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    ファムメディコ佐々木彩華さん

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さりげない気づきが、女性健診を心地よいものに変えていく
ファムメディコ佐々木彩華さん

さりげない気づきが、女性健診を心地よいものに変えていく

井上:思い返せば、佐々木さんとの出会いから3年がたちました。クレアージュ東京の開院場所を選定されているときで、「まるのうち保健室」の活動に共感してくださったことがきっかけで、丸の内に開院したい!とおっしゃってくださった時は、うれしくて胸がいっぱいになったことを今でも覚えています。そして、今回のまるのうち保健室プログラムでは、医療分野をファムメディコさんが担ってくださり、新しい視座で働く女性のサポートの形がうまれました。

佐々木さん:こちらこそ、まるのうち保健室さんとのコラボは非常に嬉しく思っています。本日はよろしくお願いいたします。

井上:まずはじめに、まるのうち保健室の印象についてお聞かせください。

佐々木さん:健康に向き合うとか、医療現場では担えていない部分を働く女性たちが”参加したい!”というモチベーションを持って集まってくる、足を運びやすい雰囲気づくりなどに工夫されていて素敵だなと思っていました。また、医療機関からの発信だと”難しそう”と敬遠されがちな女性の健康についても、まるのうち保健室が発信者となることで、女性達にも響いているんだなという印象を持っています。

井上:感覚的にですが、まるのうち保健室の取り組みを始めた2014年頃から、女性の健康に対する社会的な理解も生まれてきていますし、女性個人の健康などの価値観がすごく変化してきているように思います。「働く女性ウェルネス白書2022」でも感じるとこがありましたよね。

佐々木さん:そうですね。その背景の一つとして、女性自身が”自分の健康は自分で守ろう”という自立心が強くなってきており、積極的に情報を得ようとする方が増えていることが挙げられます。

井上:健康意識の高まりについては、今回のまるのうち保健室での助産師さんのカウンセリングの内容も、「不妊予防」「PMS・月経痛」「更年期」というような内容でしたが、そこからも見えてきますよね。例えば、今パートナーはいないけれどいつかの出産のために卵子凍結をするにはどうしたらいいかというような内容にも驚きでしたし、若い世代を中心にピルへの理解が広がっており、服用している人も増えている印象です

佐々木さん:ピルについては以前は避妊のイメージが強かったですが、最近は月経痛やPMSの軽減といった健康管理の目的で使用される方が増えてきており、そのような認識変容も、服用率の向上の要因ではないでしょうか。

井上:ピルに関しても価値観の変化が起きているのですね。

佐々木さん:当社20代の女性社員に、「ピルを服用していることを会社に知られたくないですか?」とヒアリングしてみたことがあります。すると、「特に恥ずかしいことだと思っていないので、知られてもても全く構わないですよ」という反応でした。”ピルを飲むこと=恥ずかしいことではない”という価値観への変化も進んでいるように思います。

井上:価値観の変化は、女性たちが自分のからだに関心を持ち、ヘルスリテラシーを高めて、自分で選択肢をもつということから生じているということですね。

佐々木さん:そうですね。例えば、月経痛の悩みからピルの服用に関する良し悪しを理解して自分で試してみる、そして、服用してみて良いなと思ったら、「ピルを飲んでみたら月経痛から解放された」なんて会話が周囲と生まれる。すると受け手も「じゃあ今度婦人科で話を聞いてみようかな」と自分なりに情報収集を行い、健康につながるアクションをはじめる。こうした環境の変化が起きている印象ですね。

井上:女性が実体験に基づいたアクションを起こしているのですね。こうした流れはピルだけでなく、他の健康領域でも起こっていますね。知ることや体験をすることが、実感を伴い、行動につながっていくとしたら、まるのうち保健室では、さまざまな事例や、トライできる環境づくりができたらいいなと思っています。

出産と子育てを体験したからこそ、見えてきた“健康が続く”ことの大切さ

井上:佐々木さんの原動力について聞かせてください。想いの中心にある”働く女性に伝えたいこと”は何なのでしょうか。子育てもされながら、新事業として会社を立ち上げ、医療というプラットフォームにいながら、健康啓発の大切さを実践されています。

佐々木さん:10年ほど医療コンサルティングのお仕事に携わってきましたが、働く女性の一人として、『働く女性がいつまでも自分らしく生き生きと働き続けられるために』、医療という立場から何かできることがあるのでは、という想いを抱くようになりました。その想いを強くしたのは、出産を経て子育てをするようになってからです。母心としても、こどもたちの成長もしっかり見届けたいという想いもあります。それには私が健康である状態を維持することが切実に求められます。

