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日本医学会総会2023東京のステージプログラムに「働く女性 健康スコア」が登場!

東京国際フォーラムおよび丸の内・有楽町エリアにて、「第31回 日本医学会総会2023東京 博覧会」が開催されました。会場の丸ビル1階マルキューブでは、まるのうち保健室が手がける「働く女性 健康スコア」より『働く女性3,400名超の調査よりみえた健康トピックスとは?』をテーマに講演を行いました。

「働く女性 健康スコア」は、女性特有の健康課題を“見える化”する産学医連携プロジェクトです。トライアル版として実施した昨年は、3,400名超の働く女性たちに調査を行い、データを集計・分析。その結果は、3月8日の国際女性デーに開催された発表会にてお伝えしました(レポート記事はこちら)。

今回のステージ登壇者は、神奈川県立保健福祉大学大学院 ヘルスイノベーション研究科教授の吉田穂波先生、まるのうち保健室プロデューサーの井上友美(三菱地所株式会社エリアマネジメント企画部)の2人。


左:まるのうち保健室プロデューサー 井上友美(三菱地所株式会社エリアマネジメント企画部)
右:神奈川県立保健福祉大学大学院 ヘルスイノベーション研究科教授 吉田穂波先生

吉田穂波先生は、日本、ドイツ、イギリスの医療機関で産婦人科医として勤務した経験をお持ちで、女性の健康に関する最新研究にも詳しいため、まるのうち保健室プロジェクトにおける働く女性の健康調査・分析に携わっていただいています。さらに、現在は4女2男の母でもあり、家庭と仕事を両立する働く女性たちと同じ苦労をされてきた当事者です。「子どもは一番上が18歳、下は3歳。6人もいますと、下の子はもはや孫のような気持ちです。50年後、子どもたちが健康面でも他のことでも知識を得て、自分の道をしっかりと生きていってほしいと思っています」(吉田先生)

そんな吉田先生のプロフィールをご紹介するところから始まったステージプログラム。吉田先生ならではの視点を加えながら「働く女性 健康スコア」から見えてきた“5つのトピックス”を紹介し、2人でトークセッションを展開。先の発表会とはひと味違ったプログラムとなりました。


【トピックス1】誰にでも“あるのが当たり前”だった、PMSと月経困難症

吉田先生:スライドに表示した93%と81%、これは何の数字だと思いますか? 今回、3,400名を超える女性に調査した「働く女性 健康スコア」で、PMSの症状があると回答した人が93%、月経困難症の症状がある人が81%という割合でした。かなり高い数値ですよね。PMSというのは、月経の前にホルモンのバランスが乱れて様々な症状が出ることですが、これほど多くの方々が症状に悩まされていることに私たちも驚きました。

吉田先生:また、PMSや月経困難症に対する「知識がある」と自信を持って答えた方の割合は、それぞれ70%と46%でした。さらに詳しく見てみると、症状に対して知識がない人より「知識がある」と答えた人の方が、「対処している」と回答した割合が8~10倍ほど高いことが判明。PMSや月経困難症が起こる原因を知っている人は、その対処方法もご存知の場合が多いことがわかりました。

本当は、PMSや月経困難症にも適切な対処方法があるのに、特に私くらいの世代の女性たちは、そういった症状は起きても仕方がない、毎月あるのが当たり前で、我慢するしかないと声を上げてきませんでした。これは、私も産婦人科医として反省すべき点だと思っています。これからは、知識を身につける人を増やすとともに、女性たちが声を上げられる環境を整えることで、PMSや月経困難症の問題はより改善されていくのではないか、そんな1つの希望を感じる結果となりました。


