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知識とマネジメント力で乗り切れることもある!?  セミナー「不妊治療って、いつからどんなことをいくらでするの?不妊治療AtoZ」ダイジェストレポート

今回のセミナーのゴールは「不妊治療に掛かるお金と時間の負担」「周りに治療中の方がいたときにどのようなサポートをすべきか」を知ること

今回の登壇者は、ファミワン代表看護師の西岡有可さん。不妊症看護認定看護師、看護学修士でもあります。西岡さんは、まず今回のセミナーのゴール地点を提示。「不妊治療のお金と時間の負担を知る」「サポートする側のDo‘s&Dont’sを知る」の2点を挙げました。

不妊治療について触れる前に、まずは前提として知っておきたい不妊の原因について説明。

「男性3割、女性7割くらいだと思っていらっしゃる方が多いかもしれませんが、実は割合は半々。男性側にもうまくセックスができない、精子が上手くできないといったさまざまな因子があります」と西岡さん。

続けて言及されたのは、年齢と妊娠・生産率の関係です。グラフを用い、女性の年齢により妊娠率が下がること、流産率が上がることを説明。妊娠率、流産率ともに急降下、急上昇の境目になっているのは「35歳」だとし、「人間はどうしても年齢によって変化していく。それは自然なこと」と話しました。

また、若年層であっても妊娠率は100%ではなく、流産率も0%ではないことにも触れ、若くても妊娠するために医療の力が必要な人がいること、流産は4~5回の妊娠で1回自然に起きるものであることを説明。不妊や流産は他人事ではなく、自分や身の回りで起こり得るものだと伝えました。

 

病院を受診する適切なタイミングはいつ?病院では何をするの?

では、なかなか思うように妊娠しなかった場合、病院を受診する適切なタイミングはいつなのか。この疑問に対し、西岡さんは「年齢によってタイミングが異なり、年齢が上になればなるほど検査受診すべきタイミングが早まる」と言います。以下は、妊活開始から検査受診を判断するまでの期間です。

・~34歳まで:1年
・34~39歳:半年
・40歳以上:妊娠を希望した段階

病院を受診すると、まずは妊娠しない原因を探るため、検査を行います。検査は男女ともにあり、女性の方が検査すべき項目が多くなっています。

検査項目のうち採血は健康診断でも行われますが、「妊活に絡む検査は健康診断に基本的に含まれていない」と西岡さん。採血でわかる不妊の原因があると説明しました。

また、いきなり病院に行って精液検査を受けることが億劫だと感じる男性に対しては、「今はスマートフォンでセルフチェックできるキットがある。3,000円程度で購入できるため初めの一歩として取り入れてもらえれば」と紹介しました。

 

検査は、時期が読みづらい女性の生理の時期に左右されるため、仕事との両立は困難

妊娠しない原因を探る検査は、女性の生理周期の各段階に合わせ、1カ月で3~4回通わなければ一連の検査を完了できないそう。1日の受診ですべてが終わらないこと、生理開始日の把握は難しく、特に仕事をしている方は休みの日に合わせて検査の予定を入れられるとは限らず、治療の前段階である検査の時点から、仕事との両立は難しいと説明しました。

<不妊検査について知っておきたいこと>
・検査は、妊娠しにくい原因、妊娠できる身体かどうかをチェックする
・費用:5万円程度
・時期が読みづらい女性の生理周期に合わせて、1カ月うち3~4回の受診が必要

 

「不妊治療」とは具体的に何をするのか?いくら掛かるのか?

検査によって妊娠しづらい原因がわかったら、いよいよ治療となります。治療は以下の3ステップに分かれます。

1stタイミング法
2nd人工授精
3rd体外受精・顕微授精

原因がない場合はタイミング法からステップアップしていくことが基本的な流れですが、年齢によってはいきなり3rdステップからスタートすることもあります。徐々にステップアップする方が多く、ステップアップの目安は6~7周期ごとです。

原因がある場合は、原因によって適した治療は異なります。

・卵子が育ちにくい方:排卵誘発剤を使用してみる
・性交渉が難しい、予定が合わない、精子が少ない:人工授精
・卵管が閉じている、元気な精子が少ない:体外受精

他の病気と同じく、原因によって適切な治療方法を選ぶことが大切です。

それぞれの治療法のポイントは以下のとおりです。

<タイミング法>
・受診:2~3回/月
・費用:3万円程度
・特徴:自然妊娠とほぼ変わらない。受精できるリミットは精子48時間、卵子24時間の月2日であり、そのタイミングの特定を病院で行い、性交渉を持つべき日を教えてもらう。人によっては薬が必要となり、その場合は費用が上がる。

<人工授精>
・受診:3~4回/月
・費用:5~7万円程度
・特徴:自然妊娠から性交渉を抜いたもの。チューブで精子を送り込み、受精や着床は自然妊娠と同様。自然妊娠の場合、精子はフルマラソンほどの長い距離を移動して受精に至るが、人工授精の場合はハーフマラソン程度までになる。そのため、精子の運動量が少し悪いケース、機能的に性交渉が難しいケースに適している。

