About

「食育丸の内」とは、三菱地所の「都市と食に関する問題」に取り組むプロジェクトの一環です。「食」に関する様々な活動を通じて、生産者、消費者、レストランが共に手を携え、人々が一層、心身共に健康になれる社会づくりを目指し活動していきます。

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Chef's Club

丸の内エリアを中心に活躍されている、日本を代表する和食・フレンチ、イタリアン、アジアン、4ジャンルのシェフ26名によって構成される「丸の内シェフズクラブ」。ただ、調理するではなく、食育を合言葉に、実際に生産地に足を運んだり、子どもたちへの食育授業など様々な提案、イベント発信などを行っています。

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Contents

マルシェに行こう
イートアカデミー
旬のシェフズランチ
子どもの食育ウェルカムキッズ
シェフの履歴書
服部幸應の食育のツボ
私を育てた『あの時、あの味』
元気になるニッポンの味めぐり
ラブテリ東京&NYヘルスリテラシー向上委員会
Will Conscious Marunouchi
おいしい教室~お弁当のじかん~「第7回 わたしを喰らえ」

 食育丸の内プロジェクトの一環としてSoup Stock Tokyoの代表、遠山正道さんをホストに連続7回開催されるシリーズワークショップが丸の内で開催されました。
 今回で最終回を迎える第7回では 「わたしを食らえ」というテーマのもと、映画監督の安藤桃子さんをゲストにお迎えし、共にお弁当の話をしていきます。
 安藤さんは、2014年秋に公開予定の映画「0.5ミリ」を既に撮影され、現在公開準備中とのこと。映画作りのお話と、食について、興味深いお話を伺いました。

 前半は安藤さんの映画やクリエイティブな活動について伺っていきます。
 お父様を俳優の奥田瑛二さんに持つ安藤さん。「男のダンディズム」という本を出版されているほどの奥田瑛二さんは、知的でもの静かでダンディというイメージがありますがもしかしたらコメディ映画にむいているんじゃないかと話す、安藤さん。チャーミングでお茶目なお父様だと語ってくれました。

 主人公のサワちゃんが介護ヘルパーとして老人の家に押しかけヘルパーをして自身の人生を探って行くというドラマを描いた、安藤さんの小説家デビュー作品「0.5ミリ」について、遠山さんの反応は「凄い本ですね、壮絶というか、どろどろというか、、とにかくびっくりしちゃいました」というもの。この反応、男性と女性ではっきりと2つに別れるそうで、遠山さん は「俺読んでいて、人生ってどうなるのって考えたし、衝撃的、グロテスク、桃ちゃん大丈夫?見たくないものを見せつけられたっていう印象なんだけど!」で、逆に女性は「面白かったです~笑いました!」となるそう 。

 「物語の中で、押しかけヘルパーのサワちゃんが、ある街で、ある事件に巻き込まれ、さまざまな老人のヘルパーになっていく。サワちゃんが触れていくのは一般的に人が見たくない、でも向き合わなければならないさまざまな現実や感情。この彼女の生き方を通して読者に問題提起してくることこそ、男性にとっては見たくない部分を見せつけてくる感じがあるのかもしれません。『押し掛ける』ことによって人と人の『完全なる摩擦』を起こしたかったんです。」ときっぱりと語る安藤さん。

 「仕事でも家庭でも『摩擦』は極力回避していきたいものなんじゃないか?」と遠山さんが返すと、安藤さんは「私は逆に『摩擦をおこせーっ』て叫びたいくらい。摩擦を起こすべきだと感じているんですよ。摩擦といっても、恋人同士が愛し合うことも、ふれあうことも摩擦であるし、そうすることでしかコミュニケーションは生まれていかない。」

 介護について題材に選んだのは、ご家族みんなでおばあちゃんの介護に取り組んだことがきっかけだったといいます。在宅で8年ほどかかった介護は、家族の関係を崩壊させかねないほど壮絶なものだったそうです。もともと日本には、死に一番近い老人と生に一番近い子どもが、神に最も近い存在として、大切に敬われて来た文化があったからこそ、真ん中にいる私たちの世代もしっかりと生きられる。本当の意味で輪になっている社会だったのに、現代社会では崩壊してしまっている。そこに怒りを感じたことが、小説を書いたきっかけだったそうです。

 すでに昨年の3月4月に高知県で撮影をすませ、今年の秋頃に公開を予定している本作品。撮影から長い時間をかけて上映にこぎつけるまでに、相当の努力が必要なのが日本の映画界だと教えてくれました。日本の映画界のシステムは、大手映画会社は劇場やシネコンを持ってますが、独立系のプロダクションや個人の監督は基本的に、単館系の劇場を探すところから始めなくてはなりません。劇場の力が強くて、製作費をすべて自分たちで集めてつくっても、興行収入も劇場と折半になってしまいます。さらに、配給会社の割当も発生しますので、ほとんど利益が残らないどころか赤字になる作品も多く、 独立系のプロダクションはどんどん潰れていくのが現状なのだそうです。