井上:がんの発症率などは男性に比べ女性のほうが働き世代に直撃するというお話を一生懸命してくださったことも印象深く記憶しています。30代後半から40代ということでしたよね。

佐々木さん:そうなんです。女性特有の疾患は、働く女性がキャリアを築いたり、出産や子育てをしたり、そんなタイミングでの発症が多いといわれているのです。「キャリアプランやライフプランの土台には健康がある」ということを強く意識してほしいなと思っています。

井上:健康がベースにあるということですね。

佐々木さん:そうです。理想とするキャリアプランやライフプランの実現に向けて、皆さんものすごく努力をされていると思いますが、それらと健康を切り離して考えている方が多い印象です。ですが、健康ではなくなってしまうと、どれほど努力をしたとしてもプランを変更せざるを得ませんよね。

井上:確かに、健康あってのキャリアプランとライフプランですね。こうした女性の健康に関わる課題を意識したことが、佐々木さんのファムメディコさんにおける活動の根っこにあるのでしょうか。

佐々木さん:そうですね。私自身も含めて、”女性自身が自分の健康問題についてもっと知った方が良いのではないか”という課題意識を持って活動しています。そのためにも、例えば「月経痛くらいで病院に行ったら怒られる」といった誤った認識を少しでもなくし、正しい知識を提供するためにも、情報発信の必要性を感じています。

井上:私自身も働く女性の一人ですが、まるのうち保健室の取り組みを通じて新たに知った情報はたくさんあります。女性ホルモンやAMHについてなど知らないことばかりでした。

佐々木さん:そうですよね。こうした課題意識もあり、まるのうち保健室さんとのコラボでセミナー等を実施させていただき、多くの働く女性に情報発信をさせていただきました。そのほか、生物学的性差に基づいた女性に必要な検査を社会の枠組みの中で提供する仕組み作りも課題と感じており、ファムメディコとして取り組んでいます。

井上:女性と男性だとかかりやすい病気は違いますよね。子宮頸がんや乳がんなど女性特有のがんもあります。

佐々木さん:働く世代のがんの発症率は、女性の方が圧倒的に高いのです。ただ企業によっては、企業健診に乳がんなどのオプションが付いておらず、別日に婦人科検診をしなければいけません。

井上:忙しく働く女性にとっては大変ですね。そして、その検査の必要性を理解していないと受診するという行動にも結び付かないということですよね。

佐々木さん:おっしゃる通り、特に忙しい女性はどうしても婦人科検診を受けられず、その結果女性の検診受診率が下がってしまう・・・。女性の意識の問題だと捉えられがちな検診受診率の低さですが、実はこうした仕組みに大きな原因があるのではないかと考えています。こうした課題意識もあり、クレアージュ東京では健康啓発とともに、女性に必要な検査をオールインワンで受けられる環境を整えています。

ストレスフリーな居心地の良い空間で自分との対話をしてもらう

井上:ホテルライクなクレアージュ東京さんの空間は参加者にとても好評でした。受診しやすい環境作りに注力されていますよね。

佐々木さん:恐らく女性の検診受診率を本当に上げようと思ったら、女性にしか分からない、ちょっとしたストレスにも目を向けて取り除いてあげないと難しいと思っています。例えば、下着を外した検査着の状態で、隣に男性社員が座るだけでもストレスに感じますよね。

井上:女性としてはすごくストレスですよね。

佐々木さん:強い言葉ですが、屈辱的という言葉を使う女性もいらっしゃいます。より多くの女性に婦人科へ足を向けていただくためには、性差に基づいた検査の提供といった仕組みと併せて、そうしたストレス低減への取り組みも必要だと思っています。

井上:当たりまえを変えていくことって大変ですよね。女性のストレス低減といった感覚的な部分は、すぐ御社内の男性従業員の方々にはすぐに理解してもらえたのでしょうか?

佐々木さん:最初は難しかったですね(笑)ただ実績が出ると「やっぱり、そうなんだね」と理解していただきました。本当に女性が良いと思う医療サービスを提供するには、結局この繰り返しが必要なのだろうなと思います。

井上:女性たちの共感と信頼の積み重ねが大切ですね。佐々木さんのそうした歩みが、女性のヘルスリテラシー向上や検診受診率向上に着実につながってくると思います。

佐々木さん:ありがとうございます。特に婦人科においては、これまでのように”困って来院した患者さんを助ける”だけでは不十分だと感じていますし、女性が抱える健康課題に対するソリューションを提供しつつ、共に歩んでいくという姿勢が大事だと思っています。これからも医療という立場から働く女性たちを支えていきたいと思います。


まるのうち保健室白書の作成をはじめ、プロジェクトに関わってくださった方々へのインタビューはこちら

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