About

「食育丸の内」とは、三菱地所の「都市と食に関する問題」に取り組むプロジェクトの一環です。「食」に関する様々な活動を通じて、生産者、消費者、レストランが共に手を携え、人々が一層、心身共に健康になれる社会づくりを目指し活動していきます。

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Chef's Club

丸の内エリアを中心に活躍されている、日本を代表する和食・フレンチ、イタリアン、アジアン、4ジャンルのシェフ26名によって構成される「丸の内シェフズクラブ」。ただ、調理するではなく、食育を合言葉に、実際に生産地に足を運んだり、子どもたちへの食育授業など様々な提案、イベント発信などを行っています。

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Contents

マルシェに行こう
イートアカデミー
旬のシェフズランチ
子どもの食育ウェルカムキッズ
シェフの履歴書
服部幸應の食育のツボ
私を育てた『あの時、あの味』
元気になるニッポンの味めぐり
ラブテリ東京&NYヘルスリテラシー向上委員会
Will Conscious Marunouchi
マンゴーツリー東京 料理長 館山修氏「脳天を直撃する香りの爆弾」
館山修氏

 アジア料理として、ベトナムやカンボジアの料理とひとくくりにされがちなタイ料理ですが、実はとっても奥が深いんです。具体的に言うとベトナム料理は全般的に優しい味で、日本人の舌にはとにかくよく合います。一方、タイ料理は食べた途端、舌と脳天を直撃するような強烈な香りの爆弾のような料理です。とにかく強烈なんですね。だから一度食べたらやみつきになってしまいます。


 味付けの基本は「甘・辛・酸」です。私は洋食のシェフを経て、このタイ料理の道を志したのですが、例えば、ドミグラスソースひとつとっても洋食は時間と手間がかかるじゃありませんか。完成まで1週間なんて当たり前です。それだけ、調理の行程が難しいのですが、その点、タイ料理は単純で見た目は簡単です。複雑な下ごしらえなんかほとんどない。甘さは砂糖、辛さは唐辛子、酸味はライム。この3種類にこれでもかと香草や魚醤など個性溢れる調味料が入ってくる。もし、インドやスリランカなど南アジアをスパイスの国としたら、東南アジアにあるタイは香りの王国と呼んでいいでしょうね。お店には常時、10種類を超える香草があります。

香草を操って料理に奥深さを与える

パクチー

 タイで香草が多く使われるのには理由があります。それは薬効です。食品の腐敗を遅らせたり、保存や臭い消しのために使われたのが最初です。これは、タイが一年を通じて蒸し暑い、亜熱帯性の気候であることと関係しています。新大陸を発見したコロンブスは唐辛子や香草などをヨーロッパに持ち帰り、莫大な富を得たという史実が残っていますね。現在、タイで使われている香草の多くは、タイが原産国のものもありますが、逆にヨーロッパから輸入され、タイの国土で自生したものもあります。その代表がパクチーです。もともと原産地は地中海沿岸でしたが、今ではタイを中心とした東南アジアの香草の代表選手ともいえるでしょう。日本人でも好き嫌いがはっきり分かれますが、パクチーの入らないタイの炒め物は、なんだか気の抜けた全く別物の料理になってしまいます。


 バイマックルーという葉っぱですが、これは手で揉んでいるとミカンの香りがしてきます。私が大好きな香草のひとつです。カレーや炒め物などの仕上げに入れると、柑橘類特有の爽やかな香り湛えつつ奥深い味わいに仕上げてくれます。トム・ヤム・クンなどスープに欠かせないのが、タイ語でタクライと呼ばれるレモングラスです。これはもともとタイやマレーシアなどアジアが原産地です。このレモングラスの香りも、他の食材で代用しようと思っても絶対に無理。こういった欠かせない「香り」があるからこそ、タイ料理は他では味わうことのできない、圧倒的な印象に残る料理になるのだと私は思っています。

