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私と向き合う時間 Vol.02 【ゲスト:戸田さやかさん】

更年期というのは、閉経前後の10年間の“時期”のこと。
誰しもが迎えるものでも、症状は千差万別なんです。

臨床心理士の戸田さやかさんは、2022年10月にWill Conscious Marunouchiが開催した「まるのうち保健室〜私と向き合う時間〜」のイベントでも更年期についてお話してくださいました。そのトークが好評だったこともあり、今回はよりカジュアルに意見を交換しあえる会を開催するに至りました。

みんなが気になっている更年期って、そもそもどんなことなのでしょうか。「講演をすることはあっても、こうやって同じテーブルについてお話しする機会は初めて。楽しみにしてきました」と戸田さんの言葉の通り、この日は夜景の見える素敵な部屋でロングテーブルを囲んでお話しします。

「まず”更年期“という言葉の定義をご説明するところから始めましょう。更年期とは、閉経の前後の5年間を合わせた10年間という時期を指します。だからいつ始まったかがわかるのは閉経した時、つまり折り返し地点です。妊娠の可能性がなく2ヶ月以上生理が来なかったら、閉経の可能性があるので婦人科を受診してみましょう。この時期に起きる症状でよく言われるのぼせやホットフラッシュといった身体的なものから、イライラする、不安になるといった精神的症状まで、内容も重さもかなり個人差があります」

時期を指す言葉だとすれば、症状の有無に関わらず更年期自体は誰もが通る道だということ。この会に参加していただいた方々のなかから、更年期の症状を感じている人にご意見を伺ってみました。

「私は43歳のときに、急に心臓がバクバクして『心臓病か何かの発作で、このまま死んでしまうかもしれない』と思ってかかりつけ医に相談してみたら、『更年期症状ですね』と言われたんです。自分はまだまだ、なんて思っていたので本当に驚きました」(参加者Aさん)

「職場で仲の良い先輩が、更年期症状に悩んでいるようです。個人用の手持ちの扇風機を持って、吹き出る汗を抑えている様子を見ると大変そうだなと思いますし、自分もそんな時期がやってくるのかなと不安です」(参加者Bさん)

いずれやってくるのがわかっているなら、何か備えておくことはできるのでしょうか。できることならば生活に支障をきたしたくないものですが……。

「身体的な面は、まずは婦人科を受診して相談しましょう。ホルモン値を調べて、漢方を処方してくれるところもありますね。あとメンタル面も、臆せずに専門機関を頼っていただいて良いと思います。ファミワンのようなサービスを利用していただくのも手ですよ」(戸田さん)

「食事や生活習慣などで、症状を予防することはできるのでしょうか?」と会場から質問が投げかけられました。

「症状はホルモンバランスが変化して引き起こされるものなので、日頃の食生活でもできることはあります。病院でも処方されるサプリメントで、エクオールという成分が入ったものがあります。エクオールは、大豆製品から生成される女性ホルモンに似た働きをしてくれるもの。ただこのエクオールを体内で生成できる日本人女性は50%程度だと言われています。生成できる人は、更年期症状が軽いというデータがあります。これは、自分のタイプを調べるチェックキットがあるので気になる人は調べてみてください。またエクオールを生成するためには、腸内環境を整えておく必要があります。なので、まずできることとしては更年期を迎える前に腸内環境を整えておくことでしょうか。あとはカルシウムも重要です。女性ホルモンのエストロゲンが減ると骨密度が減るので、女性は骨折をしやすくなります。骨密度が減って怪我をしやすくなるので、筋トレをしたり日頃から体を動かしておくのはやっておいて損はないです」(戸田さん)

更年期は、女性だけの問題ではない。
男性や共に暮らし働く周りの人たちができること。

漠然としていた不安が徐々に明らかになると、様々な疑問が生まれてきました。それぞれのエピソードを話したり、戸田さんに質問を投げかけたり……。次々と運ばれてくる見た目にも美しく美味しそうなお料理も相まって、会話が弾みます。

「私の母が、些細なことでイライラするようになってしまって、『これって更年期かな』と家族で話し合いました。でも本人に伝えて良いものか迷ってしまって……、『更年期じゃない?』と伝えるのは失礼にあたるのでしょうか」(参加者Cさん)

「例えば、みなさん自身がイライラしたり漠然と不安を抱えているときには、ご家族にどうしてほしいでしょうか。それをお母様にも返してあげられると良いかと思います。自分の体調のことを娘や家族が気にかけてくれるのは嬉しいはずですし、女性の健康問題についてパートナーや家族と話しができる環境はとても大切ですね。でもお母様のイライラをお母様の更年期のせいだけにしてしまうのは、根本的な問題の解決には至らないかもしれないですよ。もっと他に家族ができることがあるかもしれません。例えば、男性にも更年期があると言われているんです」という戸田さんの発言に、会場が少しざわつきました。女性のホルモンの問題だと思っていたけれど、男性にはどんなことが起こるのでしょうか。

「男性も、男性ホルモンと呼ばれるテストステロンが年齢と共に減少します。女性のように閉経を目安に具体的な期間の目安がないのですが、身体的には性欲が減退したり、メタボリックシンドロームや筋力の低下が起きます。精神的には活力がなくなったり、人によっては鬱のような状態に陥ってしまうことも。最近パートナーの元気がないな、と思ったら男性更年期の可能性を疑ってみても良いかもしれません。男性の場合は、泌尿器科が専門になりますが、女性と比べてまだ更年期の研究が進んでいないのも事実です。相談を受け付けていると明言しているところを探すのが良いでしょう」(戸田さん)

体やメンタルの不調を引き起こすやっかいごと、
ではなく、“チェンジ・オブ・ライフ”と考えてみて。

ここまで様々なお話を聞いてきて、誰しもが通るやっかいなものと思った人も少なくないでしょう。でもそんな私たちに、戸田さんは素敵な考え方を教えてくれました。

「更年期を迎えるというと、大変なことがたくさんあるし『年を取ったな』と女性としての自信を失うような人もいるかもしれません。でも、この時期は必ず終わりが来るもの。当たり前ですが、その後も人生は続いていきます。ホルモンが変化することで体に様々な変化がありますが、その反応は今後付き合っていく体に順応するための準備でもあります。50代、60代、そしてその先も続く人生をどう生きていきたいか、未来をより良くするための準備だと考えてみるのはどうでしょうか。更年期のことを、英語で“チェンジ・オブ・ライフ”と言うんですよ。怖いものとか大変なものだと捉えるのではなく、その10年間の過ごし方や向き合い方で、体の変化を味方につけていく。そんなふうに考えてみても良いかもしれません」(戸田さん)

前向きになれるお話が聞けたところで、コースも終盤。デザートが運ばれてくる頃には、参加していただいた方々の表情もより一層晴れやかに。ここで全てはご紹介できませんが、会の最中は「現在抱えている更年期の悩み」、「職場や家庭での体調の伝え方」、「今からできる備え」などについて、参加者のみなさんがそれぞれ積極的に意見や情報を交換していました。普段はなかなか人に話しづらいモヤモヤを、プロの力と素敵な料理の力を借りながら、少し晴らすことできたのではないでしょうか。

<プロフィール>
ゲスト 戸田さやかさん

公認心理師、臨床心理士、ブリーフセラピスト。東京成徳大学大学院で臨床心理を学び、現在は妊活LINE相談サポート・ファミワンでアドバイザーとして不妊に悩んだカップルのサポートを行う他、クリニックでも勤務。また専門的な知識を有する生殖心理カウンセラー、がん・生殖医療専門心理士でもある。

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