<まるのうち保健室特別セミナー第3回> 一度は知っておきたい女性ホルモンと骨密度について
「いつまでも若く、健康でいたい!」女性なら誰もが思っているそんな想い。美と健康のために、様々なアンチエイジングに取り組んでいる女性も多いでしょう。でも、そんな女性でも意外に知らないのが、女性ホルモンの正しい知識。女性の身体は99%が女性ホルモンに支配されているといわれるほど、重要な要素です。また、その女性ホルモンに大きく影響を受けているのが、今回のテーマにもなっている「骨」。
50歳頃になり、閉経を迎えると、女性ホルモンが一気に減少しますが、主な女性ホルモンとして知られているエストロゲンは、骨の新陳代謝に際し、骨吸収(※骨が溶ける速さのこと)をゆるやかにして骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きを持っています。閉経後、エストロゲンが減ってしまうと、骨吸収のスピードが速まるため、形成が追いつかずに骨がもろくなってしまうという仕組みです。
骨密度低下で発症する骨がスカスカになる病気、「骨粗しょう症」は日本人の約4割がかかる病気と言われています。主に女性がかかりやすい病気です。男性でも発症する人がいますが、ホルモンバランスの崩れで骨吸収のスピードが速まりやすい女性はよりかかりやすく、「骨粗しょう症は女性の病気」とも呼ばれています。
ただ、50代以降、低下し始める骨量ですが、実際のところ骨量自体は20歳過ぎ頃に最大骨量(ピークボーンマス)に達してます。20代から閉経までは骨量は維持されますが、閉経以降に一気に減少します。骨量減少症、骨粗鬆症はこの時期から急増し、骨折閾値よりも骨量が下がると骨折する割合が上昇します。骨粗鬆症や筋肉量が落ちるサルコペニア(筋肉減少症)などにより転倒の危険性と転倒による骨折が増加することになります。
一方で、日本人女性は戦前に比べ、平均寿命が87歳と大幅に伸びています。長生きすればするほど、閉経後の人生が長くなり、こうした女性ホルモンの低下により迎える生理的な身体の変化を長い期間、受け入れなければならなくなっているのが現実です。要介護防止のためには若い時の骨作り、骨量の維持のための栄養・運動と閉経以降の骨粗鬆症による骨折防止対策が重要な課題です。
骨粗しょう症には女性ホルモンの低下以外にも、遺伝的要因や栄養不良、身体を動かさずに過ごすと言った生活習慣も、大きく関係している事が分かっています。家系をトレースし、祖母や母親が骨粗しょう症を発症したことがないかなども調べて、早めに知り、きちんと備えることが大切です。
では、どのような状態になることが骨粗しょう症というのでしょうか?宮原先生によると、「背中が曲がっている高齢女性・・・これは単に背中が曲がっているのではなく骨粗鬆症により背骨の圧迫骨折を起こしている状態です」とのこと。厳密にいうと、骨粗しょう症は、鬆(す)が入ったように骨の中がスカスカの状態になり、骨がもろくなってしまうこと。その結果、わずかな衝撃でも骨折をしやすくなるそうです。
骨の強さをはかる「骨強度」は、「骨強度=骨密度7:骨質3」で考えられており、骨密度と、骨の質の両方を意識し、骨形成を意識していく必要があります。骨は一度できあがってしまうと、その後変わらないもののように思われがちですが、実は古くなり劣化した骨は、メンテナンスされて新しい骨へと生まれ変わっています。これが骨の新陳代謝です。骨の新陳代謝には、古くなった骨を溶かす破骨細胞の動きと、新しい骨をつくる骨芽細胞の働きによって営まれており、前者が骨吸収、後者が骨形成をさします。骨吸収が数週間続いたあと、数ヶ月にわたって骨形成が行われ、溶けた部分に新しい骨が埋められていきます。
健康な骨作りに必要なことはずばり、「適切なBMIと運動量の維持」です。骨というと「カルシウム」を想起する方が多いと思いますが、実はそうしたカルシウムに加えて、魚介類などからとれるビタミンDが骨代謝を盛んにし、キノコ類から摂取できるビタミンKが骨の形成を促してくれます。そして、たんぱく質は筋肉生成をサポートしてくれます。そうしたカルシウムやビタミンD、ビタミンK、たんぱく質をバランス良く摂取できるのが、細川モモさんも推進している和食の献立。一時、白米をはじめとした炭水化物を抜く「炭水化物ダイエット」が流行しましたが、大切なのはバランスです。極端なダイエットで失われるのは筋肉ばかりで、贅肉を落とすことはできず、身体に負担をかけてしまいます。糖尿病を患っていない限り、炭水化物は抜かず、栄養素をバランス良くまんべんなく吸収し、適度な運動を心がけましょう。