【トピックス2】さらなる普及が求められる、経腟超音波検査

吉田先生:次に注目したいのが、経腟超音波検査(エコー検査)についてです。経腟超音波検査は、子宮や卵巣の状態を見ることができる非常に大切な検査ですが、これを受診することによってどのくらいの割合で異常所見が見つかるものだと思いますか? 私たちが行った調査では4人に1人の割合で、子宮筋腫、卵巣のう腫、子宮内膜症などの子宮や卵巣の病気が見つかりました。経腟超音波は放射線も使いませんし、若い方でも安心して受けられる検査ですので気軽に受けていただきたいのですが、なかなかハードルが高いと感じる方が多いようです。

吉田先生:また、婦人科検診の中に経腟超音波検査が入っているかがわからず、受診の機会を逃す方もいると思います。私たちの調査では3人に1人は婦人科の受診経験がありませんでしたが、実際に受けていただいたら多くの方に所見が見られる結果となりました。自分に子宮や卵巣の病気があることに気づかないまま過ごしてしまう恐さ。もしかしたら、妊娠・出産を考えるタイミングで初めて病気が見つかり、悔しい思いをする人もいるかもしれません。

吉田先生:今後は、経腟超音波検査をもっと広く普及させていく必要があると思っています。井上さんはこの検査のこと、もともとご存じでしたか?

井上:今までは私もあまり理解していませんでした。会社の婦人科健診の項目に乳がんや子宮頸がんの検査は入っているため、それを受けてさえいればいいのだと考えていました。

吉田先生:もし“神の手”を持つ産婦人科医がいて、触っただけで子宮筋腫や卵巣のう腫がわかる、ということがあればいいのですが、特に病気が初期の場合は、その形状をしっかりと映し出す経腟エコーでないとわかりません。経腟超音波検査でしか捉えられない病気は多く、がん検診では対応できないのです。

井上:企業の人間ドックや地域の保健所の健康診断を受診する際には、経腟超音波検査が含まれているかどうかをきちんと確認した方が良いですね。

吉田先生:そうですね。単に「婦人科検診」としか書かれていないお知らせが多いように思いますので、「経腟超音波検査入っていますか」とか「オプションで付けられますか」と問い合わせた方がいいかもしれません。

井上:先のお話にあったPMSや月経困難症に関しても、経腟超音波検査によって見えてくることはあるのでしょうか?

吉田先生:月経困難症は、子宮筋腫や子宮内膜症が原因で起こっている場合があります。初潮の頃から月経痛や大量の出血が続いていた方などは、もしかしたら20代、30代になって内膜症が見つかることもあるかもしれません。

井上:経腟超音波検査は、年に1回の受診で大丈夫ですか?

吉田:子宮内膜症や子宮筋腫は、女性ホルモンの刺激でどんどん大きくなることがわかっていますので、毎年1回チェックしておくといいですね。


【トピックス3】働く女性たちの頼れる存在、低用量ピル

吉田先生:今回、低用量ピルについても注目すべきデータが得られました。低用量ピルの服用率は何%だったと思いますか? 2019年のデータで、日本の低用量ピルの服用率は全国平均2.9%と言われていましたが、2022年に行った私たちの調査では15%という結果でした。でも、日頃から低用量ピルを処方されている産婦人科の先生はきっと感じられていると思いますが、最近、低用量ピルを希望される患者さんはとても増えています。私の肌感覚としても、服用率15%はしっくりと腹落ちする結果です。

低用量ピルはもともと避妊のために開発されたものでしたが、他にも子宮内膜症を予防する・改善する、月経痛や月経量を軽減する、がんの予防になるなどの副効用があることがわかってきました。最近、低用量ピルを処方してほしいという20代くらいの若い世代では、吹き出物やニキビの治療が目的という方も増えてきていますが、それは本当に賢い使い方だなと思います。私も高校時代はひどいニキビで、小さなニキビが出ただけでも1日中憂鬱な気分で過ごしていましたし、大学、社会人になると吹き出物に悩まされるようになりました。その時、低用量ピルを知っていたら、絶対に使っていたと思います。

吉田先生:井上さんはまるのうち保健室の活動を通じて、若い世代の低用量ピルに対する意識についてはどのように感じていますか?

