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あなたをカタチづくるもの Vol.1 真矢ミキさん 「人様の人生を演じるからこそ フラットな自分も大切にしたい」

朝の情報番組と女優業 実は円でつながっている

「これ見て!」と言いながら鍋のフタを開けた、笑顔の真矢ミキさん。朝の生番組を終えたばかりだというのに、とても元気一杯だ。大好きなおかゆを食べている最中にカメラを向けられても、「私、本当に食べるのが大好きだから大丈夫よ」と場を和ませてくれる。女優だからというだけではない、この明るさには秘密がありそうだ。

「朝の情報番組『ビビット』からMCのお話をいただいたのが2年半前。ちょうど、もっと役者業を頑張りたいと試行錯誤していた頃でした。そんな時だったので、『どうして私なの?』と、嬉しい反面、迷いもありました。『自分の言葉を持っている方だからです』と言われて、そんな自覚はなかったけれどありがたいなと思いましたね。番組では時事問題や芸能情報に毎日触れているわけですが、最初は、『同業者のことをこんな風に言っていいのかな』と戸惑いもありました。だけど、自分だっていつ事故や事件に巻き込まれるかわからない。2年半やってわかったことは、まさに〝丸のなか〟(笑)。全部が円のようにつながっているということなんです」女優業をもっと極めたいと思っていた時に舞い込んだ、一見芝居とかけ離れた番組MCの仕事だが、いざやってみると、思わぬ産物が生まれたそう。

「私は女優として、別の人間をいつも演じさせてもらっています。いいお芝居をするためには、たくさんの経験を積み、いろいろなことを見聞きする。そしてそれらの一つ一つに感想を持つことが大事だと思っているんですね。この番組に携わるまでは、事件や事故のニュースを見ても気の毒だなと思うだけで済ませていた。だって考えすぎると自分も苦しいから。でも今こうして毎日いろいろなニュースに触れているうちに、これは誰にでも起こりうることなんだということがわかってきたんです。それってとても役作りに似ている。どんな経験も無駄にはならないのだと気づいたんですよ」

番組内での真矢さんの立ち居振る舞いは、とても自然だ。自分の考えを素直に、深く考えたうえで言葉にする。知ったかぶりをすることもしない。

「自分がこの場で真剣に話している様子を、カメラに客観的に映してもらっているということも、私にとってはすごくいいことなんです。もちろん映っているという意識はありますけど、まずはスタジオでやるべきことを真剣に行う。時に戦ったり、時に共感したり、泣いたり笑ったりする。その後にドラマの撮影現場に行くと、すごく素の自分でいられるようになりました。舞台出身の人間なので、以前はカメラをすごく意識しちゃっていた。でも、もうどうせ私がどんな人間かなんてみんなに知られちゃっているんだから、今さら繕うこともないわよねって思ったら、自然にカメラの前に立てるようになりました」

 

フラットな自分に返るため電車に乗って家に帰ることも

 先頃、最終回を迎えた連続ドラマ『さくらの親子丼』では、訪れた人に親子丼を振る舞う心優しい古本屋の店主さくらを演じた真矢さん。こんな役を演じるようになったのは、意外にもここ数年のことなのだという。

「宝塚歌劇団を退団した後、元男役の私にやってくる役というと、ハイヒールでカツカツと歩くようなバリバリのキャリアウーマン役がほとんどでした。だから撮影以外のところでもそういう女性でいなきゃいけないと、常に気を張っていたんです。それがこの朝の番組によって、私のダメなところも全部放送されるようになった(笑)。すると以前とは違う、人間味のある役のオファーが急に増えたんです。それは本当にありがたいことですし、意外なことでしたね。大人になってから勇気を出して一歩踏み出すと、逆に開眼することがあるんだなって。あのまま番組をやらないでドラマだけをやっていたら、今頃、全然違うタイプの女優になっていたでしょうね」ドラマの中でさくらが親子丼に大きな意味を感じているように、真矢さんにとっても食は大切な存在だ。