宮原先生によると、「まるのうち保健室」の参加者は骨密度の状態が低い人が少ないということです。これは、参加者に関東圏在住者が多いため、移動に車を用いる事が少なく、通勤の電車内でのつり革を持つことで腕の筋肉を鍛えたり、駅の階段の上り下りで太ももの筋肉を鍛えることができているから。特に丈夫な骨作りに有効なのが下半身の筋肉バランスをとることです。太ももの内側の筋肉を保つため、空気なわとび(なわとび紐などは持たず、ぴょんぴょんと一定時間飛び跳ねる運動)をするだけでも、効果が出ます。その他、歯磨きをしながら足をあげたり、スクワットやストレッチなども良いそう。ジムに通いハードな運動に取り組まなくても、毎日、日常的に少しずつ身体を動かし、筋肉生成をサポートするバランスの良い食事を意識するだけで、現状の骨量を維持し、育てることができるんですね。
骨形成を意識する一方で、骨吸収を育てる女性ホルモンについても良く知る必要があります。女性ホルモンには、女性らしさと健康を司るエストロゲンと、妊娠にかかわるプロゲステロンがあり、前述の通り前者のエストロゲンが、骨の新陳代謝に際し、骨吸収をゆるやかにして骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがあります。
現代女性は、職場環境をはじめとした女性を取り巻く環境によって、ストレスや偏った食事、睡眠不足などに悩まされ、ホルモンバランスの乱れを引き起こし、これが肌荒れ、冷え性、肩こり、頭痛、便秘などがの原因となっています。一方で生涯の月経回数の多さも大きな原因となり、現代女性はホルモンバランスが乱れがちと言われています。
戦前に比べ、現代女性は晩婚型で、出産時期も遅く、妊娠・授乳中の期間が短い傾向にあります。妊娠・授乳期間は月経が止まるので、戦前の女性は月経回数が少なかったのですが、その分月経回数が多く、卵巣と子宮を疲弊させてしまっています。また、妊娠・授乳期間中は骨密度も減少しますが、その後断乳を行う事でリカバリー能力を発揮し、より良い形に戻す事ができます。「妊娠はできるだけした方が良く、また、出産後、最近はかわいがりすぎるあまり、断乳が遅くなる女性が多いですが、思い切って断乳し、リカバリーさせましょう」と宮原先生。
月経は、妊娠のためのメカニズムです。女性は、一ヶ月の間だけでも、月経期を中心に心身ともに快調な時期もあれば、どうしても自律神経が乱れ、肌も荒れやすくなる時期もありますね。この流れに振り回されるのではなく、時期をしっかりと認識し、疲れやすい不調期には無理をせずゆっくりと時間を過ごし、美ホルモンが分泌される時期にはアクティブな予定を入れて思い切り楽しむなど、行動するようにしてみましょう。
未来のことを考えながら、今の自分の身体を大切にする。そのためにも、かかりつけの婦人科医を見つける、または、年に一度でも婦人科検診を行うように婦人科通院を習慣化させるのはいかがでしょうか。日本人女性は、あまり自身のかかりつけの婦人科医を持たない傾向にありますが、欧米では当たり前のこと。安心して相談できる医師を持ち、輝くこともできますが、傷つきやすい女性の身体を大切に育ててあげましょう。
細川さんからも、「女性の健康は生涯変わりやすいもの。今日宮原先生にお話し頂いた骨のお話もさることながら、ホルモンバランスと身体の仕組みは密接にひもづいています。運動、食事、それから日光浴。この3点に気をつけながら、女性のステージ別の悩みを克服していきましょう。女性の健康力を守る事で、日本を強くしていきたいですね」とメッセージをいただきました。
次回は12/26(金)「働く女性のための基礎料理学」に関する特別セミナーを開催します!お楽しみに。
☆おまけ
10月末より「おだしでキレイ習慣キャンペーン」を展開している株式会社にんべんからも、ミニセミナーがありました。
まるのうち保健室参加者限定で募集している「だしアンバサダー」は好評につき多数の方が応募されていますが、まだまだ引き続き募集しているとのこと!2015年からは丸の内シェフズクラブとのコラボイベントなどもあり、「だしアンバサダー」になると優先的にイベントに参加することができるそうです。おだしを食卓に取り入れ、女性ホルモンや骨形成にも効果的な食習慣を実践したい方は、ぜひふるってご参加ください。