「私と向き合うカウンター(体験コーナー)」を見学されました
今、すべての女性に届けたい話題とアイテムが集合
時は初日の正午過ぎ、会場内をぐるりと見渡せば、お昼休み中のオフィスワーカーからベビーカーを押すお母さんまで、様々な女性たちが足を止め、興味深そうに話を聞いたり、商品を手に取ったり、アンケートに答えたり、思い思いのひとときを過ごしていました。
丸の内仲通りに面した窓の向こうに緑を臨む、丸ビル1階マルキューブで開催されたイベント「Will Conscious Marunouchi 2022 まるのうち保健室〜私と向き合う時間〜」は、穏やかな時間が流れる空間の中、働く女性たちに向けて力強い発信を行い、盛況のまま2日間の会期を終えました。
本イベントのコンテンツは、主に以下の3つです。
◆私たちの対話ステージ(メインステージ)
専門家をお招きして知識を深めるステージ。日々の暮らしに活かせるノウハウ、セルフメンテナンス、自分らしい生き方など、2日間を通じて全7つのステージ企画を行いました。
>>28日(金)には、フジテレビ『ノンストップ!』サミットを開催!ゲストは、千秋さん、大神いずみさん(イベントレポート【番外編】へ)
◆私と向き合うカウンター(体験コーナー)
本イベントの5 つのテーマ「食・免疫力の回復」「適度な休息と運動」「セルフケア・自律神経の調整」「エイジングケア・更年期」「未来を考える対話」を体験できる、今の自分自身の状態と向き合うコーナーです。
◆まるのうち保健室ラウンジ(相談ラウンジ)
女性のライフイベントや健康についてリラックスして気軽に学び、対話ができる、ウォークインで立ち寄れるラウンジ。体の不調から職場での悩みまで、何でも気軽に相談することができます。また、「PMS・月経」「更年期」「プレコンセプションケア(プレ妊活)」「女性のホルモンバランスを『食』で整える」の4つのテーマのセミナーを開催。
オープニングステージ注目!
ゲストは伊藤華英さん&廣瀬俊朗さん
10月27日(木)11:00~のイベントの幕開けを飾るオープニングステージでは、競泳元日本代表の伊藤華英さん、元ラグビー日本代表キャプテンの廣瀬俊朗さんをお招きしてトークセッションを実施。働く女性たちがより日常を過ごしやすくなるためのヒントが詰まったステージになりました。
まずは、このオープニングステージの様子をお届けします。
【ゲスト】
◆伊藤華英さん スポーツ科学博士/競泳元日本代表/一般社団法人スポーツを止めるな 理事/1252プロジェクトリーダー
◆廣瀬俊朗さん 株式会社HiRAKU 代表取締役/元ラグビー日本代表キャプテン/一般社団法人スポーツを止めるな共同代表 理事)
【登壇者】
◆佐々木彩華さん 株式会社ファムメディコ 取締役CVO/薬剤師
◆岡本真澄さん 神奈川県立保健福祉大学 イノベーション政策研究センター研究員
◆井上友美 三菱地所株式会社 まるのうち保健室プロデューサー
冒頭には、まるのうち保健室プロデューサー井上友美が登壇。ご挨拶するとともにイベントの趣旨を説明しました。
その後、神奈川県立保健福祉大学の岡本さん(写真左)が、昨年度の3月に発表した「働く女性ウェルネス白書2022」について紹介。その分析データから浮かび上がってきた、働く女性の就労実態や健康意識・課題などを説明しました。
続いて、株式会社ファムメディコの佐々木彩華さん(写真右)が説明してくださったのは、現在進行中のまるのうち保健室の取り組みについて。働く女性の健康実態を調査し、企業やコミュニティで活用できる指標を作成する「働く女性の健康スコア」と、女性特有の疾患や妊娠準備のために開発した「まるのうち保健室オリジナル健診プログラム」を紹介しました。
そして、いよいよトークセッションが始まりました。
トークセッション:テーマ「“自分らしく”あるためにひとりとみんなができること」
トークテーマは「“自分らしく”あるためにひとりとみんなができること」。
テーマに合わせて用意した3つのキーワードに従って、ゲストの伊藤華英さん、廣瀬俊朗さんにご自身の経験談やアイデアなどをお聞きし、日頃から不調に悩む女性たちへメッセージを発信しました。
トークテーマ「“自分らしく”あるためにひとりとみんなができること」
◆キーワード1:女性特有の症状やケア
◆キーワード2:ベストパフォーマンス・チーム力
◆キーワード3:見える化することの意義
【TALK SESSION】
井上(司会):今回、伊藤さん、廣瀬さんをゲストとしてお招きしたいと思った理由の1つに、お二人が活動していらしゃる「1252プロジェクト」があります。まずはこちらのプロジェクトについて教えていただけますか?