<体外受精>
・受診:5~7回/月
・費用:50~70万円程度
・特徴:卵子を育てて受精させる治療法。針を刺して選んだ精子を送り込む顕微授精、シャーレに卵子と複数の精子を入れ、自然に受精するのを見守る一般体外受精とに分かれる。受精後、着床直前の状態の受精卵を子宮内に戻す。費用は薬の使用、卵子が何個取れるか、顕微授精の有無といった条件で変わる。受診回数、費用など、負担が大きな治療。

通院開始から治療費の総合割合としては、100~200万円が最も多くなっています。しかし、西岡さんは「これはこの金額をかけたら妊娠したというデータではありません。見方を変えれば、治療に掛けられる金額の目安でもあります」と注意。これは「100万円までは治療費をかけられる、それで妊娠しなければ治療から離れる」と決断した人も含まれるデータなのです。

また、2022年度から始まる保険適用化については、「年齢制限、回数制限といった条件がつくでしょうし、すべてが3割負担になるのではなく、自費部分が残る混合診療になるだろうとも言われています。今ある自治体の助成金制度と保険適用されたあとと、どちらが経済的に助けとなるのかは人によるため、サポートする側は『保険適用になって良かったじゃない』といった安易な声掛けに注意です」と説明しました。

 

最も負担が重い「体外受精」をする場合は、病院の指示に従って「次はこの日」と決められた日に通院の必要がある


図の「Day1」は生理開始日。その後の流れをカレンダー上に表示しています。生理開始日が読めない上、生理2~3日目には1回目の通院が必須。その後、病院の指示に従って「次はこの日」と決められた日に病院に通わなければなりません。仕事との両立がいかに大変か伝わります。

できる工夫として、西岡さんは以下の3点を挙げました。

・注射期間は自己注射を選べば通院が不要に
・受診日は1日ほど後ろ倒しも可能。病院側とも相談を
・採卵は午前中に実施するため、入りそうな週は見越した予定を立てておく。また、採卵になりそうな週の目安を病院側に尋ねてもOK

 

検査・治療の前にできること

本格的な検査、治療を行う前にできることとして、西岡さんは以下を挙げました。

・健康診断、子宮頸がん、乳がん検診
・本人、家族の持病のチェック(主治医への確認)
・予防接種;風疹、麻疹、新型コロナウイルス感染症など

女性特有のがん検診以外の部分は、男性でもできる部分です。自治体によってはパートナーの分の接種助成があるケースがあるため、事前に確認するといいでしょう。また、男性側ができることとして、「精子のチェックも必要だと頭に入れておくこと」も挙げられました。

予防接種に関しては、風疹や麻疹などは接種後2カ月の避妊が必要です。新型コロナウイルス感染症は随時変更されているとし、現在は妊活中、妊娠中いつでも接種可能であり、むしろ優先接種の対象となっていると紹介。1回目と2回目の間隔が出産などで3週間以上空いてもいいとも説明しました。

 

自身が当事者でなくとも、職場でいつ誰が不妊治療の当事者となるかは分からない。そんな時に一緒に働く仲間をサポートするため、知っておくべきこと

最後に、不妊治療を検討している当事者だけではなく、サポートする側の立場の人がすべきこと、すべきでないことについて。すべきこととして押さえておきたいのは、「妊活に関することはプライベートなことだという意識を持つこと」や「業務上の調整など自身が協力できる範囲を伝えること、良かれと思ってアドバイスをしないこと」、また他にも、今回のようなセミナーを受けてきたことを雑談の中で話し、周囲で当事者になった方がいた場合に相談しやすい雰囲気を作るなどの紹介がありました。

すべきでないこととしては、「結婚したんだから、そろそろ子どもがほしいでしょう?」「妊娠はまだ?」など、無意識に出てしまう言動。こうしたアイコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を自身が行っていないか、意識を向けてみることが大切とのことです。

参加者からは「避けるべき発言を上司に知ってもらうにはどうしたらいいですか」との質問も寄せられました。西岡さんは、「今回のセミナーはアーカイブの視聴も可能なので、受けてみた感想と共に誰でも見ることができる社内掲示板などで共有いただくなどしてもらえれるとよいと思う」と回答。

今回はテーマを「不妊治療」にフォーカスしたセミナーでしたが、「ファミワン×まるのうち保健室 ウェルネスプログラム」では他にも、

・男性社員や管理職も必見!ドキドキ不安・・・。産休・育休・保活~復帰までスムーズに迎えるためのポイントは?
>>https://wf20211019.peatix.com/

・女性の機嫌はホルモンに左右される!?男性も女性も知っておくべき、女性とホルモンの関係
>>https://wf20211109.peatix.com

・『なんだかやる気が出ない』実は男性にもある、更年期について向き合うためには
>> https://wf20211214.peatix.com

など、現在当事者の方、今後もしかしたら当事者になるかもしれない方、また、職場で当事者の方を支える立場になるかもしれない方、職場における全員を対象に、基礎知識を持って相互を理解することで誰もが働きやすい環境づくりにつながることを目指した、様々なテーマのセミナーを12月まで開催しています。(開催済みのセミナーもお申込みいただければアーカイブ動画を視聴いただけます)

また、臨床心理カウンセラー、看護師などがヘルスケアやキャリア、人間関係など、様々なお悩みを伺う個別カウンセリングも実施中。↓の画像をクリックするとスケジュールをご確認いただけます。

 

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