館山修氏

 私はタイに行くまで、タイ料理が何か分かりませんでした。それだけに、料理修行で渡った首都バンコックでの生活は、目からウロコの連続でした。例えば、日本でサラダというと冷たく、野菜はシャキッと、さっぱりした味わいのドレッシングが基本ですね。しかし、タイでは正反対。温かくて、野菜はシャキッというより火が入っていて、ドレッシングもニンニクやパクチーがたくさん入っていてインパクトがあります。また、日本料理をはじめ、洋食もそうなのですが、料理修行は皿洗いからはじめて、前菜、スープ、デザート、魚料理、肉料理と、年期に合わせて異なる持ち場を任されます。そして、全体を統括するシェフになるのです。しかし、タイ料理の場合は、前菜といったらずっと前菜。焼き物といったらずっと焼き物。それぞれひとつの調理法、分野で一人前をめざします。


徹底的に本場の味にこだわる

食材

 そんな本場のタイで修行をしたのですが、帰国後、日本にあるタイ料理屋を食べ歩くと、なんだか美味しくない。印象に残らないんですね。本場のスパイスが手に入らないというのも原因なのですが、やっぱり、日本人の口に合わせてマイルドにしてあるんです。私は本場のイタリア料理が日本に渡り、日本人のシェフが作るイタリアンとして人気を集めていることはとってもいいことだと思います。そして、シェフによって個性が異なり、今ではイタリアンを食べに行くのではなく、そのシェフの味を食べに行くのが洗練された日本の料理シーンですね。しかし、タイ料理を日本人の口に合わせてアレンジし、全てを日本の食材でまかない、私独自のジャパニーズタイ料理を作ればいいかというと私は違うと思います。もちろん、魚や野菜などの食材は日本の方が圧倒的に鮮度も味もいい。しかし、タイ料理に限って、お客様が期待されるのは、気の抜けた日本風のタイ料理ではなく、旅先で口にした圧倒的なインパクトのある現地タイの味なんです。

メニュー

 これは、自分自身がそうだったのでその気持ちがよく分かります。だから、私は極力、現地の味、本場の味をこの丸の内の厨房で再現することが使命だと思っています。ただし、先にも言った通り、まだ東京といえども手に入らない香草はあります。それは仕方ありません。けれども、ほとんどの料理を私は本国同様に再現できると思っています。それと、私の中のタイ料理というのは、決して高級なものではありません。一度、本場タイの宮廷料理を習いに行ったことがあります。ここでも宮廷料理人は職人として、宮廷料理だけを突き詰めるのですが、私がやりたいのはこれではないと思いました。タイといえば、屋台で夜風に吹かれながら、シンハーという地ビールを飲みながら炒め物や揚げ物を食べるのが最高です。


 もちろん、ここは丸の内。東京の一等地なので、記念日など特別な日に使って欲しいと思っています。そのために、食材や盛り付けには工夫を凝らしています。けれども、味の根本はやっぱりタイの街場の味なんです。私がタイ料理のなんたるかも知らなかった頃、バンコクで食べたあのタイ料理。その記憶が私の原点です。まるで、エキゾチックな旅をするように、口の中を、記憶の中枢を、香りの爆弾が支配する。辛くて、甘くて、酸っぱくて、だけど圧倒的においしい。ああ、またタイを旅してみたいな。アジアナンバーワンの東京の街を眺めながら、そう思ってくれば大満足ですね。

文・ノンフィクションライター・中原一歩

写真・フードフォトグラファー・宮崎純一

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シェフの履歴書

丸の内シェフズクラブに所属し、東京いや日本を代表する料理人の人生にはドラマがある。人生を変えたあの人のあの皿、修行時代の悔しい思い出、自分を一人前にしてくれた食材、自分の舌に焼き付いて離れない故郷の味。そんな、料理から学んだ、一流シェフの人生という名の美味しいレシピを連載します。

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