About

「食育丸の内」とは、三菱地所の「都市と食に関する問題」に取り組むプロジェクトの一環です。「食」に関する様々な活動を通じて、生産者、消費者、レストランが共に手を携え、人々が一層、心身共に健康になれる社会づくりを目指し活動していきます。

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Chef's Club

丸の内エリアを中心に活躍されている、日本を代表する和食・フレンチ、イタリアン、アジアン、4ジャンルのシェフ26名によって構成される「丸の内シェフズクラブ」。ただ、調理するではなく、食育を合言葉に、実際に生産地に足を運んだり、子どもたちへの食育授業など様々な提案、イベント発信などを行っています。

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Contents

マルシェに行こう
イートアカデミー
旬のシェフズランチ
子どもの食育ウェルカムキッズ
シェフの履歴書
服部幸應の食育のツボ
私を育てた『あの時、あの味』
元気になるニッポンの味めぐり
ラブテリ東京&NYヘルスリテラシー向上委員会
Will Conscious Marunouchi
シェフの履歴書 07 AWkitchen TOKYO オーナーシェフ 渡邉明氏 『新しいものを追わないという新しいスタイル』が私の原点 AKIRA WATANABE 1号店の壁に刻んだ言葉。『新しいものを追わないという新しいスタイル』が私の原点

 東京・中目黒の駅から徒歩10分。東山と呼ばれる閑静な住宅街に私の原点「AWキッチン本店(1号店)」はあります。今でこそ中目黒は、ジンギスカンやナポリピッツァなど、東京の食シーンにおける流行の発信基地となっていますが、当時はまだ高級住宅地という印象が強く現在のようにレストランが乱立する食の激戦区ではありませんでした。店の名前にもなっている「AW」は「Akira Watanabe」の頭文字。読んで字のごとく「渡邉明の台所」という意味です。当初からピンポイントで東山界隈に店を出したかったので1年かけて場所を探しました。当初は店から半径2キロ圏内に暮らす住民の方に使ってもらえればと思ったのですが、当時では画期的な深夜営業、表通りから一歩路地に入った隠れ家的な雰囲気が噂となって芸能界の方にも使っていただけるお店に成長しました。当時深夜0時を過ぎて手打ちパスタを食べられるお店は周囲にありませんでした。

 現在、店の入り口の壁にはある言葉が刻まれています。「it's the new style that doesn't copy new trends」。日本語に直訳すると「新しいものを追わないという新しいスタイル」という意味で私がオープンにちなんで考えたものです。修行時代、私はチェーン系ダイニングレストランを渡り歩いていました。いつか独立して自分の店をやるときは、使う食材は野菜にしろ、肉にしろ、魚にしろ、顔の見える日本国内の生産者から直接仕入れたいと強く思っていました。当時、ようやくスローフードという言葉が聞かれるようになった時代でした。スローフードというのは、簡単に言うとその土地に根ざしたものを使いましょうという北イタリアにあるピエモンテ州発祥の運動です。修行先のチェーン系レストランではトマトソースひとつにしても輸入したイタリア産の缶詰のトマトホールを使うのが当然でした。しかし、今でも自分の店では日本産の生のトマトを一から潰して全て国産の原料を使ったトマトソースを作るように心掛けています。ただ流行を追いかけるのではなく、私の中で当たり前だと思ったことを当たり前にこなすことがお客様を幸せにする近道だと考えるからです。そう言えば少し気恥ずかしいのですが、開店時に店の壁に刻んだ言葉はそんな私の原点でもあります。現在、全てのスタッフが持つ社員手帳の最初のページにこの言葉が書いてあります。初心を忘れないという自分への戒めであると同時に、店で働くスタッフたちにも私の想いを共有し理解してほしいと願うからです。