 撮影した高知県にて、何度か上映会を開催したところ、老若男女、みんな大爆笑してくれたとのこと。もしかしたら、コメディ映画なんじゃないかというほどだったそうです。「なかでも上映後におばあちゃんが『ううううう』って声を詰まらせて、『ありがとうございました、老人に光を与えてくださいました』と、涙して下さった事もありました。3時間16分あるんですが、みんな惹き付けられて観てくれた」とのこと。「監督として作品を作っていくことは自分をさらけ出しているので、全裸で舞台に立つほうがマシだと思うほど緊張するし、怖いです。でも、そんな究極の状況で、誰かに伝わった......と思えた瞬間、本当に、感極まります。」と安藤さん。

 猛進していくエネルギーはどこから湧いてくるのか伺ったところ、初監督した映画「カケラ」を撮る前に、お父様に言われたことを教えてくれました。「『崖からとびおりる覚悟を持たない者には、空を飛ぶ権利はない』初めてのことって、実際にやってみないと分からないことだらけですが、ひとつ自分に約束しようと思ったのは、『120%、もう絞れません!』と思えるまで力を出し切るようにしようと。そうすれば、その結果が、たとえ未熟なものでも、間違えても、その時の自分を振り返って、後悔はしないだろうと考えています。当然、売れなければならないという意識はありますが、その前に作品としてはっきりと方向性を見定めていくことも監督の仕事。黒か白かを大胆に判断しなければならないこともあります。それをグレーにした瞬間に黒を見たい人も白を見たい人も両者を失ってしまう。」

 「大変な思いをしながら映画作りを経ていくと、文化こそが資本主義を動かすものなのではないか?と思えてくる。」と安藤さん。「文化」を本来あるべき形にしたい。もし、映画一本で生きていけないなら、そういう同じ強い思いを持つ人達が一緒になって立体的に助け合える環境を生み出せばいいのではないかと、現在、映画撮影中に縁のあった高知県にて、映画を軸にした複合的に発信していける施設をつくれないかと企てているそうです。「正しいモノづくりで稼げない世の中なら、稼げるようにシステムを変えたいんです!」と決意を語ってくれました。

 さて、今回の安藤さんからのお弁当のテーマ「わたしを食らえ」は一体どういう意図があったのでしょうか。「そもそも、誰かがつくったものを食べるってどういうことだろう?と考えました。生まれた瞬間から死に向かう人の、人生の矛盾の中で、時間は命そのもの。その時間を費やしてお母さんがつくってくれた料理を食べるということは、お母さんの命を食べているのかも知れない。もっといえば、お米をつくったお百姓さんの時間=命も食べているし、その後ろにあるたくさんの人の命、そして素材そのものの有機物の命も食べている。当たり前ですが、私たちは日々命をいただいて生きている。そう考えて、このテーマにしてみました。」と安藤さん。

「なるほど。この深い意味をきいた後で、私のお弁当、出しにくいのですが(笑)」と前置きして、遠山さんが作った弁当は色鮮やかな緑色のお弁当。「Carré de sushi unrouleau au concombre et caviar(胡瓜のカッパ巻かず キャビアを添えて 石畳風)」です。「このテーマを聞いた時に、自分のコンプレックスを思ったんです。私は海外経験がなく、英語も英検20級とかいってるほど、西洋文明にコンプレックスがある。そこで、見た目はヨーロッパの宮殿のモザイクのようなんだけど、ものは何かというと、「胡瓜のカッパ巻かず」(笑)。胡瓜と海苔なんだけど、やっぱり西洋かぶれなんで、キャビアも盛って。西洋へのあこがれと日本の良さを合併して、自分のコンプレックスを食っちゃおうと。」と遠山さん。

 そして、安藤さんのお弁当は......。シンプルで美しいおむすびでした。「超シンプルに握り飯、なんですが、この中にストーリーがありまして。中央は中に梅紫蘇が、両脇には梅味噌が入っています。これは自分で3年前くらいに漬けた梅干しと自宅で穫れた紫蘇を合わせ、味噌は、友人が大豆から自然農法でつくったもの。ご飯は妹が四万十でもらったもので、塩は自然蒸発でつくった海の塩。そして、おばあちゃんがつくったぬかで漬けた胡瓜をおしょうゆで漬け直した漬物と、お母さんが25年前に漬けた梅干しを添えて......。「私をくらえ」のバックグラウンドには、めちゃくちゃ丁寧な時間がかかっているんです。しかも竹皮に包まれているから、食べたら、捨てても土にかえる、何も残らない。」

 生徒さんのプレゼンテーションは最終回ということとトンチのようなテーマ「わたしを食らえ」という難問に対して素晴らしいお弁当が出揃いました。それぞれの「わたし」の捉え方と「食らえ」という動詞の解釈が、自分自身であること、素材自身であること、相手であり自分であり、とにかくたくさん考え抜かれたお弁当がずらりと並びました。