伊藤さん:ありがとうございます。みなさん「1252」という数字を聞いても、何のこと?と思いますよね。1年は52週間あり、そのうちの約12週間は月経期間にあたるということを数字で示したくて、また男性にも知ってもらいたくてこの名前にしました。1252プロジェクトは女子学生のアスリートたちに向けて、自身の月経の周期など、女性の体に関する医学的な知識を学んでもらうための活動です。東大病院と連携して教材を作り、誰でも気軽に見やすいようにインスタグラムを通じて発信しています。
廣瀬さん:最近、僕も娘に生理がきまして。そのこととどう向き合ったらいいのか、このプロジェクトを始めるまで全くわかりませんでした。今は「生理がきたら赤飯炊く」という時代ではなく、婦人科のことを学び始めるきっかけになる出来事。男性のみなさんにもぜひ関心を持っていただきたいと思います。
井上:一番身近な自分の体のことなのに、月経も、妊娠・出産も、義務教育の中で接することはほとんどありませんし、きちんと学べる機会は少ないですよね。だからこそ、学生の方へアプローチするという点にすごく意義があると感じました。
伊藤さん:私自身、水泳競技をやる中で月経のことで相当悩んでいましたし、体重制限のある競技をやっている人は無月経になってしまう場合もあります。10代で無月経になってしまうと骨が成長できず、今後の人生に大きな影響を与えることになりますよね。体のコンディションとアスリートとしてのパフォーマンスの密接な関係を考えながら、1252プロジェクトに取り組んでいます。
◆キーワード1:女性特有の症状やケア
井上:本日のトークテーマ「“自分らしく”あるためにひとりとみんなができること」の1つ目のキーワードは「女性特有の症状やケア」です。伊藤さんは先ほど、以前は月経のことで悩んでいらしたとおっしゃっていましたが、アスリートとしてコントロールできない女性特有の症状をどのように乗り越えてきましたか? エピソードがあれば教えてください。
伊藤さん:私が陸に上がってから10年、その間にだいぶ時代が変わってきたなと感じています。当時は、薬=ドーピングにつながるというイメージがあって、ピルを飲むという選択をすることは簡単ではありませんでした。でも、オリンピックが内定したら、期間中ずっと月経期間にあたってしまうということがわかり、病院で中容量ピルを処方してもらうことになりました。時期をずらすだけなら中容量ピルを1回飲むだけでいいのです。ただ、飲んだら体重が4~5キロ増えてしまって、結局、力を発揮することができなくて。そのとき、コンディションを整えられなかった悔しさ以上に、月経に対する知識がなかったこと、自分で判断できなかったところに大きな後悔がありました。ピルを飲むなら、どんな副作用があるかをしっかり知りながら、4年間のうちに計画的にコンディショニングをしていくべきだったな、と。大学院時代は、低用量ピルを服用して不正出血に悩んだこともありますし、紆余曲折を経てようやく今は落ち着きました。
井上:まるのうち保健室「働く女性 ウェルネス白書2022」の調査では、都心で働く女性は全国平均の約5倍の人がピルを服用していることがわかりました。ピルの正しい知識が広まりつつあり、時代がようやく変わってきつつあるのを感じますね。
伊藤:そうですよね。女性は10代で月経が始まって50代まで付き合う人が多いそうなので、気持ちよく仕事をしたり、毎日を笑顔で過ごすための選択肢として、自分でホルモンバランスを調整することも大切だと思います。まるのうち保健室などを活用しながら女性のみなさんにももっと知ってほしいですね。
◆キーワード2:ベストパフォーマンス・チーム力
井上:次のキーワードは「ベストパフォーマンス・チーム力」です。廣瀬さんは、ラグビー日本代表のキャプテンもお務めになられましたが、自分がつらい状況のときに、周囲の環境や人の支えがあったのではないでしょうか。
廣瀬さん:すごく大事な観点ですね。現役時代は毎日キツい練習をしないといけなくて、「しんどい、嫌だな」と思っていましたが、近くに雑談ができる仲間がいるだけで気持ちが楽になったり、「次はこうしてみたら?」とアドバイスくれる人がいてくれたおかげで「よし、がんばろう」とモチベーションが保てました。だから、周囲の環境や人の支えというのは大切で、たとえば会社なら、上司に自分の考えていること、抱えている課題を素直に相談できるような関係性があると良いですよね。僕の場合は、エディー・ジョーンズという監督がめちゃくちゃ怖かったんですけど、その間にいた日本人のコーチに声をかけもらって助けられたこともあったので、もしかしたら第三者的な立場で少し離れたところから助けてくれる人も有難いですよね。周囲に自分の声を聴いてくれる人がいる環境があってこそ、自分のパフォーマンスが維持できるのだと思います。
井上:もしチームの中に苦手な方がいたら、どのようにコミュニケーションとりますか?