今や店の定番となった巨大なバーニャカウダ。良心的な生産者に出会うたびに盛られる野菜の種類が増え皿の上が賑やかになりました

 今では店の看板メニューになっている巨大なバーニャカウダですが当初からあそこまで大きかったわけではありません。お店をやっているうちに取引をさせてもらっている農家の数が増え、それに伴って野菜の種類もどんどん増えていったのです。今では店で使うおよそ9割の食材が生産者との直接取引です。もちろん最初は1軒ずつ私自身が訪ねて話をさせてもらいます。けれども良心的な生産者は、必ず良心的な同業者仲間を知っています。例えば、知り合いに素晴らしい玉ねぎを作る若い農家がいる。ハーブの鉄人みたいな専門家がいるなど常にお互いの感性が一致する生産者を紹介してもらって今日に至ります。現在、一年を通じておよそ50軒の農家さんが私の店を支えてくれているでしょうか。時には生産者の方を店に招いてイベントを開催します。私とお付き合いのあるシニア野菜ソムリエの方にも協力してもらって季節ごとにイベントを考えます。例えば、新丸ビルのお店では「スゴベジ」というイベントが人気です。前回は「ハーブの魔術師がやってくる」と題してメディカルハーブの効用などをハーブの奥深さを生産者に教わりながらハーブづくしの料理を楽しむ会を開催しました。このようなイベントは生産者の方がAWキッチンのお客様を知るという意味でもとても意義があります。今年の春には「アスパラガスの力」と題して香川県からアスパラガス農家の方をお招きしました。前菜からデザートまでアスパラガス尽くしの大盛況のイベントとなりましたね。

全スタッフが2か月に1度、農作業を体験。『畑の日』を経てスタッフのモチベーションは確実にアップする

 私の店ではいわゆる接客マニュアルのようなものは存在しません。ただし、全ての部署の社員、アルバイトが交代で農家を訪れ農作業の手伝いをするという「畑の日」という日を設けています。今ではシェフが畑に通うというのはめずらしくありませんが、サービスを含む全てのスタッフが2か月に1度、取引先の農家に通って農作業のお手伝いをするのは他にはないのではないでしょうか。例えばサービス担当のスタッフは、料理に使われている食材の生産現場を知ることで、お客様の元へ料理を運ぶという行為そのものの意識が変わるといいます。初めて来店されたお客様がメニューの選択に迷われているとすると、「このズッキーニは私が収穫したんですよ。畑で採れたてのものはみずみずしくて生で食べるとすっごく甘くておいしかったです」と自分の言葉で食材の説明できる。これこそ私が考える最良のサービスだと思っています。

 この「畑の日」を経験することでスタッフたちのモチベーションは上がり仕事の質は確実に向上します。何より畑で土に触れたり、見慣れない野菜の世話をすることは楽しい体験です。生産者の方も喜んで受け入れてくださりますよ。今でこそ地産地消やスローフードは当たり前の世の中になっています。しかし、日本という場所は食材の宝庫でもっと深く知る必要があると思います。一般市場には出てこないような郷土野菜がわずか2、3週間の間で次々と旬を迎えて消えていく。そんな貴重で楽しい野菜がいっぱいあります。私たちの仕事はただ調理するのではなく、この日のこのナスだったらどんな形にカットすればいいのか。どういう味付けにすればサプライズがあるか。季節の定番だからナスを使うのではなく、今日、届いた食材の顔を見て初めてメニューを考えるのが私たちの店のやり方です。何よりお客様の記憶に残る楽しい食事をしてもらうことが一番大切だと思っています。

文・ノンフィクションライター・中原一歩

写真・フードフォトグラファー・宮崎純一

Contact

PASTA HOUSE AWkitchenTOKYO

東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング 5F

03-5224-8071


シェフの履歴書

丸の内シェフズクラブに所属し、東京いや日本を代表する料理人の人生にはドラマがある。人生を変えたあの人のあの皿、修行時代の悔しい思い出、自分を一人前にしてくれた食材、自分の舌に焼き付いて離れない故郷の味。そんな、料理から学んだ、一流シェフの人生という名の美味しいレシピを連載します。

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