井上:今回の調査結果を踏まえて、低用量ピルの服用率が高い企業の方へヒアリングしたところ、使用した人の「使ってみて良かった」という経験が口コミのように広がっている、というお話もありました。また、一言で「低用量ピル」といっても非常に多くの種類があり、副作用を心配されていた方も自分に合うものが必ず見つかるということがわかってきて、自分の働き方をコントロールするだけでなく、美容の目的でも使っている若い世代が増えていることを私も肌で感じています。

吉田先生:昔は、月経をコントロールするなんて自然な生理現象に逆らうことだ、と思われていましたが、今はPMSや月経困難症も改善できる手段があるのだから上手に活用していこう、というポジティブな機運を感じますね。

服用目的を調査した結果では、生理痛を和らげたい、月経周期をコントロールしたい、月経不順を改善したいなど、多くの回答が「月経」のトラブルに対応するものでした。自分の毎日を暮らしやすくするために、人生をよりハッピーに過ごすために服用されるのはとてもいい使い方だと思います。

井上:現代女性は「月経の回数が多い」というお話を聞いたことがあります。ある程度、月経をコントロールしないと自らの体を酷使してしまっている可能性もあって、少し休ませてあげるという視点で低用量ピルを服用する人もいらっしゃるそうで、非常に驚きました。

吉田先生:そうなのです。昔の女性は、一生涯でわずか50回程度の月経回数でした。今は初潮の時期も早まり、妊娠・出産回数も減り、その結果、人生を通じて平均400~450回も月経がやってきます。

井上:約9倍ですね。

吉田先生:それだけ回数が多いと、月経があることのメリットよりもデメリットの方が上回ってしまう人もいると思います。月経は妊娠・出産のためには欠かせないものですが、それ以外の時は卵巣をお休みさせたり、体を労わるという考え方も大切です。

吉田先生:以前、ドイツで産婦人科の研修をしていた時に、日本とは大きく異なる価値観に触れたことがあります。ドイツでは女の子が中学になったら、お母さんに連れられて婦人科を訪れます。病院では、母娘そろって低用量ピルや妊娠・出産の話を聞き、低用量ピルを処方してもらうのです。日頃から低用量ピルを内服し、妊娠・出産のタイミングに一時的に止め、出産した後に再び服用を始めるという例をたくさん見聞きしました。

井上:体質的に、低用量ピルを飲めないという方もいるのでしょうか?

吉田先生:クリニックに行くと、高血圧や肥満、血栓症といった病気がないかを確認した上で処方されますが、ほとんどの方は飲むことができます。あと、低用量ピルは何種類もありますので、必ず体に合うものが見つかると思います。

井上:継続的に服用するとなると、コストの面も気になります。

吉田先生:大事なことですよね。クリニックで処方する場合は、2,000~3,000円が相場だと思います。また、通販でお求めになる方もいらっしゃって、聞いたところ1,500円くらいだそうです。あとは、保険適用のものもあります。保険適用とは、たとえば、月経困難症に確実に効くなどお墨付きのある低用量ピルであるということですが、こちらなら毎月1,000円以下で内服できると思います。


【トピックス4】多くの女性が悩まされる、更年期症状

吉田先生:続いては、更年期症状に関する調査結果をお伝えしたいと思います。「更年期症状がある」と答えた方の割合は何%くらいだったと思いますか? 「強い更年期症状がある」「時々、症状がある」を含め、なんと90%以上の方が「更年期症状がある」と回答していらっしゃいました。そのうち、更年期について「知識がある」という方は約70%です。さらに知識がある方は、何らかの対処している人が多いこともわかりました。

井上さんは、更年期をどのように捉えていますか?