 今回の全員投票で選ばれた作品は以下の通り。

 "印象的だったお弁当"はポンパドール婦人の、婦人的「上から目線」で"くらえ"を捉えた石井眞希さんの【マルキーズ人形のお弁当】でした。スカートは、さくらでんぶのバターライスの中にマッシュポテト、ズッキーニとマッシュルームのグリル、豚肉と香味野菜のローストなどを入れ、スカートを切ったとき、流れ出るようにと、半熟卵も入れ、安藤さんを唸らせていました。

 "おいしそうだったお弁当"は、大谷尚史さんの【コンソメとテリーヌ3種】。自分をさらけ出す「輪切り」「スキャン」を連想し作ったというモダンな出で立ちのお弁当。肉のテリーヌ、野菜とフルーツのゼリー寄せをつくりました。肉のテリーヌは豚バラと鶏レバー。野菜は鎌倉野菜を使い、まる3日間かけてつくったコンソメのジュレを流し込みました。コンソメのべっこう飴も添えられて鮮やか。味も遠山さんのお墨付きです。

 今回のテーマである"わたしを食らえ"な、お弁当は太田恵梨さんの【私の歴史のお弁当】自分の好きなお米とチーズを使って自分の歴史をお弁当にしました。まずは、離乳食としてチーズおじや。母のつくったお弁当の中で、こけしのお弁当が印象的だったのでチーズを使ったこけしのようなおにぎり、そして中学や高校の時に好きだったチーズもち、大人になってから好きになった、ミモレット。最後は、将来、供えてほしいという思いで、マスカルポーネを使ったおはぎを作りました。

石井眞希さんの「マルキーズ人形のお弁当」 「マルキーズ人形のお弁当」 大谷尚史さんの「コンソメとテリーヌ3種」 「コンソメとテリーヌ3種」 太田恵梨さんの「私の歴史のお弁当」 「私の歴史のお弁当」

 今回で最終回となった、イートアカデミー「おいしい教室〜お弁当の時間」です。

 全7回中、さまざまなお弁当が集まり、それぞれの方の食の歴史、味覚、考え方をお互い学び合うことのできる貴重な時間になりました。また遠山さんをはじめ、個性豊かなゲストのみなさんの、斬新な、または再び新しい、そして改めて見直すようなお弁当の数々にはそれぞれの方の生き方が色濃く映し出され、食と人生はやはり隣り合わせにあり、どちらが欠けても成り立たない、無くてはならないんだなと感じることになりました。本当におつかれさまでした。

安藤桃子(あんどうももこ)
1982年東京生まれ。高校時代よりイギリスに留学、ロンドン大学芸術学部を次席で卒業。その後ニューヨーク大学で映画づくりを学び、監督助手として働く。2010年4月、監督・脚本を務めたデビュー作『カケラ』が、ロンドンのICA(インスティテュート・オブ・コンテンポラリー・アート)と東京で同時公開され、その他多数の海外映画祭に出品、国内外で高い評価を得る。2011年に幻冬舎から初の書き下ろし長編小説『0.5 ミリ』を刊行。現在、文庫版が幻冬舎から発売中。また、同作を自ら監督した映画『0.5ミリ』が2014年秋、有楽町スバル座ほか全国公開予定。

遠山正道(とおやま まさみち)
株式会社スマイルズ代表取締役社長。慶應義塾大学卒業後、1985年に三菱商事(株)に入社。1997年に日本ケンタッキー・フライド・チキン(株)に出向し、スープ専門店「Soup Stock Tokyo」第1号店を開店。2000年に三菱商事初となる社内ベンチャー企業としてスマイルズを設立し、代表取締役社長になる。現在52店舗を運営。2006年よりネクタイ専門店「giraffe」、2009年にはリサイクルショップ「PASS THE BATON」を展開。

文・玉置純子

写真・鈴木七絵/深野未季


イートアカデミー

イートアカデミーは、レストランを学びの場とするイベントです。食べることを楽しみながら、正しい食のあり方を考えるきっかけ作りをしたい。レストランで提供される料理の「背景」を知ることで、料理への理解、産地や生産者への想いはさらに深くなるでしょう。時には皿の上には盛られることのない、皿の向こう側にある物語に思いを馳せてみませんか?毎日の食卓の風景がこれまでとは違ったものになること間違いありません。

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Archives

2015.11.23

旬の里、福井より多彩な伝統食材で織りなす秋の夕べ(告知)

2015年11月23日(月・祝)18:00 受付 18:30 開宴 @サンス・エ・サヴール(丸の内ビルディング35F)

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2015.11.08

ジャパン・ハーベスト2015(告知)

2015年11月7日(土)・8日(日)11:00~16:00 @丸の内仲通り、行幸通り

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