「この役を演じて改めて思ったんですが、私もやっぱり食べないと動けないんですよね。私、普段は本当に穏やかにいようと心がけているんですけど、たまに落ち込んだりすることもある。それってお腹が空いている時なんです(笑)。逆に言うと、自分の心を満たしてくれる食と、心を癒してくれる人に触れていたら、私は何があっても大丈夫な気がします。さくらさんのように私もごく普通の家庭で育ちました。平凡な家庭で育ったという気持ちは、常に持っているようにしています。芸能界という一見華やかな世界で過ごした後は、いつも家族や友達が気持ちを元に戻してくれる。何より私自身が、その気持ちに戻りたいといつも思っているんです。もちろん急いでいる時は送り迎えやタクシーを利用させてもらうこともあるけど、できるなら普通の感覚でいたいから、自分を鎮火させるために、時々は電車やバスに乗って帰るようにしています。そうじゃないと、どうやって人様を演じられるのって思っているところがあるんです」

 

大人ならではの人生の楽しみ 好奇心を持って動き続けること

小さい頃から親に厳しく「普通でいなさい」としつけられてきたという真矢さん。当時はそれが嫌だったけれど、今はこうしてたくさんの人たちの共感を呼んでいる。

「今年のクリスマスにディナーショーをやることになりました。今年は会場がホテルなので、大人のためのユーモアのある時間にしたいと思っています。ユーモアもありながら、ドラマチックなもの。大人の醍醐味みたいなエンターテインメントを作りたいです。歳を重ねていろんなものを見てきたことって財産ですよね。酸いも甘いも噛み分けてきた大人の人たちに、『その酸いの部分ってちょっと笑っちゃいません?』って一緒に笑い合いたい。まだ払拭できないことがあっても、みんなで感覚を共有できるだけで楽しいと思うんです。たくさん笑って、また明日が来ることを楽しみにしてほしい。これは私が舞台で培った、お客様への思いでもありますね」どんな話題にも目をキラキラさせて答える真矢さん。「もちろんしんどい時もありますよ」と、これまた包み隠さずあれやこれやと話してくれる。時には曇ることもあるけれど、みんなに求められる太陽のような人だ。そんな真矢さん自身の原動力は何なのだろう。

「私の原動力は、探究心、好奇心、自分の中の少年性かな。うーん、字にするとカッコつけて見えちゃいそう(笑)。でも本当に私の中に少年がいるんです。生まれて半世紀経ったけれど、まだ見ていないことがいっぱいあるような気がしていて、時間が足りないんです。時間がない、どうしよう、次はどこを見てみたい?って、いつも自分に問いただしてる。それに加えて、人が導いてくれた偶然性も大事にしていますね。私、逆らわないことにしているんですよ。やってきた波には乗ってみる。親が転勤族だったからかもしれないけど、郷に入れば郷に従ってきた。好きな言葉は、『流れる水は濁らない』。仕事の仕方も流動的でありたいと思うし、毎日同じ仕事をするよりは、違う仕事をしたほうがいい。水みたいに生きたいんです。大人になるととかく型にはめたくなって、『いえ私は大丈夫です』なんて言いがちなんだけど、そうじゃなくて、逆に自分の中についた余計なものを削ぎ落としていきたい。大人になっても、『こんなくだらないサビがまたついちゃった』なんて笑いながら、自分の力で落としていきたいな。人生の後半は、そんな気持ちで生きるのはどうだろうって、今思っていますね」


蝦夷鮑のお粥
3,200

供されたのは蝦夷鮑のお粥。オーナーシェフ脇屋友詞の出身地である北海道産の天然鮑を贅沢に使用した逸品。上湯スープで柔らかく炊いたお粥に、煮込んだ鮑を汁ごと加え、シンプルながら深みのある味わい。「この部屋で鮑のお粥を食べるのが自分へのご褒美」と語る真矢さん。「優しい味で、身体に優しくて、疲れた胃にもいいですよね。飲み会続きの方にもオススメですよ」

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