井上:以前は、私も「更年期」と「更年期症状」は同じものだと思い込んでいました。

吉田先生:そういう方は多いですよね。「更年期」というのは、幼少期、思春期といったライフサイクルの中の一つの時期です。年齢とともに卵巣の中の卵細胞が減り、女性ホルモンが減少していく時期を更年期と言います。閉経は平均で50~51歳と言われていますが、その前後5年程の約10年間が更年期で、100%誰にでも訪れる時期です。ただ、100%の方に「更年期症状」が出るとは限りません。更年期を何事もなく過ごしてしまう人もいれば、重い症状に悩み、辛い思いをしながら過ごす方もいらっしゃいます。

吉田先生:更年期症状の代表的なものは、ほてりや急な発汗があります。その他にも、爪や髪がパサパサしてきた、頻繁にめまいが起こる、関節がギクシャクする、肩こりや腰痛がひどくなるなど、様々な症状が起こります。体の不調だけでなく、イライラしたり、落ち込んだり、自分の性格が変わったと悩まれる方も。あまりにも症状が多種多様なため、昔は婦人科の病気ということがわからずに、整形外科、皮膚科など、いろんな病院をさまよっている更年期女性が多く見られました。現在は、女性ホルモンの減少により起こる更年期症状だということがわかってきましたので、婦人科に行けばきっと改善策が見つかると思います。

更年期症状や重症度は人それぞれで、生活習慣、ストレス、家庭環境など、様々な要因で変わってきます。そのため、みんなも頑張ってるから、みんなは普通に過ごしてるから、と他人と比べて我慢するのではなく、自分の更年期症状をゆっくり見つめてみることが最初の一歩だと思います。

井上:ライフサイクルの一時期であるということは、更年期は女性だけでなく男性もありますよね?

吉田先生:最近、男性更年期という言葉もよく耳にするようになりました。更年期の頃、女性ホルモンはガクッと急激に減少するため大きな症状が出ますが、男性ホルモンは緩やかに下がっていきますので、何の症状もなく過ごす人が多いのです。ただ、もちろん男性でも症状に悩まされる人もいますし、もしかしたら男性の方が我慢強くて、漠然とした不調を口に出さない人が多いのかもしれません。女性に限らず、男性も当事者意識を持って、会社の中でも更年期について気軽に話せる場があるといいですね。


【トピックス5】周囲のサポートが女性特有の症状を緩和する

吉田先生:最後のトピックスは、私たちの調査の中でも特に重要なポイントです。会社の中で、周囲の男性社員の理解がある、上司・同僚が頼りになる、職場の雰囲気が友好的だと感じている女性たちは、PMSや月経困難症、更年期の症状を感じにくいことがわかったのです。そういった女性特有の症状がない人の方が、仕事への意欲、仕事への満足度も高く、自分の健康に対する意識も高いことがわかりました。男性にとっても、女性特有の症状をきちんと知っておいた方が自分の健康を大事にすることにつながるかもしれませんし、職場全体の雰囲気も変わってくると思います。

井上:職場に限らず、家庭の中でも男性の理解があったり、時々気にかけてもらえると症状の緩和につながるかもしれませんね。

吉田先生:月経や更年期の症状は、育児や介護などの要因で悪くなることもあるでしょうし、家庭生活においても大きな課題です。家族として、いつでも相談し合える関係があるといいですよね。

これまでお話してきました女性特有の健康課題ですが、実は経済的にも大きなインパクトを与えているということがわかっています。女性特有の月経痛・貧血・PMSなどによる経済損失額の試算は、年間で約4,900億円です。人口減少、人手不足などの問題を抱えている日本だからこそ、女性も男性も、より良い健康状態のまま楽しく働き続けられる、そういう文化や環境作りがいっそう求められています。

──女性が働きやすい文化の醸成に向け、「個人」「コミュニティ(企業・アカデミア)」「社会」という3つの視点から活動している「まるのうち保健室」。今後の活動にもどうぞご注目ください。

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