廣瀬さん:その人にもその人なりの正義があると思うので、同意はできなくても理解することが大事かなと思います。伊藤さんはどうですか?
伊藤:苦手な人がどんな人か気になって、すごい調べます。逆に好きなところを見つけたいし、会話をしたいと思って、逆に積極的にコミュニケーションとろうとするかも。どんな人とも対話を大事にしたいなと思っています。
◆キーワード3:見える化することの意義
井上:3つ目のキーワードは、「見える化することの意義」です。これまで話を伺っていて、伊藤さんは自分のコンディションがなかなか見えづらい状況で、大舞台に臨まれ、いろんなご苦労をされてきたと思いますが、「見える化」と聞いてどのようなことを思いますか?
伊藤さん:私の場合、自分の気持ちを「書くこと」をよくやっています。実は、自分はこんな風に思っていたのかとか、自分がこんなことで嫌な気持ちになったのかとか、書いてみると改めて気づくことが多いのです。自分の気持ちを知ると、気持ちを整理することができて、私と対話することになります。月経についても、周期をチェックしたり、基礎体温を計るだけで、体の中で起きていることが数値化されて見えるようになるので、コンディションを整えやすくなり、次のアクションにつなげられると思います。
井上:気持ちを書いたり、スコア化すると、誰かに自分のことを伝えるときの共通言語になりますよね。先ほど、廣瀬さんから上司とのコミュニケーションという話がありましたが、男性の上司に話しづらい生理のことも、コンディションシートのようなものがあれば、それを見せるだけで間接的なコミュニケーションになりそうですか?
廣瀬さん:そういうものがあれば、ファクトやデータをもとに声がけができるので良いなと思いました。もし自分が上司だったとして、女性部下の体調悪そうなときに「大丈夫?」とか「最近どう?」とか、恐れずに声がけする勇気が持てそうですし、女性の側はそんな上司をぜひ温かく見守ってほしいですね。今の時代、男性たちも学びの過渡期だと思いますし、お互いが歩み寄りながら、より良い社会を作っていけたらいいなと改めて思いました。
学生アスリートも働く女性たちも、体の不調を見える化し、自分と向き合う時間を作ってほしい。女性1人1人が自分と対話することでパフォーマスが上がり、企業にも社会にも女性たちの力が最大限に生きてきますよね。性差の違いにおける体や心の健康について、男女共に学び支え合う──28万人のビジネスパーソンが集うここ丸の内から、これからの働き方や社会のありかたのヒントが詰まったトークセッションとなりました。
この後は、心地良い時間の流れる会場の風景をご紹介します。
イベントレポート【後編】へ!
>>イベントレポート【後編】へ続く
“体験”と“会話”に満ちた会場の風景をめぐる
>>オープニングステージに関するプレスリリースはこちら(PDFダウンロード)
2日間限定の「まるのうち保健室〜私と向き合う時間〜」体験型ウェルネスイベント オープニングステージに伊藤華英さん、廣瀬俊朗さんがゲスト登壇(掲載URL)