<まるのうち保健室・第6回セミナーレポート>婦人科の基礎知識?月経・排卵・卵子のはなし *不妊治療のABC?
毎月一度は、私たちの身体に訪れる月経。月経周期(月経が始まった日を1日目とし、次の月経開始の前日までの期間)は25日〜40日が正常とされていますが、実は月経が通常通りあれば、排卵していると思っていませんか。
排卵の状態を確認するには、基礎体温の計測が必要です。忙しい毎日を送っていると慣れるまでちょっと大変かもしれませんが、できるときに、なるべく毎日計測し、グラフにしておきましょう。1ヶ月以上グラフにしてみて、基礎体温の変化が月経から排卵までの「低温期」と、排卵後10日から2週間続く「高温期」に分かれていれば、排卵していると診断されます。
この基礎体温の変化は、排卵に伴うホルモンの変化が関係しています。
まず月経の時期から「卵胞刺激ホルモン」と言われる「FSH」が分泌され、卵巣の中の「卵胞」の発育を促します。卵胞が育ってくると、次に「黄体化ホルモン」である「LH」が成熟した卵胞を刺激し「排卵」が起こります。排卵した後の卵胞は「黄体」となり、ここから「黄体ホルモン」である「プロゲステロン」が分泌され体温を上昇させます。妊娠に至らないと、黄体は消退してプロゲステロンも分泌されなくなり、基礎体温が下がって次の月経がはじまります。基礎体温をつけることで、低温〜高温のリズムがあるかが確認され、「排卵」の有無がわかるのです。
妊娠のプロセスは、まず卵巣の「卵管」と言われる管に排卵した成熟卵子がキャッチアップされ移送され、排卵後12時間から24時間内に、同じ場まで到達した精子と出会い、受精することから始まります。
1回の排卵で、その卵子が妊娠可能な良好な状態である可能性はなんと30%と言われているそう。一方、精子は1回で2〜3億個射精されますが、受精の場に到達するのはわずか300〜500個。このうち、受精に必要な精子はたった1個。
卵管の中で受精卵(胚と呼ばれます)は細胞分割を繰り返しながら卵管内を移動し、8日間をかけて子宮内に到着し、発育を開始します。これが「着床」です。
排卵した卵子と精子がタイミングよく受精の場で出会えても、その大部分は受精しません。また、せっかく受精卵となっても、妊娠の0.5〜1%は「子宮外妊娠(異所性妊娠)」という、子宮外に着床してしまう危険な妊娠なことがあります。妊娠を確認してから、強い腹痛を感じるようなことがあれば、できるだけ早く専門家に看てもらいましょう。
子宮内妊娠は、妊娠12週までに15~20%は流産となります。また、安定期に入っても、0.8%位赤ちゃんが外的、内的、様々な要因でなくなることがあります。妊娠・出産というのは改めて、とてもスペシャルなことなのです。
先ほど、排卵の仕組みでお話したプロゲステロンの他に、女性ホルモンには卵胞から分泌される「エストロゲン」という女性らしい身体の丸みや、肌の潤いを作る大切なホルモンがあります。平均的には、8歳〜18歳頃の思春期を迎えると、エストロゲンの分泌が始まり、身体が少しずつ丸みを帯び、十分なホルモン分泌量に達すると月経が始まります。18歳頃で性成熟期を迎え、女性は20〜30歳前半に出産適齢期を迎えます。
ただ、現代の日本では、職場でのキャリア形成を望む女性が増えたことで、平均的な出産時期は30代前半が平均となりました。昔は、10代の頃から出産し、生涯で10人前後の妊娠を経験する女性も少なくありませんでしたが、今は1〜2人が平均的。時代とともに大きな変化を迎えています。
一方で、女性が初経から閉経までに排卵する卵子の数はおよそ400~500個と変化していません。卵子は、女性自身が生まれたときに卵巣内に原始卵胞として保存されていて、年齢に伴い減少していきます。原始卵胞数の減少に伴い、30代後半から卵巣の働きは徐々に衰え、それに伴ってエストロゲンの分泌が減少し、更年期、閉経を迎えます。
もちろん個体差があり、40代以降でも出産をしている方はいらっしゃいますが、一般的な卵巣の仕組みを考えると、仕事と出産、どちらも20~30代に本番を迎えるというのが現実的、と受け止める必要があります。ホルモンの変化以外にも、母体年齢の上昇に応じて、35歳以降は流産率が高くなり、40歳代に入ると体外受精の成功率も低くなります。同じく、男性も40歳代に入ると妊娠に必要になる能力が低下すると言われています。
こどもを望んでいるけれど、なかなか妊娠しない。友人や同僚への相談はおろか、パートナーにも言い出しづらい。「不妊」についての正しい知識がなく、不安ばかり募る方も多いのでは。
酒見先生によれば、「不妊というのは、日本での定義で言えば、結婚をして普通の性生活を営んでいるのに、2年経ってもこどもができない”状態”のこと。カップルがお子さんを望んでいない場合には、たとえ不妊であっても「不妊症」ではありません。もちろん妊娠を希望していらっしゃる場合は、病気かもしれない、と気に病むことのほうが身体にも心にも悪いので、不安を感じたらまず受診しましょう」とのこと。
この定義でいうと、今日本には、一般的に約10人に1人が不妊症と言われています。前述のように、加齢と共に不妊症は増加傾向にあり、35歳以上は30%が不妊症。また、不妊症の原因は男性、女性共に持ちうるものですが、男性側の因子、女性側の因子は半々と言われているので、双方ともに受診することが大切です。
次に気になるのが費用や期間。基本的な検査(子宮卵管造影、ホルモン基礎値、精液検査など)を全て行なうのにかかる期間はおよそ1〜2ヶ月。基本的な検査の費用はトータル25,000円〜30,000円ほど(※ほとんどの検査が保険適応になります)が一般的です。その他、不妊治療についての知識を学び、タイミング指導を受けたりします。
さらに薬物療法や過排卵誘発、人工授精、体外受精、個々に応じて様々な処置を行なっていくことができますが、外来受診者の6−7割は体外受精に至らず、従来からの方法(タイミング法、基本的な薬物療法、排卵誘発など)で妊娠に至ることができるそうです。
こどもを産みたい!そう望んだら、一人で悩まず、まずは検査を受けてみることが大事。クラミジア菌や淋菌などの性感染症によって、知らないうちに卵子が通過する重要な通り道、卵管が閉鎖していることも。また、子宮頚部異形成・子宮頸がんや卵巣嚢腫、大きな子宮筋腫は、女性の健康そのものにも大きな影響を与える危険性があり、早期に発見することで、その後も安心して暮らし、無事に妊娠も望めるようになります。
「まずは気軽に検診に行ける婦人科のかかりつけの医師を見つけてもらいたいです。その方の希望や年齢に合った基本的な検査や治療方法を相談してみる。喫煙は厳禁です。過度の飲酒、生活習慣の乱れ、著しい肥満は男女ともに不妊のリスクを高める可能性があるので気をつけましょう。また、妊娠を望む女性は、望んだその日から葉酸のサプリメントを毎日400μmgずつ服用する事をおすすめします!」と酒見先生。
いかがでしたでしょうか?
一生つきあっていく女性ホルモン。より長く、自分らしく輝いて暮らし、健やかな出産を経験するためにも、望んだその日から、準備を重ねていきたいですね。
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